映画『しあわせな選択/No Other Choice』あらすじ結末ネタバレと海外の感想評価まとめ

「オールド・ボーイのパク・チャヌク監督最新作にして最高傑作」と絶賛された映画『しあわせな選択/No Other Choice』のあらすじ結末までネタバレと海外の感想評価をまとめて紹介する。韓国で制作された本作は原題『어쩔수가없다』で2025年9月24日に公開され、IMDb7.6点、Rotten Tomatoes批評家98%・観客87%、Metacritic85点と圧倒的高評価を獲得したブラックコメディ・スリラー作品だ。第82回ヴェネツィア国際映画祭コンペティション部門に正式出品され、9分間のスタンディングオベーションを受け、第83回ゴールデングローブ賞では作品賞・外国語映画賞・主演男優賞の3部門にノミネートされた。

製紙会社で25年間勤務してきたユ・マンスが、アメリカ企業による買収で突然解雇される。中流階級の生活を守るため再就職に奔走するマンスだったが、1年以上経っても職は見つからず、家族は節約生活を余儀なくされる。住宅ローンの支払いが滞り、愛犬たちも手放さざるを得なくなった。妻ミリは歯科助手として働き始め、娘リウォンの才能を伸ばすチェロの上級クラスも諦めざるを得ない。絶望の淵に立たされたマンスは、ついに恐ろしい決断を下す。

本作の監督は『オールド・ボーイ』『お嬢さん』を作ったパク・チャヌク、主演マンス役を『イカゲーム』でフロントマンを演じたイ・ビョンホン、妻ミリ役を『愛の不時着』のソン・イェジンが演じた。

今回は、異色作として注目を集める映画『しあわせな選択/No Other Choice』のラストまで詳細に解説&考察と、海外ではどのような評価を受けているのか?を紹介していきたい。以下の内容は本編の結末のネタバレを含むため、必ず劇場で鑑賞してから読んでいただきたい。

『しあわせな選択/No Other Choice』あらすじ結末ネタバレ

ここから先は『しあわせな選択/No Other Choice』の核心である重大なネタバレを含む。企業資本主義の暴力性と男性のエゴの脆さを描いた本作は、失業した中年男性が競争相手を次々と殺害していく過程を通じて、現代社会の闇を暴き出すため、鑑賞前の閲覧は避けることを強く推奨する。

幸福な日々の終焉

ユ・マンス(イ・ビョンホン)は誰もが羨むような生活を送っている。自然に囲まれた美しい屋敷の庭で美しい妻ミリ(ソン・イェジン)、義理の息子シウォン(キム・ウスン)、チェロの天才娘リウォン(チェ・ソユル)、ゴールデンレトリーバー数匹と共にBBQをしている。

マンスは大企業ソーラー・ペーパー社で管理職で仕事に誇りを持ち、順風満帆な日々と家族を養えていること安心感を抱いていた。全てが絶頂にあった。

しかし、ある日唐突にソーラー・ペーパー社がアメリカ企業に買収され、マンスを含む多くの従業員が即日解雇され、食い下がったマンス達だったが会社の回答は失業者向けの支援グループに参加する権利だけだった。失業支援グループに参加したと言っても新たな仕事を手配してくれるわけでもなく、カウンセラーが怒りを抑えるためケアを学ぶだけだった。

まさかの転落に驚きを隠せないマンスだったが、ミリに失職したことを素直に打ち明けると、ミリは笑顔で新しい仕事が見つかると励まして電話を切るが、切った後頭を抱えてしまう。そこに声をかけてきたのはテニスのパートナーの若い男性だった。

転落する生活

1年以上が経過した。マンスはスーパーで低賃金の仕事をしながら、製紙会社への再就職活動を続けていたが、まったく上手くいかない。家族は支出を最小限に抑えなければならず、食卓の上も華やかさからは程遠い韓国の一般家庭のように見える、最も簡単に支出を抑えるために愛犬を両親に預けることになり、最後まで娘のリウォンが反対する。

チェロの天才児であるリウォンの教師が、彼女の才能に見合った上級クラスを勧めたが、その費用は家計では到底払えない。さらには住宅ローンの支払いが滞り始め、マンスが誇りだと思っていた大切な屋敷を売りに出さざるを得なくなった。次々訪れる買い手候補の中には、シウォンの親友ゴノ(イム・テプン)の両親もいた。

