
「まるでダリの溶ける時計の中に迷い込んだような気分にさせられる、君はこの映画が生まれた時代にいることを誇るだろう…」海外で大絶賛のホラー映画『バックルームズ/The Backrooms』のあらすじから結末までのネタバレと、海外の感想評価をまとめて紹介していきたい。アメリカで制作された本作は原題『Backrooms』として2026年5月29日に公開され、Rotten Tomatoesで批評家支持率87%、Metacriticで77点という高評価を獲得したホラー・サイエンスフィクション作品だ。
物語は、離婚の傷を抱えたまま家具店を営む男クラークが、店の地下で見つけた不可解な扉をきっかけに「バックルームズ」と呼ばれる異次元空間に迷い込んでいくところから動き出す。無限に続く黄ばんだ空き部屋の連なりと、そこに潜む何かの存在――主人公はやがて、自分のセラピストであるメアリーをもこの悪夢に巻き込んでいくことになる。
本作の監督は自身のYouTubeシリーズ「Kane Pixels」でこの世界観を生み出したケイン・パーソンズ、20代前半にして長編初監督作を任された新鋭だ。主人公クラークを演じるのはチウェテル・イジョフォー(俳優名)、そしてクラークのセラピストであるメアリー・クライン(俳優名:レナーテ・レインズヴェ)が物語のもう一方の軸を担う。
今回は、インターネット発のホラー現象を実写化した話題作『バックルームズ/The Backrooms』のラストまでを詳しく解説し、海外でどのような評価を受けているのかを紹介していきたい。以下の内容は本編の結末に関わる重大なネタバレを含むため、必ず鑑賞後に読んでいただきたい。
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もくじ
『The Backrooms(バックルーム)』とは何なのか?
近年、YouTubeやTikTok、ゲーム配信などで爆発的な人気を誇るネット発のホラー都市伝説。それが『The Backrooms』、、、、と一度は聞いたことがある人も、映画予告からこのThe Backroomsを知った方もそもそも元ネタは何?なんでこんなに人気なの?と思ったと思います。
映画『バックルームズ/The Backrooms』を見る前に、元ネタについて少しだけ紹介しておきます。
一言で言うと、『バックルームズ/The Backrooms』とは「現実世界のバグによって迷い込んでしまう、異次元の無限空間」を舞台にした架空の怪談(シェアード・ワールド)です。
1. 2019年、始まりは一枚の画像
物語の起点となるのは、2019年に海外の匿名掲示板「4chan」に投稿された、不気味なほど何もない部屋の画像と不安を煽るような文章でした。

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If you’re not careful and you noclip out of reality in the wrong areas, you’ll end up in the Backrooms, where it’s nothing but the stink of old moist carpet, the madness of mono-yellow, the endless background noise of fluorescent lights at maximum hum-buzz, and approximately six hundred million square miles of randomly segmented empty rooms to be trapped in
God save you if you hear something wandering around nearby, because it sure as hell has heard you
