映画『イノセンツ/The Innocents』物語ネタバレ、力を手に入れた少年少女の絶望とは




「育児放棄された男児に人殺せる能力与えたらどうなる?」ノルウェー発、美しく切ないダークホラー映画『イノセンツ/The Innocents』物語結末までネタバレ。高層マンションに住む少年少女たちは隠された力を持っており…漫画「童夢」のようでもあり、新しくも感じる少年少女の超能力の行方を描いた傑作のエンディングとは?

2021年9月3日にノルウェーで公開されるや否や大ヒットを記録。日本での配信が待ち望まれていますが現時点では日本公開は未定のまま。

映画のタイトル『イノセンツ/innocents』とは無害、無実、罪のない、純潔、潔白、純真の意味を持っていいます。この映画に登場する少年少女たちはそれぞれ複雑な家庭を持っていながらも軸にあるのは”子供らしさ、純真”いわゆる”善”です。しかし人生のように山あり谷ありを経験していくうちに再び岐路に立たされ、兄弟、家族、大人たちから時には優しく、時には厳しく善悪の基準を植え付けられ、自分自身で成長し、選択して大人になっていくのです。しかしその途中で、善悪、道徳を教えてくれる大人たちを簡単に殺せてしまう力を手に入れてしまったら・・・。どうなるのでしょうか?

出演する少年少女たちのリアルで自然な演技をするため、彼らの所作全てから目が離せなくなり。映画的に漫画的に最小限のCGとセンス、音楽、構図で魅せてくれる映画が本作になっています。

スポンサーリンク




映画『イノセンツ/innocents』作品詳細

上映日:2021年9月3日(ノルウェー)
上映時間:1時間57分
制作国:ノルウェー/スウェーデン/デンマーク/フィンランド/フランス/イギリス
言語:ノルウェー語
別名:De uskyldige
製作会社
Mer Film
Zentropa International Sweden
Snowglobe Films

スポンサーリンク

あらすじ

ノルウェーの静かな団地で自閉症の少女、嫉妬深い少女、育児放棄された男児、心優しい少女。無邪気で多感な少年少女が大人を軽々超越してしまう超能力を手に入れた時、この北欧の静かな土地で、大人が見ていない森の奥でただの遊びから危険な遊びに変化していく。

スポンサーリンク

映画『イノセンツ/innocents』物語ネタバレ

新しい集合住宅に引っ越してきた知的障害を持つ姉アンナと妹のアイダ。両親はアンナの世話にかかりきりのようで、少し不満な表情を浮かべたアイダはベランダから地上に向けて唾を吐いた後、湖のほとりで虫を踏み潰し笑顔を浮かべている。

翌日近所の少年ベンと意気投合して森の中の秘密基地に案内されると、彼には不思議なサイコキネシス能力があり石ころ自在に落としたりする秘密を明かされた後、一緒にみみずを殺したりして似たような闇の一面を無邪気に楽しめる仲間とのひと時を楽しむ。帰宅すると相変わらず自分の世界の閉じこもる姉のアンナと両親の姿を見て不満な顔を浮かべたアイダは姉の靴の中にガラス片を入れて怪我を負わせて嫉妬心を解消させていた。

近所の少女アイシャは、何かを感じる。まるで足にガラス片が刺さったような痛みだった。テレパシーを感じ探しに向かうとアイダとアンナの家のまえで立ち止まると、どうやらアイシャは知的障害のアンナと特別なテレパシーを感じられ、アンナがガラスで怪我を負った痛みの感覚を受信したのだ。そしてアンナとアイシャはテレパシーで会話ができるようだった。これをきっかけにアイシャとアンナは仲良くなっていく。

ベンと行動することが多いアイダは、一般的な友達からハブられてしまった後、アイシャの猫を捕まえるとビルの高層から猫を落として重傷を負わせ、逃げた猫を追いかけ追い詰めたベンは笑いながら猫の頭を踏み潰す。アイダはその様子を見て嫌になりその場を後にする。アンナとアイシャが仲良く話しているのを見たアイダは苛立ちながらアンナを無理やり連れて行こうとするがアンナは嫌がる。アイシャは咄嗟にアンナに触れてテレパシーを送り一緒に家に帰ることを伝えアンナと間は家に帰る。

アンナとアイシャは翌日から一緒に遊ぶようになる。時折触れ合ってテレパシーで会話ができているようでアンナの表情も柔らかく見える。そこに現れたのはベンだった。ベンとアイダ、アイシャ、アンナの四人で一緒に遊ぶようになったことである変化が起きる。ベンは当初は小さな石ころ程度しか動かせなかったが拳大の石を自在に動かせるようになっていた。アイシャとアンナは互いに思っていることがわかるテレパシーを使って”私は何を考えているでしょう?”で遊ぶ。(ベンはアンナの思考を読み取れる訳ではないがアイシャの思考を読むことで間接的に会話可能)互いに家に帰ってもアンナとアイシャは離れた距離からテレパシーを送り合って絵を描きっこして遊んでいる。