ミリはテニスで声をかけてくれた若くハンサムな歯科医ジノ(ユ・ヨンソク)のもとで歯科衛生士として働くことになった。

家族の不安すらも解消できず仕事は見つからないまま、失業の苦しみが極限に達したマンスは、別の製紙会社ムーン・ペーパーのオフィスを訪れ幹部と思われる人物に膝をついて直訴する。しかしそこにいたマネージャー職のチェ・ソンチョル(パク・ヒスン)は、取り乱しているマンスに名刺を渡し冷静に対応し結局会社から追い出すのだった。失意のマンスは長年の禁酒を破りウィスキーを煽り始める。

バーを出た後、マンスはソンチョルを尾行すると立ち止まって電話をしている彼の近くのビルの屋上へ行くと、重い植木鉢を持ち上げてソンチョルの頭上に落とそうとする。重たい植木鉢を頭上に掲げそこから垂れてくる水を頭にかけながら落とそうとしたが、植木鉢の持ち主に見つかってしまい、慌ててその植木鉢を買い取ることで事態を収拾した。

マンスの奇策

帰宅後、マンスはその植木鉢を見つめながら、ある計画を思いつく。製紙雑誌に偽の求人広告を出し、自分の競争相手を殺せば自分だけが仕事に就けると。

早速マンスの元に応募が集まり始め吟味を始め、応募者の中から自分より優れた経歴を持つ3人の男——ペーパームーンのソンチョル、グ・ボンモ(イ・ソンミン)、コ・シジョ(チャ・スンウォン)——を絞り込んだ。

彼らを排除すれば、

自分の地位が確立され、

仕事に就ける。

住所も特定した。

あとはやるだけだ。

マンスは、父親がベトナム戦争で使っていた肩身の拳銃を準備する

最初の標的

最初の標的はボンモだった。森の中から監視を始め、絶賛失業中のボンモは現実から逃れるように酒を浴びるように飲み荒み切っていた。妻アラ(ヨム・ヘラン)は夫に愛想を尽かしているように見える。しかもボンモが不在の間に若い男の出入りを目撃し、どうやらアラは不倫をしていることを知ってしまう。

偶然ボンモが一人で森の中を歩いているのを見かけ、マンスは銃を構え家族の顔を思い浮かべ引き金を引こうとするが、背後から現れたアラが邪魔をして失敗してしまう。

ボンモが立ち去った後、逃げようとしたマンスは足を毒蛇に噛まれて痛みに悶えていると、異変に気がついたアラが彼の傷を見て適切な対処で毒を取り除き一命を取り留めるのだった。家に帰ると妻がいつもよりなんとなく優しく妖艶になっているような気がするが、気のせいだろう。

翌日、マンスは再びボンモの家へ向かい家に忍び込むと、アラが背中にバイクにまたがる天使の刺青をした若い男とベッドで関係を持っているのを目撃したタイミングで運悪くマンスが帰宅してきてしまい慌ててマンスは家を飛び出すのだった。

ミリとシウォンを迎えに歯科に向かうが、なんとなく二人と院長のジノの距離が近い気がするが気のせいだろう、歯がずっと痛むが、マンスは嫉妬心から治療を拒否していることは内緒にしている。

後日、ついにボンモを殺そうと家に忍び込んだマンスは、酔っ払って前後不覚の状態で椅子に深く座っているボンモに向けて銃を向ける。目覚めたボンモはマンスを以前から疑っていたアラの愛人だと勘違いして叫ぶ。あわよくば夫が死ねばと実は背後から見ていたアラがほくそ笑んでいた。

ボンモが背後にいるアラに気がついて声をかけたことでマンスはビビってついに発砲し、ボンモの肩に命中し致命傷には至らない。その瞬間アラはマンスをボンモを殺せない玉無し野郎と判断し背後からマンスをぶん殴り、落ちた銃を巡って3人で揉み合いになる。アラが銃を奪い、マンスは逃げボンモが追いかける。しかし最終的にボンモを背後から撃ってとどめを刺したのはアラだった。アラは日頃の鬱憤と怒りを爆発させ叫び終えると目撃者のマンスも殺そうとしたが、彼は間一髪で逃げ出した。

逃げ出した時にはかなりの時間が経っていた。大量の着信を見てマンスは急いでミリと行くはずだったコスチューム・パーティーに向かうが、かなり遅刻していためパーティは佳境を迎え盛り上がっていた中、マンスが到着するが、ミリがジノと幸せそうにダンスをしている姿を見てしまい心を打ち砕かれたマンスは会場を後にする。

