映画『アメリアの息子たち』完全ネタバレ解説と海外の感想評価まとめ「割と微妙」

アメリアの息子たち海外版ポスター

「奇妙でゴシック的なホラー・スリラーで、独特の不気味さを持つ作品」2024年3月1日に全米で公開された映画「アメリアの息子たち(Amelia’s Children)」のあらすじ結末までネタバレ解説と海外の感想評価をまとめて紹介。

ポルトガル発の超自然ホラーとして注目を集めた映画『アメリアの息子たち』が2024年3月1日(金)よりアメリカの劇場とVODで公開された。映画『アメリアの息子たち』はポルトガル製作の英語映画で、2023年9月16日にリスボン国際ホラー映画祭でプレミア上映された作品だ。

監督はガブリエル・アブランテスがつとめ、脚本も自身が手がけた。主人公エドワードをカルロト・コッタが演じ、恋人のライリーを『アイ・アム・ノット・オーケー』のブリジェット・ランディ=ペインが演じた。母親アメリアを『ウォリアー・ナン』(2020-2022) のアナベラ・モレイラとアルバ・バプティスタがダブルキャストで演じている。

今回は、DNA検査から始まる恐怖の家族再会を描いた映画『アメリアの息子たち』のラストについて解説&考察していこう。**以下の内容は本編の結末のネタバレを含むため、必ず鑑賞してから読んでいただきたい。**また、近親相姦や暴力的な描写に関する解説も含むため、注意していただきたい。

『アメリアの息子たち』あらすじ結末ネタバレ

ここから先は『アメリアの息子たち』の核心である重大なネタバレを含む。

双子の誘拐事件

数十年前、ポルトガルの豪邸。

美しい女性アメリア(アルバ・バプティスタ)が双子の赤ん坊のミルクを用意していると、侵入した男女のカップルがアメリアの赤ん坊を連れ去ろうとする。

異変に気づいたアメリアは男を見つめ絶叫しながら白目を剥くと超自然的な力を発動し赤ん坊を奪い返す。先に車に戻った女は男が戻らないことを悟ると赤ん坊と車で逃げ去ってしまう。

30年後、ニューヨークに住むエドワード(カルロト・コッタ)は養子として育てられた過去を振り返り自分の本当の家族を探し続けている。そんなエドワードのために恋人のライリー(ブリジェット・ランディ=ペイン)は彼の誕生日に「Ancestory」という遺伝子検査サービスをプレゼントする。

後血液検査の結果、エドワードにマヌエル・カストロという双子の兄弟がいることが判明する。後日マヌエル本人からポルトガルで母のアメリアと住んでいる屋敷に2人を招待すると連絡が入り、エドワードとライリーは興奮してポルトガルへと旅立った。

不気味な再会

北ポルトガルの山間部にある豪華な別荘で、エドワードは長い髪のカウボーイブーツを履いた双子の兄弟マヌエル(同じくカルロト・コッタが演じる)と再会する。宿泊する部屋に案内された2人が眠りにつくと、エドワードは深夜に突然マヌエルに起こされ母アメリアのいる部屋に向かう。

エドワードはついに屋敷の奥の部屋に住む母アメリア(アナベラ・モレイラ)と対面する。しかし、アメリアの外見は衝撃的だった。整形手術を繰り返した結果、不自然で不気味な顔立ちになっており、エドワードは困惑するが母と熱い抱擁を交わすのだった。

翌朝、ライリーの前にアメリアが現れ挨拶を交わすが「時間が我々を食べる。ジャガイモのように」という意味深な言葉を発するアメリアの奇妙な言動にライリーは警戒心を抱き始めるのだった。

夜中に目覚めたライリーはアメリアとマヌエルの会話を部屋の外で立ち聞きしてしまう。スマートフォンの翻訳アプリを使って2人はポルトガル語でアメリアが「マヌエルに子供を作らせる」「若返る方法」について話していることが分かりライリーはますます2人に不信感を募らす。

翌日、ライリーは屋敷の瞑想室で古い写真を発見する。そこには若い頃のアメリアとエドワードに酷似した男性が写っていた。

母の正体とは

不審に思ったライリーは屋敷の麓にある街で聞き込みをする。

そこでアメリアの正体が明らかになる。彼女は数百年を生きる魔女で、永遠の若さと美貌を保つために自分の息子たちとの間に生まれた子供を食べて生きながらえているのだ。

マヌエルは長年にわたって母親との近親相姦関係を続けていたがマヌエルは不妊症だったため子供が作れず、老いが加速するアメリアは焦ってエドワードを呼び寄せたのだ。最終的にアメリアはエドワードとの間に子供を作り、その子供を食べて若さを取り戻そうと必死なことが判明する。

