
ジェラルド・バトラー主演「ザ・アウトロー」の8年振りの続編となる映画『アウトローズ/Den of Thieves: Pantera』のあらすじ結末ネタバレ解説。IMDb6.3点、ロッテントマト62%と評価された、2025年1月10日公開のアクション・ヘイスト・クライム映画。海外での感想評価や批評家レビューをまとめて紹介。
「ヨーロッパの華麗なるダイモンド強奪作」映画『アウトロー2/Den of Thieves: Pantera』のあらすじ結末までネタバレと海外の感想評価をまとめて紹介する。アメリカで制作された本作は原題『Den of Thieves 2: Pantera』で2025年1月10日に公開され、IMDb6.3点、ロッテントマト62%、メタスコア60/100と評価されたアクション・ヘイスト・クライム映画だ。
舞台は前作の終幕から数年が経過したヨーロッパ。ロサンゼルスの保安官ニック(ビッグニック)の追跡を逃れてベルギーに潜伏していたドニーが、世界最大級のダイヤモンド取引所を標的とした大規模なヘイスト計画に巻き込まれていく。ニックもまた、ドニーを追ってヨーロッパへ渡り、思いもよらぬ形で彼と再会することになる。
本作の監督兼脚本はラッセル・クロウをも魅了した『ア・マン・アパート』(2003年)の脚本を手掛けたクリスティアン・グーデガスト。ビッグニック役には『300』(2007年)で世界的スターとなったジェラード・バトラー、かつてのライバルであるドニー役には『ストレート・アウタ・コンプトン』(2015年)でアカデミー賞候補となったオシェア・ジャクソン・ジュニアが続投した。
今回は、ヨーロッパを舞台に繰り広げられる野心的なダイヤモンド強奪作『アウトロー2/Den of Thieves: Pantera』の結末について徹底解説していきたい。以下の内容は本編の結末のネタバレを含むため、必ず劇場で鑑賞してから読んでいただきたい。また、暴力や犯罪、銃撃戦の描写に関する詳細な解説を含むため、あらかじめご了承いただきたい。
もくじ
前作『ザ・アウトロー』のあらすじ
ロサンゼルスで元海兵隊員のレイ・メリーメンが連邦準備制度理事会から3000万ドルの盗難を計画していることを知った刑事ニックはメリーメンを追跡し、彼らのドライバーをしていたバーテンダーのドニーという男をスパイとして扱い、内部に潜入させ強盗計画の全貌を探らせる。
強盗実行日、廃棄予定の旧札を盗むためドニーは現金輸送車に隠れて侵入、監視カメラを無効化して金を粉砕処理させずにそのままメリーメンの乗ったゴミ収集車で回収するが、ニックの追跡で銃撃戦となりメリーメンはニックに射殺される。
全ては見事に終わったと思われたが、本当の黒幕はドニーで、バーの常連客から銀行の情報をわざとメリーメンに流し、盗んだお金を全てパナマへ金を送金すると、ロンドンに逃亡し、次の犯罪を計画していた。
『アウトローズ/Den of Thieves: Pantera』あらすじ結末ネタバレ
ベルギーで重武装した警察官がアントワープ国際空港を訪れると、有無を言わさずフラッシュバンで関係者たちを威嚇すると素早く全員拘束すると、航空機に積み込まれていた金庫を手早く開けると、赤いダイヤモンドを奪取する。
警察官に偽装した彼らは通称「パンサー」と呼ばれる盗賊チームで団長のジョヴァンナ(イヴィン・アフマド)を筆頭に、スラヴコ(サルヴァトーレ・エスポジト)、ドラガン(オルリ・シューカ)、マルコ(ディーノ・ケリー)、ヴック(ヴェリボル・トピック)、そして前作『ザ・アウトローズ』でニックの追跡を振り切って逃亡していたドニー・ウィルソン(オシェア・ジャクソン・ジュニア)のチームである。ジョヴァンナが監視カメラを操りながら、メンバーたちを誘導してコンテナに車ごと乗り込みそのままトレーラーに乗り換えて逃亡に成功する。
ロサンゼルスではロサンゼルス保安官代理のニック・オブライエン(ジェラード・バトラー)が、アントワープでの盗難事件の報告を受ける。ニックはこれがドニーの仕業だと確信し、上司に調査を申し出るが、連邦準備金庫からの盗難事件を公に認めることになるため、調査の継続を厳しく禁止されていた。
