
『SISU/シス2 Road to Revenge』は、2025年9月にFantastic Festで世界初演、11月に米国劇場公開された戦争アクション映画の続編である。本作は、前作『Sisu』(2022年)から約1年後の物語を舞台に、伝説の不死身の戦士アアタミ・コルピが、殺害された家族への想いを込めた家屋の再建のため、敵兵たちの容赦ない襲撃をかいくぐりながら、その家を故郷へ運び込むというストーリーを展開させる。
フィンランド映画史上最高額の予算(約1,100万ユーロ)を投じた本作は、Jalmari Helander監督による極限のアクション表現と、Jorma Tommila による全編沈黙の圧倒的な身体表現により、単なる「続編」の枠を超えた映像的傑作へと昇華されている。海外での評価は極めて高く、Rotten Tomatoes批評家スコア94%、IMDb 7.3/10、Metacritic 76/100を獲得。批評家層からも観客層からも、前作を大きく上回る規模感、創意工夫、そして感情的な深さが高く評価されている。
本記事では、themoviespoiler.com の詳細なネタバレ情報に基づく完全なプロット解説、国際的な映画批評機関(IMDb、Rotten Tomatoes、Metacritic)における上位レビューの要約、そして映画批評の最高峰(Roger Ebert、Variety、Entertainment Weekly)による詳細な批評家レビューをまとめている。日本未公開の本作について、海外でいかなる評価を獲得し、いかなる視点から批判・称賛されているのかを、映画通向けの知的かつ品格ある日本語で徹底解説する。
もくじ
SISU/シス2 Road to Revenge 物語結末ネタバレ
第一章:故郷
第二次世界大戦終結後、フィンランドはカレリア地方をソビエト連邦に割譲することを余儀なくされていた。
この決定により多くのフィンランド人が故郷を失い、フィンランド側の境界へと追いやられる悲ことになる。伝説の男アアタミ・コルピは愛犬を連れて旅行証明書を手にソビエト領土へ越境してかつて妻と2人の息子たちと暮らした家の跡地へ向かっていた。懐かしい我が家に到着したコルピは、思い出に浸りながら家の中を歩いて回り、理不尽な戦争で奪われた家族の死を嘆き、何よりその戦争を起こしたソビエト連邦に対し憎しみを爆発させるのだった。
コルピはこの家を解体して木材を集めてトラックに積み込み、不要な資材や家具は全て燃やして思い出を焼却するが、彼の顔には怒りと悲しみが滲み出ていた。そしてコルピはフィンランドへ戻って家を新たに建てるつもりで準備を始める。
シベリアの獄舎でソビエト赤軍の指揮官イーゴリ・ドラガノフを解放したKGB将校が現れ、かつてドラガノフがコルピの家族を殺害したことで、コルピを「コシチェイ」という伝説の殺人鬼へと変えソビエト連邦に多大な被害を与えたこと、そこで改めてコルピの激怒を消す(殺害)ために再びドラガノフを釈放したと説明し、成功の暁には莫大な報酬を与えると約束
第二章:宿敵
コルぴが木材を満載したバスで帰路を急いでいるとコルピの前にドラガノフと配下の兵士たちが検問所を設置して待ち構えていた。大量の木材を見て火炎瓶で燃やすように指示するが、いち早く危険を察知したコルピは兵士を返り討ちにしてバスで逃亡。
車を止め待機しているとドラガノフ以外の兵士たちがバスを包囲するが、コルピ兵士たちを銃で皆殺しにした後、ドラガノフを見たコルピはドラガノフを認識できなかったのか、戦意のない老兵と判断してドラガノフの車のタイヤを撃ち抜くだけでその場を立ち去る。
生かされたのかは不明だが、残されたドラガノフは憤りバイク部隊を召集してコルピを追いかける。
第三章:破滅の機械
バイク集団がコルピに追いつくと、並走しながら故ルピを追い詰める。バイク兵は防弾マスクとベストにショットガンを装備しているため、コルピの銃弾をものともせず執拗に運転席のコルピを狙う。ついにバイク兵たちはコルピの頬を掠める負傷を負わせ、トラックに乗り込み殺そうとするが、冷静なコルピはブレーキを踏んで吹っ飛ばし、ウィンチを引っ掛けて斬首、バイクの車輪にグレネードを噛ませて打ち上げ花火、バイク兵が皆殺しにされ追いついたドラガノフがトラックの木材に火炎瓶を投げ込み燃やすが、怒ったコルピがバイク兵の遺体にグレネードを噛ませた遺体爆弾を投げ込まれて走行不能にさせられてしまう。しかしドラガノフは追撃の手を止めず「地獄を解き放て」と無線でさらに応援を呼び出すのだった。
