

「観る者すべてに絶望を与える」衝撃的な結末で語り継がれるイタリアン・ホラー映画『笑む窓のある家』のあらすじ結末までネタバレ解説と海外の感想評価をまとめて紹介する。
本作はイタリアン・ジャッロ映画の隠れた傑作として語られ、風光明媚な田園地帯で起きた連続殺人事件を描いたサイコロジカル・ホラーだ。『ホステル』のイーライ・ロス監督が「このジャンルにおける最高傑作の一本」と絶賛し、英国映画協会(BFI)が発表した「イタリアン・ゴシック・ホラーの傑作10選」にも選ばれている。
イタリアン・ゴシック・ホラーとして注目を集めた映画『笑む窓のある家』は1976年8月16日にイタリアで公開された作品である。製作国はイタリアで、上映時間1時間50分の本格ホラー映画として制作された。監督はイタリアの名匠プピ・アヴァティがつとめ、主演にリノ・カポリッキオ(フレスコ画修復師ステファノ役)、フランチェスカ・マルチャーノ(教師フランチェスカ役)を迎えた。
今回は、半世紀経った今でもイタリアン・ホラー屈指の異常作として評価される映画『笑む窓のある家』のラストについて解説していこう。以下の内容は本編の結末のネタバレを含むため、必ず作品を鑑賞してから読んでいただきたい。
もくじ
『笑む窓のある家』あらすじ結末ネタバレ
ここから先は『笑む窓のある家』の核心である重大なネタバレを含む。
修復依頼
北イタリアの人里離れた村の教会に「聖セバスティアヌスの殉教」のフレスコ画の修復を依頼された修復師のステファノ(リノ・カポリッキオ)が訪れる。

不気味だがフレスコ画を絵描いたブオノ・レニャーニという画家について聞くと、レニャーニは生前、死にゆく人々をモデルにして絵を描く異常な画家だったという。そんな彼は20年前に狂って死んでしまい、村人たちは彼の異常な作品について禁句で忌々しいものとして扱っていると話す。
画集を見て不思議な魅力を持つ彼について知りたくなったステファノは修復作業を進めながら、この謎めいた画家とフレスコ画の真相に迫るため、ステファノの友人で医師のアントニオに相談し、レニャーニとその作品について密かに調査を進める。
後日、アントニオはレニャーニの恐るべき秘密を発見し、村に隠された暗い真実を突き止めたと電話で語り後日落ち合う予定だったが、アントニオはステファノに秘密を打ち明ける前に謎の死を遂げてしまう。警察は自殺として処理したが、ステファノは彼の死に疑念を抱く。
調査を進めるステファノは村の新任教師フランチェスカ(フランチェスカ・マルチャーノ)と深い仲になり絆を深めていく。その反面、レニャーニのことを調査し続けるステファノに対し村人たちはますます口を固く閉ざし、最終的に匿名で修復作業をやめて村から出て行くよう警告されてしまう。
ホテルを追い出されたステファノは、教会の世話をする知的障害のあるリディオと、寝たきりの老女ラウラが住む家に身を寄せることになる。
笑む窓の家
ある日、ステファノは村の酒飲み男コッポラから「笑む窓のある家」の存在を教えられ連れて行ってもらう。その廃屋は壁に巨大な赤い唇の形をした不気味な絵が描かれており、村人たちが忌み嫌う場所だと説明し、この家こそレニャーニの秘密と関係していることをほのめかす。

結末ネタバレ:恐るべき真実
調査を進めるステファノは、レニャーニには狂気に取り憑かれた二人の姉妹がいたこと、姉妹たちはレニャーニの芸術のために実際に人々を拷問し殺害し、その死に際をレニャーニに描かせていたこと、フレスコ画に描かれた聖セバスティアヌスの殉教は、実際の殺人をモデルにした恐るべき作品だったことを知る。
家に戻ったステファノは寝たきりの老女ラウラに襲われ胸を刺されてしまう。ラウラこそレニャーニの姉妹の一人だったのだ、重傷を負ったステファノは教会に逃げ込むが、神父も正体を表し、神父もレニャーニの妹が男装した姿で、二人は長年にわたって村で正体を隠しながら生活し、レニャーニの凄惨な秘密を守るため、秘密を探る人たちを殺し続けてきたのだった。
神父が微笑みを浮かべながらステファノに近づくと、ステファノは自分がレニャーニの新たな「作品」のモデルとなることを悟り絶望の眼差しで物語は終了する。
『笑む窓のある家』作品情報
笑む窓のある家のネタバレを読んで興味を持った読者のために、本作品の邦題表記について詳細を紹介する。本作を検索する際に『微笑む窓の家』『笑う窓のある家』『微笑む窓のある家』といった誤った邦題で検索される方が多いが、正確な邦題は『笑む窓のある家』である。これらの類似した邦題での検索も多いため、本作に興味を持った方は正しいタイトルで検索していただきたい。
