
「視覚的に美しく内省的な作品」全米で2025年9月19日に公開された映画『ビューティフル・ジャーニー ふたりの時空旅行』(原題:A Big Bold Beautiful Journey)のあらすじ結末までネタバレ解説と海外の感想評価をまとめて紹介する。
本作は、過去へのドアを開けて人生をやり直せるとしたら、というロマンティック・ファンタジーだ。見知らぬ二人が結婚式で出会い、不思議なGPSに導かれて過去を追体験する旅に出る物語である。
2025年9月19日に全米で劇場公開されたアメリカ合作映画の本作の制作はコロンビア・ピクチャーズとImperative Entertainmentが担当し、ソニー・ピクチャーズが配給を手掛けた。Rotten Tomatoesでは批評家支持率37%、観客支持率59%、Metacriticでは42点という賛否両論の評価を受けた。
監督は韓国系アメリカ人のコゴナダ(Kogonada)が務めた。代表作に『コロンバス』(2017年)、『アフター・ヤン』(2021年)があり、繊細で瞑想的な作風で知られる。脚本は『ザ・メニュー』(2022年)で知られるセス・ライス(Seth Reiss)が執筆し、2020年にブラックリストに選出された。主人公のサラをマーゴット・ロビー(34歳)が演じ、相手役のデヴィッドをコリン・ファレル(48歳)が演じた。他にケヴィン・クライン、フィービー・ウォーラー=ブリッジ、リリー・レイブ、ジョディ・ターナー=スミスらが脇を固めた。
今回は、異色のロマンティック・ファンタジーとして注目を集める映画『ビューティフル・ジャーニー ふたりの時空旅行』のラストについて解説していこう。以下の内容は本編の結末のネタバレを含むため、必ず劇場で鑑賞してから読んでいただきたい。
もくじ
『ビューティフル・ジャーニー ふたりの時空旅行』あらすじ結末ネタバレ
ここから先は『ビューティフル・ジャーニー ふたりの時空旅行』の核心である重大なネタバレを含む。
運命の出会い
デヴィッド(コリン・ファレル)の車が違法駐車の取り締まりを受け途方に暮れるところから物語は始まる。デヴィッドは車のすぐ横に貼られていた広告を読み路地裏にある奇妙な「レンタカー屋」を訪れると風変わりな従業員整備士(ケヴィン・クライン)とキャッシャー(フィービー・ウォーラー=ブリッジ)からオーディションのような面接を受け、合格?したデヴィッドは1994年製サターンSL(特別なGPS装置が搭載)に乗って無事に友人の結婚式会場に向かうことができた。
デイヴィッドは結婚式の会場で、デヴィッドはサラ(マーゴット・ロビー)と出会い会話が弾み、サラからダンスを踊ることを提案されるが奥手なデイヴィッドはつい断ってしまう。すぐに後悔したデイヴィッドだったが、サラはダンス会場で別の男性を見つけ夜を過ごし、デヴィッドは一人で帰路につくことになった。
帰宅の途中、特別仕様のGPSがデヴィッドに語りかけてきた。「大きく、大胆で、美しい旅に出たいですか?」と。
デヴィッドは戸惑いながらも同意すると、GPSは彼を高速道路沿いのバーガーキングへと誘導され食事をしていると、偶然にも一人で食事をしているサラと再会する。
いくつか会話をした後、駐車場に向かうと二人とも同じレンタカー屋から車を借りていることが判明。名残惜しそうに互いに別れ車に乗り込むが、なぜかサラの車が故障してしまう。即座にGPSが彼女を乗せるよう指示し、こうして二人の旅が始まった。
過去への扉
二人はGPSの指示のまま最初の目的地の森に入ると、二人の前にあったのは森の中に佇む赤い扉だけがそこにあった。奇妙な扉を開けて中に入ると、なぜか屋内につながり、さらに奥に進むとそこはカナダの灯台の中でデヴィッドがかつて訪れたことのある場所だった。灯台の上に登り美しい風景を見ながらデイヴィッドは昔話を語り、二人は扉を通って車に戻り、次の目的地へ向かう。
次の扉は、同じように草原の中に佇む不思議な扉だった。扉に見覚えがあるのか、さらはサラは扉を特定のリズムでノックすると奥から施錠が解除される音がしてサラは笑顔で扉を開くのだった。
