映画『ブラック・フォン2』あらすじ結末ネタバレと海外の感想評価まとめ

「前作を凌駕する最高の恐怖を体感しよう」続編を上回る高評価を獲得した映画『ブラック・フォン2』のあらすじ結末までの詳細ネタバレ解説と海外での感想評価をまとめて紹介する。本作は前作『ブラック・フォン』の3年後、1982年を舞台に展開する続編として、シリーズの設定を大きく拡張した作品だ。

ジャンルはホラー・ミステリー・スリラーで、制作国はアメリカ。ユニバーサル・ピクチャーズとBlumhouseプロダクションズが手がけた作品で、R指定(強い暴力表現、ゴア、ティーンの薬物使用、言語表現が理由)となっている。

監督はスコット・デリクソン氏が再び務め、脚本はC・ロバート・カーギル氏とデリクソン氏が協同で執筆。主演はメイソン・テムズがフィニー・ブレイク役を、マデレイン・マグロウがグウェン・ブレイク役を演じ、悪のペルソナ「グラッバー」はエタン・ホークが怪演した。主要キャストではデミアン・ビチル、ミゲル・モラ、アリアナ・リバス、ジェレミー・デイヴィスらが参加している。

本記事では、映画『ブラック・フォン2』の結末まで含めた完全ネタバレを掲載している。以下のコンテンツは映画本編の重大な展開や結末に関する詳細なネタバレを含んでおり、映画館で鑑賞してから読むことを強く推奨する。 また性暴力に関する表現の考察も含まれるため、ご注意いただきたい。


前作BLACKPHONEのあらすじ

1978年、デンバー郊外を恐怖に陥れる少女誘拐犯「グラッバー」が街中で子どもたちを拉致していた。

13歳のフィニー・ブレイク(メイソン・テムズ)は学校では常にいじめられており、唯一の友人ロビンに助けられている。フィニーの妹グウェン(マデレイン・マグロウ)は母親から受け継いだ超能力で、グラッバーの犯行を予知する悪夢を見ていた。父親テレンス(ジェレミー・デイヴィス)は二人に日常的に暴力を振るっていた。

ある日、グラッパーに目をつけられた、ロビンが消え、フィニーも拉致される。

フィニーが拉致された防音された地下室には、切られた黒い電話だけが放置されていた。

黒電話が鳴り始め、電話をとるとグラッバーの過去の被害者たちの幽霊が次々と現れ、彼らが脱出するために使った道具や方法を伝授してくれる。ブルースという少年の幽霊は地下トンネル掘削を勧め、別の被害者たちは様々な脱出方法を指南する。一方、グウェンの悪夢がグラッバーの居場所を警察に導くことに成功する。

フィニーは警察が駆けつけてくる中、自分で仕掛けた罠を活用してグラッバーに立ち向かう。電話の受話器を武器にしたフィニーは、被害者たちの幽霊のサポートを受けながら、グラッバーを倒す。兄妹は再会し、警察に保護される。映画は自信に満ちた新しいフィニーが学校で自分を「フィン」と名乗るシーンで終わる。

ブラック・フォン2は前作から3年後から始まる・・・。

『ブラック・フォン2』物語結末ネタバレ

ここから先は『ブラック・フォン2』の最重要となる展開とラスト結末を含む完全ネタバレとなる。映画館での鑑賞後の参照を推奨する。

本作は前作から3年が経過した1982年のコロラドを舞台に、グラッバーという殺人鬼から逃げ延びた少年フィニーと、彼の妹グウェンが再び悪夢に導かれるという非情な物語である。

前作の傷跡

前作でグラッバー(エタン・ホーク)を殺したフィニー・ブレイク(メイソン・テムズ)は、その英雄的な行為によって全米で話題となった生存者の少年だった。

しかし3年経った今、彼は全く別の人間になっていた。

17歳になったフィニーは、学校では他の生徒に暴力を振るい、自宅では大麻を吸って無気力で自堕落な生活を続けていた。実は彼もいまだに前作の事件の影響で当時のフラッシュバックで苦しみ、グラッパーの幻覚に苦しんでいる被害者で、フィニーは殺人鬼グラッパーとのトラウマと向き合うことを避け続けているだけなのだ。
その一方で彼の父親テレンス(ジェレミー・デイヴィス)はグラッバーの事件を機に酒を断ち、もはや息子たちに暴力を振るうことはなくなっていた。

