開拓時代の負の歴史を描く『Butcher’s Crossing』完全ネタバレ解説。荒野の深淵に潜む真実とは?




先に作品情報やトリビア、この映画を作った監督のことを知りたい人はこちら↓

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映画『Butcher’s Crossing(2023)』ネタバレ!

1874年開拓時代のアメリカ
ウブで世間知らずな牧師の息子ウィル(フレッド・ヘキンジャー)は、移民がアメリカ大陸でインディアンを殺し、追い立て、荒野を走るバッファローを狩猟して生計を立てることを夢見ていたためハーバードを中退し、バッファローの皮の取引で築かれたカンザスの小さな開拓者の町、ブッチャーズ・クロッシングに向かう。

開拓し、バッファロー狩りをする冒険やロマンチシズム(空想的で情緒・感傷を好む精神的傾向。特に十八世紀末から十九世紀初めにかけてヨーロッパに流行した文芸上の傾向。古典主義に反抗し、個性を重んじ、知性より感情の優越を強調。浪漫主義。)に魅了されたウィルは、父のかつての知人であり、現在この町で衰退しつつあるバッファローの取引を取り仕切っているマクドナルド(ポール・ラシ)に会う

バッファローハンターのミラー

しかし、バッファロー狩りで乱獲された数が減ったバッファローを追うのは流行から遅れているとマクドナルドに断られてしまったウィルは、それでも食い下がる。すると、マクドナルドから。経験豊富で強烈なバッファロー・ハンターのミラー(ニコラス・ケイジ)という男を紹介される。

マクドナルドに会いに行ったウィルは、コロラド州の人里離れた峠に、残り少ない巨大なバッファローの群れが生息しているという話を聞き目を輝かせる。坊やの表情を見たミラーは、一度この愚かで無謀な行軍は危険だと忠告するが、一度夢を見てしまったウィルは何が危険かは理解しないまま、遠征の資金の全財産を出すと申し出る。

翌朝、ミラーはウィルの資金で物資を購入し、荷馬車の運転手兼キャンプのコックとして、酔っぱらいで聖書を愛する片腕の男ホージ(ザンダー・バークレー)と、粗野だが現実主義者の “皮剥ぎ屋 “シュナイダー(ジェレミー・ボブ)を雇い、四人でヴァッファロー狩りに向かう。

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夢見るワイルド・ウェストへ

ウィルにとって初めての冒険は素晴らしいものだった。長距離の乗馬による内腿の内出血も、リアルな冒険の過酷さも、目に映る全ての景色も、何もかもが素晴らしく、感動し、魅力的なものに映る。

しかし、開拓者やウィル狙うインディアンに襲われた死体を見てから、旅の現実に気がつき始める。最初は水が不足して脱水症状のまま旅を続け、倒れてしまい死にかけ、毎日毎日、へとへとになるまで旅を続けても、目的地の峠に辿り着けず、厳しい苦難には慣れていないウィルは、素晴らしい丈夫男のように思っていたはずの、ミラーへの盲信が徐々に失われ、数々の困難に遭遇し、ウィルの正気も揺らぎ始めていく。

過酷な旅を続け、ついに峠にたどり着いた彼らは、荒野を進む何万というバッファローの手つかずの群れを発見し歓喜する。その様子を見たウィルは恍惚とし、畏敬の念を抱き、自分たちを取り囲む美しい自然を「神」だと信じ、こんなにも美しいものを体験できることに高揚する。が、彼らはまだ何も成してはいない。

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狂ったバッファロー狩り

狩りの準備を終えたミラーとウィルは狩りを始める。ウィルに狩りの手ほどきを教えながら、ミラーが1発でバッファローを仕留めたのを目の当たりにしたウィルは、興奮を隠すことなく、初めての狩りに感動する。

ウィルも狩りに参加して何日も経過すると、スリリングな冒険として始まった狩りは、執拗で理路整然とした、果てしない殺戮の日々となる。

ミラーは1日に何百頭ものバッファローを殺すことに喜びを感じ、ウィルとシュナイダーは死骸の皮を剥ぎ続ける。毎日毎日絶え間なく繰り返される屠殺に、ウィルは心身ともに疲弊し、自分たちの存在が峠の神聖な空間を汚していると感じ始める。見渡すと谷には皮を剥がれたバッファローの死体で埋め尽くされていた…。ウィルはすでに死に麻痺していたのだ。

