
「雰囲気と実存的恐怖を重視し、忍耐強いホラーアプローチが知的な戦慄をもたらす」2025年1月3日に全米で公開された映画「The Damned(2025)」のあらすじ結末までネタバレ解説と海外の感想評価をまとめて紹介。
アイスランド発のフォーク・ホラーとして注目を集めた映画『The Damned(2025)』が2025年1月3日(金)より全米の劇場で公開された。映画『The Damned(2025)』は英国、アイスランド、アイルランド、ベルギー、アメリカの国際共同制作で制作されたインディペンデント映画で、2024年6月6日にトライベッカ映画祭でプレミア上映された作品だ。
監督はアイスランド出身のトルドゥル・パルソンが務め、ジェイミー・ハニガンが脚本を担当した。主人公の若い未亡人エヴァを『アサシネーション・ネーション』(2018) のオデッサ・ヤングが演じ、船員ダニエルを『ピーキー・ブラインダーズ』のジョー・コールが演じた。その他にも『ゲーム・オブ・スローンズ』のロリー・マッキャン、シボーン・フィネランらが出演している。
今回は、19世紀アイスランドの厳しい冬を舞台にした道徳的ジレンマとフォーク・ホラーを描いた映画『The Damned(2025)』のラストについて解説&考察していこう。**以下の内容は本編の結末のネタバレを含むため、必ず劇場で鑑賞してから読んでいただきたい。**また、暴力的な描写や心理的恐怖に関する解説も含むため、注意していただきたい。
『The Damned(2025)』あらすじ結末ネタバレ
ここから先は『The Damned(2025)』の核心である重大なネタバレを含む。
極寒の漁業基地
1860年代の19世紀、アイスランドの北極海湾にある孤立した漁業基地で、若い未亡人エヴァ(オデッサ・ヤング)は亡き夫マグナスから引き継いだ漁業基地を運営している。しかしあまりに奥地にある港のため、最寄りの集落まで3日間の山越えしなければならず、冬の間は完全に孤立状態となってしまう。
エヴァ、迷信深い基地の管理人ヘルガ(シボーン・フィネラン)、船員たちラグナル(舵手)、ダニエル、ハーコン、ヨナス、スクーリ、アロンらは極寒の冬を乗り切るため少しでも食料確保をしなければならないが、今年は漁獲量が減っているため釣り餌を食べて飢えをしのいでいる状況だった。
ある朝、「ザ・ティース」(歯)と呼ばれる尖った岩礁でよその捕鯨船が沈没するのを目撃する。この「ザ・ティース」は、かつてエヴァの夫マグナスの命を奪った岩礁でもあるため、皆この岩礁の危険性は良くわかっている。
遭難船から助けを求める声が聞こえてくるが、エヴァと船員たちは自身の食料はもはや数日分しか残っておらず、遭難者を助けても、全員が餓死する可能性が高いため舵手のラグナルは見捨てる方針を主張し、ダニエル(ジョー・コール)は人道的に救助すべきだと主張する。
道徳的ジレンマと罪悪感
最終的にエヴァたちは、遭難者を見殺しにする困難な決断を下す。しかし、この決断は船員たちの間に罪悪感と内部分裂をもたらすことになる。特にダニエルは、この非人道的な判断に強い抵抗を示し続けエヴァや同意した船員たち間に緊張が生じてしまう。
数日後、食料不足に耐えかねた一部の船員たちが遭難船に物資を探しに向かう。しかし、そこで彼らが発見したのは、奇妙な印章が刻まれた棺と中に眠る腐敗した死体だった。
遭難船から戻った船員たちの間で、幻覚や超自然的な現象を体験し始める者が現れる。迷信深いヘルガは北欧民話の「ドラウガー」(不死の亡霊)が復讐のために死者たちが戻ってくると警告する。
食糧難と厳冬の極限状態の中、船員たちの精神状態は悪化の一途をたどり、船員同士で疑心暗鬼と恐怖が支配し、一人、また一人と船員たちが不可解な死を遂げ始め、生存者たちは自分たちが遭難者を見殺しにしたことで呪いにかけられたと信じるようになる。
結末ネタバレ:真実の暴露
物語の後半、エヴァは遭難船の最後の生存者である外国人と遭遇することになるが、男性は彼女に理解できない言語で話しかけ、懐中時計をエヴァに差し出す。
