
「カニバリズムとは究極の所有欲であり、相手を完全にモノ化する行為だ」――監督自身がそう語る映画『サッカリン/Saccharine』のあらすじから結末までのネタバレと、海外の感想評価をまとめて紹介する。オーストラリアで製作された本作は原題『Saccharine』として2026年5月22日にアメリカで公開され、Rotten Tomatoesで批評家支持率69%、Metacriticで60点を獲得したボディホラー作品だ。日本での配信・劇場公開は本稿執筆時点でまだ確定していない。
物語は、自分の体型にコンプレックスを抱える医学生が、ある噂の痩身薬に手を出したことをきっかけに、想像もしなかった代償を払うことになるところから動き出す。ダイエット文化と美容への強迫観念を、グロテスクで痛烈な寓話へと変換した本作は、GLP-1系の痩身薬が社会現象になった今だからこそ刺さる一本になっている。
本作の監督は『レリック 遺物』『7A号室』のナタリー・エリカ・ジェームズ(監督名)。主人公ハナを演じるのはミドリ・フランシス(俳優名)、ハナが想いを寄せるジムのトレーナー、アラニヤを演じるのはマデリン・マデン(俳優名)そして日本落語家の笑福亭笑子さん(本名:小野綾子)も出演していることに注目を集めている。
今回は、『サブスタンス』以降のフェミニスト・ボディホラーの潮流に連なる話題作『サッカリン/Saccharine』のラストまでを詳しく解説し、海外でどのような評価を受けているのかを紹介していきたい。以下の内容は本編の結末のネタバレを含むため、必ず鑑賞してから読んでいただきたい。
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もくじ
『サッカリン/Saccharine』あらすじ結末ネタバレ
ここから先は『サッカリン/Saccharine』の結末に関わる重大なネタバレを含む。禁断のダイエット法に手を出した医学生が、次第に自分自身をも制御できなくなっていく顛末が描かれるため、鑑賞前の閲覧は避けることを強く推奨する。
秘密のダイエット
世の中には情報が溢れている、特に「美」に対するメディアの洗脳は根深く、どこを見ても「美しい=痩せて健康的」という洗脳に溢れている。
そんな現代のどこかのジムに通う医学生のハナ(ミドリ・フランシス)は、自分の体型に強いコンプレックスを持ち続けている。彼女は毎日ジムに通って周囲で美しい女性たちがバイクを漕いでいる様子を横目で見ながら自身も汗を流し、そして帰宅しては暴飲暴食を繰り返す日々を過ごしている。ハナがジムに通うもう一つの理由はジムのトレーナー、アラニヤ(マデリン・マデン)に恋心を抱いているからでもある。しかし痩身で健康的な彼女、自身は肥満で釣り合うわけもなく、彼女の関心を引くにはまず痩せるしかないと思い詰めて入るが、食欲を抑えることができない日々を繰り返している。
世間では太ったインフルエンサーが「体型も個性よ」と誘惑してくるが、やはりハナの中での美しいとは痩せた姿であり痩せたいと強い思いを抱いている。
ある日、バーで友人から「革新的な痩身薬」を勧められたハナは、最初は断るが友人の過去の写真を見て半分以上に体重が落ちて美しく成長した姿を見て半信半疑のまま服用してみる。すると驚くほどのスピードで体重が落ち始め、しかも好きなだけ食べているにもかかわらず痩せていくという都合の良い効果まで得られてしまう。もっと欲しくなったハナが友人に連絡を取るとこの薬はあまりに高額で、学生の財布ではとても買い続けられない。
科学者としての知識を持つハナは、残っていた一粒を分析にかけ、その秘密の成分が「人間の遺灰」であることを突き止めると。解剖実習で取り扱った肥満男性バーサさんの胸部肋骨を捨てるふりして隣の研究所に持ち込んで、焼いた灰をカプセルに詰め込み自作の痩身薬を作り上げてしまう。ハナは意を決して飲みこみ、ついに自身の体を使った実験と観察の日々が始まる。
減る体重、増える副作用
