
化物から主人を守る犬の視点から描かれた革新的ホラー、映画『Good Boy』の結末までのネタバレと海外の感想評価を徹底解説。IMDb6.8点、Rotten Tomatoes批評家93%の高評価を獲得した感動と恐怖の物語を完全紹介。愛犬インディの献身的な演技が全米を泣かせた。
「2025年最高のホラー映画の一つ」2025年10月3日にIFCとShudderで全米公開された映画『Good Boy』のあらすじ結末までネタバレ解説と海外の感想評価をまとめて紹介する。本作は2025年3月10日にサウス・バイ・サウスウエスト(SXSW)でワールドプレミア上映されたアメリカ制作の超自然ホラー映画で、ベン・レオンバーグ監督の長編デビュー作だ。
本作は、飼い主を守ろうとする一匹の犬の視点から描かれた斬新なホーンテッドハウスホラーである。主人公の犬インディは、病気を抱える飼い主トッドと共に田舎の古い家に引っ越すが、その家には人間には見えない超自然的な存在が潜んでいた。インディだけが感じ取る悪意ある存在と、トッドをあの世へ引きずり込もうとする闇の力に対して、忠実な犬が命をかけて立ち向かう物語だ。
監督はベン・レオンバーグで、脚本をアレックス・キャノンと共同執筆した。主演は監督の実際の愛犬であるノヴァスコシア・ダック・トーリング・レトリバーのインディで、人間キャストにはシェーン・ジェンセン、アリエル・フリードマン、ホラー界のレジェンドであるラリー・フェッセンデンが出演している。制作は監督本人とカリ・フィッシャーが担当し、制作会社名は「What’s Wrong With Your Dog?」だ。
今回は、ホラージャンルに革新をもたらした映画『Good Boy』の詳細なあらすじと結末について解説していこう。以下の内容は本編の結末を含む重大なネタバレを含むため、必ず視聴してから読んでいただきたい。また、ペットの死や病気に関する描写も含まれるため、動物愛好家は注意が必要だ。
『Good Boy』あらすじ結末ネタバレ
ここから先は『Good Boy』の核心である重大なネタバレを含む。本作は犬の視点から語られる唯一無二のホラー映画で、人間の言葉による説明はほとんどなく、インディの目を通して物語が展開していく。詳細なあらすじと結末を順を追って解説していく。
都会から田舎へ
暗い部屋でトッド(シェーン・ジェンセン)とその愛犬インディはトッドの口から大量に吐血している様子を見守る。電話に出ない兄を心配して訪れた妹のヴェラ(アリエル・フリードマン)がすぐに病院に連絡しトッドは病院に搬送され命を救われる。
トッドは昔から周囲から孤立し孤独になりがちで、心配した妹のヴェラから送られたのがインディだった。トッドはインディに心を開き家族同然で共に愛し生活していた。しかし冒頭のようにトッドは重度の持病を持ち、入退院を繰り返しており健康面で課題を残している状態だった。
トッドは、療養のため祖父から相続した田舎の古い家に移り住むことを決める。都会の生活から離れ、新鮮な空気と静かな環境が病気に良いと考えているが、以前から祖父の家は呪われており祖父もその家に移り住んだことで亡くなった、そう信じているヴェラは兄がその家に移り住むことを最後まで反対していたが、トッドの決意は堅かった。
トッドとインディは緑に囲まれた人里離れた場所へとたどり着く。古びた家は、長い間空き家だったようで、荒れ果てていた。インディは車から降りると、すぐにこの家に対して警戒心を抱く。何かが違う。何かが間違っている。犬の本能がそう告げていた。実際インディがトッドを心配そうに見つめる背後で謎の影が新たな来訪者を見つめている。
不気味な家
家の中に入ると、インディの不安はさらに高まり誰もいない隅、何もないはずの廊下や部屋をじっと見つめることが増える。トッドには見えない何かが、そこにいるのだろうか。インディは特定の部屋だけは入るのを拒否して唸り吠えるが、警告を理解できないトッドはインディがまだ新しい環境に慣れていないだけだと考えている。
翌朝、トッドはインディは家の周囲を探索し森の中に住むリチャードという老人と出会う。リチャードはトッドの祖父を知っており、この家で病死したときに遺体を発見したこと、そして祖父が飼っていたゴールデンレトリバーのバンディットの姿はどこにもなかったことを話す。
ある日、トッドが病院に行く間、留守番中のインディは死んだはずのバンディットの霊が現れ、インディを2階の部屋に導くと衣装ダンスの下を見るように示して消える。インディが下に潜り込むとそこにはバンディットの赤いバンダナが隠されていた。口に咥えた瞬間にバンディットがこの家に住む邪悪な何者かに殺されたというイメージが見えたトッドは怯えてソファの下に隠れる。