フィニーの妹グウェン(マデレイン・マグロウ)は15歳になり、学校ではオカルト研究に所属している。フィニーは前作から発揮していた予知夢や死者との会話など超自然的な力であり、この力を解明するため心理学や超自然的、スピリチュアルな本を読み漁っているため、クラスの女子からは距離を置かれていた。

グウェンはエルネスト(ミゲル・モラ)という青年と親しい。彼はロビン・アレジャーノという前作の被害者の弟で、ロビンは生前、グウェンに密かに好意を寄せていたが、今グウェンはその弟エルネストに惹かれ始め、互いに意識をしている良い関係を築いている。

母からの呼びかけ

ある日、フィニーが家の外に公衆電話の受話器を取って以来、再び予知夢に悩まされることになる。最初は、ホープ・エードラー(アンナ・ロア)と名乗る女性の声、そしてノイズ音だけだった。

次は予知夢だった。グウェンはキャンプ・アルパイン・レイクという場所で、フェリックス(サイモン・ウェブスター)という少年が森を逃げているのを目撃する。
追っているのはグラッバーだ。グラッパーは逃げるフェリックスを切り刻むと凍った湖に投げ捨てるが、なぜか生きているフェリックスはグウェンに向けて必死に氷にWという文字を刻み込むのだった。

次にカル(シェパード・マンロー)という少年がキャンプで殺害され、彼の遺体はオーブンで焼かれた後、凍った湖へ棄てられていた。カルもフェリックスと同じようにグウェンを見つめながら氷にBという文字を刻む。

グウェンはある夜、予知夢の中で導かれるようにグラッバー事件のあった地下にたどり着き、例の黒電話の呼び出し音が鳴る。グウェンが受話器を取ると、その先に聞こえたのは自分の母親・ホープの声だった。

母親がグウェンと時間と空間を超えて繋がっていたのだ。母の声が聞こえなくなると、そこでグラッパーに斧を突き立てられて殺されたマックス(ジェームス・ランソン)の幽霊を目撃する。

駆けつけたフィニーがグウェンを起こすと、グウェンは実際に地下室にきていることに驚き、まだ事件は終わっていないかもしれない。そう考え始める。

繰り返される母ホープの呼びかけ、しかし何を伝えようとしているのかは不明なまま。そしてアルパイン・レイクキャンプ場での殺人事件、何かがあるようだ。

キャンプ・アルパイン・レイクへ

フィニーとグウェンは、カウンセリングを受けるという名目で、キャンプ・アルパイン・レイクに行くことを父テレンスから許可をもらい、エルネストも入れた3人で奇しくも過去の事件と同じ厳冬期のキャンプ場へ向かう。

猛吹雪に見舞われる中、キャンプ・アルパイン・レイクに無事に到着した3人は、管理者アルマンド「マンド」(デミアン・ビチル)と姪のマスタング(アリアナ・リバス)に挨拶してそれぞれのコテージ寮を案内される。(この時管理棟の横に黒い公衆電話があるのをフィニーは気づく)

グウェンは男性陣と別の寮に配置されるため、夜間は一人きりになる。夜になり眠りにつくと案の定、より鮮明な悪夢を見る羽目になる。悪夢の中でスパイクというバンドメンバーが、頭部を半分に切断された状態で、氷の中からグウェンに向かってHという文字を刻む、これでもじはWBHとなる。

フィニーが外で大麻を楽しんでいると、外の黒電話が鳴り響く。恐る恐る電話をとるとグラッバーの声で「地獄は炎ではなく、氷なのだ」と彼に告げる。その瞬間電話は切れ、周囲の電気が落ちるとフィニーは公衆電話に閉じ込められてしまう。

その直後、グウェンの悪夢は深刻化する。三人の死んだ少年たちが彼女の前に現れ執拗に追いかけ回すのだ。そして焼かれて死んだカルがグウェンの腕に触れると、彼女は現実の世界でもやけどを負う。公衆電話を破壊して飛び出したフィニーがグウェンの悲鳴を聞いて助け出す。グウェンを男子寮に連れて行きエルネストのベッドで共に眠ることになり、良い雰囲気になった二人は口づけを交わそうとするが、フィニーが割って入ってその瞬間を台無しにする。