大雨の中、再びボンモの家を訪れたマンスは外に放置されていた拳銃を回収して立ち去る。家の中ではアラが例の刺青の男と裸でお祝いをしていた。

二人目の犠牲者

マンスは二人目の標的である靴屋で働くシジョの店を訪れるが、二人は幼い娘を持つ父親同士として意気投合し、失業の苦しみについて語り合い、何よりシジョは普通に最高に良い男で父親であることが滲み出ていた。

その日の夜、帰宅途中のシジョは道路脇で車のトラブルに遭っているマンスを見かけ、助けようと車を止め手伝おうとした瞬間、銃を取り出して引き金を引くが、不発となりシジョが逃げ出そうとするが、背後から彼を撃ち殺し、遺体を車のトランクに詰め込む帰宅し、遺体を埋めるための穴を掘る。

翌朝、突然警察がマンスの家を訪れたため、マンスは自分の犯行が発覚したと思ったが、昨夜シウォンと親友のゴノがゴノの父親の店から携帯電話を盗んだことで発覚して捕まったとのことだった。警察署に到着しシウォンをマンスとミリは、ゴノの父親に会いに行き自身の店で不倫の相引きする隠れ家として使っていたことを暴露すると脅してシウォンを釈放させることに成功する。帰宅したマンスとミリは天井裏にシウォンが盗み集めた大量のiPhoneを見つけると、死体を埋めるために掘った穴にiPhoneを全て埋めてしまう。ついでにどうやって釈放したのか理解できないシウォンに対し、バレないようにしろよと隠していたタバコを渡して少しだけ父親の威厳を見せて和解する。

その夜、シウォンが屋根で隠れてタバコを吸っているとマンスが庭の温室で遺体を切断しようとしているのを目撃してしまう。結局マンスは遺体を切断できず、裏庭の木の下に埋めた。

後日、刑事たちがボンモとシジョの失踪について尋ねてくるが、疑われてはいるものの証拠もないため、刑事達は大人しく引き下がる。

結末ネタバレ:最後の標的、勝利

マンスはソンチョルが帰宅するタイミングを見計らい、強引にソンチョルの家に入って飲酒することになり二人はベロンベロンに酔っ払う。ビールの中にウィスキーを入れて飲む通称爆弾を飲み二人は泥酔する。そしてマンスは酔った勢いでソンチョル前で傷んでいた虫歯をペンチでひこ抜き、ソンチョルに気に入られる。

一方、家ではシウォンがミリに、マンスが遺体を埋めているのを見たと告げた。ミリはシジョの遺体を掘り起こして死体を確認するが、家族を守るため、遺体に見えたのはマンスが車で轢いた動物の死体だと嘘をつく。ミリはマンスに電話をかけて情報を共有するが、後戻りできないマンスが電話を切ると泥酔したソンチョルの口にひき肉とアルコールを詰め込んで窒息死させると、酔って自分の嘔吐物で窒息死したように偽装して家を後にすると、ミリは全てを受け入れマンスと抱きしめているように見えるが、体の緊張が解けていないように見える。

後日、マンスはライバルがいなくなったことでムーン・ペーパーの管理職の座を手に入れる。

家族は愛犬たちを取り戻し屋敷を売る話もたち消えになり、家族には安寧が訪れたように見える。

再びマンスの家を訪れた刑事からアラが警察の捜査協力をしてくれたおかげで、ボンモが自分の北朝鮮製の拳銃でシジョを殺害した可能性があると情報提供してくれたことで全てが丸く収まったことを伝え、マンスへの疑いが晴れるのだった。

マンスが新しい職場に向かうが、そこには従業員は一人もいない。工場は完全に自動化されており、機械だけが動き、人間の労働者は一人もいない。

人を排除し続けた結果、自身の周りには誰もいない。望んだ仕事を手に入れたが、その代償は計り知れないように感じる。

しかし、そんな機械に囲まれた職場でもマンスは心底嬉しそうにガッツポーズを取るシーンで物語は終了する。

The Movie Spoiler – No Other Choice

『しあわせな選択/No Other Choice』作品情報

IMDb

『しあわせな選択/No Other Choice』の制作を手がけた監督と出演俳優、作品の基本情報について紹介する。

興行収入

本作は2025年9月24日に韓国で2,114スクリーンで公開され、初日に33万1,518人の観客を動員し、韓国興行収入ランキングで首位を獲得した。公開5日目には累計観客数104万2,800人を突破し、パク・チャヌク監督作品として史上最高のオープニング記録を達成した。