コルピは途中でトラックを止めて木材の燃焼を止めて犬に水をあげて小休止する。(この時ほっぺたにできた傷跡を触り口から散弾を吐き出す)
第四章:迫り来るもの
次に投下された部隊は戦闘機だった。戦闘機2機がコルピのトラックを狙うがコルピのトラック捌きによって銃弾を全て避けるが、さすがに避けきれないと判断して森の近くの納屋に車を忍び込ませて隠れる。
しかし納屋ごと爆撃が開始されたため、慌てて森の中に逃げ込んだコルピは追いかけてきた飛行機を確認すると急ブレーキを踏んで飛行機の羽を叩きおり墜落させる。もう一機がコルピを機体ごと捨て身の攻撃をするが、コルピはトラックの留め具の一つを撃って外してブレーキを踏んで木材の一部をトラックの前面にジャンプ台のように設置させ、飛行機は木材のジャンプ台に沿って飛び去り墜落する。そのまま脱出しようとしたが、さらに背後から爆撃機が現れ、絨毯爆撃を行い、流石にコルピも避けきれずトラックごと海に落下てしまう。
海の中の運転席で目を覚ましたコルピは落下するトラックの積荷のベルトを解いて海底に木材を捨てるのを未然に防ぐも、流石に息が持たずコルピは気絶して海上に打ち上げられてしまい、一緒に生き延びた犬に慰められ海を漂うことになる。
海上に打ち上げられた木材で筏を作ったコルピが海を漂っていると、波打ち際に放置されていた戦車、そして軍の銃火器を見つける。
第五章:長距離射撃
コルピは波打ち際で戦車の修理と改造をして、国境沿いで待ち構えていたドラガノフ部隊の前に現れる。その戦車は破壊されていた運転席部分をコルピの木材で補強し歪な怪物の様相で、純粋なオイルを使っていないのか黒煙を撒き散らしながら突進を開始。
兵士たちの銃撃を物ともせず、突っ込んできた洗車は後部に設置していた爆発物を起爆する。すると兵士たちの目の前で戦車は空中に飛び一回転して兵士たちの背後に着地して無事にフィンランド側の国境にたどり着くのだった。
が、流石に満身創痍となったコルピをガラドノフが撃ち殺そうとするが、後から到着したKGB幹部たちに止めろと命令され、怒ったガラドノフはコルピを蹴飛ばして気絶させる。
第六章:復讐
コルピはシベリアへ向かう列車内で激しい拷問を受けていた。口を割らないコルピに対しドラガノフは自分がコルピの妻と幼い息子たちを殺害して「細切れにして野良犬に食わせた」とコルピを煽って楽しんでから立ち去る。
怒りが頂点に達したコルピはロープを固定していた金具を引き抜き、足に刺して隠していたナイフで兵士たちを殺していく。(誰がどう見ても梁に固定具を引き抜くよりもナイフで縄を切ったほうが良いと思うが)コルピは自分と兵士たちの血で髪を梳かしトレードマークのオールバックにして復讐の準備を整える。
コルピは最後尾の車両から幹部たちのいる先頭車両に向けて進んでいく。隣の車両は兵士たちの寝室で全員眠りこけていた。起こさないように歩くが起きてしまった兵士たちは静かにナイフで切り裂いていく。ありがたいことに途中の車両にコルピの木材が積まれていてコルピもにっこりする。
車両の上を歩けば最短距離じゃんと屋根を歩くが、排水パイプがぶち当たって歩哨兵で満載の車両に落下、結局コルピvs多勢のいつもの戦いが始まり、銃を乱射して兵士をぶっ殺し始めるのだった。異変に気づいたドラガノフは列車を切り離してさっさと先頭車両だけ残して逃亡する。だコルピは荷台にあった巨大なミサイルを発見する。
一方、ドラガノフが幹部たちのいる車両に戻って食事を開始するが、KGB将校だけを残して全員を殺害し将校から報酬の入ったケースを渡されると、将校も殺し満足そうにショットを飲み干すと、ケースを小脇に挟んで脱走を企てる。
その頃、コルピは車両に固定されたミサイルを点火して猛スピードでドラガノフの車両へ向かっていた。逃げようとしたドラガノフの目の前に着地したコルピは激しい格闘の末、コルピの方が死ぬほどボコボコにされて殺されかけるが、点火しっぱなしだったミサイルの固定器具を解除し、ミサイルがドラガノフに向かって突進し車両ごとドラガノフの頭部を破壊して大爆発する。
結末ネタバレ:最終章
シベリアとフィンランド国境を警備していたフィンランド兵たちの前に現れたのは木材を積んだ車両を運ぶコルピだった。国境警備兵はコルピのパスポートを確認すると、兵士は敬礼する。