あなたが注意を怠って、おかしな所で現実から外れ落ちると、古くて湿ったカーペットの匂いと、単調な黄色の狂気と、最大限にハム音を発する蛍光灯による永遠に続く背景雑音と、約十五兆 m2 を超えて広がるランダムに区分けされた空っぽな部屋部屋に閉じ込められるだけの、 “The Backrooms” へ行き着くことになるのです。
もし、近くで何かがうろうろしているのが聞こえたら、それはきっとあなたが出す音に気付いていることでしょう。あなたに神の救いがあらんことを。
待っているのは、ただただ果てしなく続く空間。
- 黄色みがかった不快な壁紙
- 湿った古いカーペットの臭い
- 鳴り響く蛍光灯のブーンというハムノイズ
たった一枚の画像ですが、誰もいないはずなのに「誰かがいる気配」だけが漂う、極限の孤独と不安を煽る世界観がネット民の心を掴み一気に話題になりました。
元々この画像が投稿されたスレッド(掲示板)は「皆の持っている不穏な画像を持ち寄ろう」という趣旨の場所だったため、たった一枚のこの画像を元に皆がアイディアを持ち寄り始め一気にこの画像はただの画像ではなく、一つの都市伝説の起源となり増殖していきます。
ちなみに画像は生成A Iによるものではなく、2024年5月にアメリカ合衆国オシュコシュにあるHobby Town USAが購入した店舗の家具配置前の居抜き物件の画像であることが判明、画像自体は店長が2003年に自身のブログにアップした画像だということまで判明しています。
2. 世界観の拡大:無限に続く「階層(Levels)」
最初は「黄色い部屋」だけだったBackroomsですが、ネット上の有志たちによって設定がどんどん追加され、現在は「Level(レベル)」と呼ばれる無数の階層が存在することになっています。
- Level 0(ロビー):最初に迷い込む、例の黄色い無限のオフィス空間。
- Level 1(居住可能ゾーン):コンクリートの床や壁で構成された、インダストリアルな地下倉庫のような空間。
- Level 2(パイプの悪夢):無数の配管が壁を這い、高温の蒸気が噴き出す暗い通路。
階層はLevel 0〜11といった初期のものから、今では数千、数万ものバリエーションが有志のWikiサイトに創作され続けています。中には、一見安全に見えるプールサイドの空間(Poolrooms)や、不気味なアーケードゲーム街などもあります。
3. 迫り来る恐怖:「エンティティ(Entities)」
この世界は、ただ孤独なだけではありません。各階層には「エンティティ(Entities)」と呼ばれる不気味な未知の生物・怪物たちが生息しています。
- ハウンド(Hound):人間の女性のような髪の毛を持ち、四足歩行で襲いかかってくる狂暴な生物。
- スマイラー(Smiler):暗闇の中から、発光する鋭い歯と目だけを浮かび上がらせて静かに近づいてくる存在。
- スキン・シーラー(Skin-Stealer):犠牲になった人間の皮を剥ぎ、その人に擬態して次の獲物を狙う怪物。
迷い込んだ人間(放浪者)は、脱出方法を探しながら、これら凶悪なエンティティから命がけで逃げ回らなければなりません。
4. ブームを決定づけた「時系列(映像化と現在)」
この都市伝説の歴史を語る上で欠かせないのが、2022年に当時16歳の映像作家Kane Pixels(ケイン・ピクセルズ)氏がYouTubeに投稿した短編SFホラー動画『The Backrooms (Found Footage)』です。
90年代のビデオカメラで撮影されたかのような超リアルな3D映像は、全世界で数千万回以上再生され、一大ムーブメントを巻き起こしました。映像内では、1980年代に「ASYNC(エイシンク)研究所」という組織が次元の扉を開いてしまい、調査隊を送り込んでいた……という、映画さながらの重厚なバックストーリー(タイムライン)が描かれています。