韓国国内では293万8,283人の観客を動員し、1,970万ドルの興行収入を記録した。世界全体では2,600万ドル以上を稼ぎ出し、制作費170億ウォンは海外先行販売で既に回収済みだった。アメリカでは2025年12月25日に限定公開され、イギリス、ラテンアメリカ、スペイン、トルコ、オーストラリア、ニュージーランドなど200カ国以上に販売された。

パク・チャヌク監督情報

パク・チャヌクは1963年8月23日にソウル生まれの映画監督だ。ソガン大学で哲学を学び、アルフレッド・ヒッチコックの『めまい』を見て映画監督を志した。2000年の『JSA』で韓国映画史上最高の興行成績を記録し、監督としての地位を確立した。

その後、非公式の「復讐三部作」となる『復讐者に憐れみを』、『オールド・ボーイ』、『親切なクムジャさん』を制作し、特に『オールド・ボーイ』は2004年カンヌ国際映画祭でグランプリを受賞し、世界的に高い評価を得た。2009年の『渇き』ではカンヌ国際映画祭審査員賞を受賞し、2016年の『お嬢さん』はBAFTA外国語映画賞を獲得した。2022年の『別れる決心』ではカンヌ国際映画祭監督賞を受賞した。本作『しあわせな選択/No Other Choice』は、パク監督が15年間温めてきた企画で、ドナルド・E・ウェストレイクの小説『The Ax』を韓国に舞台を移して映画化した作品だ。

マンス役「イ・ビョンホン」情報

イ・ビョンホンは1970年7月12日にソウル生まれの俳優だ。1991年にKBSテレビネットワークのオーディションに合格し、芸能界入りした。2000年の『JSA』で初の大ヒット作に出演し、その後『甘い人生』『グッド・バッド・ウィアード』『悪魔を見た』『王になった男』など韓国映画界を代表する作品に次々と主演した。

アメリカ映画では2009年の『G.I.ジョー』でストーム・シャドウ役を演じてハリウッドデビューを果たし、続編『G.I.ジョー バック2リベンジ』、『REDリターンズ』、2015年の『ターミネーター:新起動/ジェニシス』、2016年の『マグニフィセント・セブン』などに出演した。

Netflixの世界的ヒット作『イカゲーム』シーズン1でフロントマン役を演じ、シーズン2、3でもメインキャストとして出演した。本作『しあわせな選択/No Other Choice』では、25年ぶりにパク・チャヌク監督と再タッグを組み、2026年ゴールデングローブ賞主演男優賞にノミネートされた。

ミリ役「ソン・イェジン」情報

ソン・イェジンは1982年1月11日にソウル近郊のタプドン生まれの女優だ。2001年の『約束』で映画デビューを果たし、2003年の『クラシック』で知名度を上げた。2004年の『あなたを忘れない』、2008年の『私の頭の中の消しゴム』などのロマンス映画で人気を博し、「ロマンス映画の女王」として知られるようになった。

2013年の『サニー 永遠の仲間たち』、2018年の『猟奇的な彼女』など幅広いジャンルで活躍し、2019年から2020年にかけて放送されたNetflixドラマ『愛の不時着』で世界的な人気を獲得した。本作『しあわせな選択/No Other Choice』では、夫の犯罪を知りながらも家族を守ろうとする複雑な妻役を演じ、パク・チャヌク監督とは2016年の『真実の行方』以来2度目のコラボレーションとなった。

海外の感想評価まとめ

本作は海外でどのような評価を受けているのか。海外での総合的な評価を紹介後、なぜこの評価になったのか?海外レビュアーたちの評価を見ていこう。

IMDb(総合評価:7.6/10)

①パク・チャヌク監督とイ・ビョンホンが作り上げた傑出したシナジーが作品全体に浸透している。細部とイースターエッグで満ちた緻密な作品で、2回目の鑑賞を要求するような映画だ。

②AI技術や自動化が労働を置き換える時代に、人間の存在価値が急速に減少し、職人技や無形遺産の生存さえ脅かされている。この映画は文明の進歩に伴う不安を、苦々しさと皮肉をもって捉えている。パク・チャヌク監督のミザンセンと人工的な魅力が再び輝き、人間が互いに銃を向けざるを得ない必然的なジレンマを混沌としたユーモアで描いた。