そこから彼女はみるみる体重が減っていく。特にすごいのは以前の食欲を抑えることなく好き放題食べても体重が減り続ける点だ。食事の量は周囲の友人が心配するほど、だが毎日のトレーニングの影響もあり体力や筋力がついてみるみるみなぎっていくようにすら感じ、その分ジムに行く回数も増えトレーナーのアラニヤとのセッションは快感を伴うものでハナはますますトレーニングに身が入る。
当然のように、この薬には恐ろしい副作用が伴っていた。
飲んだ直後から何か違和感はあった。特に背後を振り向くことが増えたハナは、メモに幻覚か?灰の影響か?とメモをしている。痩せる日々を過ごし充実していながらも研究者の卵としてこの副作用は看過できず、夜になると違和感の正体を探る実験を繰り返した結果、その違和感の正体はどうやら霊らしい、直に見ることはできず、鏡の反射でも見えないが、スプーンやケトルといった凸面の反射を利用すると姿が見えることがわかった。そしてついにスプーンを使って背後に見える何かをよく見るとそこにいたのは遺灰の素材となった肥満男性バーサさんの姿だった
存在に気がついてから夜になると全裸のバーサさんがハナを押しつぶそうとしてきたり、ハナの視界の隅に常につきまとうようになる。
副作用は家庭内にも不穏な影が差している。ハナの母親は痩せ型で、昔からハナの体型を厳しく批判し続けてきた人物で、ハナの体型への強迫観念の根深さ生み出した黒幕でもある。しかし彼女は母としては優しく笑顔を絶やさない人で憎むことができない。
服薬し、過酷なトレーニング、医学の勉強、ストレスで暴飲暴食、それでも落ちる体重、アラニヤへの募る肉欲を一人で慰め、悪夢を見て、朝になると服薬してトレーニングそして食事、、、異常とも言える執着は遂に花を咲かせハナは短期間で20kg以上の減量に成功する。
憑依される日々
薬の量を増やすたびにハナの過食衝動はさらに悪化し、気がつくと夜中に眠ったまま食べ物を貪る「スリープイーティング」を発症していた。流石に危険と判断したハナはこの薬を融通してくれた友人に連絡を取って詳細を聞くとかつて同じ薬別の女性が、最終的に肝臓がんに至ったという話を聞いてしまう。すぐに「ハナが超音波検査を受けてみると肝臓に腫瘍があると診断されてしまう。
薬をやめなければ、しかしやめて元に戻りたくない、アラニヤが努力する人が好きという期待を裏切りたくない、ハナは服薬を止めることができずにいた、
ついにハナとアラニヤは一線を越え、関係を持つに至る。最高の夜を過ごしたと思い目を覚ますとハナはリビングに座り込んでアラニヤの食料を全て食い尽くしていた。アラニヤが心配して顔を出すが以上な光景に取り乱してしまう。その様子を見たハナは外に飛び出してしまう。(しかし家に帰る最中食欲を抑えきれずコンビニで爆買いしてしまう)
帰宅したハナが目には見えないがバーサさんと思われる巨漢の幽霊が部屋にいると感じ恐怖を紛らわすためにドカ食いを開始。落ち着いて眠るが違和感があり部屋に取り付けていた防犯カメラを見ると寝たと思おった途端起き上がったハナは黙々と食事を繰り返していたのだった。映像は続きひたすら数時間食べ続けていたハナが食料を食い尽くすと、ボディクリームを手でほじって食べている姿が映し出されていた。
戦慄したハナだったが違和感を感じて服を捲ると肋骨が浮かび上がるほどに脂肪が減っていることに気がつき、恐る恐る体重計に乗ると45kg。
40kgも体重が減っていた。
結末ネタバレ:晩餐の代償
服薬を止めようとするとバーサが悪霊かのように弊害を与えてくる、しかもご丁寧なことに何かを大量に食べると姿を消すのだ。なんとかしなければと思うが徐々にバーサの行動は過激になり食事を止めると具現化して200kg近くある全体重をハナに乗せて押しつぶそうとしてくる。
最終的にハナは服薬を止めてバーサから逃げ切ったように見える。
後日穏やかに生活しているハナがアラニヤの家を訪れ再び一夜を共にする。
一度暗転して物語はハッピーエンドのように見えたが、虚な表情で咀嚼を続けるハナが映し出されている。
我に帰ったハナが目線を下に向けると、そこには解剖学に載っていた解剖図のように美しい裸体、そして皮膚を失い内臓を剥き出しにして亡くなっているアラニヤの姿だった。
結末考察:ハナに何が起きたのか?