しかしニックは動じることなく独自調査を開始し、前作の首謀者メリーメンの元恋人のホリー(メドウ・ウィリアムズ)に会いに行き、ドニーたちが資金隠匿地「パナマ・ディアマント・バンク」の情報を聞き出す。
フランス最大のダイヤモンド取引所
パンサー・マフィアはフランスのニースに潜み、ドニーは「ジャン=ジャック」という偽名を使って次の目的である世界最大級のダイヤモンド取引所(WDC)からの大規模盗難の下見をしていた。ドニーはジョヴァンナからの紹介でWDCのバンク・マネージャーの妻シャヴァ(ナズミーエ・オラル)と合流すると、共に建物に入り金庫室への侵入ルートを調査するが、世界最大のセキュリティを誇る複雑な警備システムと金庫へのアクセスの困難さを実感したドニーはジョヴァンナに困難な計画だと報告する。
そんな中、赤いダイヤモンドの持ち主である地元イタリアンマフィアのボスであるオクトパス(アドリアーノ・キアラミダ)は、パンサーへの報復作戦するために水面下で情報収集を開始していた。
ニック「俺も金が欲しい」
ニースへ到着したニックはベルギーの刑事フーゴ(ヤセン・ザテス・アトール)の協力のもとパンサー・マフィアに関する重要な情報を得る。ニックは早速ドニーのアパートに侵入して帰宅したドニーを迎えると共に食事をする。そこでニックは「もう正義のために働く気力がない。金が欲しい」と、かつての敵であるドニーに異例の提案をする。
ドニーはニックを信じ、二人でパンサー・マフィアの屋外クラブに連れていき互いに紹介が終わると、ニックはジョヴァンナと良い感じに踊り始めるが、これに激怒したジョヴァンナの元恋人マルコ(ディーノ・ケリー)たちと殴り合いの喧嘩になり店を追い出されたタイミングで、イタリアンマフィアのメンバーに連れ去られてしまう。
その矢先、目隠しを外されたニックとドニーは船の上にいた。オクトパスはドニーたちに赤いダイヤモンドを返さなければ殺すと脅迫した後、船から二人を突き落として立ち去る。二人はなんとか海を泳ぎ海岸にたどり着いた後、二人は解散する。
裏切り
ニックとドニーが再びパンサーとして集合した時、ジョヴァンナから、二人と乱闘したマルコとヴックがヘイスト計画から脱落し、敵対関係にある別のギャング「タイガース」と手を組んだという裏切りの報告を聞かされる。
ニックとドニーはWDCを訪れセキュリティシステムに盲点があることに気付き、計画を練り直すと、再びシャヴァの手引きでニックはセキュリティ契約者として建物内に潜入。WDCのセキュリティ担当者たちの気の緩み、監視カメラの位置、ダイヤモンドまでの正確な経路と位置を特定する。
一方、マルコとヴックはタイガースと組みかつてのチームメンバーたちへの復讐を計画していた。
実行
実行日はイタリア人全員(WDCのセキュリティチームも試合に集中している)が注目していたサッカーの試合中に行う。ニックを含むパンサーたちはWDCの隣接ビルから侵入作戦を開始。ジョヴァンナが監視カメラと警備システムを停止させながらメンバーたちを誘導し、ビルの屋上からWDCへ侵入に成功。サッカーに夢中な監視員を横目に監視カメラを数秒止めて数秒進み、なんとかダイヤモンドと莫大な現金を奪取する。
だが突然、誰かが近づいているという警告がジョヴァンナから入り、メンバーたちは急いでビルから脱出するが、ニックが橋を渡ろうとしたが橋が壊れて落下してしまい、警備員に勘づかれてしまう。残されたニックは警備員の一人を撃つと、ニックは警備員が防弾チョッキを着込んでいることを確認してなんとか建物から脱出しメンバーと合流する。
地下で車を乗り換え逃亡に成功したかのように見えたパンサーたちだったが、国境へ向かう地下道でマルコとヴック、そしてタイガースのギャングたちが車で並行してニックたちに激しい銃撃を行う。
ニックとドニーたちは負傷しながらも何とか敵の大多数を排除するが、衝突事故によってクラッシュし車が止まってしまう。絶体絶命の状況でマルコとヴックが車を降りて銃を構えながら近づいてきた瞬間、崖の上からの狙撃でマルコとヴックは射殺される。驚いたニックとドニーたちが車を降りると、援護してくれたのがイタリアンマフィアだと気がつきお礼の眼差しを向けると、歩いてきたイタリアンマフィアのボスのオクトパスに赤いダイヤモンドを引き渡すと、何事もなかったかのように別れる。