しかし、すでに仲間の大半を失い極度の恐怖と疑心暗鬼に支配されたエヴァは、この男性こそがドラウガーだと思い込み銃で殺害し、ドラウガーの呪いを断ち切るために大切な基地に火を放ち炎上させた後、雪原に1人立ち尽く。
実際には超自然的な存在など存在せず、船員たちが体験した「ドラウガー」の出現は、罪悪感、恐怖、孤立感、栄養失調による集団幻覚だったことが判明して物語は終了する。
考察:
エヴァが最後に殺害した男性は、本当に遭難船生存者で、彼女たちが最初に救うべきだった人間だった。外国人男性が懐から震える手でエヴァに懐中時計を差し出したのは、自分の人間性を証明し、コミュニケーションを取ろうとしていたのだ。
しかし、エヴァの最終的な行為は、超自然的な呪いに対する勝利ではなく、恐怖に駆られた無実の人間の殺害という殺人行為であった。
映画は、エヴァが燃え盛る基地から逃れ、雪原に一人立ち尽くすシーンで終わるが、彼女は物理的には生き延びたが、自らの行為により精神的に「呪われた」状態となってしまう。真のホラーは超自然的な存在ではなく、極限状況下で人間が犯す過ちと、その後に背負う罪悪感であることが明らかにする作品だったのだ。
『The Damned(2025)』作品情報
『The Damned(2025)』のネタバレを読んで興味を持った読者のために、このアイスランド発フォーク・ホラーの詳細を紹介する。19世紀の極寒環境を舞台にした道徳的ジレンマと心理的恐怖を巧妙に組み合わせた作品で、2025年年明け第1週のホラー映画としては異例の高評価を獲得している。国際共同制作により制作され、アイスランドの美しくも過酷な自然環境を効果的に活用した撮影が話題となった。
興行収入は着実な黒字
2025年1月3日の全米限定公開から、初週末に732劇場で769,721ドルを記録した。限定公開ながら着実な成績を収め、批評家からの高評価も相まって口コミで話題が広がっている。1月20日にはVODでも配信開始され、より多くの観客にアクセス可能となった。
トルドゥル・パルソン監督紹介
トルドゥル・パルソン監督はアイスランド出身の映像作家で、Netflix犯罪シリーズ『ヴァルハラ・マーダーズ』(2019-2020) を手がけたことで知られている。『The Damned(2025)』は彼の劇場映画監督デビュー作となる。
アイスランドの厳しい自然環境で育った監督ならではの視点で、母国の風景を不気味で予感に満ちたものとして描き出すことに成功している。ロバート・エガースの『ザ・ウィッチ』に影響を受けたと語っており、雰囲気重視のフォーク・ホラー演出で高く評価されている。
エヴァ役「オデッサ・ヤング」紹介
オデッサ・ヤング(27歳)はオーストラリア出身の女優で、『アサシネーション・ネーション』(2018)、『しあわせの絵の具 愛を描く人 モード・ルイス』(2016) などで注目を集めた。『The Damned(2025)』では19世紀の強い女性リーダーとしてのエヴァを演じ、男性ばかりの船員たちを率いる説得力のある演技を見せている。批評家からは「抑制の効いた素晴らしい演技」「静かな強さと現実的な脆弱性を微細な表現で見事に伝えている」と絶賛されており、彼女のキャリアにおける代表作のひとつとなった。
ダニエル役「ジョー・コール」紹介
ジョー・コール(35歳)はイギリス出身の俳優で、BBCドラマ『ピーキー・ブラインダーズ』(2013-2022) のジョン・シェルビー役で広く知られている。
その他にも『ブラック・ミラー』『ガンパウダー』『One of These Days』(2020) などに出演し、幅広い役柄をこなす実力派俳優として評価されている。『The Damned(2025)』では道徳的葛藤に苦しむ船員ダニエルを演じ、エヴァとの複雑な関係を丁寧に描いている。批評家からは「地に足の着いた演技でトラウマが人間に与える影響を繊細に表現している」と評価されている。
海外の感想評価まとめ
『The Damned(2025)』は海外で驚異的な批評家評価を獲得している。