後日、コルピは運んだ木材を使って新居を建てている最中だった。すると近隣住民が道具を持って現れたため、コルピも最初は警戒して身構えるが、リーダーらしき住民が「手伝わせてくれないか」と声をかけると、コルピは感謝の涙を流しながら無言の承諾をするシーンで物語は終了する。
エンドクレジットの中、涙を見届けた住民たちはすぐに新築の建築に取り掛かり、コルピは地域の人々と共に家の建築完成させて記念撮影をするのだった。
SISU/シス2 Road to Revenge 作品情報
『SISU/シス2 Road to Revenge』は2025年9月21日にFantastic Festで世界初演を迎えた後、11月21日に米国で劇場公開された本作は、Blumhouse Productionsが製作し、Universal配給による続編である。
フィンランド映画史上最高額の予算となる約1,100万ユーロを投じ、前作以上の激烈なアクション・シーンと感情的な深さを兼ね備えた逸品として完成している。
ヤルマリ・ヘランダー監督情報
ヤルマリ・ヘランダーは1976年7月21日、フィンランドのヘルシンキ生まれの映画監督・脚本家である。商業制作で活躍した後、2010年の『Rare Exports: A Christmas Tale』で国際的認知を得た。
その後、サミュエル・L・ジャクソン主演の2014年『Big Game』で、フィンランド映画史上最高額の予算(当時)8,500万ユーロを駆使し、英語圏向けの大型冒険映画製作に成功。フィンランド人として初めて、こうした国際的スケールの映画を実現させた先駆者である。2022年の『Sisu』はWWII終盤のラップランドを舞台とした無言の主人公が300人のナチス兵を相手にする極限のアクション映画として、国内外から高く評価された。本作『Road to Revenge』ではさらなる映像美と創意工夫を凝らしたアクション・シークエンスで、ジャンルの上限を押し広げる姿勢を示しており、映像表現の巨匠としての地位を確立している。
ヨルマ・トミラ:アアタミ・コルピ役俳優情報
ヨルマ・トミラは1959年生まれのフィンランドを代表する俳優である。1997年、映画『The Christmas Party』での演技でユッシ賞(フィンランド版アカデミー賞)最優秀主演男優賞を受賞。数十年に及ぶフィルモグラフィーの中でも、『Rare Exports: A Christmas Tale』(2010年)、『Big Game』(2014年)、そして『Sisu』(2022年)で、監督ヘランダーとのコンビを重ねてきた。『Sisu』での黙役のアアタミ・コルピ役は国際的な評価を得、シテス映画祭2022で最優秀主演男優賞を受賞。その圧倒的な身体表現と無言ながら豊かな感情表現により、ジョン・ウィック、ランボーといった伝説のアクション・ヒーローに比肩する存在として認識されるようになった。本作でもトミラは全編にわたって言葉を発することなく、次々と襲いかかる苦難の中で、家族への想いを背負った不屈の精神を表現し切る。彼の肉体は傷痕と血に覆われながら、映画を通じて人間の尊厳と愛する者への執念がいかに人を動かすかを雄弁に語り続ける。
スティーヴン・ラング:イーゴリ・ドラガノフ役俳優情報
スティーヴン・ラングは1952年7月11日生まれの米国を代表する舞台・映画俳優。ブロードウェイでの活動をキャリアの中心としながら、映画でも多くの作品に出演してきた。最も著名なのは2009年のジェームス・キャメロン監督『Avatar』での悪役コロネル・マイルス・クォーリッチで、これにより土星賞最優秀助演男優賞を受賞。その後のシリーズ作品でも同役を担当している。その他の代表作は『Gettysburg』(1993年、ジョージ・ピケット将軍役)、『Gods and Generals』(2003年、ストーンウォール・ジャクソン将軍役)、『Public Enemies』(2009年)、『Don’t Breathe』(2016年)『Mortal Engines』(2018年)など多岐にわたる。1992年にはブロードウェイの『The Speed of Darkness』でトニー賞にノミネートされ、舞台での実績も輝かしい。本作ではドラガノフというソビエト赤軍指揮官を演じ、コルピの妻と2人の幼い息子たちを殺害した過去を持つ、圧倒的な身体と冷徹な思考を兼ね備えた悪役として登場。ラングの持つ獰猾さと威圧感により、コルピの復讐の根拠となる真の敵として見事に機能し、ラスト・シークエンスでの対決は映画全体の感情的クライマックスとして機能する。