この時、映像をあえて古い8ミリや廃棄されていたVHSビデオのように映像を編集する「不可視の恐怖(視覚的制限)」技術はYouTubeで密かに流行していき、確かに誰かが撮影していた本当にあったものという信憑性を生み出す技法として定着していきます。
そしてこの映像を見た傑作映画量産スタジオである「A24」が映画化権を購入、そして監督にはこの短編映像を作り上げた若き映像作家「ケイン・パーソンズ」が長編化を行うと発表され映画ファンたちは歓喜をあげ、それから4年後の2026年6月についに完成した映画『バックルームズ/The Backrooms』が全米公開されます。
ご存知の方も多いと思いますが、この映画は超大ヒット中で全世界で絶賛上映中となっています。
それでは長い間引き留めて申し訳ありませんでした。
ここから先は映画『バックルームズ/The Backrooms』のネタバレを載せておりますので視聴前の閲覧はお控えください。
映画『バックルームズ/The Backrooms』あらすじ結末ネタバレ
ここから先は『バックルームズ/The Backrooms』の結末に関わる重大なネタバレを含む。家具店の地下に潜む異空間と、そこに引き込まれていく人々の運命が明かされるため、鑑賞前の閲覧は避けることを強く推奨する。
消えた研究者の記録
暗点から一転して突如[1990年]とタイトルされたビデオテープの映像から始まる。姿は見えないが黄色い防護服のようなものを着た研究者ナレン・ウォーン(アヴァン・ジョギア)が、黄色い壁紙に統一された広く迷宮のような場所を彷徨い歩いている。何度も背後を気にしていることから何かに追われている様子が窺える。
ナレンは映像機材の並ぶ部屋にたどり着き、無線で救助を呼ぶが返事がない。ナレンは諦めてさらに奥へ進むと、うなり声を上げる巨大な何かに襲われ、必死に逃げ場を探すナレンだったが、結局その存在に襲われ、映像はそこで途切れる。
この記録映像は、のちにナレンの同僚だった研究者たちによって回収され、視聴されることになる。
家具店主クラークの日常
現在、家具店「キャプテン・クラークのオットマン帝国」を営むクラーク(チウェテル・イジョフォー)は、競合店との客の奪い合いに苦しみ、経営はいよいよ苦しくなり立ち退きまで秒読みという段階だった。
彼はセラピストのメアリー・クライン(レナーテ・レインズヴェ)のもとに通っている。(セラピストのメアリー自身も、幼少期に取り壊された実家の記憶と、精神病棟施設に入れられた母のことを頭から離せずにいる人物だった。)カウンセリングの中で、メアリーはクラークが離婚に至った原因――特に彼のアルコール依存――をロールプレイという形で再現させ、客観的に自身を顧みるように仕向けるが、様々な感情が抑えきれなくなったクラークは思いのほか感情を昂らせ、苛立ちと恨み言をぶちまけるのだった。
店では起死回生の動画撮影の真っ最中だった。アシスタントマネージャーのキャット・テイラー(ルキタ・マックスウェル)と、その恋人ボビー・ロバーツ(フィン・ベネット)を撮影させクラーク自身が店のキャラクターになりきって宣伝用の映像を撮っているが、クラークが座った椅子が壊れるというアクシデントに見舞われ先行きの不安が現実化したような空気となり撮影は中断される。
クラークがオフィスにいると現れた電気技師とともに地下へ下りて設備のチェックに向かう。地下の配電盤を開けると下の方に設備の説明シールの上に突如現れたような斜めに配置されたスイッチを発見する。奇妙だとは思いながらも斜めのスイッチをオンオフしてみるが何も起きずそのままその1日は終了する。
地下に潜む異空間
夜、店のベッドでくつろいでテレビを見ながら眠ろうとしていたクラークだったが、番組が突然バックルームズを映した映像に切り替わり、そのままテレビの電源が落ちてしまう。設備不良にイラついたクラークが再び地下へ下りて設備のブレーカーを全て切るが、暗闇の壁の一部から光が漏れているのに気が付く。近づいて手を触れようとすると驚くべきことにその壁をすり抜けそのままバックルームズへと迷い込んでしまうのだった。