母ホープの秘密

翌朝、改めて何があったのだと聞くフィニーに対しグウェンは昨夜の夢を話しカルに掴まれた部分が手の形で火傷を負っている部分を見せることで尋常じゃないことが起きていることをフィニーも理解するのだった。

そのまま3人はマンドが用意した朝食を食べがら、かつてホープという名前の女性がここでカウンセラーを務めていたこと、別名を「スターライト」と呼ばれていたと語る。

その名前を聞いた瞬間フィニーだけが外の黒電話の呼び出し音を聞き電話に出ると、フェリックス、カル、スパイクたちが必死の形相で「僕たちを見つけてほしい、助けてほしい」そう叫びながら公衆電話を叩気続けてくる。

フィニー、グウェン、エルネストがキャンス・カウンセラーのケネス(グレアム・アビー)とバーバラ(メイヴ・ビーティ)に会い、キャンプで何が起こったのかについてさらに詳しく尋ねようとするが、話をはぐらかすため、偽善ぶったバーバラの口調をバカにしてグウェンは立ち去る。

別の夜、グウェンが予知夢の中で子供達に導かれるようにキッチンに向かっているころ、フィニーの目の前で再び公衆電話が鳴る。フィニーはエルネストに大人たちを呼びに向かわせると、受話器を取る。そこでグラッバーはフィニーへの復讐を企んでおり、彼が最も愛するものを奪い取って苦しめたいと告げる。

エルネストは急ぎケネス、バーバラ、マスタングに助けを求め皆でキッチンに向かうと、皆の前でグウェンにしか見えないグラッバーの幽霊に吹き飛ばされオーブンに投げ込まれようとしているのを目の当たりにした全員は、力を合わせてグウェンを引き離すことに成功し、グラッバーは名残惜しそうに闇に消える。

礼拝堂で全員が集まり、懐疑的だったが目の当たりにしてしまった怪異について議論を始め、グウェンは自分が見てきた少年たちについて説明し、マンドはその説明から過去の集合写真をみんなに見せると。そこにはグウェンとフィニーの母ホープが映っていた。

さらにフィニーはその写真の中から、一人の男性を認識する。それはグラッバーだった。

マンドは彼のことを「ビル」という保守管理の男で、銃撃者のようなベルトを締めていたため皆から「ワイルド・ビル・ヒコック」と呼ばれていたと説明する。つまり少年たちが氷に刻んだW・B・Hとは、グラッバーのことだったのだ。

そこでグウェンはこのキャンプこそがグラッバーの殺人の始まりの場所であること、また彼女は、少年たちの遺体を湖から見つけ出し、その霊を解放することが、グラッバーの力を除去する唯一の方法であると理解する。

結末ネタバレ:最後の決戦、グラッバー登場

マンドのオフィスの電話が鳴り受話器をとると相手はグラッバーだった。多少の恐怖を感じたものの、マンドは外を散歩し、フィニーが外で大麻を吸っているのを見つけ二人で話をした後、フィニーの大麻に対し「そんな悪いやつじゃない」と言って去る。

翌朝、みんなで湖の雪をかき分けて犠牲者の捜索を開始するが、初日は見つけることができなかった。

夜、フィニーとエルネストはグウェンが眠っている間、彼女を見張る役目を交代で行う。今回、グウェンはビリー(ジェイコブ・モラン)というペーパーボーイがグラッバーに連れ去られたことを能力で気がついたホープが、グラッバーの家へ向かいビリーを発見するが、グラッバーに見つかりホープは自宅のガレージで首吊り自殺に見せかけられて殺されてしまうのだった。妻の首吊り死体を見たテレンスは酒に逃げた経緯もここで分かる。

その後、母の壮絶な死をグウェンに見せた後、グウェンに襲いかかる。夢の中でグウェンを斧で彼女の腕を切りつけると、現実でも出血し始めエルネストたちは慌てて治療を行う。