その夜、眠れずにいたインディは気配を感じリビングに降りる。黒い影のような存在を感じるのだ。それは人間の形をしているが、はっきりとは見えない。影はインディを見つめ、トッドを見つめ、家の中を徘徊している。インディは影を追いかけるが、触れることはできない。ただ、その存在が悪意に満ちていることだけは分かった。
同時に、インディは祖父の幻影も見るようになる。地下室のソファで苦しそうに咳き込む祖父はトッドと同じ病気で苦しみ、この家で死んだことが示唆され、その幻覚を見たインディは怯えて鳴く。トッドの病状は悪化し、インディをお風呂に入れている最中に大量に吐血し共に病院に向かうが、医者からは、癌が再発し、もう手遅れだと告げられる。
トッドの変化
しかし、トッドを蝕んでいるのは病気だけではなかった。家に潜む闇の力が、徐々にトッドを支配し始めていたのだ。トッドはインディに対して攻撃的になり、理由もなく怒鳴りつけるようになる。電話をかけてくるヴェラに対しても冷たく、彼女の心配を拒絶するようになる。
ある夜、インディは恐ろしい光景を目にする。夜中に目を覚ますと、トッドが地下室のドアに頭を激しく打ちつけていたのだ。まるで何かに取り憑かれたかのように、トッドは意識がないまま自分の頭を何度もドアにぶつけている。血が流れ始めても、トッドは止まらない。
インディは必死にトッドの手に鼻を押し付け、彼を正気に戻そうとする。ようやくトッドは我に返り、その場に崩れ落ちる。だが、翌朝になってもトッドはこの出来事を覚えていないようだった。この頃からトッドは医者、妹、そしてインディに対しても攻撃的な態度をとるようになり、まるで別人のように。
トッドは地下室で祖父が残したVHSテープを見つける。そこには祖父のメッセージが録画されていた。祖父もまた、この家で何かに苦しめられていたようだ。彼は病気と闘いながら、見えない存在との戦いも強いられていた。トッドはテープを見ながら、自分が祖父と同じ道を歩んでいることに気づき始める。
黒い影はついにトッドにも見えるようになり、インディは、トッドが危険にさらされていることを感じ取っていた。
結末ネタバレ:別れ
ある夜、黒い影がトッドに近づくのを阻止するため臨戦体制に入るインディは誤ってトッドの手を噛んでしまう。トッドは痛みで目を覚ますが、容態が急激に悪化し、彼は血を吐きながら床に倒れると黒い影がトッドに近づきインディは部屋の外に出されて扉を閉められてしまう。
出てきたトッドは黒い影に支配されているのか、大雨の中インディを庭の鎖に繋いで放置すると再び家に戻っていく。残されたインディは黒い影に何度も攻撃を受け邪魔されながら鎖を解く。
目を覚ましたトッドはすっきりした様子でインディを抱きしめ、どこに行っていたんだ?と呟き一緒に眠る。
インディが気配を感じて目を覚ますと、眠っている自分自身を不思議そうに見つめるトッドの姿だった。
トッドはベッドに眠る自分を見た瞬間、背後から現れた黒い影がトッドの首に犬の鎖を巻き付けると強引に地下室まで引っ張っていく。インディはすぐに地下室の奥深くまで勇敢に走り暗闇で倒れているトッドを引っ張り出し、現れた黒い影から救出に成功する。
しかし、勝利は一時的なものに過ぎなかった。泥だらけで汚れたトッドはインディに「良い子だ(good boy)」とつぶやいた後、「もう助からないんだ」と伝えると黒い影になって消えてしまう。
翌朝、地下室に閉じ込められていたインディを助け出したのは妹のヴェラだったが、彼女の声は涙で震えていた。寝室では安らかな顔で横たわり亡くなっているトッドの姿が映し出される。
『Good Boy』作品情報
映画『Good Boy』を手がけた監督と主要キャストの情報を紹介する。本作は新人監督による長編デビュー作でありながら、革新的なアプローチと3年間に及ぶ制作期間によって、ホラージャンルに新たな地平を切り開いた作品だ。
興行収入
本作は2025年10月3日にIFCとShudderにより劇場公開され、オープニング週末で990,000ドルを記録した。インディペンデント映画としては堅調なスタートを切り、その後も口コミで評判が広がり続けている。限定公開からスタートしたが、観客の需要に応えて上映館数を拡大した劇場もあった。
ベン・レオンバーグ監督情報