海外の感想評価まとめ
『SISU/シス2 Road to Revenge』は、2025年9月21日にFantastic Festで世界初演を迎えた後、11月21日に米国で劇場公開された。Rotten Tomatoesでは批評家の94%が肯定的評価を付与し、「Certified Fresh」の認定を受けた。Metacriticでは19人の批評家を基準に総合スコア76を獲得し、「概ね好評」という評価が確立している。IMDbでは7.3/10の高い評価を獲得しており、約5,400人の利用者投票が支持する。海外の映画愛好家および批評家層からは、前作を大きく上回る規模感と創意工夫、何度も笑わせつつ容赦ない暴力表現という独特なトーンが高く評価されている点が特筆される。
IMDb(総合評価:7.3/10)
①『Sisu: Road to Revenge』が『Evil Dead 2: Dead by Dawn』に『Evil Dead』がそうであるように、より大きく、より狂気に満ちている一方で、沈黙の主人公による圧倒的なアクション映画として、前作の成功を越える意欲作となっている。ジャルマリ・ヘランダーのアクション構成の技術は目覚ましく、ジョルマ・トミラの沈黙の演技は伝説的で、ジョージ・ミラーの『Mad Max: Fury Road』へのオマージュとも言えるシークエンスが存在する。このリムの各シーンはローニー・テューンズやバスター・キートンの喜劇的手法を応用しており、映画全体が純粋なアクション快感と感情的な深さを両立させている。
②作品はシンプルなプロット、荘厳な目的意識に支えられている。主人公が不死身であることが分かっているからこそ、映画は目的地というより、その途中の障害に焦点を当てる。各々の障害が存在的な脅威となり、フィンランドの伝説と歴史の挑戦として機能する仕掛けが秀逸である。トミラの身体が傷と血で覆われていくにつれ、映画は不可能を乗り越える人間の神話性を高めていき、深い満足感をもたらす。
③戦闘機、モーターサイクル、列車、戦車といった兵器の段階的エスカレーションは、このジャンルにおいて非常に珍しい上昇的構成を実現させている。各シークエンスがより大規模で荒唐無稽になっていきながらも、ヘランダーの自信に満ちた演出ゆえに、観客は物理法則の矛盾に気づかされない。トラックの積み荷で戦闘機を落とすシークエンスは物理的に不可能だが、その確信に満ちた表現力により信じさせられてしまう傑作である。
④本作には実力派の脇役俳優たちが加わり、リチャード・ブレイク(ロシア将軍役)は楽しさに満ちた演技を見せ、スティーヴン・ラングはほぼ主人公から映画を奪い去るほどの演技をしている。特にラングが自分の家族を殺害した時代を回想する独白シーンは素晴らしく、ラストの決闘に向けた緊張感を最高潮に高める。映画が既定の結末を知らせながらも、その過程における創意工夫と映像表現の楽しさでもって、観客を最後まで引き付けることに成功している傑作アクション映画である。
Rotten Tomatoes(批評家:94% / 観客:87%)
①映画批評コミュニティは『SISU: Road to Revenge』を「一貫性のある創意あふれたアクション映画」と総括し、前作の約束を果たすのみならず、その期待を遥かに上回る作品として評価している。Jalmari Helander監督は、暴力と喜劇的な荒唐無稽さをバランスよく配置し、大規模な続編が往々にして陥る新鮮さの喪失を見事に回避した。映像言語としてのルーニー・テューンズ的な無意識の楽しさと、サイレント喜劇の手法が全編を支配しており、各殺害シーンが創意工夫に満ちた芸術作品へと昇華されている。
②観客評価では87%が肯定的であり、特に第一作を愛した層からは「期待値を確実に上回った」という高い満足度が報告されている。本作の成功の鍵は、登場人物の感情的な動機を決してないがしろにせず、同時に極限の暴力と破壊のスペクタクルを思いっきり楽しむという、相反する二つの要素を統合させた点にあると分析されている。
③映画全体の評価は「前作は初期段階の傑作だったが、本作はそれを真っ向から超越する野心的な続編」というものに収斂しており、Helander監督の成長、Tommila俳優の肉体と感情の両面での深化、そしてLang俳優による完璧な悪役演技が相まって、アクション映画のジャンルにおける新たなベンチマークを打ち立てたと評価される。
