「韓国ホラー史上最高に怖い!傑作」2024年6月25日に韓国で公開された映画『層間騒音(原題:Noijeu)』のあらすじ結末までネタバレ解説と海外の感想評価をまとめて紹介。聴覚障がいを持つ姉ジュヨンが、失踪した妹ジュヒを探すため古い団地で謎の騒音に立ち向かう物語。IMDbでの評価は5.7/10、キム・スジン監督、イ・ソンビン主演や興収など作品情報も紹介。
『層間騒音』物語結末ネタバレ
ここから先は『層間騒音』の核心である重大なネタバレを含む。
妹の失踪
アパートの一室で、一人の女性が鬼の形相で吸音マットを天井に貼り付け続けている。マットを貼り終えた女性は音声マイクを天井に近づけて安堵した表情を浮かべるが、何かに気がついて背後を振り返るシーンで物語が始まる。
聴覚障がいを持つ女性ソ・ジュヨン(イ・ソンビン)は、補聴器をつけることで生活に支障がない程度に音が聞こえる。ある日、警察から妹のジュヒ(ハン・スア)が失踪したと知らされる。このジュヒこそが冒頭に登場した女性だった。
過去に姉妹はこの部屋(604号室)に引っ越していた。しかしジュヒは部屋のどこからか聞こえる謎の騒音に取り憑かれ、特に天井に苛立ちを見せて次第に暴力的になっていく。一方、補聴器をつけても何も聞こえないと主張するジュヨンとの間で意見が食い違い、ケンカ別れしてジュヨンだけが職場の寮に避難していたことを思い出す。
ジュヨンが妹のアパートを訪れると、天井にびっしりと敷き詰められた防音シートや荒れた部屋の様子から、ジュヒの精神状態が悪化していたことが分かる。その直後、下の階の504号室の不気味な男性から「静かにしてほしい」と苦情を言われるが、今到着したばかりで部屋には誰もいないと伝えると、男は黙って立ち去っていく。
恐怖の始まり
ジュヨンは妹を捜すため部屋で寝泊まりを始めるが、補聴器を装着すると奇妙な音が発生していることに気がつく。補聴器をつけて部屋中を歩くと「そこにいるの?」と妹ジュヒの声が聞こえたり、知り合いを名乗る謎のノック音、リビングで首を吊るジュヒの幻影、バルコニーに現れる女性の姿を目撃したりと、何かの存在を感じるようになる。
そこにジュヒの恋人キフン(キム・ミンソク)が現れ、協力して妹の行方を追うことになる。504号室の男は毎日扉に苦情の張り紙を貼り、何を言っても騒音の原因は604号室だと思い込んでいる。ついに殺害予告にエスカレートしたある夜、男は包丁の先端で激しくドアを叩き続ける。
ジュヨンが扉を押さえながら恐怖で動けないでいると、突然謎の異音が鳴り響く。男は音の出どころを探ろうと屋上に向かう最中、恐怖の叫び声をあげて廊下から落下して死んでしまう。
男の死は警察に自殺と判断され、アパートの住民たちが野次馬として集まり何かを話し合っているが、皆何かを隠している様子だった。意気消沈するジュヨンを訪ねてきた上の階の女性ジョンイン(チョン・イクリョン)が、過去にこのアパートで起きた事件について重い口を開く。
過去、704号室に住む管理人は周囲の住民に静かにしろと怒鳴り散らす迷惑な女性だった。ジョンインも苦情を言われた一人で、ヒステリックに喚き散らす管理人に頭を下げて謝罪するしかできなかった。ある日、管理人が部屋に戻ると周囲の音に苛立ち、壁や天井などに向かって喚き散らし始める。
704号の呼び鈴が鳴り、管理人が苦情を言おうと扉を開けると、604号室に住む男にハンマーでメッタ打ちにされて重傷を負う。かろうじて生きていた管理人は壁を叩いて助けを求めたが、周囲の住民は何が起きたのか理解していながら、その音はただの気のせいだと思い込むようにして管理人を見捨てた。住民たちはこの事実を秘匿し、殺人犯は姿を消してしまう。
その後も604号室には何度も新しい住民が引っ越してくるが、例外なく同じ音に苦しめられて自殺してしまうため、いつからか604号室は呪われていると皆が避け始めるのだった。
結末ネタバレ:真実の暴露