子供たちの親のことが語られると、ベンはシングルマザーによって育てられているが、家にはほとんどいない育児放置気味。アイシャの母も良い母に見えるが恋多き女性なのか失恋と鬱に悩まされていた。

ある日、四人で遊んでいるとアイダがアンナの耳元でベンの悪口を言ったのを感じたアイシャが笑っていると、テレパシーが聞こえたベンが怒り出しアイシャをテレパシーで倒すと、巨大な岩をアイダに投げつけるがアイダはなんとか避ける。それでもアイダに危害を加えようと近寄るベンの前にアンナが立ち塞がる。ベンは能力を使ってアンナをどかそうとするがアンナも不思議な力で対抗する。ベンよりもアンナの力の方が強いのか誰にも危害が及ばない代わりに二人の背後の大木が折れる。ベンが立ち去った後、アイシャのおかげでアンナは自分で少しだけ話をすることができ、アイシャとアイダは笑う。

家に戻った子供たちは一気に力が強まったようでベンは、スマホばかり見ている母親の頭に鉄のフライパンをぶつけて大怪我を負わせる。同じタイミングでアイシャとアンナが頭に傷を負うイメージを感じていた。ベンはさらに倒れて動けない母親の足元に沸騰したお湯を浴びせた後、母親の助けを呼んでほしいという言葉を無視して母親が死ぬのを見守るのだった。

翌朝、アイシャとアンナが普通に会話して砂遊びしている姿を見たアンナの母親は涙を流す。

力を増し続けるベンは、隣人の男性を能力で操りいつもベンをいじめる年上の少年を殴り殺すことに成功する。翌朝ベンに会いにいったアイダに人のことを操れるようになったことを実演してアイダを喜ばせる。二人は近所でバスケットをして遊んでいる少年の一人の足を開放骨折させベンは得意気な表情を浮かべるが、アイダはそのベンに嫌悪感の目を向ける。

ベンの悪意を受け取ったアイシャがベンとアイダに近寄り説教しようとするが、ベンは能力を使いアイダの呼吸を止めて失神させてしまう。その様子を見たアイダがベンを突き飛ばしてことなきを得るが、ベンの悪意はアイダに向けられてしまう。しかし間一髪アンナが助けに現れたためベンは退散する。

帰宅したベンは大泣きし癇癪を起こす、後悔か嫉妬か怒りなのか暴れた後、”ママ”、そう呟くのだった。

その夜、怒りの矛先をアイシャに向けたベンはアイシャの母親を操りアイシャを刺し殺させる。このことを両親から聞いたアンナはショックで再び引きこもるようになり、アイダは、自分も同じ目に遭うのではないかと心配になる。

覚悟を決めたアイダはおもちゃをエサにベンを外に誘い出し再び友達になったふりをして油断させる。橋まで連れていくとベンが橋の欄干に立った途端、アイダは背後からベンを下に突き落とす。しかしベンは運良く道路の隙間の芝生に落ちたため一命を取り留めていた。ベンは気絶したまま能力を使いアイダの精神に入り込むと彼女に悪夢を見せ始める。

道路にいたはずのアイダは突如として暗い悪夢のような森に迷い込む。森の奥から迫ってくる謎の存在から逃げているとアイダは道路に飛び出し車にはねられてしまう。気がつくと病室にいた間は足を骨折したことを母から告げられ、ベンは軽症で生きていることを知らせれる。

アイダが帰宅すると母親がベンによって操られて殺されるのではないかと不安に陥る。その様子を感じ取ったのかアンナは一人で子供たちが遊んでいる湖のほとりに向かうと、離れた場所にいるベンと静かな能力対決が始まる。二人の力は拮抗しており動けない状態が続くが、そこにアンナがいなくなったことを知ったアイダが今まで隠していた能力で固いギプスを破壊してアンナの横に立つ。

アンナとアイダの攻撃が始まる。マンションの子供たちの何人かがベンを見ているのは二人に加勢しているようにも見える。

そして、ベンは糸の切れたマリオネットのように命を失い倒れる。(やはり三人を見ていたマンションの子供たちもベンが死んだのを見届けた後、部屋に戻っている)

アイダとアンナは家に戻ると、アンナは元の状態に戻り空な表情で空を見つめ、アイダは母親抱きしめて泣く。

海外の感想評価 メタスコア:79点

8/10
子供たち……遊んでいる
ただひたすら恐ろしいものがある。しかし、現実から……かけ離れたものではありません。つまり、キャラクターや、ある種の子供たちの行動や反応のことです。どんな道徳観念や規範でも悪と見なされるようなことをやって、物事を試している。
とはいえ、この映画はこの悪を別の次元に引き上げています。言うまでもなく、この映画はかなりファンタスティックです。ここには、子供が空想するようなことがある……しかし、実際には決して起こらない(少なくとも我々の世界では)。子供たちは、すべてが順調というわけではありませんが……演技に関しては、驚異的です。彼らが主役であることを考えれば、これは極めて重要なことです。美しい映像、編集、そして優れたサウンドデザインは、この映画が観客の注意を引きつけるのに役立っています…そして、それ以上に。あるシーンは生々しすぎるかもしれないが、見る人によっては腹にグサッとくる。この映画は容赦なく、そして遠慮はしない.