ベン・レオンバーグは、本作『Good Boy』で長編映画監督デビューを果たしたアメリカの映画監督。これまでに短編映画『The Fisherman’s Wife』(2016)、『Bears Discover Fire』(2015)などを手がけてきた。短編作品では監督だけでなく、脚本、プロデューサー、撮影監督、編集など多くの役割を担ってきた多才な映像作家だ。
本作の制作にあたり、レオンバーグは自宅を撮影場所として提供し、妻のカリ・フィッシャーと共に3年間かけて撮影を行った。主演のインディは監督自身の愛犬で、訓練された俳優犬ではなかった。そのため、インディから自然な演技を引き出すために400日もの撮影日数を要した。レオンバーグ自身も俳優として出演しており、インディと共演するシーンでは、顔を映さない撮影技法によってトッド役を演じている。声の演技は別の俳優シェーン・ジェンセンが担当した。
レオンバーグは、犬の視点を忠実に再現するため、すべてのショットをインディの目線の高さである地面から19インチ(約48cm)の位置から撮影することにこだわった。また、インディが出演しないシーンは一切作らず、すべてのシーンにインディが登場するか、インディの視点から撮影するという厳格なルールを設けた。この徹底したアプローチが、本作の独特な没入感を生み出している。
主演インディ(犬)情報
本作の真の主演は、ベン・レオンバーグ監督の愛犬であるノヴァスコシア・ダック・トーリング・レトリバーのインディだ。インディは訓練された俳優犬ではなく、ただの家庭犬だったが、3年間の撮影を通じて驚異的な演技を見せた。
インディの演技は、CGIや特殊効果、音声の吹き替えなしに、完全に自然な犬の行動として撮影された。監督はインディの注意を引くために様々な技術を使ったが、インディ自身は映画を撮影していることを理解していなかったという。それにもかかわらず、カメラの前で見せた表情や動きは、まるで台本を理解しているかのように物語にぴったりと合致していた。
特に印象的なのは、インディの目の演技だ。彼の探るような視線、恐怖に満ちた表情、飼い主への献身的な愛情が、すべて自然な形でカメラに捉えられている。雨のシーンでは、濡れた毛並みがインディをより悲しげに見せ、感情的なインパクトを高めている。監督によれば、「犬を悲しく見せたいなら、水をかければいい」とのことだ。
インディの演技は批評家と観客から絶賛され、SXSWでは史上初の「Howl of Fame」賞(最優秀犬演技賞)を受賞した。多くの批評家が「史上最高の犬の演技」と評価し、アカデミー賞にノミネートされるべきだという声も上がっている。インディは間違いなく、ホラー映画史に残る名演を見せた犬として記憶されるだろう。
主演トッド役「シェーン・ジェンセン」情報
シェーン・ジェンセンは、トッドの声を担当した俳優。画面上ではベン・レオンバーグ監督自身がトッドの身体を演じているが、ジェンセンの声の演技がキャラクターに命を吹き込んでいる。
ジェンセンは、病気に苦しみながらも愛犬への愛情を失わない若者の複雑な感情を、声だけで表現することに成功している。特に、トッドが悪化していく健康状態や、超自然的な力に影響されて攻撃的になる様子を、声のトーンと呼吸の演技で巧みに表現した。
本作の独特な制作方法により、ジェンセンは通常の俳優とは異なるアプローチを取る必要があった。彼は画面に映らないため、すべての演技を声だけで伝えなければならなかった。この制約が、逆に強力な声の演技を生み出す結果となった。
海外の感想評価まとめ
映画『Good Boy』は批評家と観客の双方から極めて高い評価を獲得した。Rotten Tomatoesでは批評家支持率93%、Metacriticでは71点を記録し、2025年のホラー映画の中でもトップクラスの評価を得ている。IMDbでは6.8点と、観客からも好意的に受け止められた。なぜこの評価になったのか、海外レビュアーたちの評価を見ていこう。
IMDb(総合評価:6.8/10)
①犬が主人公のホラー映画というプロットが素晴らしい。インディは本当に素晴らしい仕事をしており、飼い主を気遣い、あらゆるものから守ろうとする姿が心を打つ。ペーシングも良好で、わずか72分という上映時間だ。実用的な特殊効果も見応えがあり、ジャンプスケアも効果的で怖い。ただし、コンセプトの証明のような感じで、実際の映画としては物足りない部分もある。インディが心配している以外にあまり展開がない。それでも、製作者とインディが次に何をするのか楽しみだ。