Rotten Tomatoesでは91%という高い支持率を記録し、「2025年1月公開のホラー映画としては異例の高品質」「見落とされがちな傑作フォーク・ホラー」として注目されている。特に雰囲気作りと心理的恐怖の構築、そしてオデッサ・ヤングの演技力が高く評価されている。一方で「スローバーン・ホラーのため退屈に感じる観客もいる」「結末が駆け足すぎる」という批判もあり、観客の好みが分かれる作品となっている。
IMDb(総合評価:5.7/10)
①私はこの映画を2025年のホラー映画の素晴らしいスタートとして推薦できる。独特で魅力的な恐怖プロットを持つユニークな作品だ。
②私が劇場で見たアイスランド映画だが、雰囲気と状況の絶望感が衣装、設定、背景で完璧に確立されている。
③私は心理的ホラー映画として、これが専門的に作られ、アイスランドの漁村を背景にした強い女性主人公が特徴の作品だと思う。
④私はスローバーンの雰囲気重視ホラーとして、『ザ・フォグ』と『ザ・ウィッチ』を合わせたような作品だが、その期待ほどクールではなかった。
Rotten Tomatoes(批評家:91% / 観客:73%)
①私はこの映画の忍耐強いホラーアプローチが知的な戦慄で報われると確信している。雰囲気と実存的恐怖を重視した作品だ。
②私が見る限り、この映画は疑心暗鬼、雰囲気作り、そして忘れられない風景によって推進されている。ヤングは有能なファイナルガールだ。
③私はこの作品がムードに満ちた道徳的寓話であり、他の人間を犠牲にして生き残ることの本質的な不快さについての倫理的ジレンマを描いていると思う。
Metacritic(総合評価:64/100)
①私はこの映画が美しくも致命的な風景、ムーディーな照明、不気味なスコアと相まって、効果的に不安をかき立てる心理的ホラーになっていると思う。
②私の印象では、この映画はスパースで鋭く観察された戦慄作品であり、暗闇の中に探求すべき多くのものがある。
③私にとってこの映画は、インディー路線を貫きながらジャンルファンに推薦できる十分な恐怖を生み出す、見落とされがちな逸品のように感じられる。
批評家レビュー
海外の専門批評家による『The Damned(2025)』の詳細な評価を紹介する。フォーク・ホラーというジャンルの特性と、19世紀アイスランドという特殊な舞台設定について、雰囲気作りと心理的恐怖の構築手法が高く評価されている。特に初監督作品としてのトルドゥル・パルソンの演出力と、極限状況における人間の道徳的判断を描いた脚本の質が注目されている。
Roger Ebert 3.5/4
グレン・ケニー氏「通常、年明け第1週の映画は最悪のものが多い。しかし、これは違う」
アイスランドを訪れたことがあるなら、その信じられないような景観の美しさと極端さを認識するだろう。つまり、あそこはめちゃくちゃ寒いのだ。もちろん、人は育った環境に順応するものだが、まず第一にアイスランド生まれ育ちの脚本・監督トルドゥル・パルソンが、19世紀を舞台とした『The Damned』の物語に登場する新参者たちにとって必要なように、母国を奇妙で不吉に見せることに成功したことを評価したい。最後に、死者の呪いを断ち切るために必要だと言われた火がエヴァに現れるとき、それは真にぞっとするようなひねりに奉仕している。
評価点
卓越した雰囲気作りと最終的なひねりの衝撃度
批判点
一部の観客には展開が遅すぎる可能性がある
Combustible Celluloid 3.5/4
ジェフリー・M・アンダーソン氏「凍てつく、荒涼とした北極の冬が映画で最も重要な要素」
凍てつく、荒涼とした北極の冬が映画で最も重要な要素であり、すべてがうまく機能する理由だ。美しくも致命的な風景、ムーディーな照明、不気味なスコアと相まって、『The Damned』は生存をかけた戦いに直面したときに我々がなり得る怪物を探求する、効果的に不安をかき立てる心理的ホラーとなっている。パルソンの小さな漁師コミュニティの幽霊的な描写は、忍び寄る恐怖に浸されている。
評価点
環境を効果的に活用した雰囲気作りと心理的恐怖の構築
批判点
キャラクター描写がやや浅い部分がある
(Combustible Celluloid – The Damned)
Houston Press 3/5