Rotten Tomatoes – SISU: Road to Revenge
Metacritic(総合評価:76/100)
①19人の映画批評家による加重平均スコアは76で、「概ね好評」の評価区分に属している。本作の最大の強みとして指摘されるのは、イマジナティブなスタント・ワーク、現実的かつ創意工夫に満ちたアクション設計、そして映画全体を支配する不変の自信である。Dennis Harvey(Variety誌)は「本作が前作より新鮮さに欠けるのは当然だが、Helander監督のこの上なき破壊的メイヘムへの適性と推進力のあるペーシングで、前作ファンを十分に満足させる」と述べている。
②一部の批評家からは、特にアクション・シークエンスの段階的エスカレーションが「時に行き過ぎた誇張に感じる」という指摘も受けている。しかし、こうした指摘も、映画全体を支配する意図的な荒唐無稽さの表現として機能しており、むしろ映画の独自性を強化する要因になっているという分析が優勢である。
③Metacritcを含む国際的な批評基盤では、本作が単なる「続編」ではなく、アクション映画というジャンルそのものの可能性を拡張する「ジャンル作」として認識されている。従来のハリウッド的なスーパーヒーロー映画とは異なり、フィンランド的な価値観――家族への執念、失われたものの回復、コミュニティとのつながり――を貫通させながら、同時に人類の暴力性の極限を美的に表現する稀有な映画として位置付けられている。
Metacritic – SISU: Road to Revenge
批評家レビュー
Roger Ebert:「絶対的傑作」
ブライアン・タレリコ「『Sisu: Road to Revenge』は『Evil Dead 2: Dead by Dawn』のように、より大胆で狂気じみている」
映画批評の最高峰として知られるRoger Ebert誌の批評家ブライアン・タレリコは、本作を前作との関係性で「Evil Dead 2: Dead by Dawn」に「Evil Dead」がそうであるように、大きくより狂気に満ちた続編として位置付けた。前作の成功を確実に越える野心的な製作であり、沈黙の主人公Jorma Tommilaの演技、監督Jalmari Helander のアクション構成の技法、そしてGeorge Miller の「Mad Max: Fury Road」へのオマージュとも言える映像言語が、映画全体を支配していることを指摘。特に「Motor Mayhem」という章題が付されたバイク・チェイス・シークエンスは、2015年の傑作への最高のリスペクト表現であり、それ以降の映画の中でも最も興奮度の高いシークエンスだと述べている。監督の映像哲学――ルーニー・テューンズやバスター・キートンの喜劇的手法を応用しながら、同時に極限の暴力を美的に表現する――が、映画全体を支配しており、各殺害シーンが創意工夫に満ちた芸術作品へと昇華されているという分析が秀逸である。
評価点
- 前作を上回るスケール感と創意工夫の両立
- Tommila の無言での感情表現の深さ
- アクション・シークエンスの段階的エスカレーション(兵士→バイク→航空機→戦車)の秀逸さ
- 映画が確実な結末を知らせながらも、その過程での創意工夫で観客を引き付ける仕掛け
批判点
- 特になし。作品全体が高度に統合された傑作として機能している
Roger Ebert – SISU: Road to Revenge Review
Variety:Dennis Harvey 「継続性と革新性の両立」
Dennis Harvey「本作が前作より新鮮さに欠けるのは当然だが、Helander監督の卓越した破壊的メイヘムと推進力のあるペーシングは、前作ファンを十分に満足させる」
業界誌Varietyの映画批評家Dennis Harveyは、続編が往々にして直面する「新鮮さの喪失」という課題に正面から向き合いながらも、監督Helander の傑出した才能によってその困難を乗り越えている点を高く評価している。本作は単なる「前作の焼き直し」ではなく、基本的な構造は維持しながらも、スケール感、暴力の度合い、そして感情的な深さについて確実な進化を遂行しており、こうした点がファンの期待値を満たしているという分析である。映画全体を支配する「破壊的なメイヘムへの喜び」と「推進力のあるペーシング」が、観客を最後まで引き付ける主たる要因だという指摘が的確である。
評価点