結末ネタバレ:最後に笑うのは
パンサーのチームメンバーたちが勝利を祝っていると、武装した警察が突然現れメンバー全員が逮捕される。ドニーとジョヴァンナが車両に連れ込まれる際に、ニックだけが手錠を外され、彼が潜入捜査をしていたことに気がつき、激しい怒りの視線を送りながら連行されていく。
後日、刑務所に収監されたドニーを面会しにニックが現れ、ニックは自分がずっとドニーを騙していたこと、しかし二人の友情だけは本物であったことを告白する。
ドニーが別の施設に移送される際、突然武装へりがバスを取り囲み、ドニーを連れて立ち去る。ドニーが連れてこられたのはイタリアンマフィアのアジトで、オクトパスが出迎えて熱い歓迎を受ける。そこでドニーはWDCでの強奪でのスキルに感動し、今後俺たちのためにその腕を活かせと言われる。
ニックにドニーから”脱獄したよ、また会おうお嬢さん”とニックの口癖を真似たメッセージが届き、ニックはこのメッセージを読んで微笑むのだった。
参考:The Movie Spoiler – Den of Thieves 2: Pantera
『アウトロー2/Den of Thieves: Pantera』作品情報
本作の製作・公開に関する基本情報と、監督・主演俳優の背景について紹介する。アクション映画ファンにとって押さえておくべき作品であり、前作の成功を受けて制作された期待の大型続編である。
興行収入
『アウトロー2/Den of Thieves: Pantera』は、2025年1月10日のアメリカでの劇場公開後、全世界で5,840万ドルの興行収益を記録した。製作費4,000万ドルに対して、約1.46倍のリターンを生み出した。アメリカ・カナダでは3,600万ドル、海外では2,240万ドルの売上を達成。初週末は1,500万ドルを記録し、前作の1,520万ドルに肉薄する成績となった。ストリーミング配信サービスNetflixへの提供が決定しており、デジタル展開の強化により、今後さらなる収益拡大が見込まれている。
クリスティアン・グーデガスト監督情報
クリスティアン・グーデガスト(1970年2月9日生まれ)はロサンゼルス出身の映画監督・脚本家・プロデューサー。UCLA映画学部を優秀な成績で卒業し、彼の卒業制作『シャドウ・ボックス』は学生映画部門の最高賞を受賞。当初はラップ・ミュージック・ビデオの監督として活動していたが、1993年にオリバー・ストーン監督に売り込んだ脚本『ブラック・オーシャン』によって本格的な映画製作の道を開く。『ア・マン・アパート』(2003年)の脚本や『ロンドン・ハズ・フォールン』(2016年)の脚本など、複数の大型作品に関わってきた。グーデガストの代表作は『アウトロー』(2018年)であり、本作では監督・脚本を兼任。序盤から脱力のない緊張感と、キャラクターの内面描写のバランスが高く評価されている。ブラジリアン柔術の黒帯保持者であり、格闘技の知識もアクション映画制作に活かされている。
主演 ビッグニック役「ジェラード・バトラー」情報
ジェラード・バトラー(1969年11月13日生まれ)はスコットランド出身の俳優・映画プロデューサー。法律を学んでいたが、演劇の道へ転身。1990年代の地味な脇役から始まったキャリアが、2007年の『300』におけるスパルタ王レオニダス役で世界的なスターダムへと駆け上る。その後『ファントム・オブ・ザ・オペラ』(2004年)や『P.S. アイラヴユー』(2007年)などの作品に出演。2010年代からは『ハズ・フォールン』シリーズ(『オリンポスよ永遠なれ』『ロンドン・ハズ・フォールン』『エンジェル・ハズ・フォールン』)でマイク・バニング役を演じ、アクション映画の主流スターとしての地位を確立。2018年の『アウトロー』では疲弊した保安官ニック役を完璧に体現し、観客の支持を獲得。1月の映画化権を掌握する男として、バトラーはハリウッドで最も信頼できるアクション俳優として君臨している。