呆然としながらあたりを歩き回るクラークは、まずは自身が通り抜けた壁を再び触れて簡単に元の世界に戻れることを確認する。好奇心が湧いたクラークが広い部屋を抜けて広大な迷路のような空間を彷徨い歩く。死んだかもめ、積み上がった家具、男の等身大パネルから複数の言語で語りかける声が響く空間、床には得体の知れない品々が埋め込まれ、そしてなぜか隠された扉の隙間から冒頭の研究者ナレンのバッジ(彼自身の姿はどこにもない)を見つける。好奇心が抑えられないクラークがさらに先に進むと、背後の部屋で巨大な何かが暴れ回り唸っているのを聞いたクラークは必死に逃げ、なんとかすり抜ける壁を探し出して店の地下へと帰還する。(余裕のあったクラークは一瞬だけバックルームに戻り中央に放置されていた高級そうな椅子を盗んで現実に戻るのだった)
一方クラークがバックルームズを歩き回る映像を監視カメラ越しに見つめているのは非公開の研究機関「アシンク・リサーチ・インスティテュート」の科学者フィル(マーク・デュプラス)だった。
クラークはメアリーにこの体験を興奮気味に打ち明けるが、彼女はアルコール離脱症状による幻覚だと判断して逆に心配されてしまう。証拠を持ち帰ると約束したクラークは、キャットとボビーに協力を仰ぐことを決める。
三人での再突入
クラークはキャットとボビーを強引に地下に連れていき、壁の向こうがバックルームズへの入り口だと紹介するが、壁にわかりやすくテープが貼られただけの場所を見せられた二人は最初はバカにしながらテープを回すが、クラークが目の前で消えた瞬間を見て驚愕し、二人とも恐る恐る壁を抜けてバックルームに突入、多少の恐怖を感じながらも好奇心を抑えきれず迷宮を進むのだった。
好奇心旺盛のボビーは興奮気味にカメラを回しながらバックルームの奇妙な造形の撮影を続け、ついにその階層を探検し尽くした彼らは、下の階層に向かう滑り台のような奇妙な四角い穴を見つける。
ロープを腰に結んだボビーが縦穴へ下ろされると、そこには脱ぎ捨てられた衣類が山積みになった空間が広がっていた。撮影を続けていくうちに奥から唸り声が近づいてくるのに気づいたボビーは急いで引き上げられ助かったと思ったその直後、ロープを強引に引っ張られ下の階層に引きずられてしまう。クラークとキャットはすぐに追いかけるがそこには大量の血痕だけが残されていた。
クラークはボビーを探し迷宮を彷徨っていると、暗闇の中でクリスマスツリーが灯る部屋にたどり着く。気配を感じたボビーが何かに声をかけると、そこで人間のような姿をした何か(後に「スティルライフ」と呼ばれることになる)に襲われる。逃げるうちに一面タイル張りの不思議な空間に辿り着くと壁の向こうからキャットの声がすることに気がつき、クラークは近くのテーブルにカメラを置いて壁越しにキャットとの会話を試みようとする。するとカメラが突如持ち上がりクラークに近づくシーンでカメラは停止する。
その頃自宅にいたメアリーの元にクラークから「もう戻らない」という留守番電話のメッセージが録音されていた。
同じ頃、例の研究機関の研究員のフィルが自宅で家族とくつろいでいるとテレビに映ったクラークの店の宣伝映像を見て、血の気が引いた表情を浮かべる。
結末ネタバレ:メアリーの逃走
クラークを探すため地下に降りたメアリーはご丁寧に壁に貼られていたテープからバックルームズへの扉を見つけ、皆と同じように不安と恐怖、そして好奇心によってバックルームに足を踏み入れてしまう。不思議な落書きがある場所に辿り着くとそこに佇むクラークを発見したメアリーは何かに怯えるクラークがメアリーに近づいてきた途端に首に腕を回して締め上げられ気絶してしまう。