海外でもエンディングにはハナの食欲と殺人欲求が爆発しただけ派とバーサの悪霊が除霊されずに残っていた派に分かれている。エンディングの象徴的なハナの咀嚼シーンの表情は普通にハンバーグでも食べているのかな?程度の穏やかさすら感じられる表情で、バーサに取り憑かれていた時に見られた痙攣の兆候が、この瞬間には見られないという点だ。
つまりこの凶行は、霊に操られた末の行動ではなく、ハナ自身の意思、あるいはハナの人格そのものがすでに書き換えられてしまった結果である可能性を強く示唆しているという意見が一番賛成票を得ているように見える。薬を摂取するのをやめていたとしても、一度人間の血と肉の味を覚えてしまった衝動は、もはや通常の食事では満たされなくなっていた——そう解釈できる幕引きになっている。が、個人的には少し違和感があったので思いつきを整理してみた。
ハナは悪霊に取り憑かれたのではなく、餓鬼になってしまった。これが正解のように感じる。
この様子は日系人であるハナたちの根底にある仏教を紐解くと少しだけ腑に落ちるのではないかと思った。
仏教において満たされない食事といえば「餓鬼」である。「餓鬼(がき)」とは、仏教の「餓鬼道(がきどう)」という世界に落ち、常に激しい飢えと渇きに苦しむ亡者のことで、大人や子供関係なく生前に強欲で嫉妬深く、物惜しみをした報いで、お腹は膨れ上がっているのに喉は針のように細く、食べ物や飲み物を手に取ると火に変わってしまうため決して満たされることはないという存在だ。
現在、餓鬼という言葉は食だけではなく”我欲のために貪る醜い相手や存在”を餓鬼と比喩することがある。今回のハナも食欲だけではなく美や肉欲への衝動はまさに餓鬼であり、原料となった肥満男性バーサさんも生前欲の限りを尽くしたかのように醜く膨れ上がった姿も餓鬼の膨れたお腹そのものである。そしてこの世は常に満たされないようにSNSやメディアが操作を繰り返し洗脳させ、洗脳された人間たちは家畜のように思い込みに支配された満たされない日々を繰り返しているこの世こそが餓鬼道ではないか?そう思うとハナの衝動的な最後の行動は腑に落ちるのではないだろうか?ああ、彼女は餓鬼に堕ちたのだなと。こう考えるとこの映画の主人公がなぜ日系人なのかがわかって面白くないだろうか?思い込みだし思いつきだから気にしないで次を読んでほしい。
『サッカリン/Saccharine』作品情報
『サッカリン/Saccharine』の制作を手がけた監督と出演俳優、作品の基本情報について紹介する。
興行収入
本作はサンダンス映画祭でのワールドプレミアを経て、2026年5月22日にアメリカで限定劇場公開されると同時にShudderでの配信も始まった、インディーズ規模のホラー作品だ。大作映画のような興行収入の総額は公表されていないが、配給を手がけたIFC FilmsとShudderの組み合わせは、フェミニスト・ボディホラーの潮流に関心を持つ層に着実にリーチしている。ちなみに本作には、ハナの母親役として日本の女性芸人・笑福亭笑子が出演しており、日本の観客にとっても意外な繋がりのある一本だ。
ナタリー・エリカ・ジェームズ監督情報
日本とオーストラリアにルーツを持つ映画監督・脚本家。認知症を題材にしたホラー「レリック 遺物」(2020年)で国際的な評価を確立し、「ローズマリーの赤ちゃん」の前日譚となる「7A号室」(2024年)を手がけた後、本作で長編3作目を迎えた。批評家の間では、罪悪感や身体、家族というテーマを一貫して描いてきたこれまでの2作と合わせて、緩やかな三部作を完成させたと評されている。本作はベルリン国際映画祭のテディ賞(最優秀長編映画部門)にもノミネートされた。
ハナ役「ミドリ・フランシス」情報

ミドリ・フランシス(Midori Francis)は、1994年生まれ、アメリカ・ニュージャージー州出身の日系アメリカ人女優。日本人のルーツを持つ父親と、アイルランド・イタリア系の母親の間に生まれた。彼女の「ミドリ」という名前は、日本の祖母から受け継いだものである。幼少期は、日本語を話す日本の祖父母と、アメリカの農場を営むもう一人の祖母という、全く異なる2つの豊かな文化に触れて育った。父親は大学の副学長を務める教育者である。
舞台出身の実力派で、現在は海外ドラマや映画で大活躍しています。特に有名な出演作は、大ヒット医療ドラマ『グレイズ・アナトミー』の研修医ミカ・ヤスダ役や、Netflix映画『パリピ的アフターライフの始め方』の親友リサ役、そのほか、人気コメディドラマ『ザ・セックス・ライブズ・オブ・カレッジ・ガールズ』や映画『グッド・ボーイズ』にもメインキャストとして出演。
本作では、過食衝動と体型へのコンプレックスを抱えながら、禁断のダイエットに手を出していく主人公ハナを演じ、批評家から高い評価を受けている。なお、舞台はオーストラリアであるにもかかわらず、フランシスは終始アメリカ英語のアクセントで演技しており、この点に言及する批評家も見られた。
アラニヤ役「マデリン・マデン」情報
オーストラリア先住民族の血を引く女優。Amazonの人気ファンタジードラマ「ホイール・オブ・タイム」への出演で知られる。本作では、ハナが想いを寄せるジムのトレーナー、アラニヤを演じている。
なぜ笑福亭笑子(小野綾子)がキャスティングされたのか?