②今年最高の映画の一つだ。レビューを書かずにはいられなかった。この映画が相応しい評価を得ることを心から願っている。インディは本当に愛らしい。犬の視点から幽霊物語を作るのはユニークで挑戦的だが、見事に成功している。インディが感じることを感じ、インディが見るものを見る。この映画は不気味で、インディが感じている混乱と恐怖が伝わってくる。彼は飼い主を愛し、献身的な犬だ。何かが起こっていることを知っているが、飼い主に伝えることができない。心を引き裂かれるかもしれないが、効果的なホラー映画だ。
③最初のシーンから、Good Boyは誰がスターなのかを明確にしている。インディが非常に自然に感じられる驚くほど強力な演技で映画を引っ張っている。ストーリーは焦点を絞っており、少人数のキャストで、インディを中心から逸らすものは何もない。シンプルで無駄がなく、期待以上にうまく機能している。Good Boyは外さない。
④映画のすべてのシーンにインディが登場するか、インディの視点から撮影されており、製作者にとって大きな挑戦だった。3年間で400日の撮影が必要だったが、その努力は報われた。光と影を巧みに使った視覚的なパレットが、緊張と不吉な雰囲気を作り出している。インディは、人間の親友への賛辞でもあるこの素晴らしい寓話的ホラー映画の素晴らしい主演だ。このような作品は二度と現れないかもしれない。
Rotten Tomatoes(批評家:93% / 観客:未集計)
①すべての犬愛好家のための独特で予想外に感動的な映画として、消えない印象を残す。ホラーにおける新しい物語の道を開拓することに成功している。視覚的に印象的で、感情的に壊滅的なホラー映画だ。
②この実験的ホラー映画は、その性質上、時々物語の糸を曖昧にするが、非常に独創的で感動的なので、見る価値は十分にある。特に犬愛好家にとっては必見だ。最もシンプルな前提でも、正しい視点でフィルターをかければ非常に特別なものになることを思い出させてくれる。
③今年最高の映画だ。この映画がすべての称賛を受けることを願っている。インディは愛らしく、犬の視点からの幽霊物語を作るのは挑戦的だが完璧に機能している。短編映画ではあるが、ストーリーや感情に不足はない。インディにオスカーを。
Metacritic(総合評価:71/100)
①視覚的に印象的で、感情的に壊滅的なホラー映画として、ジャンルの慣習を避け、独特に不気味で概念的に野心的な体験を提供する。犬の視点という制約が、逆に創造的な強みとなっている。
②もしレオンバーグ監督がインディを人間に置き換えていたら、Good Boyは適度に面白く不気味な低予算ホラーになっていただろう。しかし、可愛らしく愛らしいインディがそれを次のレベルに引き上げた。これがホラーの最高の形だ。人生を違った角度から見るようになる。
③人々とペットの間の強力な繋がりを、これほど見事に反映した映画は少ない。ソウルメイトたちが見せることのできる献身で、最終的に私たちを打ちのめす。インディの揺るぎない忠誠心が、この映画に感情的な力を与えている。
批評家レビュー
映画専門メディアの批評家たちによる詳細なレビューを紹介する。
RogerEbert.com 3.0/4
ロバート・ダニエルズ氏「独創的だが短い飛翔」
ベン・レオンバーグの独創的な犬ホラー映画『Good Boy』には、犬の夢の中に入り込む短いシーンがある。四本足の友人は悪夢を見ており、彼を追い詰める異形に悩まされている。この瞬間はほんの数秒だが、人間の世界から離れて、秘密に満ちた未知の領域へと私たちを引き込む。この簡潔な72分の映画が主人公であるノヴァスコシア・ダック・トーリング・レトリバーのインディの視点をもっと探求してくれればと願うが、この印象的なシーケンスは、Good Boyを魅力的にする一時的な想像力の飛翔を示している。
一度Good Boyが機能している波長を掴めば、蒸気を失いつつあることも感じる。この映画は40分の短編として同等に効果的だったかもしれない。同じメタファーを何度も繰り返し、同じ夜の音を何度も叩く前に、全体の練習が単調になる限界がある。それでも、最後の20分はインディの恐怖と保護本能を、トッドを救うための激しいレースに移植することで着地を決めている。
評価点 インディは表情豊かで素晴らしい子犬で、その探るような目と鋭い動きは、この映画のトリックに慣れてきても私たちを投資させ続ける。インディの自然主義的なアプローチにより、悪魔や病気から飼い主を守るというキャラクターの成功レベルは、実際には重要ではない。子犬にとって飼い主を失うことほど大きな恐怖はないのだ。