目を覚ましたメアリーがいたのは、ごく普通のダイニングルームを模した空間だった。そこには出来の悪い人型の複製――スティルライフたち(顔が何重にも重なったような不気味な造形)が何体も座っている。ダイニングテーブルの対面に座っていたクラークがメアリーにバックルームズにあるものはすべて誰かの「記憶」から生まれたものなのだと説明をはじめ、横に座っているスティルライフの首にナイフを刺すが血が出ずお腹をちぎって食べ物だと皿に分け与え、冷蔵庫の扉を開けてビールを取り出す際にキャットの生首があるのを見かけたメアリーが指摘をするが、クラークは女性型のスティルライフの頭皮を剥ぎ取り、メアリーに被せてまるでクラークの家族の一員のようなロールプレイを続けさせようとする。
だがメアリーはクラークが現実を拒みバックルームズに留まりたがっていることを見抜き逆にあなたの妻が去ったのは、あなたが原因だ、私は関係ないと理詰めで説得し、落ち着いたクラークはメアリーを解放する。
その瞬間、周囲にいた他のスティルライフたちは一斉に散っていく。次に部屋に現れたのは巨大で歪んだ、クラークの姿を模した存在――「キャプテン・クラーク」の名で呼ばれる主格のスティルライフだった。クラークは友人に語りかけるように話しかけるが次の瞬間、首を噛みちぎられてしまう。
その隙にメアリーは逃げ出し、かつての自分の住んでいた街並みを再現した空間をいくつも駆け抜ける命懸けの追いかけっこが始まる。メアリーはついに店のロビーを模した空間にたどり着くがキャプテン・クラークに行手を阻まれ戦うことになってしまう。掴まれたメアリーはお守りで持っていたかつて実家に残されていた自身の手形の石片でキャプテン・クラークの顔面をボコボコに殴り木製の脚を折って狭い通路を抜けるとーー、そこには防護服を着込んだ複数の研究員たちに囲まれ暗転する。
メアリーは尋問室に連行され、そこで研究員のフィルと対面する。フィルは彼女が目にしたものを写真を見せて確認しようとするが、メアリーはうまく言語化できずにいた。するとフィルは、この会社がかつてはMRI装置を製造していたこと、そしてバックルームズの発見をきっかけに、その全容を解明しようと方針を転換したのだと語っているとメアリーの意識は次第に遠のいていき、その顔にはかすかな微笑みだけが浮かんでいる。
再びバックルームズの映像、そこには新たな参入者たちの記憶が混じり、キャットとボブの行方不明のポスター、そしてメアリーの記憶をもとにした過去に実家が取り壊された通りと残骸、そして彼女の手形が模された空間、彼女が出版した書籍や彼らが行ったことのある店を模された新たな空間が形作られており、その横の部屋の中で佇んでいるのは、メアリーを模したスティルライフの姿だった――。
エンディング考察:彼女は囚われたのか?
ラストに描かれたシーンから、バックルームズ単なる黄色い部屋の迷宮ではなく、「足を踏み入れた人間の精神、記憶、トラウマを捕食して具現化する空間」として描かれていることが判明する。
クラークが家具店のオーナーとしての現実逃避や怒りから、自身の変形した姿である「海賊クラーク」を生み出したのと同様で、メアリーが空間の深部で拘束され、ついに「もうここから出られない、自分も狂った母親と同じように幽閉されて終わるのだ」と希望を失った(心が折れた)瞬間、バックルームズに彼女の精神の形がコピーされ、新たな怪物が誕生したと解釈もできる。
彼女が研究所から立ち去っても残るのか?バックルーム内に設立された研究所に幽閉されているから彼女の空間が生み出されたのか?という疑問も残るが、エンディングでクラークの店の内部は映し出されず店舗の玄関だけが浮かび上がっていた。これは死んだクラークの記憶の造形がバックルームから排除され、新たにメアリー視点の記憶が具現化したためと思われる。このことから現時点ではメアリーはバックルームor研究所に囚われているため彼女の記憶が具現化されているのだろうと推測できる。
故に彼女は非現実的なバックルームに囚われてしまったバットエンドであることが考察される。