ジュヨンはキフンと共にジュヒを探しに、誰も訪れない地下室に向かう。そこで行方不明だった殺人犯の遺骨を発見した瞬間、キフンが謎の声を聞いて憑依され、凶暴化してジュヨンに襲いかかる。怪我を負いながらなんとか逃げるが、残されたキフンは死体となって警察に発見される。
再び地下室に降りたジュヨンは、ジュヒのカメラを見つける。そこには804号室に侵入するジュヒが、部屋中に設置されている音響装置で騒音を発生させている様子が映っていた。そしてそこに住んでいるのは、ジュヨンに協力的だった上の階の女性ジョンインだった。ジュヒがジョンインにハンマーで殴り倒されているところでカメラの映像は止まってしまう。
さらに奥に進むと瀕死の妹ジュヒを見つけ、脱出しようとするが真犯人ジョンインが襲いかかる。ジョンインはジュヨンの首を絞めながら、過去に704号室の管理人に娘の足音がうるさいと苦情を言われたため、仕方なく娘を外で遊ばせていた結果、配達トラックに轢かれて娘を亡くしたことを語る。それからアパート住民への復讐として騒音を作り続けているのだと明かす。
最終的に謎の死霊がジョンインに襲いかかって殺し、ジュヨンはジュヒを強く抱きしめて再会を喜ぶ。
後日、部屋は元通りになり平和な生活を送るジュヨンの前に、新しい704号室の住人が挨拶に訪れる。ジュヨンは妹と一緒に住んでいると紹介して後ろを振り向くが、訪問した住民には誰も見えないため怪訝な顔をする。
ジュヨンは最後に新しい住民に「騒音は無視するように」とアドバイスして物語は終了する。
『層間騒音』作品情報
層間騒音のネタバレを読んで興味を持った読者のために、韓国ホラー界の新星キム・スジン監督による衝撃のデビュー作について詳細を紹介する。「層間騒音」とは集合住宅で上下階から聞こえてくる生活音を指す韓国の社会問題を扱った用語であり、本作はその現実問題に超自然的要素を組み合わせた斬新なアプローチが話題となった作品である。
興行収入
韓国では2025年6月25日に944スクリーンで公開され、初日1位を獲得。
公開11日目に観客動員数50万人を突破し、18日目には100万人を超えて損益分岐点に到達した。27日目には累計動員数150万人を突破し、2025年8月25日時点で世界興行収入1,219万9,988ドル(約1,707,574人動員)を記録している。
キム・スジン監督紹介
キム・スジンはミジャンセン短編映画祭「4万回の殴打」部門で最優秀作品賞を受賞した経歴を持つ新鋭監督である。
本作が長編映画監督デビュー作となった。興味深いことに、キム・スジン監督は脚本執筆中と撮影中に突然物が倒れる心霊現象や不可解な音を実際に聞いたと証言している。音響監督には『哭声/コクソン』『コンジアム』を手がけたパク・ヨンギが参加し、恐怖を倍増させる音響設計で作品を支えた。
主演ジュヨン役「イ・ソンビン」紹介

イ・ソンビンは「空気殺人 TOXIC」「ミッション:ポッシブル」などで知られる韓国の実力派女優である。本作では聴覚障がいを持つ女性という難しい役柄を熱演し、海外の批評家からも「説得力のある演技」と絶賛された。
補聴器や音声認識アプリを使った演技は技術的にも高く評価されている。聴覚障がいという設定を活かした恐怖演出において、彼女の繊細で力強い演技が作品の核となっている。
海外の感想評価まとめ
韓国で公開と同時に口コミが爆発的に広がり、韓国映画の中で3週連続1位を獲得した本作は、海外でも高い評価を獲得している。
第5回シッチェス・カタロニア映画祭のアンヘル・サラ・コルビ芸術監督から「今年最高のジャンプスケア」と評され、2024年トロント国際映画祭でプレミア上映された。音響設計の巧妙さと心理的恐怖の構築において、韓国ホラー映画の新境地を開拓したと各国で評価されている。
IMDb(総合評価:5.7/10)
①私はこの映画を今年最高の心理ホラーの一つだと考えている。音響設計と映像美を駆使してハラハラドキドキする体験を作り出している。
②私が特に印象的だったのは演技の質の高さで、出演者全員が恐怖や絶望感に完全に没入していた。観客を登場人物の心の奥深くまで引き込んでいく。