3週間屠殺が続き、皮剥担当のシュナイダーは、彼らは予定していた滞在時間を1週間もオーバーし、すでに運びきれないほどの皮を持っていること、これ以上の殺戮に意味はないこと、冬が近付き天候が変わり始めていることから、一度街に戻ろうと提案する。しかし、狂気の形相のミラーは断固拒否し、群れのバッファローがすべて死ぬまで絶対に止めることはない!とシュナイダーに食って掛かる。ウィルはミラーに何故ここに留まるのか?と質問すると、”バッファローがここにいるからだ”と狂気に満ちた表情で答えるだけでした。

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死地の冬

翌朝から、ミラーは狂ったように銃を撃ち続けバッファローを殺し続け、ついに予想通り、チームは吹雪に閉じ込められる。道を見失い、雪に立ち往生する羽目になった彼らは、山の中で冬を越すことを余儀なくされる。この間抜けなパーティーは、皮を剥いた死骸は、腐らせて放置して立ち去ったため、手持ちの食料は乏しい。シュナイダーは、彼らが言うことを聞かなかったために窮地に陥ったことに苛立ち、ホーゲの聖書を盗んで笑い飛ばし目の前で聖書を焚き火に放り投げたため、ホーゲは聖書を抱えて泣き叫ぶ。

ある日の夜の食事の料理中に、ホーゲはシュナイダーの食事に毒を盛り、シュナイダーは徐々に体調が悪化していく。退屈なサバイバル生活が続き、ウィルの正気はさらに失われ、ミラーはバッファローを一頭残らず仕留めたら、かつて見たこともないような大漁を手にして町に戻るという夢を見ながら長い長い気が狂いそうな日々をなんとか過ごす。

しかし、ある日、シュナイダーは、ホーゲが狼用の毒を見つけ自身の体調悪化がホーゲによるものだと気付き、激怒したシュナイダーによってホーゲは撲殺されるのだった。

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エンディングネタバレ「無常」

春が来て雪が溶けると、彼らは集めた皮をすべて運ぶことができず、1,500枚を荷馬車に積み、残りの3,000枚は取りに戻るつもりで置いていくことにする。しかし、帰路の最中、破損した荷馬車が崖から転落し、シャイダーと牛の革を全て失ってしまう。

ウィルとミラーは町に急いで戻ると、残りの3,000枚の皮革を取りに戻るため、別の荷馬車を手に入れようとする。しかし、ブッチャーズ・クロッシングはチームが、山に閉じ込められている間にバッファローの皮の相場が暴落していたのだ。街はほとんど無人となり、かつての面影のない活気を失った街を見て愕然とする。

酒場にいたマクドナルドから、もし二人が前の年の秋に戻っていれば、皮革を売って莫大な富を得ることができたはずだったと言われ嘲笑われる。マクドナルドはウィルに”お前は願った通りに牛を狩った、何か得るものがあったか?”と質問されるが、ウィルは”見るべきものを見た”と答える。

夜、勝利を奪われたミラーは、古いバッファロー取引所の建物に火を付け、マクドナルドを殺して逃亡する。去り際のミラーと目が会うが、彼の目には怒りと絶望と狂気が宿っていた。ミラーを見送ったウィルは翌朝、たった一人で荒野を馬と進み物語は終了する。

大量のバッファローの頭蓋骨の山と無惨な皮と死体が映し出された後。

テキスト
”1980年バッファロー30,000頭いたバッファローはたった20年で300頭にまで激減した。その後、先住民たちによる保護活動によってバッファローは徐々に増えている。”