笑む窓のある家興行収入
映画『笑む窓のある家』は1976年8月16日にイタリア国内でEuro International Filmsによって劇場公開された。イタリア国内興行収入は722,135,201イタリア・リラを記録している。
本作は当初注目されることもなく、日本では長らく未公開作品として扱われてきた。欧米でも知る人ぞ知る作品として位置づけられていたが、今世紀に入ってからイタリアン・ホラー映画の再評価とともに注目を集めるようになった。
プピ・アヴァティ監督紹介
プピ・アヴァティはイタリアの映画監督として幅広いジャンルで活動している。『いつか見た風景』(1989年)、『ボローニャの夕暮れ』(2008年)などの文芸作品で知られているが、サスペンスやホラーのジャンルでもさまざまな作品を手掛けてきた。
本作では心理的な恐怖を静かに積み重ねながら、不安と焦燥感をかきたてるシュールでアヴァンギャルドなイメージを交え、観る者を狂気と妄執の深淵へと引き摺り込む演出を見せている。『笑む窓のある家』は、「サスペリア」ダリオ・アルジェント、「サンゲリア」のルチオ・フルチ監督作品に代表されるイタリアン・ホラーとは対極にある「異色」とされる作品だが、それら巨匠たちの傑作に匹敵する異常作として現在では評価されている。
ステファノ役「リノ・カポリッキオ」紹介
リノ・カポリッキオはイタリアの俳優として、『悲しみの青春』(1970年)での名演で知られている。本作では絵画修復師ステファノを演じ、村の恐るべき秘密に巻き込まれていく主人公を繊細かつ説得力ある演技で表現した。カポリッキオの知的で繊細な演技は、じわじわと迫りくる恐怖の中で孤立していく主人公の心理状態を見事に表現しており、本作の成功に大きく貢献している。イタリア映画界において確固たる地位を築いた実力派俳優として評価されている。
海外の感想評価まとめ
海外では、プピ・アヴァティ監督による『笑む窓のある家』が隠れたジャッロ映画の傑作として高く評価されている。批評家からは「ザ・ウィッカーマン」の系譜を継ぐ怪村ホラーの傑作として位置づけられ、観客からも心理的恐怖を重視した演出手法が絶賛されている状況だ。
IMDb(総合評価:7.0/10)
①私は昨日、私の最も好きなジャッロ映画の一つを観た。プピ・アヴァティが監督した『笑む窓のある家』は、彼が偉大な才能を持った監督だったことを証明している。ストーリーはこうだ:ステファノは聖セバスティアヌスの苦痛を描いたフレスコ画を修復するために島にやってくる。画家は死んでいるが、死と苦痛のシーンを描く異常な個人として知られていた。
②私はこの映画が典型的なジャッロとは単純に異なることを強調したい。ジャンルの慣例を採用しているにも関わらず、これは殺人数を競う映画ではなく、黒い手袋の殺人犯もいない。恐怖はより微妙だが、重要なことに平均的なジャッロよりもはるかに恐ろしいのだ。これは本当に恐ろしい映画である。
③私はこの映画が中心人物の孤立感と、特徴のない塩沼に囲まれた陰鬱な村での不安の高まりを通して恐怖感を効果的に構築していると思う。饒舌な小人の市長から、ヒーローと神秘的に関係を持つが何かを隠している青白い美女まで、脇役たちは徹底的に不気味だ。
④私にとって『笑む窓のある家』は、長い間「失われたジャッロ」だった作品だ。純粋な映画制作という点では完璧とは言えないが、不均一な瞬間が多すぎる。キャラクターが不吉に消え、その後説明もなく再び現れるのだ。それでも決して完全な失敗作ではない。
IMDb – The House with Laughing Windows
Rotten Tomatoes(批評家・観客評価未確定)
Rotten Tomatoesでは現在、批評家レビューが2件のみ投稿されており、総合的な評価スコアはまだ確定していない状況である。しかし投稿されているレビューでは、本作の独特な雰囲気作りと心理的恐怖の演出手法について肯定的な評価が多く見られる。
Metacritic(評価スコア未確定)
Metacriticでは現在、本作に対する公式な評価スコアが確定していない。しかし映画批評サイトやホラー映画ファンサイトでは、イタリアン・ホラーの隠れた名作として継続的に言及され続けている状況だ。
批評家レビュー
AllMovie 評価点
AllMovieの批評家は本作について好意的なレビューを寄せ、5点満点中3点の評価を与えた。「典型的なイタリアン・ホラー映画のファンには『笑む窓のある家』は同時代の多くの作品に見られるスタイリッシュな過剰さに欠けていると感じるかもしれないが、他のほぼすべての分野で同時代作品を上回っている」と評価している。