③パク・チャヌク監督は機知に富んだブラックコメディを提供し、現代労働の非人間化を暴露し、ユーモアと社会批評を視覚的に精密でインテリジェントなスタイルで融合させている。映画は皮肉とパラドックスを使って職場の矛盾を浮き彫りにし、観客を引き込みながら現代の労働文化について鋭い論評を行っている。

④マンスという人物が面白いのは、抑圧され、欲求不満で、時には哀れで魅力的なキャラクターとして描かれているからだ。イ・ビョンホンは近年最高のパフォーマンスの一つを披露し、他の出演者たちも素晴らしかった。彼のキャラクターが労働力、人々、そして互いのパラドックスについての現代的批評と共鳴する様子を楽しんだ。

IMDb – No Other Choice

Rotten Tomatoes(批評家:98% / 観客:87%)

①パク・チャヌクによる完璧な精度で演出された本作は、企業による出世競争を痛烈に風刺した作品で、イ・ビョンホンの巧みで間の抜けた演技が完璧なアバターとなっている。ユーモアとシリアスさのバランスが絶妙で、観客は主人公に同情しながらも、彼の行動の恐ろしさを目の当たりにする。

②社会風刺としては特に新しいことは言っていないかもしれないが、それ自体の条件で傑出している。絶え間ない悲観主義にもかかわらず、決して憂鬱ではない。それどころか、最後まで突き進む覚悟のある映画監督がいることは爽快だ。本作には勝者がいるが、パク監督は静かに壊滅的な最終イメージで、魂を空洞化させる代償を明らかにする。

③フレーミング、カメラの動き、編集が完全に調和し、常に熱に浮かされた夢を反映する野心的な映画となっている。パク・チャヌク監督の視覚的な卓越性と、現代社会の病理を暴く鋭い眼差しが融合した傑作だ。

Rotten Tomatoes – No Other Choice

Metacritic(総合評価:85/100)

①パク・チャヌクの最も面白い映画であるだけでなく、最も人間的な作品でもある。これほど暴力的なコメディにとっては驚くべきことだ。黒豆麺よりも黒いユーモアを持つ本作は、映画芸術の傑作であり、パク・チャヌク監督の最高傑作かもしれない。『お嬢さん』を監督した男の作品だということを考えると、それは大変なことだ。

②危機に直面して自分自身を再発明しようとする人々についての映画は数多くある。しかし、そのアイデアを暴力的に拒否する人々——他者になるよりも他人を殺すことを選ぶ人々——についての映画ははるかに少ない。パク・チャヌクの陰鬱で、華麗で、辛辣に滑稽な本作は、その例外的存在だ。

③犯罪行為は不器用かもしれないが、パク監督の映画制作は相変わらず優雅で、心理的緊張と軽快に滑稽なコミカルな場面とのバランスを取った、ワイルドに楽しい作品だ。ブルータリズム的な工場から美しい森まで、様々なロケーションで撮影された本作は、信じられるものと不条理なものの両方を描いている。

Metacritic – No Other Choice

批評家レビュー

海外批評家の詳細な評価を見ていこう。

Roger Ebert 100点

ブライアン・タリーリコ氏「パク・チャヌクという巨匠に身を委ねることがいかに報われるか」

パク・チャヌク監督のような巨匠に身を委ねることで得られる報酬は、本作『しあわせな選択/No Other Choice』のようなトーン的に複雑な映画のあらゆる曲折を信頼して進めることだ。このユニークな宝石がどれだけ多くの場所で失敗する可能性があったかを見るのは簡単だが、最初から最後まで良い選択だけをしているのを見るのは満足のいくものだ。物語は相対的に遊び心があり、ほとんど馬鹿げたトーンで始まり、イ・ビョンホンの重層的な演技によって豊かになる。マンスの絶望、知性、そして傷ついたプライドを混ぜ合わせた演技だ。やがて物語はずっと暗くなる。

評価点
イ・ビョンホンは2025年最も過小評価されそうなパフォーマンスを披露している。彼は絶望した男の恐怖と壊れた男性性を演じ、企業の貪欲さによって砕かれた脆弱な男性性について語る、パク監督の最も怒りに満ちた映画の一つだ。映画の中央部分には、眠っている男に銃を向けるマンスの場面があり、これは独立した芸術作品であり、パク監督のブロッキング、フレーミング、ペース配分、予測不可能なプロットの見事な能力を思い出させる。