そしてクレジットが流れる。

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海外の感想評価 IMDb 5.7/10

IMDbの視聴者レビューを抜粋して紹介します。

肯定的なレビュー

8/10
これはかなり…
アメリカの哺乳類であるバッファローの狩猟を題材にした、壮大で古き良き西部劇の奮闘記。1970年代の壮大な西部劇を彷彿とさせる、それほど深いプロットはなく、5~6人のキャストで、魔法のようなビジュアルと、プリマ姿のニック・ケージという形で、あなたに良い見返りを与えてくれるだろう。
今日、西部劇を超大作にするのは容易ではないし、この映画がそうなるとは思わないが、小説を基にした非常によく圧縮されたストーリーと、かなり現実的なプロットと設定が、この映画を価値あるものにしている。不機嫌なオヤジは、この映画を見ていて、ムッシュ・パスキネールの疼きを感じ、栄光の瞬間を味わった。

9/10
見づらいところもあるが、良い映画。
よくできた良い映画だった。題材が題材だけに(動物が好きなら!)見づらいところもある。
アメリカバイソンの無分別な屠殺とその理由がよく描かれていると思う。演技がうまく、面白い風景をうまく撮影しており、主役同士の絡みもいい。特にひねりもサプライズもなかったが、それがかえってよかったと思う。
ひとつだけ批判をするならば、物語の6ヶ月ほどの時系列を見せるのがあまりよくなかった。しかし、これは些細な点であり、全体的には一見の価値がある映画だと思う。お楽しみください!

7/10
1800年代のバッファロー狩り
多くの人が誤解するような発言をしている。1800年代のバッファロー狩りは、何も持っていない人にとってはとても儲かる職業だった。だから、私はそれを「OMG」の領域から取り出して、ハンターの視点に置いている。彼らは当時、この皮革で大金を稼いでいた。そして私たちの目には、多くの腰があった。しかし、それは生活だった。もしそれが避けられたとしたら、同じように嫌なことが他にあったかもしれない。それが西部開拓時代であり、人々はそれを考慮しなければならない。
叩き潰すか、文句を言うなら他のことを探せ。00.

美しさと深遠さ (8/10)
「『Butcher’s Crossing』は観る価値のある作品です。秋から冬への移り変わりが美しく描かれ、ビジュアルの素晴らしさは特筆に値します。ニコラス・ケイジの新鮮な演技も印象的で、人間の欲深さや成功への執着を深く掘り下げています。物語はシンプルながらも、人間の欲望と自然との関わりを巧みに描いています。」

壮絶な描写 (9/10)
「この映画は見るのが難しい場面もありますが、非常に良く作られた作品です。動物を愛する観客には心が痛むかもしれませんが、アメリカバイソンの無益な虐殺がリアルに描写されています。登場人物たちの演技が見事で、自然の美しさと残酷さを巧みに捉えています。ストーリーに大きな驚きはないですが、そのリアリズムが逆にこの映画の強みになっています。」

リアルなバッファロー狩り (7/10)
「1800年代のバッファロー狩りを描いたこの映画は、当時の西部の生活をリアルに再現しています。バッファロー狩りがどのように行われ、どんな影響を与えたかを視覚的に示しています。衝撃的な内容ですが、当時の現実を理解する上で重要な作品です。」

否定的なレビュー

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3/10
あまり良くない
典型的なニコラス・ケイジの演技…イライラする、退屈、演技過剰、などなど。
イラつく、退屈、演技過剰などなど。プロットは薄っぺらで、登場人物はあまり面白くなく、ウィルの耳の後ろが緑色のキャラクターは横っ面をひっぱたきたくなる。
唯一救われたのは風景だけで、あとは予想通りだった。大量のバッファローの群れを想定して、最小限の食料しか持たずに冬間近の山奥に向かい、小さな荷馬車1台しか持ってこないのは、愚かなバカだけだ。
それ以外の登場人物にはほとんど共感できず、ランダムな夢のシークエンスはストーリーを盛り上げるのに何の役にも立たなかった。
終わって良かった!