8/10
ダークで独創的。没入感があり、効果的。
スローバーナーだが、流麗な演出、優れた撮影技術、子役の見事な演技のおかげで、サスペンスを失うことはない。前提は独創的で、雰囲気は重く、暗い。無邪気さの喪失に取り組む非常に興味深い方法だ。超常現象の要素を含んだダークなスリラーが好きなら、この作品を見逃す手はないだろう。

7/10
何かとても変わった作品
従来の「ホラー/スリラー」映画には飽きたか?それなら、この映画はあなたのためにあるかもしれません。決して怖くはないのだが、映画で見るべきものの境界線を確実に押し広げている。
超常現象や異常事態が完全に説明されていないのは、ファンタジーSFのジャンルでは問題にはならないが、少なくとも、コンセプトの正当性への小さな試みは望ましかっただろう。ただ、20分くらい短くすればもっといい点数になったかもしれません。

7/10
ネグレクト・・・。
もし自分の欲望が現実になったら、もし自分の望みが叶ったら、もし自分の思っていることが友達にも伝わったら、もし世界が自分の奴隷になったら、人々は何も知らないのに自分の行動に影響を与えることができたら、あなたはどのように行動するでしょうか。
この作品は『キャリー』的であり、ホラー映画ではありません。むしろ、自分の期待に沿った人生の一片を提供できない世界にいる子供たちの感情を表現しています。ホルモンの怒りと報復、成長期の混乱、成長痛と誤解、子供の未熟さと恐怖-もちろん、あなたがある年齢でない限り、あまり文字通りに受け取らないでください。

5/10
不穏な空気
ベンとアイダは元々悪で、アイシャとアンナが実際の罪のない人たちだったと思います。
冒頭でベンとアイダは猫を拷問してベンが殺し、アイダは自閉症の妹をつねったり、ベンはさらにサディスティックに母親や周りの人に接し、大怪我や死亡させたりしています。
アイシャとアンナは優しくて可愛い女の子です。アイシャがアンナに接し、再び言葉を教える姿は優しい。
この映画に出てくる子供たちはとてもいい演技をしている。
この映画では、緊張と不吉な予感が激しく高まり、何か悪いことが起こりそうな予感が何度も何度も起こり、それが実際に起こります。
ベンは自分を少しでも軽んじた人すべてに復讐する。
もし、実際に子供がこのような力を持っていたら、私たちは皆死んでいただろう。

9/10
ノルウェーのダークなホラー
イノセント 森の中にある集合住宅を舞台に、超能力を身につけた子供たちの理想的な空間が広がる。自閉症の少女への虐待や猫の殺害など、超能力とは関係のない残酷ないじめが行われている。テレキネシスやテレパシーの小さな表現から始まり、次第にマインドコントロールや殺人へと発展していく。暴力だけでなく、心理的な恐怖を感じさせるシーンもあり、主人公の3人が10歳前後であることを考えると、特に効果的である。主人公の3人が10歳前後であることを考えると、エグゼビア教授の英才教育学校に数学期通うのが得策だろう。脚本・監督:エスキル・ヴォクト(『テルマ』の共同脚本)。8.5/10.

スポンサーリンク

まとめと感想

子供に不自然な力を与えて無邪気さや善良さ、従順さを失わせ、残酷な傾向を持つベンのキャラクターは、猫を拷問して殺すことに喜びを感じ、アイダは、姉が必要とする余計なお世話に十分うんざりして、姉に残酷ないたずらをし、無感情な姉が自分を傷つけたらどんな反応をするかを楽しむなどかなり冒頭と後半で彼らに対する印象が変わる。

アンナとアイシャは、誰にも危害を与えず、混沌から秩序を生み出そうとする防衛軍だが、アイダは悪から善になることに成功している。唯一ベンだけが神に見放され悪に魅入られたかのように家庭でも友人関係でも悪いことが起き、戻れないところまで行ってしまう。この映画は、子供時代の無邪気さと無知に、不吉な残忍さと冷血な残忍さを加えた興味深いSF映画のようだ。

何が良いって、見事なんだよね全ての構図に意味を持たせてくれているのが漫画的でもあるし上手。最後の戦いで子供たちで賑わう公園での戦いでアンナとベンが無言で見つめ合い能力バトルをしていると、何かを感じ取ったかのように周囲の赤子が一斉に泣き出したり、マンションから関係がないのかあるのか能力があるのかないのかも不明だが何か意味を持つような少年少女たちが彼らの戦いを見つめていたりと小さなネタが詰め込まれているためどう見ても面白くて視聴が止められなくなった。見応えのなる見事な映画。ノルウェーのダークホラー。

子供時代の無邪気さと無知につけ込むように、危険な能力を与え不吉な残忍さと冷血な残忍さを生み出す実験をしているかのような興味深いSF映画だった。

関連



コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。

error: Content is protected !!