- 前作の成功要因を維持しながらも、スケール感で上回る達成
- 破壊的メイヘムと感情的深さの統合
- 映画全体を支配する自信に満ちた映像言語
批判点
- 続編という性質上、新鮮さの完全な獲得は困難であること
- 一部のアクション・シークエンスが「やや誇張的」に感じられる可能性
Variety – SISU: Road to Revenge Review
Entertainment Weekly:「フィンランド的価値観の表現」
Entertainment Weekly の批評陣は、本作の最大の特徴として、国際的なハリウッド式のアクション映画のテンプレートを超越し、フィンランド的な価値観――失われたものの執念的な回復、家族への絶対的な愛、コミュニティとのつながり――を貫通させながら、同時に人類の暴力性の極限を美的に表現する稀有な映画として位置付けている。単なるアクション映画ではなく、戦争終結後の民族の悲劇、喪失と再生の物語として機能している点が評価されている。映像の美しさと暴力の過激さが相容れない緊張関係を保ちながらも、映画全体が高度に統合されているという分析が注目される。
評価点
- フィンランド的価値観の普遍的表現
- 喪失と再生というテーマの深掘り
- 映像美と暴力の緊張関係の秀逸な統合
批判点
- ストーリーラインが単純であり、複雑なプロット展開を求める層には物足りない可能性
Entertainment Weekly – SISU: Road to Revenge Review
個人的な感想評価
前作が骨太で説明も極限まで省いていたため「最強の元兵士のおじいちゃんを怒らせた」というシンプルな内容で、ひたすらブルースウィルスよろしく銃弾を避けたりたまに受けたりしながらソビエト兵を薙ぎ倒していくというもの。シンプルイズベスト。余計な情報?そんなのはイラねぇ、気に入らねぇことしたやつは全員、敵、死ね。これが良かった。
前作の公開当時の2023年はアクション映画が少なかった印象だったため個人的に最高傑作だった。そんな中、たった2年程度で続編を生み出したから早すぎないかと思っていたが、余計な心配だった。エイリアン2、ターミネーター2のように前作を圧倒的なスケールで上回るアクション対策に仕上げてきたのだ。
火薬量は10倍以上違うのでは?銃弾の数も、ゴア表現も、死体の数も、血の量もものすごいことになっているので、とにかく見応えがすごい。大爆発シーンは役者死ぬんじゃないか?と思うほどギリギリで4Kで高画質な爆発を起こして魅せてくれるし。歩兵からバイク兵、バイク兵から飛行機、飛行機から列車へと舞台が過激に大きくなっていき見ているこっちの興奮が全く収まることなく物語が進むのも良い。最高。予算を使うってこういうことってぐらい全てがスケールアップしていて気持ちいい!!
しかし今回は脚本が一味違う。前回謎の不死身兵士おじいちゃんだったが、今回はおじいちゃんが占領されたソビエト領に残された自分の家を解体して思い出の木材をフィンランド国境に持っていき新しい家を建てるんじゃ。という家族愛を全面に出して彼はどこに何をするために進んでいるのか?という軸となる情報が冒頭5分で教えてくれるので、視聴者の中での道筋がシンプルに理解できる。その後のソビエト兵たちをぶっ殺しまくるコルピの苛立と対応と怒りに全て共感できてしまうようになっている。これは前作から大きく違う欠点だった彼のバックボーンを強烈に理解させてくれたことには感謝しかない。
さて、おじいちゃんは何しにいくのか?を理解してやっと物語は進むが、それを邪魔するのはかつての敵ドラガノフ。こいつの行動原理もシンプルで前作で失脚して責任取らされて投獄されていたけど、復帰したけりゃコルピを殺せ、殺せたら多額の報奨金やるよ。というアメむちを提示。そりゃやるっきゃないぜ。とばかりに兵士を消耗品のように湯水の如く使い倒していくのだが、彼も歴戦の戦士で過去にコルピに負けた過去があり、俺はあいつのことをよく知っているぜとか言っていたのに、やることは意外とみみっちくて結局負けるっていうアホみたいな悪役っぷりも最高。最後の爆発も最高。
『SISU/シス2 Road to Revenge』の最大の強みは、単なる「アクション映画」という枠を超越し、映画という媒体の本質的な表現力を駆使した「人間の執念の映像化」として機能している点にある。