中に入るとそこは彼女のお気に入りの美術館の裏口で、解錠してくれたのは顔馴染みの警備員のビンセントだった。中に入りビンセントとハグをしたサラはチケットをもらい、サラは特定の絵を眺めながら、母親とよく訪れた絵美術館であること、母親は彼女が大学生の時に亡くなったこと、寂しいが美しい思い出と空間を堪能した二人は美術館を出て車を走らせる。そこでサラはこの状況を疎遠になっている父親と行った車旅行の楽しい思い出を思い出しながら、デイヴィッド同様人を傷つけることが不安で人との関わりを拒んでしまう自分の性格についてデイヴィッドに語るのだった。
次の扉は、デヴィッドの高校時代のミュージカル公演の舞台裏へと続いていた。(扉の先は20年以上過去の高校につながっており、壮年のデイヴィッドは高校生役として行動させられてしまう)扉を見た時点で動揺を隠せないデイヴィッドだったが、すぐになぜか判明する。
当時公演を控えていた15歳のデヴィッドは、主演を務めていたミュージカルで、思いを寄せる女の子にプロムに誘おうとしていた。しかし、彼女は彼を拒絶し、デヴィッドは深く傷つき、公演が始まりデイヴィッドはミュージカルの中でも彼女に拒絶されてしまい動けなくなるが、突如サラがスポットライトを浴びてデヴィッドを鼓舞、二人はライトを浴びながら一緒に会場を後にして車に戻る。
二人が車を走らせていると急に車を止めるように指示され、車を止めると二人はそれぞれ愛すると人との別れのタイミングに遭遇し、互いの過去を知る。
過去を振り返った二人は、それぞれの過去と向き合いデヴィッドは病気の父親の介護をしていることをサラに明かし、父親から「特別な存在」だと言われ続けてきたが、夢を実現できなかったことで、自分は特別ではないと思い込んでいること。サラは愛する人を失い、常に相手を傷つけて失う恐怖と戦っていること、父親との関係が悪化したことも同じパターンだと思っていることなど、それぞれの胸の内を語ると二人はキスを交わす。
車を走らせていると鹿と衝突して車は大破してしまう。
二人はあてもなく砂漠を彷徨い歩いていると、サラはデヴィッドに、互いを傷つける前に旅を終わらせようと提案。デヴィッドはサラに愛していると伝えるが、サラは涙を流しながら二人が体験しているのはただのファンタジーに過ぎないと主張し頑なに愛を拒む。
二人は近くの宿で寂しい夜を過ごした。
この時引いてしまった鹿はぬいぐるみであることが判明するが二人は知らないまま夜が明ける。
翌朝、車は修理されたと聞いたデヴィッドはサラを最初に出会ったレストランまで送り届ける。
サラは名残惜しそうに助手席にいたが、決意したように車を降りると走り出し、二人は離れ離れになる。
結末ネタバレ:最後の扉
しかし、別れた後、それぞれがGPSによって最後の扉へと導かれた。
デヴィッドは自分の幼少期の家に連れて行かれた。デヴィッドは父親として、そこで彼は公演後に傷ついた15歳の若い自分と対面する。
彼は若い自分に、拒絶は終わりではなく、人生はこれから続いていくのだと伝えつつ、デヴィッドも自分自身を許し、過去の痛みから解放された。
一方、サラは12歳の自分として、母親との幸せな夜を再び体験した。母親は彼女に、幸せではなく満足を求めることの大切さを教えた。サラは母親との時間を通じて、自分が愛される価値があることを理解し始める。
デヴィッドが車をレンタカー屋に返却する際に整備士とキャッシャーに二人が顧客とソウルメイトをマッチングさせているのではないかと尋ねるが、二人は目配せした後そんなことはないと大袈裟な拒否をされ、デイヴィッドは車にお礼を言いながらレンタカー屋を立ち去る。
サラはGPSの後押しを受けデヴィッドの住所を訪ね、彼に愛していると告白した。
二人はキスを交わし、共に玄関のドアを通って中に入っていった。
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結末考察:恐れずに愛すこと
この最後の美しいドアは、二人の新しい人生の始まりを象徴していた。
二人は過去と向き合い、自分自身を受け入れることで、ついに本当の愛を受け入れる準備ができたのだった。
映画は、二人が共に未来へ歩み出す姿で幕を閉じる。