批判点 72分という簡潔な上映時間でも、同じパターンの繰り返しによって中盤が少し退屈に感じられる。もう少し犬の視点を深く掘り下げ、犬がどのように世界を知覚するのかをさらに探求できたはずだ。それでも、最後にはインディとこの映画はご褒美に値する。
IndieWire 肯定的評価
ラファエル・モタマヨール氏「今年最高のホラー映画の一つ」
Good Boyは、今年これまでに公開された最高のホラー映画の一つだ。ベン・レオンバーグのデビュー作は、視点主導のホラーにおける特異な体験である。献身的な犬インディの目を通して完全に語られ、彼の恐怖と人間を救おうとする決意が私たち自身のものとなる。この映画は不気味で感情的な体験を提供し、インディからの驚くべき傑出した演技と、レオンバーグの印象的に確信に満ちた初長編を紹介している。
犬の視点からホーンテッドハウス映画を作るというアイデアは、紙の上では奇妙に聞こえるかもしれないが、実行は完璧だ。レオンバーグは、インディが世界をどのように見て、感じて、経験するかを理解することに真剣に取り組んでおり、その献身が画面から輝いている。
評価点 インディの演技は驚異的で、訓練された俳優犬ではないにもかかわらず、完全に自然で説得力がある。3年間、400日の撮影という忍耐強いアプローチが、真に特別な何かを生み出した。視覚的なスタイルも印象的で、低いカメラアングルと光と影の使い方が、犬の視点を効果的に伝えている。
批判点 一部の観客にとっては、ペースが遅すぎると感じるかもしれない。また、ストーリーの一部が曖昧で、明確な説明を好む観客には不満が残る可能性がある。しかし、これらは映画の実験的な性質の一部であり、大きな欠点とは言えない。
The Hollywood Reporter 肯定的評価
フランク・シェック氏「インディの揺るぎない忠誠心が力の源」
この映画に感情的な力を与えているのは、インディの愛する飼い主への揺るぎない忠誠心だ。Good Boyは、ホーンテッドハウスの比喩を犬の文字通りの視点から再構成することで、幽霊物語のジャンルに独特のスピンを提供している。
ベン・レオンバーグの監督デビュー作は、技術的な制約を創造的な強みに変えた好例だ。すべてのシーンをインディの目線から、または彼を中心に撮影するという決定は、映画に独特の親密さと緊張感を与えている。観客はインディの混乱、恐怖、そして愛を直接体験することになる。
評価点 人間とペットの間の絆を、これほど真摯に、そして効果的に描いた映画は少ない。インディの演技は、言葉なしに複雑な感情を伝える能力において驚異的だ。実用的な特殊効果も質が高く、低予算ながら印象的な視覚効果を実現している。
批判点 物語の構造が時折曖昧になり、一部の観客は混乱する可能性がある。また、犬の視点に限定されることで、人間のキャラクターの深みが犠牲になっている面もある。トッドというキャラクターは、もう少し掘り下げられていれば、さらに感情的なインパクトが増したかもしれない。
(The Hollywood Reporter – Good Boy)
Variety 肯定的評価
デニス・ハーヴェイ氏「古いジャンルに新しいトリックを教える」
飼い主に忍び寄る悪意ある力を感知する犬の目を通してホーンテッドハウス映画を体験することには、本質的に斬新なものがある。Good Boyは、使い古されたジャンルに新鮮な視点を提供し、その独創性によって際立っている。
レオンバーグは、限られた予算と長い制作期間という制約の中で、印象的なビジョンを実現した。彼の犬に対する愛情と、このプロジェクトへの献身が、画面全体から感じられる。これは単なるホラー映画ではなく、人間とペットの関係についての深い瞑想でもある。
評価点 概念と実行の両方が称賛に値する。インディの自然な演技は、どんな訓練された動物俳優よりも説得力があり、観客は彼の旅に完全に没入できる。視覚的なアプローチも独創的で、犬の視点を忠実に再現している。
批判点 72分という短い上映時間でも、中盤で少しペースが落ちる。同じ恐怖のビートを何度も繰り返すため、新鮮さが失われる瞬間がある。より多様な恐怖のアプローチや、犬の他の感覚(特に嗅覚)をもっと視覚的に表現できたかもしれない。
個人的な感想評価
好きだが物足りなさが残った。
予告編を見てほしい
悪霊orゾンビから家を守るように描かれている。怪物が主人を狙うのか、主人すらも怪物になって犬に襲いかかるのか、ホラー作品としては女子供よりも弱いはずの犬が一体どんな方法で怪異から身を守るのか!?