笑福亭笑子さん(本名:小野綾子)は、2004年に笑福亭鶴笑に弟子入りした上方落語家で、「海外を拠点に活動する唯一の女性落語家」という異色の経歴の持ち主。ロンドンでの4年間の修行を経て、2012年からはメルボルンを拠点に、英語落語や腹話術落語で世界を回っている。
俳優としての活動にも力を入れていて、リー・ストラスバーグのメソッド演技法を3年間学んでいるという記録がある。2016年には「オーストラリアズ・ゴット・タレント」で準決勝に進出するなど、現地メディアへの露出も多い。
『サッカリン/Saccharine』の撮影は、Wikipediaによればメルボルン一帯(Docklands Studios Melbourne、ラトローブ大学、ブランズウィック、ボーマリスなど)で行われている。笑子さんもメルボルン在住かつメソッド演技のトレーニングを積んだ俳優という条件がぴったり重なるので、地元メルボルンでのキャスティングを通じて起用された可能性が高いと見ている。オーストラリアが舞台の日系人という設定から笑福亭笑子さんの登場には全く違和感がなく、彼女の存在はハナのメンタルを保つためにも必要不可欠な重要な配役で、この後に起こる様々な現象が日本人にとっては馴染み深い仏教が関係しているのでは?という考察が生まれるきっかけを作った人でもある。(私の思い込みもある)
海外の感想評価まとめ
本作は海外でどのような評価を受けているのか。Rotten Tomatoesでは批評家支持率69%、Metacriticでは「賛否両論」の水準となる60点を記録しており、批評家の評価は総じて好意的だ。「テーマを詰め込みすぎている」という指摘が繰り返される一方、主演ミドリ・フランシスの演技と、グロテスクな特殊効果については高い評価で一致している。なぜこの評価になったのか、海外レビュアーたちの声を見ていこう。
IMDb(総合評価:6.6/10)
①「Helpful」投票数トップのレビュアーSteve_Ramsey(6/10)は、本作を『ザ・サブスタンス』のようなグロテスクなホラーとも、『アグリー・ステップシスター』のような切ないボディホラーとも違う、独特の立ち位置の作品だと分析している。凸面の反射にしか映らない幽霊という設定を評価しつつ、ハナの両親をめぐるサブプロットが本筋から浮いてしまっている点や、上映時間の長さゆえに終盤で興味を失いかけたと率直に綴っている。
②ruthmyermom(5/10)は、映像や世界観の作り込みには丁寧さを感じたものの、感情面で物語に入り込み切れなかったと振り返っている。ペース配分にムラがあり、大きな見せ場のいくつかが狙ったほどの説得力を持てていなかったと分析しつつ、鑑賞する価値のある想像力とアンビションは十分にあったと結んでいる。
③xjjcnghm(5/10)は、本作が重要な何かを語ろうとしているように見えながらも、その熱量が奇妙なトーンと不安定な語り口の中に埋もれてしまっていると指摘している。ホラー、風刺、ダークコメディの間を行き来する構成が必ずしも噛み合っておらず、本来衝撃的であるべき場面が意図せず滑稽に映ってしまう瞬間があったと分析している。
④SoumikBanerjee1996(5/10)は多くを語らず、「アイデアの野心は買うが、もっと精緻な実行が必要だった」と一言で本作を評している。
Rotten Tomatoes(批評家:69% / 観客:スコア未算出)
①RogerEbert.comのトムリス・ラフリーは、主演ミドリ・フランシスの演技について、脚本の粗さをものともしないほどの説得力があると高く評価している。
②The Hollywood Reporterは、フランシスの主演としての存在感の揺るぎなさこそが、脚本の粗い部分を大きな欠点に感じさせない要因になっていると評している。
③IndieWireは、監督ジェームズが本作にあらゆるアイデアやテーマ、グロテスクな見せ場を詰め込もうとする意欲は認めつつ、その熱意ゆえに物語の核心となる部分を見失いがちになっていると分析している。
④一般観客からは、「ジリアン・マイケルズがスティーヴン・キングの『痩せ地獄』を監督したような映画で、優れた恐怖演出があってもこの後味の悪さは拭えない」という手厳しい声がある一方、「ボディホラーと体型基準への風刺を絶妙に配合した一本。最も独創的な一杯とは言えないが、記憶に残るだけの不気味さは十分にある」と評価する声も見られた。