過去の傷を癒し、自己受容を経て、二人は恐れずに愛し合うことを選んだのである。
『ビューティフル・ジャーニー ふたりの時空旅行』作品情報
『ビューティフル・ジャーニー ふたりの時空旅行』のネタバレを読んで興味を持った読者のために、監督と主演俳優の詳細を紹介する。本作の映像美と瞑想的な作風を理解することで、この映画の深い魅力に気づけるはずだ。
『ビューティフル・ジャーニー ふたりの時空旅行』興行収入
本作は2025年9月19日にアメリカで公開され、オープニングウィークエンドで350万ドルを記録し、6位に終わった。前評判では800万から1000万ドルが予想されていたが、結果は期待を下回った。9月28日時点での全世界興行収入は1400万ドル(アメリカ・カナダ590万ドル、その他地域810万ドル)に留まっている。評価は賛否両論で、CinemaScoreではB-を記録した。
コゴナダ監督紹介
コゴナダ(Kogonada)は韓国ソウル生まれのアメリカ人映画監督だ。本名はパク・ジュンウン(Park Joong Eun)。幼少期にアメリカに移住し、インディアナ州とシカゴで育った。元々は小津安二郎に関する博士論文を書いていたが、映画製作に転身した経歴を持つ。
コゴナダは2012年から映像エッセイの制作を始め、ウェス・アンダーソンやイングマール・ベルイマン、リチャード・リンクレイターといった監督たちの作品を分析した映像作品で評価を得た。その後、長編映画監督としてデビューした。
2017年に監督デビュー作『コロンバス』(Columbus)がサンダンス映画祭でプレミア上映され、批評家から絶賛された。この作品はインディペンデント・スピリット賞やゴッサム・インディペンデント映画賞にノミネートされた。2021年には2作目の『アフター・ヤン』(After Yang)を発表し、カンヌ映画祭で世界初上映、サンダンス映画祭でアルフレッド・P・スローン賞を受賞した。2024年にはIndieWireが選ぶ21世紀最高のSF映画第9位に選出されている。
2022年にはApple TV+シリーズ『パチンコ』(Pachinko)のエピソードを監督し、ピーボディ賞やクリティックス・チョイス賞を受賞した。2024年にはスター・ウォーズシリーズ『アコライト』(The Acolyte)でも演出を手掛けた。彼の作風は静謐で瞑想的、映像美にこだわった演出が特徴だ。
主演サラ役「マーゴット・ロビー」紹介
マーゴット・ロビー(Margot Robbie、34歳)はオーストラリア・クイーンズランド州ダルビー出身の女優だ。1990年7月2日生まれ。2008年から2011年まで地元の人気ドラマ『ネイバーズ』(Neighbours)に出演し、オーストラリアで知名度を得た。
ハリウッド進出後、2013年にマーティン・スコセッシ監督の『ウルフ・オブ・ウォールストリート』(The Wolf of Wall Street)でレオナルド・ディカプリオの妻役を演じ、一躍注目を浴びた。この役のオーディションで、ロビーはディカプリオの顔を即興でビンタし、その大胆さが製作陣の目に留まり役を獲得した。同作は世界で3億9200万ドルを稼ぎ、スコセッシ監督作品で最高の興行収入を記録した。
2017年の伝記映画『アイ、トーニャ 史上最大のスキャンダル』(I, Tonya)でフィギュアスケート選手トーニャ・ハーディングを演じ、アカデミー賞主演女優賞にノミネートされた。2018年には『ふたりの女王 メアリーとエリザベス』(Mary Queen of Scots)でエリザベス1世、2019年には『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』(Once Upon a Time in Hollywood)でシャロン・テート、『スキャンダル』(Bombshell)でFoxニュースの社員を演じ、後者でアカデミー賞助演女優賞にノミネートされた。
DCエクステンデッド・ユニバースでは2016年の『スーサイド・スクワッド』(Suicide Squad)からハーレイ・クイン役を演じ、シリーズの人気キャラクターとなった。2023年にはグレタ・ガーウィグ監督の『バービー』(Barbie)で主演を務め、同作は世界で14億ドルを超える大ヒットとなり、アカデミー賞8部門にノミネートされた。