『バックルームズ/The Backrooms』作品情報
『バックルームズ/The Backrooms』の制作を手がけた監督と出演俳優、作品の基本情報について紹介する。
興行収入
本作の製作費は1000万ドル程度とされる低予算作品でありながら、全米だけで1億8000万ドルを超え、世界興行収入は3億3000万ドル超を記録した。これはA24史上最高興行収入であり、監督のケイン・パーソンズは全米・世界の両方でオープニング初登場1位を獲得した史上最年少の監督となった。
ケイン・パーソンズ監督情報

ケイン・パーソンズは2005年生まれ、「Kane Pixels」の名で活動してきたYouTuberだ。当初はマインクラフト実況やアニメーション動画から始めた配信活動だったが、独学で身につけた3DCGソフト「Blender」を駆使し、極めて写実的な「バックルームズ」の空間を作り上げた短編を2022年に公開したことで一躍注目を集めた。10代のうちに複数の映画会社から声がかかり、本作で長編監督デビューを飾った。公開当時わずか20歳という若さでA24史上最年少の監督となり、興行的にも記録的な成功を収めている。
クラーク役「チウェテル・イジョフォー」情報

1977年ロンドン生まれ、ナイジェリア系の家庭に育った実力派俳優。「ラブ・アクチュアリー」や「2012」といったヒット作に出演した後、2013年公開の伝記ドラマ「それでも夜は明ける」で実在の人物ソロモン・ノーサップを演じ、アカデミー賞主演男優賞にノミネートされたほか、英国アカデミー賞では主演男優賞を受賞した。マーベル映画「ドクター・ストレンジ」シリーズではモルドを演じるなど、大作から社会派ドラマまで幅広い役柄をこなす。本作では、経営難と離婚の傷を抱えながらセラピーに通う家具店主クラークを演じ、静かな狂気を体現している。
メアリー役「レナーテ・レインズヴェ」情報

1987年生まれ、ノルウェー出身の女優。オスロ国立芸術アカデミーで演劇を学び、舞台を経て映画界に進出した。2021年公開の「わたしは最悪。」で主人公ジュリーを演じ、カンヌ国際映画祭の主演女優賞を獲得したことで一躍国際的な注目を集めた。2025年には監督ヨアキム・トリアーと再びタッグを組んだ『Sentimental Value』(邦題未定)に出演し、アカデミー賞主演女優賞にもノミネートされている。本作では、自身も過去のトラウマを抱えるセラピスト、メアリー・クラインを演じ、繊細な心理描写で物語のもう一つの軸を支えた。
海外の感想評価まとめ
本作は海外でどのような評価を受けているのか。Rotten Tomatoesでは批評家から87%前後の支持を獲得し、Metacriticでも「概ね好意的」の水準となる77点を記録するなど、批評家からの評価は総じて高い。一方で観客の反応はやや割れており、雰囲気重視の演出を高く評価する声がある一方、原作となったYouTubeシリーズの熱心なファンの中には期待と違ったと感じる向きも見られる。なぜこの評価になったのか、海外レビュアーたちの声を見ていこう。
IMDb(総合評価:7.2/10)
①「Helpful」(6/10)は、序盤70分についてはバックルームズという題材が持つ独特の雰囲気と不穏さの表現、そしてセットデザインや編集の完成度を高く評価している。ただし物語の勢いが一変する場面を境に映画は失速し、終盤は意味を持たせようとする試みが中途半端なまま終わり、唐突に幕を閉じてしまうと指摘している。
②schwuppslp(10/10)は多くを語らず、この映画をひと言で「まさにトリップ体験そのものだ」と評した。詳細な理由には触れていないが、満点評価とその短さ自体が、体験として圧倒されたことをうかがわせる。
③danieljungmeyer(5/10)は、題材の可能性に大きな期待を寄せて鑑賞したものの、全体としては「悪くはないが平凡」という感想に落ち着いたと語っている。リミナルスペースの映像には不気味さを感じた場面もあった一方、緊張感の多くが大きな音や混乱した展開に頼っており、キャラクターの掘り下げも不足していたため感情移入がしづらかったという。