⑤別の観客は、本作を「オゼンピック時代の肥満とグロテスクさを扱ったボディホラー」だと端的に表現し、テーマの点では同時期の作品群と共鳴する部分があると評している。
⑥肥満や体重の問題に悩んだ経験がある観客からは、「社会が肥満の人々をどう扱っているかを直視させられる、興味深いが辛い鑑賞体験だった」という声も見られた。
Metacritic(総合評価:60/100)
①Vague Visagesは、幽霊バーサが凸面の鏡やケトル、スプーンの表面にしか映らないという設定について、CGに頼りすぎることなく神経を逆撫でするような映像を作り出せていると高く評価している。
②Knockout Horrorは、監督ジェームズの序盤の演出力を高く評価しつつ、終盤にかけて突如キャンプで滑稽な方向に舵を切る展開が唐突に感じられ、観客の評価を二分するだろうと分析している。もっと整理されていれば傑作になり得たはずだ、という惜しむ声だ。
③High On Filmsは、本作に詰め込まれた数々のアイデアやトラウマの描写が、互いの居場所を奪い合うように混在してしまい、一つ一つの鋭さが失われていると厳しく評している。
④一般観客からは、「本当にめちゃくちゃで、グロくて、変で、そしてセクシーだった。大好き」というカジュアルながら熱のこもった称賛の声も見られる。
⑤別の観客は、本作を「レイ」「フラットライナーズ」「シンナー」と「ジキル博士とハイド氏」を掛け合わせたような作品だと表現し、要素の組み合わせ自体は評価している。
⑥一方で、「上映時間が長すぎて、いくつかのサブプロットが物語を前に進める役割を果たせていない」と、構成面での課題を指摘する声も一定数見られた。
批評家レビュー
海外批評家の詳細な評価を見ていこう。
Variety 痩身時代への鋭い一撃
(無記名レビュー)「痩身薬の時代における身体イメージの恐怖を、生々しい形で描き出した一本だ」
Varietyのレビューは、GLP-1系の痩身薬が社会現象となっている今のタイミングで、本作が持つ社会的な鋭さを高く評価している。ダイエット文化そのものを怪奇現象に転換するという着想の強さと、それを支えるグロテスクな特殊効果の完成度が、単なる便乗企画ではない説得力を生み出していると分析している。
評価点 現代の痩身薬ブームというタイムリーな社会現象を、怪奇現象として鋭く転換した着想の強さ
批判点 (本人が明確な批判点を挙げていないため割愛)
Film Freak Central 三部作としての完成
(無記名レビュー)「これは霧であり、私たちを焼き尽くす炎そのものだ」
このレビューは、本作を監督ナタリー・エリカ・ジェームズの過去2作と地続きの、緩やかな三部作の完結編として位置づけている。認知症の母を見失う娘の罪悪感を描いた「レリック 遺物」、そして「7A号室」に続く系譜として本作を読み解き、いずれの作品にも共通する「自分ではどうにもならない身体的な変容への恐怖」というテーマの深化を評価している。
評価点 過去2作と共鳴する「制御できない身体的変容への恐怖」というテーマの一貫性と深化
批判点 (本人が明確な批判点を挙げていないため割愛)
(Film Freak Central – Saccharine (2026))
RogerEbert.com 演技力で支えた一本
トムリス・ラフリー氏「フランシスの演技は、脚本の粗さをものともしないほどの説得力がある」
ラフリーは、本作が抱える脚本上の粗さを認めながらも、主演ミドリ・フランシスの演技力がそれを補って余りあると評価している。過食衝動と自己嫌悪という繊細な感情を、決して過剰に演技過多にならない範囲で体現し、観客がハナというキャラクターに寄り添い続けられる作りになっている点を高く評価している。
評価点 脚本の粗さを補って余りある、主演ミドリ・フランシスの説得力ある演技
批判点 (本人が明確な批判点を挙げていないため割愛、脚本面の粗さについては言及がある)
(RogerEbert.com – Saccharine review)
Knockout Horror 惜しい着地点