夢の中で追い詰められたグウェンだったが、殺された少年たちの助けを借りてなんとか逃げ出すと、夜通し湖で遺体の捜索を続けていたマンドがついにフェリックスの遺体を発見して氷を叩き割ろうとしていた。いつの間にかマンドの後ろにいたグラッバーは氷を砕いてマンドを湖に落とす。

電話ボックスに閉じ込められマンドの死を見て絶望的になったグウェンに対し、現実でフィニーは何度も何度も「戦え」と繰り返し、ついにその声がグウェンに届き、グウェンが目を開けグラッバーを見つめるとグラッバーは吹き飛ばされ消えていく。

目覚めたグウェンはすぐに湖に落ちたマンドを助けに駆けつけマンドはギリギリ命を救われる。

状況を聞いた父テレンスがキャンプ場に現れ、みんなを連れて帰ろうとするが、グウェンはカルとスパイクの遺体を見つけるまで帰宅することを拒否する。それを聞いたフィニーはトラウマと向き合うことの過酷さ、事件後のフラッシュバックと苦しみについて語ると、グウェンは全てを理解した上で残ると伝える。

次にグウェンはテレンスに対し、自分の能力が本物であること、テレンスが母親の遺体を発見した時に彼が自分を責めていたことを見ていたと告げ、独りで苦しんでいたテレンスはホープとグウェンの能力が事実であることを理解して同意する。

その翌日、テレンスも加わったグループは一日中二人の少年の遺体を探し続けるが、暗くなるまでに何も見つからない。夜になりグウェンがうたた寝した瞬間、グラッバーが襲いかかってくる。禍々しいスケート靴を履いたグラッバーは氷の上を滑り夢の中でケネスに斧を見舞い、彼を氷の上を引きずると現実でもケネスは引きずられていき皆がパニックになる。

夢の中でグウェンは氷の中に落とされるが、少年たちの導きによって湖の底に沈んでいるドラム缶を発見し、グウェンの呼びかけに応じたテレンスは二人でドラム缶を水面まで押し上げ、開けると二人の死体が出てくる。

グラッバーは激怒し、フィニーの前に現れ、復讐を遂行しようとするがグラッバーの前に3人の少年が遮るように立ち塞がると、グウェンが彼の斧を顔面に叩きつけ、現実では見えないグラッバーを掴んだフィニーは彼の顔を何度も何度も氷に叩きつけぐちゃぐちゃに潰すと、少年たちの幽霊がグラッバーを水へ引きずり込み、凍りついた地獄の底に送り返すのだった。目覚めたグウェンは、エルネストにキスをする。

翌日、マンドは少年たちの両親に電話をして、彼らに慰めと終わりをもたらす。フィニーとグウェンが去ろうとしている時、グウェンは再び公衆電話の呼び出し音を聞く。受話器を取ると、天国にいるホープの声が聞こえ、娘を誇りに思うこと、愛している、心強い言葉をかける。その後、フィニーとグウェン、テレンス、エルネストは一緒に家へ帰る。


参考:IMDb – The Black Phone 2

『ブラック・フォン2』作品情報

本作の監督と主演俳優、そして制作背景について詳しく紹介していく。映画『ブラック・フォン2』は前作の成功を受けて、さらに大きなスケールで展開される続編として、ホラーを愛する映画ファンから高い期待を集めていた。本セクションではこの作品を支える主要人物の経歴と代表作を紹介する。

興行収入

『ブラック・フォン2』は公開初週末で北米市場において約250万ドルの興行収入を記録し、同時期の他の作品を抑えて首位を獲得した。前作『ブラック・フォン』は2021年の公開時に北米で約104万ドル、世界全体で約161万ドルの興行を達成しており、本作も前作以上の商業的成功が期待されている状況にある。

スコット・デリクソン監督情報

スコット・デリクソンは1966年7月16日生まれのアメリカの映画監督・脚本家だ。彼は『シニスター』(2012年)『インシディアス Chapter3』(2015年)『ドクター・ストレンジ』(2016年)など、ホラー映画から大型ブロックバスター作品まで、多岐にわたるジャンルでの制作経験を持つ。