主演 ドニー・ウィルソン役「オシェア・ジャクソン・ジュニア」情報
オシェア・ジャクソン・ジュニア(1991年2月24日生まれ)はアメリカの俳優・ラッパー。ロサンゼルス出身で、ウッドランド・ヒルズで育つ。伝説的なラッパー・アイス・キューブを父に持つ。映画デビューは2015年の『ストレート・アウタ・コンプトン』で、実在の父親アイス・キューブを演じた。この演技は高く評価され、2016年の画像賞で助演男優賞を受賞。同年、サム・アラミ・アダベシ監督の『インガード・ゴーズ・ウエスト』でも注目を集める。2018年の『アウトロー』では、ドニー・ウィルソン役を担当し、ジェラード・バトラーとの緊迫したやり取りで作品の中核となる。その後『ゴジラ キング・オブ・ザ・モンスターズ』(2019年)やオビ・ワン・ケノービ』(2022年)『コカイン・ベア』(2023年)など、多様なジャンルの作品に出演。父親の影響下から独立した俳優として確固たる実績を構築している。
海外の感想評価まとめ
『アウトローズ/Den of Thieves: Pantera』は、前作の成功を受けて制作された続編として、海外の批評家から賛否両論の評価となっている。ロッテントマトでは62%(批評家)、ユーザースコアでは高評価、メタスコアでは60/100と、前作を上回る評価となった。
アクション映画としての完成度の高さ、バトラーとジャクソン・ジュニアの化学反応、ヨーロッパを舞台にした洗練された映像が評価される一方で、冗長なランタイム、複雑なプロット、キャラクター関係の曖昧さについては批評家から改善を求める声が挙がっている。なぜこの評価になったのか。海外レビュアーたちの評価の詳細を見ていこう。
IMDb(総合評価:6.3/10)
①本作は『アウトロー』シリーズが新たなステージへ移行したことを示す作品である。確かに前作との比較では議論の余地があるが、ヨーロッパを舞台にした視点転換と、ニックとドニーが対立から協力へ進む過程は新鮮な面白さを提供している。映像は優れており、サウンドデザインも前作を上回るクオリティだ。ただし脚本の甘さ、キャラクターの平坦性、意味のないサブプロット、終盤の不快なスコアはこれらの成功を台無しにしている。結論として、前作ほどの緊張感が失われ、二番煎じの印象を拭いきれない。
②『アウトローズ』のヘイスト・シーン自体は秀逸だが、物語全体では多くの問題を抱えている。序盤のセットアップは完璧に機能し、視聴者を緊張の連続へ導く。しかし中盤以降、無駄な会話シーンが蓄積され、結果として映画全体がダレてしまう。バトラーの演技は無理していないが、ジャクソン・ジュニアとの化学反応に欠けた部分がある。ユーザーたちが望んだのは、もっと緊張感の高い会話、より高いステークスの対立である。本作は「楽しい映画」では有ったが、「傑作」にはほど遠い。
③好き嫌いの分かれる続編。ストーリーの仕掛けは面白く、監督の意図は伝わってくるが、実際のところ冗長だ。144分の尺の中で、繰り返される退屈なセットアップシーンがあります。アンテウェルプの警備システムの詳細説明は興味深いが、人物関係の掘り下げはあまり効果的とは言えない。映像テクノロジーは美しく、逃走シーンのアクションも迫力がある。しかし総じて、前作の『アウトロー』の方が、より洗練された映画経験を与えてくれた。
④本作は『ファストアンドフューリアス』シリーズのように、敵が友人へ転化していく公式を踏襲している。ニックとドニーの友情の構築プロセスは丁寧に描かれ、二人の絆はリアリティを持つ。ただし、終盤の連続する転開(逮捕、脱獄、マフィア)はやや突然で、視聴者に消化不良を与える。バトラーとジャクソン・ジュニアの相互作用は、映画の魂であり、彼らがいなければこの映画は完全に失敗していただろう。
IMDb – Den of Thieves 2: Pantera
Rotten Tomatoes(批評家:62% / 観客:72%)