(無記名レビュー)「トリミングして引き締めていれば、これは傑作になり得たはずだ」
このレビューは、監督ジェームズの序盤の演出力を高く評価しつつ、終盤にかけて物語が「レリック」で見せたような重厚な語り口から一転、キャンプで滑稽な方向へと舵を切ってしまう点を大きな弱点として指摘している。この唐突なトーンの変化によって、観客の評価が真っ二つに分かれるだろうと分析し、着想の良さに実行が追いついていない、惜しい一本だと結論づけている。
評価点 体型や摂食障害というテーマを、当事者への敬意を保ちながら描いた着眼点の誠実さ
批判点 終盤で重厚な語り口から一転してキャンプで滑稽な方向に舵を切ってしまう、トーンの一貫性のなさ
(Knockout Horror – Saccharine (2026) Review)
個人的な感想評価「非常におすすめ」
サブスタンスはババアのグロホラーで気味が悪くて見応えの無い作品だった。
この作品は非常に面白い。脚本の粗、無駄に長い上映時間、割と無意味な両親の存在などはあるが、遺灰を口にしたら最高のモテ女になったけど超常現象に悩まされちゃったというシンプルな展開を美しい映像、美しい女性、美しくもグロテスクな肉の描写、彼女の脳内を象徴するビジュアルエフェクトのハイセンスさ、どれもが瑣末なことだと感じるほどに楽しめた。
展開が早く、痩せれるなら飲むわ、とヒョイっと飲み、原料がわかったらさっさと自作して研究医という立場を利用して自身で人体実験&経過観察を始め、速攻違和感や超常現象が起きても本当に呪われているのか?とりつかれているのか?幻覚か?気のせいか?なぜ見えるのか?どうしたら見えるのか?など試行錯誤を繰り返す研究医の視点での展開と頭の回転は見てて爽快で飽きさせない。なのに私生活になると暴飲暴食を止めれない美に洗脳されたアホな現代っ子で嫉妬や欲望にまみれた生活をしていたり。
編集も見事で私生活では常に人の目を気にしてその瞬間にフラッシュバックする映像も意味がなさそうで象徴的でわかりやすく、人の感情や脳内を見事に映像化して伝えてくれるからとにかく楽しく感情移入がめちゃくちゃしやすいのだ。
これは面白い。最後のエンディングでは「そう来たか」と震えたし、終わった後にredditでエンディング考察を読み漁って「あ、餓鬼か」と腑に落ちた時の心地よさも相まってこの映画はホラー好きな友人にはぜひお勧めしたいと感じた。
海外の評価を見渡していて一番印象的だったのは、結末でハナの目に「憑依の兆候」が見られないという、あの一瞬の細部だ。多くの批評家がテーマの詰め込みすぎを指摘しているが、この結末の作り方そのものは、実は本作の一番鋭い部分だったのではないかと思う。バーサの霊が完全な「他者からの侵略」であるなら、それはまだ救いのある話だった。しかし目の痙攣が消えているということは、もはやこれはハナ自身の欲望であり、彼女はとうに幽霊のせいにできる段階を通り越してしまっている、ということを意味する。体型への強迫観念や恥という感情は、最初は外から押し付けられたものであっても、いずれ本人がそれを内面化し、自分自身の一部として抱え込んでしまう――そうした恐ろしさを、この一つのディテールだけで語り切っている点に、静かな凄みを感じた。
まとめ
今回は日本未公開の話題作『サッカリン/Saccharine』について、結末までのネタバレとあらすじ、そして海外での評価をまとめて紹介してきた。『レリック 遺物』のナタリー・エリカ・ジェームズ監督が手がけた本作は、GLP-1系痩身薬が社会現象となっている今のタイミングで公開され、Rotten Tomatoesで批評家支持率69%、Metacriticで60点という、賛否両論ながらも総じて好意的な評価を獲得した。主演ミドリ・フランシスの演技力と、体型・摂食障害というテーマへの誠実な向き合い方を評価する声が多い一方、テーマを詰め込みすぎた構成や、終盤のトーンの唐突な変化を課題として挙げる声も根強い。ベルリン国際映画祭のテディ賞にもノミネートされた本作が、日本でどのような形で紹介されるのか、今後の動向にも注目したい。
- 映画『サッカリン/Saccharine』あらすじ結末ネタバレと海外の感想評価まとめ
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