ロビーは2014年に夫のトム・アッカリーと共にプロダクション会社LuckyChap Entertainmentを設立し、『アイ、トーニャ』や『プロミシング・ヤング・ウーマン』(2020年)、『バービー』などを製作した。Forbesは2019年に彼女を世界で最も稼ぐ女優の一人にランク付けし、年収2350万ドルと報じた。
主演デヴィッド役「コリン・ファレル」紹介
コリン・ファレル(Colin Farrell、48歳)は1976年5月31日、アイルランド・ダブリン生まれの俳優だ。2000年代からブロックバスターと独立系映画の両方で主演を務め、ゴールデングローブ賞3回、SAG賞1回を受賞し、アカデミー賞とエミー賞にもノミネートされている。2020年にThe Irish Timesはファレルをアイルランド史上5番目に偉大な映画俳優に選出した。
1998年にBBCドラマ『バリーキサンジェル』(Ballykissangel)で演技を始め、1999年の『ウォー・ゾーン』(The War Zone)で映画デビューした。2000年の戦争ドラマ『タイガーランド』(Tigerland)で初めて主演を務め、2002年のスティーヴン・スピルバーグ監督『マイノリティ・リポート』(Minority Report)でブレイクした。
その後、『デアデビル』(2003年)でブルズアイ、『アレキサンダー』(2004年)でアレキサンドロス大王を演じた。2006年のマイケル・マン監督『マイアミ・バイス』(Miami Vice)、2007年のウディ・アレン監督『カサンドラ・ドリーム』(Cassandra’s Dream)にも出演した。
2008年にマーティン・マクドナー監督の『ヒットマンズ・レクイエム』(In Bruges)で新米殺し屋を演じ、ゴールデングローブ賞を受賞し、批評家から高い評価を得た。その後、『ホーリブル・ボス』(2011年)、『トータル・リコール』(2012年)、『セブン・サイコパス』(2012年)、『ウォルト・ディズニーの約束』(2013年)、『ロブスター』(2015年)、『聖なる鹿殺し』(2017年)、『The Beguiled』(2017年)、『ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅』(2016年)、『ダンボ』(2019年)などに出演した。
2015年にはHBOのスリラーシリーズ『TRUE DETECTIVE/二人の刑事』(True Detective)シーズン2に出演した。2022年にはSF映画『アフター・ヤン』(After Yang)、サバイバル映画『13人の命』(Thirteen Lives)、そしてマクドナー監督との再タッグとなった『イニシェリン島の精霊』(The Banshees of Inisherin)に出演した。『イニシェリン島の精霊』ではヴェネツィア国際映画祭でヴォルピ・カップ男優賞とゴールデングローブ賞を受賞し、アカデミー賞主演男優賞にノミネートされるなど、キャリア最高の評価を得た。
2022年には『ザ・バットマン』(The Batman)でペンギン/オズ・コブを演じ、2024年のHBOシリーズ『ザ・ペンギン』(The Penguin)でも同役を演じ、ゴールデングローブ賞を受賞した。
海外の感想評価まとめ
映画『ビューティフル・ジャーニー ふたりの時空旅行』は海外で賛否が大きく分かれる評価を受けた。Rotten Tomatoesでは批評家支持率37%、観客支持率59%、Metacriticでは100点満点中42点という評価だった。視覚的な美しさと俳優の演技は高く評価されたが、ペース配分とファンタジー要素の説明不足が批判された。一方で、内省的なテーマと感情的な深みを称賛する声も多く上がった。
IMDb(総合評価:6.2/10)