ゾンビが執拗に襲いかかってくるのを犬ならではの方法で逃げ続ける作品とかなのかな?
という展開を勝手に期待していたが、本作の中で、犬のインディは一度も影に牙を向くこともなければ、影が襲いかかってくることもない。
あとポスターも見てほしい。

誰がどう見ても、か弱い犬に対し”ゾンビっぽい大量の手”が襲い掛かろうとしていると思うだろうが、この手の数はこの映画の登場人物よりも多く、こんなに怪異やゾンビは存在しない。ちょっとポスター詐欺だよね。マジで、予告編も相まってゾンビっぽいやつから犬がどうやって生き残るんだよ!?ってなるよね。
ならないよ。
マジで、パラノーマルアクティビティ並みに何も起きないよ。
マジで。
敵は黒い影。
影だよ。
ゾンビも死霊も出てこないよ。
影だよ。
もう一度言うよ、本作に登場する怪異は「影」だよ。
影に犬が唸ったりするだけで、犬が工夫して怪異を懲らしめたり、守ったりしないよ。
インディは犬あるあるな何もない方向を見つめ、首を傾げ、唸り、吠えるしかやらない。敵である黒い影もふわふわと素人心霊ビデオみたいにふわっと一瞬だけ映るだけで主張も曖昧で、何がしたいのかも曖昧なまま。
全体的にホラー展開がかなり薄く、雰囲気だけで視聴者に何かを訴えるシーンを多用し、何かに怯える犬の様子を映し出されても、映像以上の興奮とか感動とかがない。ゴールデンレトリバーの幽霊がインディを2階に導くのも、このバンダナで敵を倒して!とかでもなく、ただ悪いことが起きたという示唆を視聴者にするためのアイテムでしかなく、実際のゴールデンレトリバーは地下室で死んじゃっているし。何よりバッドエンドだったし。映画として、エンタメとしての面白さが皆無な低予算インディ映画レベルでがっかりしてしまった。
犬映画で最後は犬も飼い主もハッピーエンドじゃないとダメだろうがよ・・・と陰惨な気分で見終わった。
犬の表情や演技はすごい。でもそれを支える脚本、演出が全てを浅く薄くして作品を台無しにしてしまったようにも感じる。
しかし、犬を主役にしたのは見事。犬は弱く、言葉がない。どれだけ吠えても、どれだけトッドの注意を引こうとしても、彼は理解してくれない。
無力感に苛まれながらも、トッドを守ることを諦めないという意思だけは伝わるため、映画の中でがんばれインディ!と応援してしまったことは何度もある。それだけに、本当に・・・この脚本は・・・残念だ・・・。
ペットを愛するすべての人にとって、この映画は心を揺さぶる体験となる。それは間違いない。
お約束な犬ラブ映画に辟易した人にとっては新鮮な作品に映るだろう。インディの無条件の愛と献身は、言葉以上に雄弁に、犬という存在の素晴らしさを伝えている。最後には多くの観客が涙を流すだろうが、それは悲しみだけでなく、深い感動によるものだ。
犬最高。
グッドボーイ、インディ。
飼い主も助かったらよかったのにね。
まとめ
本記事では、映画『Good Boy』の詳細なあらすじと結末ネタバレ、そして海外での批評家と観客の評価を紹介してきた。
2025年10月3日にIFCとShudderにより劇場公開された本作は、ベン・レオンバーグ監督の長編デビュー作として、犬の視点から描かれた革新的なホーンテッドハウスホラーだ。病気を抱える飼い主トッドと共に田舎の古い家に引っ越した忠実な犬インディが、人間には見えない超自然的な存在から飼い主を守ろうと奮闘する物語である。監督の実際の愛犬インディが主演を務め、3年間400日という長い撮影期間を経て完成した。