真実を知ったライリーは、エドワードを救おうと必死に抵抗する。しかし、エドワードは母親とマヌエルの不可思議な白目の魔術の影響で2人の支配下に置かれ始め、ライリーの帰宅要請を無下に断るのだった。

次の夜、アメリアはエドワードに薬を盛り自身をライリーに見える幻覚で性交渉を始めてしまう。そしてついに家族にとってライリーは邪魔になり、マヌエルがライリーの命を狙い始める。地下室にマヌエルを閉じ込め、部屋に戻ると醜いアメリアに犯されるエドワードの姿を見て戦慄する。

結末ネタバレ:曖昧な救済

怒ったライリーは地下室から脱出してきたマヌエルを2階から突き落として逃げようとするが、鬼の形相のアメリアに捕まったライリーは殺されかけてしまう。しかし、30年前に赤ん坊を盗もうとしてアメリアに囚われ地下室で生かされていた男がライリーを助け2人は車に乗って無事に脱出する。

場面は切り替わり、美しい若い姿のアメリアが赤ん坊をあやしている。

横から現れたのはマヌエル。

マヌエルはマヌエルを抱き寄せると優しく床に押し倒し物語は終了する。

結末考察

おそらくアメリアはエドワードの子を無事に出産し赤ん坊を食べて若返り化に成功。残された赤ん坊は種のないマヌエルの代わりの種として育てられるのだろう。アメリアは今後も同じ行為を繰り返し、永遠に美しく生きていくのだろう。

『アメリアの息子たち』作品情報

『アメリアの息子たち』のネタバレを読んで興味を持った読者のために、ガブリエル・アブランテス監督によるこの野心的なポルトガル製ホラー映画について詳細を紹介する。近親相姦という禁断のテーマに真正面から取り組んだ本作は、ゴシック・ホラーの伝統を現代的な視点で再構築した意欲作である。

興行収入

本作は2023年9月16日にリスボン国際ホラー映画祭で世界初上映を果たし、2024年1月18日にポルトガルで劇場公開された。限定的な上映ながら全世界で140万ドルの興行収入を記録している。アメリカでは2024年3月1日にマグネット・リリーシングによって劇場公開とVOD配信が同時に開始された。

ガブリエル・アブランテス監督紹介

1984年にノースカロライナ州で生まれたガブリエル・アブランテスは、現在リスボンを拠点に活動する映像作家・アーティストである。ニューヨークのクーパー・ユニオン、パリのENSBA、トゥールコワンのル・フレノワで学んだ彼の作品は、ポストコロニアル、ジェンダー、アイデンティティの問題を通じて歴史的・社会的・政治的テーマに取り組んでいる。

2018年にダニエル・シュミットと共同監督した『ディアマンティーノ 未知との遭遇』でカンヌ国際映画祭批評家週間のグランプリを受賞し、国際的な注目を集めた。ベルリン国際映画祭やロカルノ国際映画祭でも数々の賞を受賞しており、現代ヨーロッパ映画界を代表する才能の一人として評価されている。

ライリー役「ブリジェット・ランディ・ペイン」紹介

1994年8月10日生まれのアメリカの俳優ブリジェット・ランディ・ペインは、現在ジャック・ヘイヴンという名前で活動しており、彼らは非バイナリーでthey/them代名詞を使用している。両親も俳優・監督として活動するアーティスト一家で育ち、3歳前から舞台に立っていた。

Netflix の人気ドラマシリーズ『アティピカル』(2017-2021)でケイシー・ガードナー役を演じ、広く知られるようになった。映画では『ガラスの城』(2017)、『ダウンサイジング』(2017)、『ビル&テッド フェイス・ザ・ミュージック』(2020)、『ボムシェル』(2019)などに出演。2024年の『I Saw the TV Glow』での演技も高く評価されている。

海外の感想評価まとめ

『アメリアの息子たち』は海外で賛否両論の評価を受けている。IMDbでは5.3点(1,700件以上の評価)、ロッテントマトでは批評家38%・観客48%、メタクリティックでは具体的なスコアが公開されていないものの、批評家からは概ね否定的な評価を受けている。一方で、ジャンル映画ファンからは独特な世界観とビジュアル・インパクトを評価する声も多い。

IMDb(総合評価:5.3/10)

①私はこの映画を心の底から嫌悪している。魅力的な物語を作り出す良い要素について語ることができたらよいのだが、正直なところ、この映画全体に単一の良い点を見つけることができない。キャラクターは好感が持てず、グロテスクになろうとしているが実際に恐怖を誘発するものは何も見せてくれない。