①私はこの映画を視覚的に印象的で内省的な作品だと感じた。コゴナダ監督の瞑想的なスタイルを体現している。マーゴット・ロビーとコリン・ファレルという二人の見知らぬ人が、神秘的な魔法の扉を通って過去を辿る独特な前提だ。両俳優は静かな強さで映画を支える繊細で説得力のある演技を披露している。撮影は息をのむほど美しく、穏やかで憂鬱なスコアが夢のような雰囲気を作り出している。しかし、意図的にゆっくりとしたペースが最大の障壁だ。スロー・バーンのアプローチを標準的なハリウッド作品からの爽快な脱却として評価する人もいれば、もどかしく不活性だと感じる人もいるだろう。
②私はセス・ライスがユニークな脚本を書いたと思う。結婚式で出会った二人の見知らぬ人が、過去の道をたどる旅に出るという設定だ。コゴナダは、コリン・ファレルとマーゴット・ロビーがスクリーン上で輝く機会を与えるシンプルな演出をしている。ロビーはこの演技で賞にノミネートされる可能性があるだろう。完璧な映画ではないが、十分に笑わせてくれるし、もし過去に戻れたら、あなたはどうするか?と考えさせられる。
③私は『永遠のきらめき』(Eternal Sunshine of the Spotless Mind)を思い出した。あの映画ほど優れてはいないが、アイデアは似ている。現実世界から始まるが、やがてファンタジー要素が導入され、現実を損ない始め、映画そのものの概念すら損なっていく。もしあなたがそれについていく気分でなければ、ここで映画を見失うだろう。コリン・ファレルとマーゴット・ロビーは、世界で最も美しい人々の一人であることから来るケミストリーを持っている。
④私は監督コゴナダとライターのセス・ライスが二人のスターを分散した説明の中でまとめ、愛が花開くことを可能にする方法を喜んでいる。コリン・ファレルのデヴィッドとマーゴット・ロビーのサラは、結婚式での出会いの時点から絡み合うことに抵抗している。二人が危険な指示を出すGPSを搭載した奇妙なレンタカーを共有すると、それぞれがフックアップのアイデアに冷淡になる。彼らは魔法のドアに入るよう命令に従うことに忙しく、通常は過去へと続いている。
IMDb – A Big Bold Beautiful Journey
Rotten Tomatoes(批評家:37% / 観客:59%)
①私はこれが過去を癒して現在を幸せに生きるための感情的な旅だと感じた。笑って泣いたので、私にとっては良い映画だ。狂った時代にハッピーエンドを求めるのは当然だろう。
②私はこの映画が風変わりで楽しく、内省的だと思った。批評家たちは何を考えているのだろう?
③私は批評家の意見に賛成できない。この映画は素晴らしかったと思う。妻と私は本当に楽しんだ。
Rotten Tomatoes – A Big Bold Beautiful Journey
Metacritic(総合評価:42/100)
①私は『ビューティフル・ジャーニー ふたりの時空旅行』が大胆なストーリーテリングの祝典だと感じた。映画は真実であることで成功している。観客に記憶し、反省し、希望を持つよう求める高揚感があり、幽玄的なロマンティック・ファンタジーだ。人を痛ませながらも肯定された気持ちにさせる稀有な映画の一つである。
②私はより大きなスケールで活動しているコゴナダが、彼特有の温かい感性を保持していると思った。もしあなたが映画の心を込めた感傷性に屈することができれば、それは価値のある旅だ。
③私はコゴナダのトゲのある甘いロマンティック・ファンタジーが、群衆を喜ばせるハーレクイン・ロマンスと風変わりなシュルレアリスト実験の中間に位置していると思った。どちらも十分ではなく、その掌握を超えたものに手を伸ばしている映画だ。
Metacritic – A Big Bold Beautiful Journey
批評家レビュー
海外の専門批評家による『ビューティフル・ジャーニー ふたりの時空旅行』の詳細な評価を紹介する。視覚美と俳優の演技は評価されたが、トーンの不一致や感情的な距離感が批判の的となった。この映画の多角的な魅力と課題を理解できるはずだ。
Variety 評価不明
トムリス・ラフリー氏「コゴナダ監督のマイナーキーの美学とライターのセス・ライスの空想的な意図は、冷たく遠く感じるラブストーリー全体を通してミスマッチに見える」