③私の見る限り、これは単なるホラー映画ではなく、知的で丁寧に作り込まれた作品である。エッジの効いたスリラーを求める人には完璧だ。
④私はこの映画が韓国の今年のホラー作品の中でも傑出していると思う。一人では観ない方がいいだろう。
Rotten Tomatoes(批評家:– % / 観客:– %)
①私は音響設計が第一級で、コンセプトにふさわしい出来栄えだと感じた。映像は暗くミュートされているが、それが観客をより集中させる効果を生んでいる。
②私が体験したのは不確実性と不吉な雰囲気に満ちた聴覚的悪夢だった。本物の恐怖の瞬間が物語全体に響いている。
③私の感想では、キム・スジン監督は音と感覚的ストーリーテリングに対する見事な統率力を示している。恐怖は聞くだけでなく、深く感じるものだ。
Metacritic(総合評価:–/100)
①私が観た限り、この映画は伝統的なゴーストストーリーの試行錯誤された公式に従っている。夜に物音がするからといって、必ずしもそれを恐れる必要はない。
②私の印象では、ホラー映画としては不足があり、本当の恐怖を作り出すのに必要な背筋も凍るような要素が欠けている。むしろ社会的コメンタリーに傾いている。
③私はこの作品を大気に満ちたスロー・バーンとして評価する。手続き的で脈打つものではないが、最後まで観れば満足のいく見返りが待っている。
批評家レビュー
海外の専門批評家による『層間騒音』の詳細な評価を紹介する。韓国の集合住宅における騒音問題という現実的な社会テーマと超自然ホラーの融合、そして音響設計の革新性を知ることで、この映画の多角的な魅力と課題を理解できるはずだ。
新人監督キム・スジンの野心的なデビュー作として、従来のK-ホラーに新たな地平を切り開いた功績と、脚本面での課題について専門家の視点から分析している。
Asian Movie Pulse 7.5/10
パノス・コザサナシス氏「脚本の質がやや低下している部分がある」
キム・スジン監督は音響設計に重きを置き、混乱と恐怖の雰囲気を作り出している。音響が作品の登場人物の役割を果たしており、リズミカルで耳障りな、時に平凡な騒音を恐怖と不安を煽るために活用している。
評価点
イ・ソンビンの説得力のあるジュヨン役とリュ・ギョンスの印象的な脅威的隣人役
批判点
脚本の質が部分的に低下し、一貫性に欠ける面がある
Heaven of Horror 4/5
リー・マッカーシー氏「韓国ホラーの最高傑作の一つだ」
この映画は多くの人が共感できるテーマを扱った韓国ホラー映画である。ファンタジア2025で上映され、観客の注目を集めた。監督キム・スジンと脚本家イ・ジェヒは、観客の心に入り込み、登場人物の立場に立って考えさせる映画を創造した。
聴覚障がいがある環境では、騒音に悩まされることはない。補聴器を外すだけで静寂を得ることができるからだ。しかし、妹のジュヒにはその選択肢がない。それゆえ彼女がこの一見静かな近所で発狂していくのかもしれない。
評価点
効率的で心を掴む瞬間の数々と全体的に機能するストーリー構成
批判点
エンディングがやや期待外れで、最終的なひねりは良かったが完璧ではない
Film Festival Today 3.5/5
ジョージ・W氏「J-ホラー黄金時代を思い起こさせる作品」
この映画はJ-ホラー映画ではないが、K-ホラーとしてJ-ホラー運動の黄金時代を思い起こさせ、『PULSE』『呪怨』、特に『仄暗い水の底から』を想起させる。
映画の大部分はアパート複合施設の様々な住民を中心に展開されるミステリー的性格が強い。住民たちは皆騒音について知っているが、なぜかそれについて話したがらない様子だった。団地には捻れた過去の物語があり、魅力的なボーイフレンドのキャラクター(キム・ミンソク)も登場する。
評価点
世界構築と謎の段階的エスカレーションが決して急がず丁寧に描かれている
批判点
J-ホラーの既視感があり、完全にオリジナルとは言えない部分がある
韓国の層間騒音問題とは?