②私は撮影は十分に上手で、ある程度の洗練された仕上がりに見えるが、『アメリアの息子たち』を恐ろしいものというより意図せず笑えるものにしている要素が一つある。主要な悪役が笑えるほどグロテスクな外見をしており、重要なシーンで邪魔をしている。

③私が最も印象に残ったのは、この映画が家族、老化、死、そして遺産について考えさせてくれたことだ。不可避な未来について、そして止められないものについて私に思索を促した。これは単なるホラー映画以上の意味を持っている。

④私の経験は残念ながら映画館の混沌とした環境によって中断されてしまったが、ポルトガルのホラー映画の立派な作品として、北米レベルに匹敵する品質を提供していると思う。技術的に印象的で優れたサウンドを持ち、典型的なポルトガル映画の音響的な閉塞感を克服している。

IMDb – Amelia’s Children

Rotten Tomatoes(批評家:38% / 観客:48%)

①私はこの映画がレビュアーたちが評価しているよりも良い作品だと思う。ホラー愛好家とアイロニカルな視聴者を満足させるはずだが、一般大衆にはおそらく受けないだろう。いくつかの不気味で余計ではあるが恐怖要素があり、不穏な物語を持っている。

②私が評価したいのは、このポルトガルのホラー映画が、大部分有能なキャストにもかかわらず、ありきたりな前提を説得力のある物語に昇華させることに失敗していることだ。アブランテスはこの馴染みがありながらも不条理なホラー物語を未実現の可能性に委ねている。

③私は『アメリアの息子たち』が鋭い小さなホラー映画だと考えている。この気まぐれなジャンル作品のいくつかの部分は使い古されて馴染みがあるが、最終的にはアブランテスが映画を再び若々しく感じさせる才能を持っていることを確認している。

Rotten Tomatoes – Amelia’s Children

Metacritic(総合評価:批評家スコア非公開)

①私は監督が『アメリアの息子たち』がゴシック・ホラー・ストーリーからヨーロッパ貴族の自己保存への嗜好についてのジャッロ風刺劇へと転換する際、カメラの後ろで生き生きとしてくる様子をほとんど感じ取ることができる。クライマックスでの生存を賭けた戦いは鋭く描写されているが、予測可能な結末に向かって展開する。

②私が残念に思うのは、『アメリアの息子たち』がジャンルが提供できる最もありきたりな手法に満足しているように見えることで、ほとんど変化がない。ヒラリラスに酷い石鹸オペラとホラー映画の衝突であり、コメディの断崖絶壁で危うくバランスを取っている。

③私にとって『アメリアの息子たち』は意図しないユーモアの瞬間があるホラー映画だが、何らかの巧妙な暗いコメディというよりも、結局のところ退屈である。この映画の前提にもかかわらず、意味のある何も生み出すことはない。

Metacritic – Amelia’s Children

批評家レビュー

海外の専門批評家による『アメリアの息子たち』の詳細な評価を紹介する。近親相姦という極めてセンシティブなテーマと、ゴシック・ホラーとしての演出手法、そしてコンセプチュアルなユーモアのバランスを評価する観点から、この映画の多角的な魅力と課題を理解できるはずだ。

Variety 肯定的評価

J・キム・マーフィー氏「コッタは道化に適した顔をしており、困惑した大きな目をアブランテスが騙すことに大きな喜びを見出している」

Varietyの批評では、主演のカルロト・コッタの演技力とガブリエル・アブランテス監督の演出技法を高く評価している。特に、コッタが演じるエドワードの無邪気さと、それを利用する家族の狡猾さとの対比が効果的に描かれていると指摘。監督自らが音楽も手がけており、ブリジェット・ランディ・ペインが演じるライリーの不安感を高める音響設計も評価されている。アメリアを演じるアナベラ・モレイラの特殊メイクによる視覚的インパクトについても、「数ポンドの補綴物の下で数十年間の美容整形手術と消耗を伝える」と表現し、そのグロテスクな美しさを称賛している。

評価点
カルロト・コッタの多重役での演技、音響設計の巧妙さ、視覚的インパクト

批判点
より馴染みのある領域に留まっており、前作『ディアマンティーノ』ほどの革新性がない

(Variety – Amelia’s Children)

Roger Ebert サイト 中立的評価

サイモン・エイブラムス氏「『アメリアの息子たち』は観客を完全に翻弄していないように見える時でも、構えがよく、十分にグロテスクで魅力的である」

Roger Ebertサイトのレビューでは、映画のトーンの曖昧さに注目している。ホラーコメディとしての側面を持ちながら、完全にパロディに徹することもなく、真剣すぎることもない絶妙なバランスを保っていると評価。エドワードの家族探しという素朴な動機と、実際に待ち受けている悪夢的な現実との落差を「騙されやすい者には童話、懐疑的な者にはホラー映画」と表現している。ライリーのキャラクターを通じて、観客の視点と疑念が巧妙に描かれていることも評価している。