映画は記憶、悲しみ、喪失が未来をどう形作るかを扱っているが、その空想的な性質はより華やかなスタイルを求めており、コゴナダのマイナーキーなタッチの下では場違いに感じられる。問題の一部は、既に実体のない脚本(素晴らしい風刺ホラー『ザ・メニュー』のセス・ライス作)が、演出とマッチしていないことだ。
物語の当惑させる(時には煩わしい)ユーモアのセンスが助けにならず、映画が必死に処方しようとする大きく、大胆で、美しい人生の教訓に対して積極的に働きかけている。映画のトーンの不一致は、その信じられないほど才能のある共演者たちを大きく傷つけている。ほとんどの場合、ファレルもロビーも、親密で脆弱な感情を投影できることを観客が知っているにもかかわらず、疎遠で驚くほど冷たく見える。
評価点
視覚的な美しさと俳優の魅力
批判点
トーンの不一致、感情的な距離感、冷たいラブストーリー
(Variety – A Big Bold Beautiful Journey)
Roger Ebert 評価不明
マット・ゾラー・サイツ氏「チャーリー・カウフマン映画で少しも不快にならないものを想像してみてほしい」
セス・ライスによって書かれ、最近のブラックリストに載った幸運な名前の一人であり、コゴナダによって監督された『ビューティフル・ジャーニー ふたりの時空旅行』は、問題を抱えた美しくクールな人々の間のやや軽いラブストーリーのように聞こえるが、リアリズムの外観があり、キャラクタリゼーションとトーンの面では基本的にそれが何であるかだ。
しかし、周囲のパッケージはそれと対立しており、興味深い緊張と対照を生み出すことを意図しているように見えるが、代わりに煩わしいものになってしまう。主に映画が二人の主人公と同じ問題を抱えているからだ。コミットできないのだ。映画は様々なストーリーテリングモードの表面を華やかに滑っていくが、それらを組み合わせたり調和させたりする方法を決して見つけられない。
『ビューティフル・ジャーニー ふたりの時空旅行』が終わった後、私は物語の詳細のほとんどを忘れてしまった。しかし、サラが再び恐ろしい選択をしようとしていることに気づいた時のロビーの苦悩した表情や、雨宿りの軒下でタバコを吸うファレルのキャラクターなど、特定のイメージは持ち続けるだろう。その映像はデヴィッド・ホックニーの絵画のようにさらに美しく見えるだろう。
評価点
ロビーとファレルの演技力とカリスマ性
批判点
ストーリーテリングの一貫性の欠如、コミットメントできない映画構造
(Roger Ebert – A Big Bold Beautiful Journey)
TheWrap 評価不明
ウィリアム・ビビアーニ氏「あなたの論点は『ビューティフル・ジャーニー ふたりの時空旅行』だが、それを実質的に叫んでいる。コリン・ファレルに文字通りタイトルを叫ばせるのと同じように」
この映画は、私たちが魔法のドアを開き、そういったものをしなければならないということだ。この映画は魔法のドアを開くことで恋に落ちることについてであり、サウンドトラックには最もドラマチックなシーンの一つに『Let My Love Open the Door』が使われている。クレジットの最後に隠されているのではない。誠実であることと無骨であることは違う。
デヴィッドとサラは良いことも悪いことも全てを一度に互いに話すことで、自分たちの人生に誰かを自由に正直に入れることを学ばなければならない。それは甘いはずだ。問題は、デヴィッドとサラには本当に「悪いこと」がないということだ。彼らの問題は同情的かもしれないが、それほど悪くはない。
評価点
視覚的な美しさ
批判点
浅いキャラクター描写、現実味のない問題設定、説教臭さ
(TheWrap – A Big Bold Beautiful Journey)
NPR 評価不明
ジャスティン・チャン氏「コゴナダの映画は孤独な見知らぬ者たちが魔法のGPSを搭載した車で一緒に旅をする物語で、高尚な概念に取り組もうとしている。しかし、コリン・ファレルとマーゴット・ロビーでさえ、この絶望的な脚本を救うことはできない」