①本作『アウトローズ』は、前作の自己反省的なトーンを廃棄し、より軽妙で遊び心のある方向へシフトした。評論家たちはこのトーンの変化を賞賛する声が多い。「パパ映画」としての立場を明確にすることで、無駄な自意識から解放された。結果として、映画はより楽しくなった。ヨーロッパロケーションの美しさ、バトラーのカリスマ、そして二主人公の関係構築という核は機能している。ただし、ランタイムの長さと冗長なセットアップは、観客の忍耐力を試す。最後の90分は傑作に値するが、最初の1時間は軽く飛ばしても問題ないだろう。
②『アウトローズ』は『ロニン』と『シャルム』の亡き良き伝統を踏襲する野心的な試みである。監督グーデガストは、マイケル・マンやジョン・ガーディアンのような巨匠を参照しながら、自分独自の映像言語を構築しようとしている。その努力は評価に値するが、完全な成功とまではいかない。金庫破りの計画性と実行の映像化は見事だが、プロット全体の構造が乱雑だ。バトラーのキャラクターが道徳的な葛藤から解放されたことは、前作のテーマの放棄を意味し、評者は複雑な感情を抱く。
③『アウトローズ』を取り巻く議論の多くは、その過剰なランタイムに集中している。映画は素晴らしい瞬間を多く含んでいるが、冗長性が映画の命である。バトラーとジャクソン・ジュニアのボディ・ボンディング・シーンは楽しいが、映画の構成全体では負荷となっている。ヨーロッパのロケーション撮影や警備システムの視覚化など、個々の要素は優れているが、映画全体は「楽しいが退屈」というジレンマを逃れられない。
Rotten Tomatoes – Den of Thieves 2: Pantera
Metacritic(総合評価:60/100)
①『アウトローズ』はメタスコア60を受けたように、「混合的な評価」を象徴する作品である。前作『アウトロー』(2018年)の成功から7年が経過し、続編への期待値は高かったが、本作は別の方向性を選択した。アクションと緊張感を削減し、キャラクター間の関係構築にウェイトを置いた。この選択は一定の評価を得ているが、一方で「ヘイスト映画」としての本質を失いかけているという批判も生じている。映像は優美で、バトラーのキャラは洗練されているが、全体として「娯楽映画の質」に留まっている。
②『アウトローズ』は「ジャンク・フード・シネマ」の定義を体現する映画である。つまり、栄養のない楽しさで満たされた作品ということだ。本作では、テンション感よりも、ユーモアと軽妙さが優先されている。グーデガスト監督は意図的に、前作の厳粛さを払拭し、より親しみやすいトーンを選択した。その結果、バトラーとジャクソン・ジュニアの掛け合いは魅力的だが、映画全体では思想的な深さが失われている。評者たちは作品を「楽しい時間つぶし」として評価しながらも、その薄さに物足りなさを感じている。
③『アウトローズ』における評論家たちの異論は、実は映画制作の本質的な問題を示唆している。グーデガストが『マイケル・マン的なシネマ』を目指しているのであれば、その野心は果たせていない。むしろ、映画は「『ロニン』風の当て馬映画」の域を出ていない。144分という長尺の中で、何度も同じパターンが繰り返され、新鮮さが損なわれている。終盤の「三重の結末」は、映画の成功ではなく、構成上の失敗として認識されている。グーデガストが今後の作品で学ぶべき教訓は、「野心は良いが、簡潔さが必須」ということである。
Metacritic – Den of Thieves 2: Pantera
批評家レビュー
『アウトローズ/Den of Thieves: Pantera』は、海外の主要映画雑誌や批評サイトからも多くの評価を集めている。以下、各批評家による詳細な評論を紹介する。
Variety 高く評価
オウェン・グライバーマン氏「本作は『高級犯罪映画』の満足のいく擬似表現である」
バトラーがキャリアの中で最高に煙草をふかすシーン。それが本作における彼の存在証明であり、彼がいかに大スターであるかを示す瞬間なのだ。『アウトローズ』は、前作『アウトロー』(2018年)から7年のギャップを埋める続編として機能している。本作は『マッチスティック・メン』的な狡猾さと『熱い砂漠の欲望』的な重厚さをバランスよく配置し、ニック・オブライエン役のバトラーが疲労困憊した保安官像を完璧に体現している