評価点
独特なトーンの維持、概念的なユーモアの効果的な使用、キャスト間の化学反応

批判点
より攻撃的で血生臭いユーモアを期待する観客には物足りない可能性

(RogerEbert.com – Amelia’s Children)

New York Times 否定的評価

ジャネット・キャツーリス氏「石鹸オペラとホラー映画のヒラリラスに酷い衝突であり、『アメリアの息子たち』はコメディの断崖絶壁で危うくバランスを取っている」

The New York Timesは手厳しい評価を下している。監督のガブリエル・アブランテスが意図的にコメディ要素を強調すべきだったと指摘し、中途半端な演出により映画が持つ可能性を十分に活かせていないと批判。特に、ジャンルの境界線を曖昧にしたことで、どちらの方向性でも満足のいく結果を得られていないと評している。石鹸オペラ的な展開とホラー要素の融合については、意図的な演出であることを認めながらも、その実行において成功していないとの見解を示している。

評価点
コンセプトの独創性、視覚的な工夫への意欲

批判点
ジャンルの中途半端な融合、コメディとホラーの両方で中途半端な結果

(The New York Times – Amelia’s Children)

IndieWire B-評価

デイヴィッド・エーリッヒ氏「使い古されて馴染みのあるこの奇抜なジャンル作品の一部も、最終的にはアブランテスが映画を再び若々しく感じさせる才能を持っていることを確認している」

IndieWireは比較的好意的な評価を与えており、監督の才能を認めつつも、ジャンル映画としての限界も指摘している。特に、ホラー映画の既存の枠組みを踏襲しながらも、独自の視点を注入する監督の手腕を評価。ポルトガル映画界における本作の意義についても言及し、国際的な注目を集める可能性を示唆している。ただし、物語の予測可能性と、革新性の不足については批判的なコメントも残している。

評価点
監督の映画的才能、ジャンルへの新鮮な視点、国際的appeal

批判点
物語の予測可能性、ジャンル映画としての限界

(IndieWire – Amelia’s Children)

個人的な感想評価:40点

特別怖いこともなく、アメリアの魔女感は白目だけ、怖いと思った映像は全部夢オチ、音楽による恐怖感の演出は悪くはないが、最終的に破壊描写などは極力隠すため緊張感や恐怖を感じることはなく、ずっと期待してはがっかりし続けるため、うーんな内容。

冒頭の男は地下室で生かしていた意味も曖昧、美貌に取り憑かれてアメリアは整形を繰り返している意味もなんとも微妙、普通に老化著しいババアならよかったのに、整形・・ですか。と変に現代医療に頼っていたりするのも、マヌエルが無駄に長髪なのも種無しでしたとかも、白目の魔術の効果も曖昧ですとかも色々と不満や疑念が残り、誰にも感情移入ができず。

海外の専門批評を総合すると、『アメリアの息子たち』は明らかに観客を選ぶ作品である。近親相姦という極めて危険な題材に真正面から取り組む勇気は評価できるが、その扱い方が中途半端だったことは否めない。アメリアの異形的な美しさは確かにインパクトがあり、カルロト・コッタの一人三役も技術的には見事だった。

しかし、最も惜しまれるのはコンセプトの素晴らしさを十分に活かしきれなかった演出だろう。ゴシック・ホラーとして徹底するか、ダークコメディとして突き抜けるか、どちらかに振り切れば傑作になり得たはずだ。結果的に、どちらの要素も中途半端になってしまい、観客に強烈な印象を残すには至らなかった。それでも、ポルトガル映画界の新たな才能として、アブランテス監督の今後には期待せざるを得ない。

まとめ

『アメリアの息子たち』は、家族の再会という普遍的な願望を悪夢に変える斬新なコンセプトで始まった。遺伝子検査によってルーツを探す現代的な設定から、代々続く近親相姦と魔術という古典的恐怖への展開は確実に観客の期待を裏切る構成だった。

海外での評価は賛否両論に分かれたが、その大半は演出の中途半端さを指摘している。IMDbの5.3点、ロッテントマトの批評家38%という数字が示す通り、専門批評家からは厳しい評価を受けた。一方で、ジャンル映画ファンからは独特な世界観とビジュアル・インパクトを評価する声も少なくない。

最終的に『アメリアの息子たち』は、優れたコンセプトと才能ある監督・キャストを擁しながらも、ジャンルの境界線で迷子になってしまった惜しい作品と言えるだろう。それでも、禁断のテーマに果敢に挑戦し、既存のホラー映画に一石を投じた意義は大きい。