④PrimeraE(9/10)は、本作を近年のホラー映画の中でも際立って独自性のある作品だと絶賛している。心理的恐怖やリミナルスペース、トラウマ、記憶、精神的崩壊といったテーマを通じてジャンルそのものを拡張していると評し、構図の使い方や黄緑がかった色調による方向感覚の喪失を演出する撮影技術、そしてチウェテル・イジョフォーとレナーテ・レインズヴェの演技を高く評価している。一方で脇役の存在感の薄さと、賛否が分かれそうな結末には触れている。
Rotten Tomatoes(批評家:87% / 観客:74%)
①バラエティ誌のオーウェン・グレイバーマンは、本作の不穏な質感にすっかり搦め捕られてしまったと綴っている。彼が評価しているのは、派手な脅かしに頼らず、じわじわと観客の呼吸を浅くさせていく演出の巧みさだ。部屋から部屋へと進むだけで緊張が積み重なっていく感覚を、彼は「気づけば眉を上げ続けている」ような体験だと表現し、パーソンズを新世代のムードメーカーとして高く買っている。
②ロサンゼルス・タイムズのエイミー・ニコルソンは、本作をそもそも「ホラー映画」という枠に収めること自体に違和感を覚えたようだ。彼女にとってこの作品は、ダリの溶ける時計を延々と見つめ続けるような、シュルレアリスムの絵画がそのまま動き出した体験に近いという。恐怖よりもまず不条理さに引き込まれる、その独特の鑑賞感覚を高く評価している。
③一般観客の反応はより二極化している。ある観客は「バックルームズという世界観に完全に没入できる作品」だと絶賛し、俳優たちの演技と美術の完成度を称える一方、原作のYouTubeシリーズを長年追ってきたファンの中には「オリジナル要素を足しすぎて、あの頃感じた純粋な不気味さが薄まってしまった」と物足りなさを訴える声もあった。
Metacritic(総合評価:77/100)
①批評家のロッコ・T・トンプソンは、本作がインターネット発の使い捨てホラー企画で終わってもおかしくなかったところを、記憶の歪みと孤独という普遍的なテーマにまで踏み込んだ点を高く買っている。彼にとって本作は単なる話題作ではなく、これから続くインターネット発ホラーの潮流を支える土台になる作品だという。
②一方でタイムズ紙のケヴィン・マーハーは、もっと辛口だ。クラークの荒れた結婚生活やメアリーの母親をめぐる過去が語られる場面はあるものの、それらは物語に本当の重みを与えるところまでは至っておらず、まるでビデオゲーム「Portal」の退屈な場面を延々と見せられているようだと手厳しく評している。
③一般ユーザーの評価は好意的なものが目立ち、映像美と音楽の完成度を称賛する声が多い。ただし中には「なぜ怪物は最初の登場人物をすぐに殺さず、あえてその瞬間を選んだのか」といった設定の整合性に疑問を投げかけるレビューもあり、雰囲気は評価しつつも物語の詰めの甘さを指摘する声も一定数見られた。
批評家レビュー
海外批評家の詳細な評価を見ていこう。
Variety 満場一致の高評価
オーウェン・グレイバーマン氏「不穏な質感に身を委ねればいい、映画は君の眉を上げさせ続ける」
グレイバーマンは、本作を単なるインターネット発の恐怖体験の映像化に終わらせず、初期のデヴィッド・リンチを思わせる産業的な音響設計への偏愛と、電気という現象そのものへの執着を感じさせる作品だと評している。彼にとってバックルームズという場所は、脅かしのための舞台装置ではなく、観客自身の孤独や停滞をそのまま映し出す鏡のような存在だ。静寂と不快な色調だけで恐怖を組み立てていく演出の巧みさこそが、20歳という若さでこの世界を作り上げたパーソンズの最大の武器だと結論づけている。