前作『Sisu』が「失われた金銭の奪還」という物質的な目標を掲げていたのに対し、本作は「失われた家族の記憶の運搬」という精神的な目標へと焦点を転移させている。この転換によって、映画全体が宿命的な悲劇へと昇華される。アアタミが満載のトラックで国境を越える旅は、単なる移動ではなく、喪失した世界への執拗な問い返しとなっており、各々の暴力的な衝突が、彼の内面的な闘争の外部化として機能している構造が秀逸である。
監督Jalmari Helander の映像言語は、ルーニー・テューンズ的な無意識の楽しさとバスター・キートン的な喜劇的緊張感を、同時に人類の暴力性の極限表現と統合させており、観客は笑いと恐怖、美しさと醜悪さの相容れない感情を同時に体験させられる。この困難な統合作業を見事に遂行したことが、本作を単なる「続編」ではなく、ジャンル作品として位置付けさせる要因となっている。
Jorma Tommila の全編における無言の演技は、言語表現を放棄することで、むしろ人間の内面的な深さを圧倒的に表現する逆説的な成果を生み出している。彼の肉体が次々と傷痕と血で覆われていくにつれ、映画は不可能を乗り越える人間の神話性を高めていくという構成的な仕掛けが見事である。Stephen Lang のドラガノフは、単なる「悪役」ではなく、アアタミを「怪物」へと作り上げた因果的な源泉として機能しており、ラストの列車での決闘は、物語的な報復というより、アアタミ自身の内面的な鬼をどう克服するかという終局的な問いとして機能している。
本作への批判的観点からすれば、アクション・シークエンスの段階的エスカレーションが「やや誇張的」に感じられる層も存在する。だが、これは映画の意図的な美学選択であり、映画全体を支配する「荒唐無稽さへの全面的な肯定」という姿勢の現れとして理解されるべきである。映画は決して「リアリティ」の獲得を目指していないのだ。むしろ、現実を超越した「伝説化」を目指しており、その達成度は極めて高い。
総じて、『SISU/シス2 Road to Revenge』は、前作の成功を確実に越える野心的な傑作であり、アクション映画のジャンルにおいて新たなベンチマークを打ち立てた重要な作品である。
まとめ
『SISU/シス2 Road to Revenge』は、フィンランド映画史上最高額の予算を投じて製作された、戦争終結後の民族的悲劇と個人的執念を融合させたアクション映画である。
映画の期待度は、前作『Sisu』(2022年)の国際的成功を受けた続編としての高まりを背景にしており、その期待値に対して本作がどのような応答をするかが関心の焦点となっていた。制作サイドは単なる「焼き直し」を拒否し、より大規模なスケール、より創意工夫に満ちたアクション設計、そして感情的な深さの追求に全力を投じた結果、期待値を確実に上回る傑作の完成へと至った。
映画の内容としては、フィンランド領土の喪失という歴史的背景の下で、失われた家族の記憶を象徴する木造家屋を、圧倒的な敵勢力を前にしながら運搬するという奇想天外なストーリー設定により、物質的な目標と精神的な目標が統合された物語構造を実現させている。各々の暴力的な衝突が、アアタミの内面的な闘争の外部化として機能する構成的な巧みさが、映画全体を支配している。
海外での受け止め方は極めて好意的であり、Rotten Tomatoes での批評家評価94%、観客評価87%、IMDb 7.3点、Metacritic 76点といった高い数値が示す通り、国際的な映画批評家層からも一般層からも支持を獲得している。批評家たちは、前作の成功要因を維持しながらも、スケール感、暴力表現の度合い、感情的な深さについて確実な進化を遂行している点を高く評価しており、単なる「続編」ではなく、アクション映画というジャンル全体の可能性を拡張する「ジャンル作」として認識している。特に、フィンランド的な価値観——失われたものへの執念的な回復、家族への絶対的な愛、コミュニティとのつながり——を国際的なハリウッド式のテンプレートを超越させながら表現する稀有な映画として位置付けられており、単なるエンターテインメント作品以上の芸術的価値を認められている。
本作は日本未公開ながら、世界的には2025年の最高峰のアクション映画として確立された位置付けを獲得した。映画通にとって見逃すことのできない傑作であり、アクション映画の可能性の拡張を示す重要なベンチマークとなっている。










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