。ドニー・ウィルソン役のジャクソン・ジュニアも、国際的な洗練を身につけ、二人の共存在は物語の中核を成す。監督グーデガストは、無責任に見える脚本の甘さを持ちながらも、情動的な瞬間を映像化する力量がある。映画は『マン・アパート』的な暴力美学と『ダーティ・ハリー』的なヒーロー像を融合させ、『レタル・ウェポン』のジャンル的正統性を保ちながら進行する。全体的に、バトラーはこれをハリウッドにおける最堅牢なフランチャイズへ昇華させるポテンシャルを示している。
評価点 グーデガスト監督はプロット上の荒唐無稽さをどこ吹く風と、強固な映像感覚とキャラクター造形で補っている。バトラーのカリスマとジャクソン・ジュニアの成熟した演技が、映画の「説得力」を支える。ヨーロッパロケーションの選択は正解。二人のやり取りは、映画の心臓であり、すべてはここから生まれ出ている。
批判点 プロットの説得力の欠落。金庫破りの計画は精密だが、その周囲に展開する事件たちは都合よく配置されすぎている。終盤の連続する逆転劇(逮捕→脱獄→マフィア関与)は唐突で、観客の消化不良を招く。映画はあまりに「次のシークエル」への道筋を想定しすぎており、本作のみでの完結性に欠ける。
Entertainment Weekly 肯定的評価
「ニックとドニーの再会は、映画の最大の魅力である」
『アウトローズ』は、前作以上にキャラクター中心の映画へシフトしている。派手なアクションよりも、二人の男の信頼と裏切り、そして奇妙な友情の形成が焦点となる。グーデガスト監督は、このテーマを丁寧に追跡し、観客をそれに同調させるだけの映像力を備えている。バトラーは酒浸りのニック役で少しオーバーにキャラ作りをしているが、それが逆に映画に「人間らしさ」を与えている。
評価点 ヘイストそのものの映像化は秀逸。金庫破りのシーン、逃走劇のキネティックな映像は、映画の中核をなす。二人の関係構築の細部は丁寧に描かれている。
批判点 ランタイムが長すぎる。冗長なセットアップシーンが多すぎて、映画のテンポが台無しになっている。終盤の複雑すぎるプロット展開は観客を困惑させる。
Deadline Hollywood ポジティブ評価
ピート・ハモンド氏「バトラーは理想的なアクション・ビークル」
『アウトローズ』は、バトラーというスターそのものの価値を証明する映画である。彼のルックス、声、存在感がすべてを支える。脚本が平凡でも、撮影地がありきたりでも、バトラーの魅力が観客を映画館へ足を運ばせるのだ。ジャクソン・ジュニアも堂々とした演技を展開し、二人の関係は信じるに足りる。本作は「才能あるフィルムメーカーが余分な要素を詰め込みすぎた結果」だが、それでもなお、娯楽映画として十分に機能している。
評価点 バトラーのキャリアを代表する作品の一つ。彼のカリスマが全ての欠陥を覆い隠す。ヨーロッパロケーションでの撮影は美しい。
批判点 脚本に深みがない。映画は単なる「バトラーをスターとして保つためのビークル」という印象を与える。
The A.V. Club 肯定的だが慎重な評価
マット・シミコヴィッツ氏「『アウトローズ』はトーンの転換に成功している」
グーデガスト監督は、敢えて『アウトロー』の自己反省的な道徳性を放棄することで、より「楽しい映画」へと転換させた。その判断は評価に値する。ただし、その代わりに映画が「重み」を失ったことも事実だ。バトラーがビッグ・ニックをより人間的で親しみやすいキャラへと変化させたことは、映画の軽妙さを助長している。ジャクソン・ジュニアとの掛け合いは実に楽しく、二人の共演を見るだけで映画の価値がある。ただし、映画全体の構成と長尺のバランスは失敗している。
評価点 トーン転換の決定は勇敢。バトラーの性格変更は説得力がある。アクションシーンのクォリティは高い。
批判点 長さが問題。冗長なセットアップが映画をダレさせている。道徳的な複雑性が消滅した。
個人的な感想評価
アウトローズの予告を見て、履修していなかった前作「ザ・アウトロー」を視聴し、完成度の高さに驚いて慌てて観たが、全体的な完成度は前作の方が好みだった。冒頭からニックが刑事であることを捨てて犯罪組織に入る展開はわかってはいいたが鳥肌が立った。もちろん多少は潜入捜査かなと思うようなこともあったが、それを思わせないドニーとの友情、相変わらず緊張感のあるリアルな銃撃戦と銀行強盗のテンポの良さは見事だった。