批判点
映画はもう数分長すぎる。これはパク・チャヌク監督の映画についての些細な不満だが、いくつかのシーンが過度に伸びていると感じられる瞬間があった。しかしこれは、この邪悪に面白い作品についての些細な苦情に過ぎない。

(Roger Ebert – No Other Choice)

NPR 90点

グレン・ウェルドン氏「企業文化と男性のエゴへの痛烈な風刺」

多くの批評家が本作の風刺的で今日的な普遍性を指摘しているが、それは顔のない企業が勤勉で忠実な従業員をひどい目に遭わせることを含んでいるからだ。しかし監督の真の風刺的視点は、対人関係——特に男性のエゴの頑固さ——に向けられている。映画の中の女性たち、ソン・イェジン演じるミリと、マンスの潜在的犠牲者の一人の妻を演じる陽気なヨム・ヘランの両方が、繰り返し夫たちに人生で何か他のことをすることを考えるよう懇願する。しかしこれらの男性は、長年の奉仕を鍋に投資した中核的なアイデンティティとして男性性とブレッドウィナーとしての地位と等しくし、彼らの古い生活に固執し、それに戻ろうと爪を立てようとするだけだ。

評価点
本作には魅力的な部分がたくさんあり、それは反資本主義的な激烈な批判についての奇妙なことのように思えるかもしれない。しかし監督は、責任が本当にどこにあるのかを常に思い出させることに注意を払っている。システム的な経済的圧力について何を言おうと、血は決してマンスの手(そして顔、シャツ、ズボン、靴)に残っている。映画は繰り返し彼にシステムから抜け出す能力を提供するが、彼はかつて知っていた人生に戻らなければならないという決意を捨てない。

批判点
映画は観客を不快にさせる瞬間がある。登場人物たちが経験する暴力と屈辱は、時に観るのが困難だ。しかし、それこそがパク監督の意図であり、観客に現代の労働文化の残酷さを直視させようとしている。

(NPR – No Other Choice)

Variety 100点

ピーター・デブルージュ氏「資本主義時代の人間性についての鋭い観察」

パク・チャヌク監督はドナルド・E・ウェストレイクの1997年の小説『The Ax』を採用し、それを悪意を持って彼の母国に適用した。その結果、血を流すエンターテインメントが生まれた。ビートごとに、パク監督がこの映画をどこへ持って行こうとしているのかを予測することは不可能だ。最善の策は、ボリュームを上げて、パク監督が自分自身のために設定したリズムを信頼することだ。彼にダンスをリードさせよう。マンスは紙製造の専門家で、25年間の経験を持つが、人生に満足していると自分自身に真実に言えるほど満足している。妻ミリ、二人の子供、二匹の犬と幸せに日々を過ごしている間、マンスは突然会社から解雇されたと告げられる。

評価点
イ・ビョンホンの演技は、怒り、面白さ、愛情、さらにはスラップスティックまで変調された。彼は中年マネージャーとしての役割に、ユーモアと好感度をもたらしている。パク監督の演出は鋭く、社会的不平等と企業文化の非人間性を巧みに暴いている。映画は現代の不安定な時代に更新されたもので、最後まで魅力的だ。

批判点
映画は複数のエンディングを持つ韓国映画のトレンドにやや耽溺し、最後に向かって勢いを失う。これはパク監督の2022年の傑作『別れる決心』ほど満足のいくものではないかもしれないが、それでも見事な作品だ。

(Variety – No Other Choice)

個人的な感想評価

物語は意図的にゆっくりと進むが、決して退屈せず、奇妙な旅を続ける主人公を追いたくなる。疑問、ひねり、予期せぬ展開が満載で、結末は待つ価値がある。

十数年前に似たようなことがあったからこそ主人公の心情がわかるため恐く面白く切なかった。失業の痛み、転職の苦しみ、他者への嫉妬、自分への怒りと不甲斐なさ、追い詰められて追い詰められて、最終的に最底辺なブラック企業を渡り歩いたことがある。で、そんな自分が今どこにいるかというと、似たような職場である。しかも自動化が進み、省人化まで推奨されている。他人事じゃねぇな〜とか思いながらも、彼らの緊張感があるのにコミカルな展開に笑い震えることができた。