特にホラー分野での実績が高く評価されており、『シニスター』ではエタン・ホークと初めてコラボレーションしている。前作『ザ・ブラック・フォン』(原題:The Black Phone、2021年)の監督を務めた際、その才能が高く評価され、続編での起用が自然な流れとなった。デリクソンの映像センスは1980年代のヴィンテージ・ホラーへのリスペクトと現代的な映像技術を融合させることで知られており、本作でもそうした特徴が顕著に表れている。

主演フィニー・ブレイク役「メイソン・テムズ」情報

メイソン・テムズは2006年9月30日生まれのアメリカの若手俳優だ。彼は前作『ザ・ブラック・フォン』(2021年)でフィニー・ブレイク役を演じて全米的な認知を獲得し、その後『ハウ・トゥ・トレイン・ユア・ドラゴン』(2025年実写化版)の出演が決定するなど、ハリウッドにおける若手スターとしての地位を確立している。

本作では前作から3年後の1982年設定の17歳になったフィニーを演じており、単なる少年ではなく、トラウマに苦しむ成熟した青年という複雑なキャラクターを体現している。テムズの演技は、表面的なタフガイというイメージの裏に隠された心の脆弱さを表現する力量を示す作品として高く評価されている。

主演グウェン・ブレイク役「マデレイン・マグロウ」情報

マデレイン・マグロウは2011年5月21日生まれのアメリカの若手女優だ。前作『ザ・ブラック・フォン』(2021年)ではフィニーの妹グウェン・ブレイク役を演じており、本作での再出演となる。

当時は前作での出演時は約10歳であり、本作では15歳のグウェンを演じている。本作ではグウェンがストーリーの主人公的存在となり、彼女の視覚能力に基づいた物語展開がなされるため、マグロウの演技がより一層注目を集めることになった。彼女の繊細で深い感情表現は、本作を単なるホラー映画の枠組みを超えた心理的サスペンスへと昇華させるために不可欠な存在となっており、映画評論家からも絶賛されている。


海外の感想評価まとめ

『ブラック・フォン2』は全世界のホラーファンから大きな注目を集めており、複数の評価サイトで様々な意見が交わされている。

前作ブラック・フォンの評価はIMDb6.9、メタスコア65点と高評価だ。

続編の評価は高く評価するべき部分と改善の余地がある部分の両方を含んでおり、映画評論家たちの間でも議論が続いている。海外での評価を見ることで、本作がいかなる理由で支持され、あるいは批判されているのかを理解することができるだろう。

IMDb(総合評価:6.7/10)

① 多くのホラーシークエルが陥りやすい過度なスケール拡大を避けながら、本作は前作の世界観を巧みに拡張している。デリクソンの映像センスが1980年代のスリラー映画への敬意と現代的なシネマトグラフィを融合させることで、ノスタルジックながら新鮮な恐怖体験をもたらしている。特にグウェンの悪夢シーンの映像処理とサウンドデザインは、他の大型ホラー作品には見られない洗練された技巧性を示している。

② 前作はグラッバーという一つの脅威に焦点を当てた密室のような緊張感が特徴だったが、本作ではその脅威が広大な雪原へと広がり、同時に心理的な層が深まっている。イーサン・ホークのグラッバーがフレディ・クルーガーのような存在へと進化し、現実と悪夢の境界が曖昧になっていくプロット展開は、シリーズの世界観に新たな可能性をもたらしている。

③ メイソン・テムズとマデレイン・マグロウの兄妹の演技が本作の感情的な基盤となっており、彼らが表現するトラウマからの回復プロセスは観者の心を揺さぶる。特にテムズが自分の苦しみを他人に理解されることない孤独感を表現するシーンは、映画全体の重厚さを大きく増幅させている。

④ ホラーシーンとしての有効性も高く、雪景色の中での追跡シーン、凍った湖での戦闘シーン、そしてグウェンの悪夢が現実に与える影響といった各要素が、観者を息もつかせぬ恐怖へと導いている。グウェンの腕に受けた傷が現実の体にも現れるというコンセプトは、『エルム街の悪夢』シリーズへの敬意を示しながらも独自の恐怖を生成している。

IMDb – The Black Phone 2

Rotten Tomatoes(批評家:74% / 観客:77%)