映画はセス・ライス(最近の高級料理ホラー風刺『ザ・メニュー』)によって書かれ、最初から強引な気まぐれに溢れている。特定されていない都市にいて、どこからともなく雨のシャワーが噴出し、誰もが完璧に色調の合った傘を詰め込んでいる。
ケヴィン・クラインとランダムにドイツ語なまりのフィービー・ウォーラー=ブリッジが経営する風変わりな代理店で新しいものを借りに行く。彼らは暗号的な指示を吐き出し、ある時点で「大きく大胆で美しい旅に出たいか?」と尋ねるGPSを搭載した車を彼に与える。
『ビューティフル・ジャーニー ふたりの時空旅行』について最も不可解なことは、それが最近のアメリカ独立映画で最も興味深く哲学的な声の一人であるコゴナダによって監督されたことだ。彼は以前、ファレルを美しいSFドラマ『アフター・ヤン』で監督し、現代建築への共有された愛をめぐって結びつく二人の若者についての絶妙なデビュー作『コロンバス』を作った。
評価点
コゴナダの映像美と俳優への演出力
批判点
絶望的な脚本、強引な気まぐれ、コンセプトの失敗
(NPR – A Big Bold Beautiful Journey)
個人的な感想評価
なぜか低評価だが、少し心が疲れ傷ついた人にとっては次の一歩を歩むための潤滑油のような優しさを得られるだろう。もちろん突飛な演出や展開に驚かされるかもしれないが、時空を越えるとタイトルからイメージできていれば日本人には馴染み深いどこでもドアのようなものであっさりと受け入れられるはずだ。
そんな時空を超える扉を潜るのは二人の陰キャ、それだけだ。
おそらく神に近いGPSによってそれぞれのトラウマをさらけ出し、向き合い、乗り越えていき横にいる人を恐れずに愛するための努力をしていくという物語。
物語はシンプルだ。GPSはおせっかいなドラえもんみたいなものだ。
この映画は「ドラえもんのように大いなる存在に認められ愛され、私たち大人が本当に願っていること、自分も人を愛したいという願いを叶えてもらう映画」である。
全体的にトラウマ描写はあるが、痛みの演出は抑えられ、マーゴットロビーとコリン・ファレルの小さな笑顔に助けられながら私たち視聴者も過去を乗り越えていくことができる許容範囲だったので、見終わった後はすぐにパートナーに電話して愛を確かめたくなるだろう。
私も早くこの記事を書き終えてすぐにパートナーを抱きしめてやりたい衝動に駆られているほどだ。
誰にでもあるだろう?あの時ああしていればよかったってことが。
賛否両論なのは文化の違いだろう、気にするな日本人。これは僕たちのための映画だ。
コゴナダ監督の映像美学は相変わらず息をのむほど美しく、些細な背景や風景、そしてBGMすらも美しく心を満たす。ロビーとファレルの演技も申し分ない。マーゴット・ロビーのDCキャライメージが払拭されていく良い映画だった。
まとめ

本記事では、映画『ビューティフル・ジャーニー ふたりの時空旅行』の物語結末までのネタバレ、作品情報、そして海外の感想評価を紹介した。
本作は、マーゴット・ロビーとコリン・ファレルという二大スターを迎え、『バービー』や『イニシェリン島の精霊』に続く期待作として公開された。不思議なGPSと魔法の扉を通じて過去を追体験し、トラウマと向き合う二人の物語は、視覚的な美しさとコゴナダ監督特有の瞑想的な演出で描かれた。
しかし、海外での評価は賛否が大きく分かれた。Rotten Tomatoesでは批評家支持率37%、Metacriticでは42点という厳しい評価を受けた。批評家たちは、トーンの不一致、ファンタジー要素の説明不足、感情的な距離感を批判した。一方で、観客スコアは59%とやや高く、視覚美と俳優の演技、内省的なテーマを評価する声も多かった。
興行的には惨敗し、オープニングウィークエンドで予想を大きく下回る350万ドルしか稼げず、4500万ドルの製作費を考えると大きな失敗作となった。それでも、過去と向き合うことの重要性、自己受容と愛の関係性というテーマは、多くの観客の心に響いたようだ。コゴナダ監督のキャリアにおいては挑戦的な作品となったが、映画通にとっては評価が分かれる問題作として記憶されるだろう。
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