韓国人の友人から聞いた話だが、韓国では上階から下階に伝わる音を「層間騒音」と呼び、これが深刻な社会問題になっているそうだ(あなたが日本人ならイメージする騒音問題の100倍は深刻)。
韓国といえば半地下住宅のイメージもあるが、実際には多階層アパートが大量に存在し、日本の集合住宅に住む割合は40%に対し、韓国では田舎でも65%、都会では80%にもなる。
そして多くの韓国アパートでは硬い床材とコンクリートスラブを使用し、日本と違い柱や梁の代わりに壁で建物を支える作りになっているため、衝撃音が完全に吸収されず、上階どころか隣人の小さな生活音まではっきりと聞こえてしまう構造に問題がある。
そこに韓国人の繊細な感受性が重なって、常に騒音トラブルが発生しているということだ。(調べたら、、騒音による苦情の件数が2023年で3万6000件という…韓国には住めないなぁ)
映画『層間騒音』で描かれた層間騒音問題は、単なるフィクションではなく韓国社会が実際に直面している深刻な社会問題を背景にしており、この現実を知ることで映画の恐怖がより身近で切実なものとして感じられるのだ。
「じゃあコンクリート以外の建物を探せばいいのでは?」なんて言うと、友人に品性を疑われるので口にしないようにしている。韓国の半地下住宅の存在理由や住居問題は割と重い話になるし、うっかり兵役の話でも振ろうものなら、さらに面倒なことになるからだ。
個人的な感想評価:75点
話が大きく逸れてしまったが、こうした韓国の背景を知るとこの映画が抜群に面白くなる。そこに殺人の隠蔽、仄暗い住民たちの秘密、騒音問題、さらにほんの少しのジャンプスケアと嫌らしい精神攻撃をしてくる心霊現象、俳優の演技、そして最強に不快な音響デザインが見事にマッチした結果、すげぇ嫌なホラー映画の出来上がりである。
最高に怖いし、手に汗握る展開だった。次々に解き明かされる謎も良かったが、最後の「妹は死んでいました」はちょっと辛い。生き残っていて欲しかった。「呪いは残ってるじゃないかー」というオチも、今の精神状態だから受け止められたけど、やっぱりバッドエンドよりだよね。
一応気になった点を挙げるとすれば、音響面で個人的には物足りなさを感じた。というのも、ゲーム「サイレントヒル」のように怪物が近づくとラジオの音が徐々に大きくなり、離れると小さくなるといった、坑道のカナリアのような繊細な演出を想像していた。しかし本作では怪異が発生する前に、モスキート音を大きくしたような実際に不快な大音量が通り過ぎるだけで、怪異が出る前の単なる合図でしかない。しかも音がデカくて耳が痛い。でかいモスキート音なんて不快感しかないよね。
そのため劇中、例の異音が鳴るたびに「音デカすぎ!」って不快感を感じてしまった。音が重要な要素なのは分かるが、紙一重をちょっと悪い方に上回ったかもしれない。
それ以外は申し分ない。仄暗く、陰湿で、最悪のオチで、良い感じにホラー映画を楽しむことができた。2024年ホラー映画のトップレベルと言われる理由も納得の傑作だった。
最近の日本のクソみたいなホラー映画なんて全てを凌駕してくれるので、気になる人は楽しみに。
海外レビューを総合すると意外と低評価なのが気になった。『層間騒音』は音響設計の巧妙さと社会問題への鋭い洞察で際立っているが、脚本面での粗さが目立つ作品だといえる。新人監督の野心作として評価すべき点は多いが、完成度の面では改善の余地がある。特に「音」を恐怖の主要素とする発想は革新的で、韓国社会の現実問題と超自然要素の融合は見事だった。しかし終盤の展開に物足りなさを感じる観客も少なくない。それでも、イ・ソンビンの熱演と、聴覚障がいという設定を活かした独創的な恐怖演出は十分に評価に値する。
まとめ

この記事では映画『層間騒音』のネタバレあらすじから海外評価まで詳細に紹介した。韓国の社会問題「層間騒音」をテーマにした本作への期待は高く、実際に音響設計の革新性と社会的メッセージの融合で注目を集めた。海外での評価は音響面で絶賛される一方、脚本の完成度には課題があるとの指摘もあった。
それでも本作は韓国で3週連続1位を記録し、累計150万人を動員する大ヒットとなった。海外でも「今年最高のジャンプスケア」との評価を受け、韓国ホラー映画の新たな可能性を示した作品として記憶されるだろう。音を主軸とした恐怖体験という斬新なアプローチで、ホラー映画ファンに強烈な印象を残している。
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