5/10
群れのメンタリティ
バッファローの皮剥ぎ屋に殴り殺される老人を見まいとフクロウが頭を回転させるシーンは、確かに笑えないはずの映画の中で一番面白かった。
この映画が伝えようとしたメッセージは、バッファロー猟師たちがいかに貪欲であるかを視聴者に知らしめることだった。
絨毯や頭巾のために、身の安全も責任も顧みず、ただ小金を稼ぐためだけにバッファローを大量に殺す無分別な行為は、おそらく世界、特にゾウと類似点が多いだろう。
視聴者は、この映画が悲惨なものになることを知っていたはずだ。

2/10
うんざりするほど不快

4人はバッファローの居場所を探す旅に出る。旅はインディアンの土地を横切るので、インディアンに追われるのかと思ったが、残念ながらそうはならなかった。その代わり、映画はバッファローの狩猟と殺戮に頼った。この映画は、バッファローが皮を剥がされ、切り刻まれるのを見なければならないという不快感を視聴者に与えない!見るに堪えなくなり、私はリモコンに手を伸ばしてこれらのシーンを早送りした。しかし、映画は狩猟と皮剥ぎシーンに次ぐ狩猟と屠殺シーンを、最も下劣で嫌なやり方で続けた。
もしあなたが私のような動物好きなら、この映画は絶対に避けた方がいい。それどころか、ベテランの狩猟家さえ動揺させるかもしれない。この映画はまったくお勧めできない。うわ、胸くそ悪い!
もう一度観たいか?観なければよかったと思う数少ない映画のひとつなので、絶対にNOだ!

期待を裏切る展開 (6/10)
「映画を通して、観客は何か大きなことが起こるのを待ち続けることになります。キャラクターについてもっと深く掘り下げてほしかったと感じます。舞台設定や演技は良いものの、物語の終盤に向けての展開が弱く、期待を裏切る内容でした。」

物足りない終わり方 (6/10)
「全体的に見ると、映画の終わり方が物足りないです。設定や演技は良いものの、クライマックスに向けたストーリーの展開が弱いため、最後まで満足感を得ることができませんでした。」

動物愛護の問題 (5/10)
「バイソンが次々と殺されるシーンは、動物愛護の観点から見ると非常に辛いものがあります。映画としてのメッセージが不明瞭で、動物の扱いに関する深い問題提起が感じられませんでした。」

これらのレビューは、映画『Butcher’s Crossing』に対する観客の多様な意見を反映しています。肯定的な評価では、映画のビジュアルや演技、リアリズムに注目が集まっているのに対し、否定的な評価では物語の展開や動物の描写に関する問題点が指摘されています。

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まとめと感想

個人的には面白かった。

美しい風景、無謀な夢見る青年の大冒険、そして屠殺に命をかけた西部開拓時代のハンターたち。シンプルに美しく描かれていたので、興味深く最後まで楽しむことができた。ディカプリオのレヴェナントのように美しく壮大で冒険に満ちた映画ではなく、ドキュメンタリーを見ていたようなぼーっとした時間を過ごした不思議な後味を感じた。

聖書を愛する男、皮剥ぎの現実主義者など添え物みたいな登場人物たちが薄味で、背景が合ってないような人もいれば、ニコラス・ケイジの鬼気迫るバッファロー狩りへの情熱は一体なんだったのか、最後まで私には理解ができないままで、最後まで置いてけぼりだった。

ウィルだけは微かにイン・トゥ・ザ・ワイルドの青年のように冒険を夢見る馬鹿野郎ってことは理解した。最後荒野に向かったのは緩やかな自殺なのか、あの興奮を取り戻しに向かったのか、もしくは大きく精神が成長した彼は大きな街に向かって大きなことをするために故郷に戻ったのか。その辺はわからないが、彼の前途は悪いことはなさそうだ。

海外で評価が低い理由は、屠殺シーンがグロいとかで驚いた。映画好きたちが、今更ヴィーガンみたいに牛を殺すシーンが!とか言い出すとは…テリファーとかは殺戮シーンが惨すぎる!なんて低評価をつける人がいなかったのに、なんでどこから湧いてきたのかこんなことを言い出すのか、ポリコレ?差別主義者たちがこういう時に顔出してこんなことを主張し始めるのがアメリカなんだろうか。

アメリカでかつてこんなことをしてしまった負の歴史がある。

それを改めて思い出させてくれたならそれでいいじゃないか。それよりもこの映画面白かった?それを聞かせて欲しいと思った。

日本人はきっと楽しめると思う。

みんな大好きニコラス・ケイジはB級よりも少し上の作品に出演し始めたので、最近のニコラス映画がほとんど面白い↓

作品情報が気になった人はこちら

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