① ホラー映画の新しい可能性を示す作品として評価されており、特に続編としての使命を果たしつつ、独自の芸術的価値を持つ稀有な例となっている。デリクソン監督がアナログ的な美学—Super 8フッテージのようなグレイニーな映像、不快なほど引っかかるサウンドデザイン—を意図的に採用することで、懐古的でありながら新鮮な恐怖をもたらしている。

② 本作が前作と異なり、生存者であるフィニーの心的外傷というテーマから、その家族全体が被る創傷へと視点を拡大した構成は、ホラー映画の枠を超えた普遍的な人間ドラマへと昇華させている。母親ホープの登場と彼女の秘密が明かされることで、グラッバーという悪が複数の時間軸に渡って家族を蝕んでいるという複雑な構図が浮かび上がる。

③ 映像的には氷と血が交錯するシーンでの創意工夫、キャンプという限定された空間から雪原という広大な舞台への転換、そしてグウェンの超能力がもたらす戦闘シーンなど、各要素が高度に統合されている。しかし一部批評家からは、過度な説明的台詞によって悪夢的ロジックが損なわれているという指摘もなされている。

Rotten Tomatoes – The Black Phone 2

Metacritic(総合評価:61/100)

① 本作の最大の成果は、すでに死亡したグラッバーをいかに復活させるかという根本的な問題を、悪夢という概念によって説得力を持って解決した点にある。グラッバーに関する新たなバックストーリーが提供されることで、単に既出の質問に答えるのではなく、キャラクターの深掘りと拡張をもたらしている。彼が1950年代のキャンプでの殺人に関わっていたという設定は、本作全体の物語構造を一貫性のあるものにしている。

② 作品全体のトーンとしては、『エルム街の悪夢3 ドリーム・ウォーリアーズ』へのオマージュが明確であり、1980年代スラッシャー映画への深い愛情が感じられる。ただし批評家の間では、そうしたオマージュが賛美的な引用なのか、それとも単なる模倣に過ぎないのかについて議論が分かれている。一部からは、あまりの露骨さが創造性を損なっているという指摘もなされている。

③ 映像美学と恐怖表現のバランスについて、高く評価する声と批判的な意見が共存している。グウェンの悪夢シーンにおけるSuper 8的な映像処理は多くの評論家から絶賛されているが、その一方でキャンプの景観設定がCGに依存しすぎており、現実感が損なわれているという批評も存在している。

Metacritic – The Black Phone 2

批評家レビュー

映画『ブラック・フォン2』は大手映画評論媒体からも多くの注目を集めており、複数の影響力のある批評家によって様々な角度からの分析がなされている。以下、主要な映画評論誌による詳細なレビューを紹介する。

Roger Ebert 好評

ブライアン・タレリコ氏「メジャー映画スタジオが通常許容しない、危険性に満ちた作品。」

前作『ブラック・フォン』は一つの物語として完結していたのに対し、本作『ブラック・フォン2』は既に死亡しているグラッバーという障害をいかに乗り越えるかという根本的な問題を抱えていた。デリクソン監督とカーギル脚本家は『エルム街の悪夢』シリーズの映像言語と物語構造に深くインスパイアされた作品を生成することで、この困難な状況を創造的に解決している。悪夢という概念を通じてグラッバーを復活させるという設定は、単なる便宜的なプロット装置ではなく、グウェンとフィニーの心理的なトラウマを外部化する手段として機能している。グウェンの悪夢シーンは本当に悪夢そのもので、暴力にさらされた子供たちの心的イメージが映像化されており、多くのメジャー映画スタジオの作品ではここまでの過激さは許容されない。デリクソンの映像構成力、特に電話ボックスの前に立つフィニーの周囲に失われた魂たちが浮かび上がるシーンは、映画史に残る傑作映像演出である。

評価点 本作が高く評価される理由として、前作の閉鎖性から解放された、より広がりのあるストーリーテリング、グウェンというキャラクターへの主人公交代による新たな視点、そして1980年代のホラー美学への誠実なオマージュがある。グウェンの悪夢が現実に影響を与えるという『悪夢のエルム街』的な仕組みを採用しながらも、デリクソンはそれを自分たちの作品に適応させるために必要な創意工夫を施している。