ピート・フォンダー・ハール氏「ギミックとジャンプスケアが主流ホラーの常識となった今、19世紀の不気味さはまさに必要なもの」
『The Damned』は、そのゆったりとしたペースと定番の「何かが飛び出す」クリシェで観客の忍耐を試すかもしれない。パルソンは行動よりも雰囲気を重視しているが、その雰囲気の中でキャラクターたちにやることをあまり与えていない。しかし、ギミックとジャンプスケアが主流ホラーの常識となった今、少しの19世紀の不気味さはまさに血を流す者が求めているものだ。
評価点
古典的なホラー手法への回帰と雰囲気重視の演出
批判点
キャラクターの行動に十分な動機付けが不足
Culture Crypt 2.5/4
マット・フィニー氏「効果的に不気味な努力だが、最終的には記憶に残るには小さすぎる」
起こることは物語にとって理にかなっているが、『The Damned』は体験全体を一つの小さな瞬間への大きな積み上げに遡及的に減少させる不満足な説明で終わる。ミニマリストフィクションとして構成されているため、『The Damned』は短い旅のためのガソリンタンクが満タンでないのだ。ゆっくりと止まるまでのろのろと進むことで、この民話寓話は最終的には記憶に残るには小さすぎるという感覚を植え付け、それは強い努力で始まった効果的に不気味な試みにとって残念な結論だ。
評価点
優れた雰囲気作りと視覚的な美しさ
批判点
結末が物語全体の価値を損なっている
個人的な感想評価:40点退屈
予告の方が面白かったやつ。
過酷な冬の漁港で座礁した船員を助けるか田舎の議論を行い、最終的に自分たちが生き残るために見捨てることにする。わかってはいるが申し訳ないという罪悪感が解消されるまでもなく食糧難と厳しい冬に精神的に追い込まれていき疑心暗鬼になり互いに殺し合う話。
これを怪奇現象を絡めて彼らがみたのは幻覚か?本物か?と視聴者に訴えかけていく緊張感のある物語になりそうだったのだが、展開が遅く、恐怖シーン、長い会話、恐怖シーン、ダラダラと景色、長い会話、とテンポを阻害する余計な情報を入れてくるため最後まであくびが止まらない。
海外レビューで特に評価されていたのが、超自然的ホラーかと思わせておいて、最終的には人間の心理的脆弱性こそが真の恐怖であるという構造の巧妙さで、オデッサ・ヤングの抑制の効いた演技は、19世紀の女性リーダーとしての強さと人間的な脆さを絶妙なバランスで表現している。ジョー・コールをはじめとする男性キャストも、極限状況下での複雑な感情を説得力を持って演じていたと演者に対する評価は高いようだ。
一方で、スローバーン・ホラーとしてのペース配分には課題もある。中盤でのキャラクター描写がやや浅く、終盤の展開が駆け足に感じられる部分は確かに存在する。
でも退屈だったなぁと。
まとめ
この記事では映画『The Damned(2025)』の完全ネタバレ解説から海外での感想評価まで詳しく紹介した。19世紀アイスランドの極寒環境を舞台にした道徳的ジレンマとフォーク・ホラーを融合させた、トルドゥル・パルソン監督の劇場映画デビュー作である。
期待度の面では、1月第1週公開という通常は低予算B級ホラーが配置される時期にもかかわらず、トライベッカ映画祭での好評を受けて注目を集めた。実際の内容は期待を大きく上回り、Rotten Tomatoesで91%という異例の高評価を獲得している。特にオデッサ・ヤングの主演女優としての演技力と、アイスランドの雄大で過酷な自然環境を活用した映像美が高く評価されている。
この映画は現代ホラー映画の傾向に対するアンチテーゼとしても注目を集めた。ジャンプスケアやゴア表現に頼らず、雰囲気と心理的恐怖で観客を魅了するクラシカルなアプローチが、「19世紀の不気味さはまさに今求められているもの」として海外批評家から絶賛されている。海外では「見落とされがちな傑作フォーク・ホラー」「2025年最初の必見ホラー」として受け止められており、スローバーン・ホラーを好む観客にとっては間違いなく見るべき作品となっている。
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