前作があまりにも面白すぎた。不良刑事ニックの先の読めない行動、ドニーをスパイにして慎重に行動すると思いきやレストランで突然話しかける緊張感のあるやり取り、冷酷な男レニーレンとの射撃場での無言のやり取りは、対極的な二人のライバル関係が読み取れ、最後の死に様も何もかもが重く緊張感があり目が離せなかった。そして最後のドニーが黒幕だったというオチは少し拍子抜けしたのは事実だが、スティングのような軽妙な肩の力が抜けるような心地よさも残されており、小気味よく映画を終えることができた。
が、続編はすでに黒幕であるドニーが主役級に格上げされ、それを追うニックとの互いに化かし合うルパンと銭形警部のような関係にしようと展開することに最後まで抵抗感があったのも事実である。そこにマフィアと裏切ったメンバーが半端に登場して蛇足のような絡みのせいで、全体的な完成度が薄まったと感じた。盗んだダイアをもらえればそれで良いと思うマフィアの感性と、とりあえず邪魔してくる裏切った奴らの行動原理が全く理解できないままエンディングを迎えてしまったため、ただのかませ犬、添え物のような映画の邪魔な苦味になっている。
しかし、『アウトローズ/Den of Thieves: Pantera』は前作の延長線ではなく、前作のダークなクライムアクションから少しばかりミッション・インポッシブル的な軽快な方向への舵切りを試み、前作の敵同士の間から、友人へという関係性の転換は視聴者への良い裏切りとなり緊張感を生み出すことに成功している。ただし、それは前作を見ているという大前提のもとに成り立っているため、前作未視聴の人にとっては、突然追いかけてきた刑事が冒頭5分で犯罪組織の仲間入りをしたいとか言い出すだけで、浅い感情移入しかできないという点はどうかなと思う。
彼は前作ザ・アウトローで奥さんに離婚され、ついでにすでに彼氏がいることもわかり、割と私生活は壊滅的。しかも彼も彼で仕事一筋な本当に優秀な刑事なのに、しっかりと浮気しまくっているという擁護する隙がないカス野郎であること、などの情報を知っていると、彼がドニーに対し「正義に疲れた、金が欲しい」という言葉の重さに納得することができるのだ。
前作で敵同士だったバトラーとジャクソン・ジュニアの化学反応が本作の最大の資産であり、彼らのやり取りなしには映画は完全に崩壊していただろう。
グーデガスト監督は間違いなく才能のある映画人だが、本作では「簡潔さ」という編集上の判断を失ってしまった。映画は「楽しい時間つぶし」としては機能するが、「傑作」の地位には達していない。
まとめ
本記事では、『アウトローズ/Den of Thieves2: Pantera』の完全なネタバレ解説、作品情報、海外の詳細な感想評価を紹介してきた。映画の期待値としては、前作『アウトロー』(2018年)の成功から7年を経た続編として、さらなる高みへ到達することが想定されていた。
しかし本作が選択した方向は、アクション映画としての激しさよりも、キャラクター間の関係構築と心理的な複雑さへのシフトであった。この選択は評論家たちから「野心的である」と評価される一方で、「実現に失敗した」という批判も同等に多く寄せられている。IMDb6.3点、ロッテントマト62%、メタスコア60/100という数字は、映画がおおむね「中程度の価値」を持つ娯楽映画であることを示唆している。海外での注目度は中程度であり、アクション映画ファンからは「及第点」とは言えど、映画評論家からは「物足りなさ」を指摘される作品となっている。ジェラード・バトラーの「1月の王様」としての地位は本作でも揺るがないが、映画全体としての評価は、前作以上には上昇していない。本作が観客に与えるものは、「気楽に楽しめるアクション・エンターテイメント」という最大公約数的な価値に留まっているのが実情である。







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