評価点 ほぼ耐え難いほどの圧倒的な恐怖感に満ちた演出
批判点 典型的なイタリアン・ホラーのスタイリッシュな過剰さの欠如
(AllMovie – The House with Laughing Windows)
Turner Classic Movies 評価点
Turner Classic Moviesの批評では、本作をマリオ・バヴァ、ダリオ・アルジェント、ルチオ・フルチに匹敵する監督の作品として位置づけている。「『笑む窓のある家』は血まみれのジャッロや肉食ゾンビ映画よりもゴシック的なムード作品である。『ザ・リング』の深く不穏なトーンを先取りしており、安っぽい驚かし手法を避けてカメラの射程外に潜む見えない恐怖を追求している」と評価した。
評価点 ゆっくりとエスカレートする狂気を吸収する時間を観客に与える緩やかなペース
批判点 フレディ・クルーガーやジェイソン映画に慣れた観客には挑戦的すぎる可能性
(Turner Classic Movies – The House with Laughing Windows)
Letterboxd 評価点
Letterboxdでは本作を「ジャンル屈指の最高傑作」として評価するレビューが多数投稿されている。「孤立した村を舞台にしたスロウバーンな心理的恐怖作品。観る者の心に鉤爪を引っ掛け、心そのものが崩壊するまで引き裂き続ける。絶品だ」という評価が代表的で、特に農村を舞台にしたフォークホラーとしての完成度の高さが評価されている。
評価点
不穏な雰囲気作りと心理的恐怖の演出の巧さ
批判点 謎解きの展開が一部の観客には物足りない可能性
(Letterboxd – The House with Laughing Windows)
個人的な感想評価:70点
いやいや、驚いた。
約50年前の映画とは思えない完成度。
もっと安っぽいものをイメージしていたが、割と冒頭から綺麗な構図、ジャンプスケア、精神的な不安定さを音楽と映像でこちらの恐怖心を煽る演出など、現代で通用するお手本のような見事な演出で度肝を抜かされた。

あとは、もう映画を楽しむだけだった。
スローテンポだが、次はどんな見せ方をするのだろうか?どんな展開が待っているのだろうか?と興味が尽きることはなく、最後まで緊張感を持って楽しむことができた珍しい作品。
当時珍しいかったであろう血みどろの残虐シーンは物足りないが、当時「異常作」とレッテルを貼られてしまうのも納得の描写の数々は満足度が高い。美女の拷問死体、水死体、拷問された苦悶の表情を絵画に落とし込む異常性のある画家、そして男装殺人鬼など、なかなか挑戦的な作品だったことが窺える。
最近見たウルフマンとかoddityとかthe damnedよりも驚くほど完成度が高いホラー映画だったので、満足度が高い。
『笑む窓のある家』は、イタリアン・ホラーの中でも特に異色で知的な恐怖体験を提供する傑作だ。プピ・アヴァティ監督は派手な血みどろシーンや突然の驚かしに頼らず、じわじわと迫りくる心理的恐怖で観客を追い詰める手法を選択している。
村という閉鎖的な共同体の中に潜む狂気を、美しい田園風景とのコントラストで描き出す演出は見事としか言いようがない。
特にラスト20分の衝撃的な真相の暴露は、観る者の想像を遥かに超える恐ろしさで、一度観たら忘れられない強烈なインパクトを残す。イタリアン・ホラーの新たな側面を発見したい映画ファンには是非とも体験してもらいたい隠れた名作である。
まとめ
この記事では、1976年のイタリアン・ホラー映画『笑む窓のある家』の詳細なネタバレ解説と海外での評価状況についてまとめてきた。プピ・アヴァティ監督による本作は、当初は注目されることもなく日本では未公開作品として扱われてきたが、今世紀に入ってからの再評価によってイタリアン・ホラー史上屈指の異常作として認識されるようになった。
海外では「ウィッカーマン」の系譜を継ぐ農村恐怖映画の傑作として位置づけられ、心理的恐怖を重視した演出手法が高く評価されている。IMDb7.0点という評価は、隠れた名作としては非常に高い数値と言えるだろう。本作は血みどろの殺戮シーンや派手な特殊効果に頼らず、じわじわと迫りくる狂気と絶望感で観客を恐怖のどん底に突き落とす手法を取っており、それがイタリアン・ホラーの新たな可能性を示した記念すべき作品として現在も語り継がれている。
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