批判点 映画が若干冗長で、説明的な台詞が多く存在する。特に後半において、なぜ彼らがキャンプにいるのか、何をしようとしているのかについて、過度に説明がなされており、悪夢的ロジックが損なわれている部分がある。また長さ約114分という尺も、一部の批評家からは過度だと指摘されている。

(Roger Ebert – The Black Phone 2)

Variety 好評

ピーター・デブルージュ氏「鮮烈な映像美学の中で、二重の脅威が呼びかけている。」

デリクソン監督の本作は、グラッバーというキャラクターが本来の存在を失ってなお、その呪縛から逃れられない家族の運命を描く作品として、ホラー映画の伝統的な手法を超越している。本作の独自性は、単なるホラー映画ではなく、ゴースト・ストーリーとしての側面も包含していることにある。グウェンとフィニーの家族が、グラッバーという現実的な悪と、彼の幽霊という超越的な悪の両方に直面するという設定は、映画の深層に宗教的な善悪の闘争というテーマを埋め込んでいる。アナログ的な映像美学—粗いSuper 8フッテージ、不快なほど引っかかるサウンド—を意図的に採用することで、1982年という時代設定が単なる背景ではなく、物語全体の心理的な基盤となっている。エタン・ホークのグラッバーは前作よりも少ない出番ながらも、その脅威性は拡大している。悪夢的な論理のため、極めて限定的なペースと少ない死亡シーン数にもかかわらず、本作は恐怖として機能している。

評価点 アナログ的な美学とモダンなホラー表現の融合、グウェンという新しい視点の導入による物語の拡張、そしてトラウマの心理的深掘りが高く評価される。また親と子の世代を超えた呪いの継承というテーマも、本作の内面的な強度を高めている。

批判点 論理的一貫性を求めすぎた結果、悪夢的な不条理さが損なわれている部分がある。また冗長な説明シーンが物語のペースを損なわせているという指摘も存在する。

(Variety – The Black Phone 2)

SlashFilm 高評価

ラファエル・モタマイヨル氏「夢を舞台にした、ホラー映画の新しい地平。」

本作『ブラック・フォン2』は、前作を単に繰り返すだけのシークエルではなく、全く新しい方向性を打ち出した稀有な続編である。デリクソンとカーギルが提示した物語構造は、シリーズの世界観をより深く掘り下げながらも、独立した映画として完全に成立している。グウェンという新しい主人公への交代は、グラッバーという悪の脅威をより多くの家族に拡張することで、ホラーの普遍性を高めている。1950年代のキャンプにおけるグラッバーの過去が明かされることで、彼というキャラクターは単なる現在の脅威ではなく、複数の時間軸に渡って家族を蝕む悪霊へと変貌する。グウェンの悪夢はSuper 8的な映像処理によって実在的なリアリティを保ちながらも、悪夢的な非論理性を保持している。この緊張関係こそが、本作を他のホラー映画から区別する要因となっている。

評価点 前作との差別化の成功、グウェンというキャラクターの魅力的な提示、グラッバーのバックストーリーによるキャラクター拡張、そして『エルム街の悪夢3 ドリーム・ウォーリアーズ』への敬意ある引用が挙げられる。特にグウェンが持つ超能力と彼女の個性の融合は、単なるホラーの舞台装置ではなく、物語全体の感情的な中核となっている。

批判点 オマージュが露骨すぎて、創造性が損なわれているという指摘もある。また後半のキャンプでの長時間の探索シーンが、映画全体の緊張感を弱めているという批評も存在する。

(SlashFilm – The Black Phone 2)

個人的な感想評価

これは面白い。

前作は地下室によくわからないまま誘拐され、幽霊となった少年たちに怯えながらも協力してもらい脱出するまでを描いた作品だったが、本作では悪霊になって二人に襲いかかる最悪の状況からどう逃げるのか?なぜグラッバーは復活したのか?が主軸となるため、前作の閉鎖的空間の絶望感は若干損なわれている。が、前作から継続した監督のおかげで、よくわからないが襲われるからには理由があるのだろうと予知夢の悪夢の中をもがき苦しみながらもヒントを経て解決に向かう、最終的に皆で力を合わせて宿敵をぶっ飛ばすという展開はシンプルでわかりやすく90年代の古き良きホラー映画のようで楽しめ、前作の良さを残しながらもしっかりと破綻しないように説明をしてくれているので、初心者でも堪能できるようになっている。