海外での評価は極めて高く、Rotten Tomatoesでは批評家支持率93%を獲得し、2025年のホラー映画の中でもトップクラスの評価を得た。Metacriticでは71点という好評価を記録し、IMDbでは6.8点と観客からも好意的に受け止められている。批評家たちは「今年最高のホラー映画の一つ」「視覚的に印象的で感情的に壊滅的」「ジャンルの慣習を避けた独特に不気味な体験」と絶賛した。
RogerEbert.comのロバート・ダニエルズ氏は3.0/4という高評価をつけ、「独創的だが短い飛翔」と表現しながらも、インディの表情豊かな演技と最後の20分の緊張感を称賛している。IndieWireのラファエル・モタマヨール氏は「今年最高のホラー映画の一つ」と評価し、The Hollywood Reporterのフランク・シェック氏は「インディの揺るぎない忠誠心が力の源」と述べた。Varietyのデニス・ハーヴェイ氏は「古いジャンルに新しいトリックを教える」と評価している。
特に称賛されたのは、主演のインディの驚異的な演技だ。訓練された俳優犬ではないにもかかわらず、完全に自然で説得力のある演技を見せ、SXSWでは史上初の「Howl of Fame」賞(最優秀犬演技賞)を受賞した。多くの批評家が「史上最高の犬の演技」と評価し、アカデミー賞にノミネートされるべきだという声も上がっている。インディの探るような目、恐怖に満ちた表情、飼い主への献身的な愛情が、すべて自然な形でカメラに捉えられており、観客は彼の旅に完全に没入できる。
一方で、一部の批評家は、同じパターンの繰り返しによる中盤の単調さや、犬の視点に限定されることでトッドというキャラクターの深みが犠牲になっている点を指摘している。また、72分という短い上映時間でも、より多様な恐怖のアプローチや、犬の嗅覚などの他の感覚の視覚化ができたのではないかという意見もある。
技術面では、すべてのシーンをインディの目線の高さ(地面から約48cm)で撮影するという徹底したアプローチが高く評価されている。この視点の一貫性が、観客をインディの世界に完全に引き込むことに成功した。また、実用的な特殊効果の質も高く、低予算ながら印象的な視覚効果を実現している。光と影を巧みに使った撮影も、緊張と不吉な雰囲気を効果的に作り出している。
製作背景も特筆すべき点だ。レオンバーグ監督は自宅を撮影場所として提供し、妻のカリ・フィッシャーと共に3年間かけて撮影を行った。インディから自然な演技を引き出すために400日もの撮影日数を要したが、その忍耐強いアプローチが真に特別な作品を生み出した。監督自身も俳優として出演し、顔を映さない撮影技法によってトッド役を演じている。この献身的な制作姿勢が、映画全体に温かみと真摯さをもたらしている。
本作は、ホラー映画ファンだけでなく、ペットを愛するすべての人にとって必見の作品だ。犬の視点という革新的なアプローチは、ホラージャンルに新たな可能性を示しただけでなく、人間とペットの間の深い絆を描いた感動的な物語としても成立している。インディの無条件の愛と献身は、どんな言葉よりも雄弁に、犬という存在の素晴らしさを語りかけてくる。観客の多くが涙を流すという報告があるのも頷ける。
Good Boyは、単なる実験的映画ではなく、真に特別な作品だ。3年間という長い制作期間は、単なる忍耐の物語ではなく、愛情の証明である。レオンバーグ監督の愛犬への愛が、この映画のすべてのフレームに込められている。それが、本作を2025年のホラー映画の中でも際立った存在にしている理由だ。犬を飼っている人、かつて飼っていた人、そしてこれから飼おうと思っている人、すべてにとって、この映画は心に深く刻まれる体験となるだろう。
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