今更だが監督がオールド・ボーイの人と知って納得の質だった。

誰かがこの映画には大量にイースター・エッグ(隠し要素)がある。と言っていた。確かにあの時なぜ?というシーンや表情、仕草が残されており、ん?とは思ったが、最後まで説明されることはなかったため、この映画は最終的に主人公マンスだけがしあわせになっただけにも見えるし、大団円のようでもあるし、残された謎を考察する楽しさがあるのかもしれないが、もう一度見直すには少し暴力描写とやるせない展開が多いため当分2回目の鑑賞はないと思う。

イ・ビョンボンが大好きだ。彼がそこにいるだけで映画が締まる。日本で言うと浅野忠信みたいな感じ、いるだけで質が上がる。そんな彼が家族のために、(自分のために)、追い込まれて追い込まれて間抜けな犯罪を犯す男を演じているのだが、愉快で屈託のない笑顔なのに高貴さと間抜けさを使い分けて演じるこの演技力は本当に素晴らしいとしか言いようがない。演技力に対して特に褒めようがない。欠点がない。見事。語弊力がなくて申し訳ない。完璧だったと思う。

パク・チャヌク監督は本作で、企業資本主義の暴力性と男性の脆弱なエゴを容赦なく解剖した。批評家たちが「最も人間的で辛辣に面白い作品」と評するのも納得の、ブラックコメディとしての完成度の高さだ。イ・ビョンホンの演技は圧巻で、絶望した中年男性の哀れさと恐ろしさを同時に体現している。

彼は観客に同情を抱かせながらも、その暴力性に戦慄させる複雑なキャラクターを見事に演じきった。一方、ソン・イェジンは現実的で適応力のある妻を演じ、夫の狂気を知りながらも家族を守ろうとする女性の強さを表現した。パク監督の真骨頂は、この物語を単なる復讐劇ではなく、AI時代における人間労働の無価値化と、男性のアイデンティティ崩壊を描いた社会風刺として昇華させた点だ。最後のシーンで、マンスが完全自動化された工場で一人祝杯を上げる姿は、皮肉と虚無に満ちた傑作の結末として長く記憶に残るだろう。

まとめ

この記事では、映画『しあわせな選択/No Other Choice』のあらすじ結末ネタバレから海外の感想評価までを紹介した。

ドナルド・E・ウェストレイクの小説『The Ax』を原作とした本作は、パク・チャヌク監督が15年間温めてきた企画だ。2009年にはアメリカでの制作が計画されていたが、最終的に韓国に舞台を移して実現した。イ・ビョンホンとソン・イェジンという韓国映画界を代表する俳優を主演に迎え、25年間勤務した製紙会社を突然解雇された中年男性が、再就職のために競争相手を次々と殺害していく物語が展開する。

物語は、幸福な家庭生活を送っていたマンスが、アメリカ企業による買収で解雇され、1年以上の失業生活を経て絶望の淵に立たされる。住宅ローンが払えず、愛犬も手放し、娘の才能を伸ばすこともできない。妻は働きに出て、マンスのプライドは傷つく。そして彼は偽の求人広告を出し、3人の競争相手を特定し、父親の銃で彼らを次々と殺害していく。最終的に望んだ仕事を手に入れるが、その職場は完全に自動化されており、人間の労働者は一人もいないという皮肉な結末を迎える。

海外では圧倒的高評価を獲得した。IMDb7.6点、Rotten Tomatoes批評家98%・観客87%、Metacritic85点という数字が、その完成度の高さを物語っている。第82回ヴェネツィア国際映画祭では9分間のスタンディングオベーションを受け、2026年ゴールデングローブ賞では作品賞・外国語映画賞・主演男優賞の3部門にノミネートされた。

批評家たちは、イ・ビョンホンの「2025年最も過小評価されそうな演技」を絶賛し、パク・チャヌク監督の精密な演出と社会風刺の鋭さを称賛した。本作は単なるブラックコメディではなく、AI時代における労働の価値喪失と、男性のアイデンティティ崩壊を描いた現代社会への警鐘として受け止められた。一部の批評家は、映画が若干長すぎると指摘したが、多くの観客は本作を「今年最高のブラックコメディ」として受け入れた。

本作は、企業資本主義の暴力性と男性の脆弱なエゴという普遍的なテーマを通じて、現代社会の病理を痛烈に描き出した傑作として、長く記憶されるだろう。

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