が、やはり初心者でも堪能できるように、今なぜここにいるのか?を少し長めに私たちに説明しようとするため、若干冗長感がありテンポを阻害していたのは間違いない。ちょっと母ホープの件を入れたせいで余計な説明と展開があった気がするので、彼女の話はなくても良かった気がする。少年たちの霊が怖がらせながらも結局助けてくれるという展開も前作と同じ流れであり、少し予測できてしまったのも残念。

恐怖シーンの演出は見事で、ジャンプスケアに頼ることなく、精神的に抉るような描写と、夢と悪夢と現実の曖昧さで蔓延る悪魔グラッバーの神出鬼没な出現は緊張感を生んでおり、次に出てきた時には殺されるのではないか?という恐怖感も感じさせてくれた。少年たちの無表情な顔でバターみたいに切断されるシーンもゴア表現がとんでもないのに最後はデレて導いてくれたりと見応え抜群。

ただし、個人的に、グラッバーは地獄すらも突破して二人に嫌がらせをしてくるって存在になってしまったのは、グウェンやフィニーだけの霊と交信する特殊能力に対抗する力ではあるものの、不死身の存在になってしまっているのはどうかなと思った。

殺した少年たちを見つけたら力が削がれるのも意味がわからないし、彼が殺したのは10や20じゃきかない気がするから今後続編がどうやってもできてしまいそうで、13日の金曜日のホービーズ?だっけ、みたいにとんでもシリーズ化しそうでちょっと悲しくもあった。

総じて前作6.9点に対し、続編は6.7点というのは、見事な採点に感じる。

前作ほどの魅力はないが、明らかに後一歩で凌駕する傑作だった続編に相応しい採点だった。

複数の海外レビューを総合的に判断すると、『ブラック・フォン2』はホラー映画としての完成度、そして続編としての使命を両立させた傑作である。前作がグラッバーという一つの脅威に焦点を当てた密室型ホラーであったのに対し、本作はそれを超越し、悪夢と現実の融合、複数の時間軸に渡る家族の呪いというテーマへ進化させている。

デリクソン監督の映像センスは、1980年代のヴィンテージ・ホラーへの敬意を保ちながらも、現代的なシネマトグラフィとの融合に成功している。特にグウェンのキャラクター転換は、前作では脇役に過ぎなかった彼女を、本作では心理的トラウマと超越的能力を合わせ持つ複雑なヒロインへと昇華させており、マデレイン・マグロウの繊細な演技がそれを見事に体現している。一方で本作が抱える問題点として、過度な説明的台詞による悪夢的ロジックの損失、そしてキャンプでの長時間の探索シーンによるペース低下が挙げられる。しかしこれらの欠点は、作品全体の強度と創造性の前では相対化されるべき瑣末な問題である。

まとめ

『ブラック・フォン2』は、前作の成功と完全なエンディングという困難な状況の中で、続編としての正当性を見事に証明した作品である。本作の核となるテーマは、生存者のトラウマがいかに時間の経過とともに家族全体を蝕むのか、そしてそのトラウマの根源に向き合うことの困難さと必要性である。グウェンという新しい視点の導入により、ホラー映画の通常の枠組みを超えた心理的ドラマへと昇華しており、映画全体に深みと重厚さをもたらしている。海外のホラーファンからの高い評価は、本作が単なるマネキン的なシークエルではなく、独立した芸術作品として成立していることを示している。『エルム街の悪夢3 ドリーム・ウォーリアーズ』へのオマージュは明確であるものの、それは創造的な引用として機能し、デリクソン監督とカーギル脚本家が自分たちの作品に適応させるための基盤となっている。アナログ的な映像美学と現代的なホラー表現の融合、そして子供たちの暴力による心的外傷への正面からのアプローチは、本作を2025年のホラー映画シーンにおいて際立った存在にしている。結論として、『ブラック・フォン2』は、ホラー映画として、心理サスペンスとして、そして家族ドラマとして、複数のレイヤーで観客に訴えかける傑作である。

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