評価点 沈黙と間の使い方による恐怖の構築力、産業的なサウンドデザインの完成度、そして監督自身が本気で世界観に向き合っている実感が伝わってくる点
批判点 物語よりも雰囲気に比重を置きすぎているため、キャラクターの内面描写がやや後回しになっている印象
The Wrap 期待外れの一本
ウィリアム・ビビアーニ氏「不穏なオフィス建築を見て回るだけの映画なら、まだ成立していたはずだ」
ビビアーニは、バックルームズという題材そのものへの敬意は認めつつも、物語が意味を持たせようとすればするほど失速していく展開に苛立ちを隠さない。彼の見立てでは、この映画が本当に輝いていたのは、まだ何も説明しようとしていなかった序盤の場面だけだという。謎めいた空間を歩き回るだけで十分に恐ろしかったはずなのに、物語を成立させようとする野心が逆にその魅力を薄めてしまった、というのが彼の率直な感想だ。
評価点 序盤の空間演出と、説明なしで恐怖を成立させようとした挑戦的な姿勢
批判点 物語に意味を持たせようとするほど焦点がぼやけ、終盤にかけて空虚さが増していく構成上の弱さ
IGN 若き才能への賛辞
レックス・ブリスキュソ氏(評価:8/10)
ブリスキュソが特に評価しているのは、非人間的な環境の中でチウェテル・イジョフォーが見せる抑制の効いた演技だ。彼女にとってクラークという人物は、バックルームズという理解不能な空間に観客を導くための、人間的な錨のような役割を果たしている。派手な恐怖演出に頼らず、観客の不安を少しずつ積み上げていくパーソンズの演出手腕についても、長編デビュー作とは思えない完成度だと高く評価している。
評価点 イジョフォーの抑制された演技、観客を巻き込んでいく段階的な恐怖の積み上げ方
批判点 サブキャラクターたちの掘り下げが浅く、中盤以降やや単調に感じられる場面がある
The Globe and Mail 辛口の視点
バリー・ハーツ氏「行き先のない旅ではないにせよ、次の部屋へ進む理由がもう少し欲しかった」
ハーツは、本作が完全に迷走した映画だとまでは言わないものの、なぜ登場人物たちが危険を冒してまで奥へ奥へと進んでいくのか、その動機づけが最後まで曖昧なままだったと指摘している。雰囲気作りの巧みさは認めながらも、物語を前に進めるための基本的な推進力が弱く、観客が置いてけぼりになる瞬間が何度かあったというのが彼の見解だ。
評価点 一貫して保たれる不穏な空気感と、無機質な空間デザインの説得力
批判点 登場人物の行動原理が曖昧なまま進み、物語を牽引する推進力に欠ける構成
(The Globe and Mail – Backrooms Review)
個人的な感想評価「期待すぎると落胆する」
個人的には色々とツッコミどころがあった感じがしてそれが気になって物語に集中できなかった。都市伝説は本当にあった系と捉えるか、あくまでフィクションであると捉えるかで楽しみ方や評価も変わる気がする。前者であればこの拙さも許せるが、後者のファンを楽しませる映画として作り上げたのであれば平凡以下の作品だなと思った。
この映画を見て「経験が浅い人が作るとこうなるんだな」という点がいくつも目立った。特に序盤も序盤である、メアリーが何かを見ている、過去に住んでいた家が取り壊され、そこに住んでいた記憶、そしてすぐに場面が切り替わりクラークがメアリーからセラピーを受けるシーンである。流れ的に最初に映し出されたメアリーが主役になると思いきや後から来たクラークが前半の主演になるのだ。この違和感がわかるだろうか、ただでさえバックルームズでは皆顔を隠しているため初めて出てきた人が主役と思いきや、実は後半の主役でした、前半の主役は後から来たクラークです。スーパーマンが序盤に出てきたから主役と思ったら後から登場したスパイダーマンが主役でした。って感じ・・・うーん。この違和感が繊細さんの私にはずっと気持ち悪く残った。
前半のバックルームを楽しむシーンや探索シーンは楽しめたが、謎の怪物が出てきたあたりから「よくある展開」が続いた挙句にクラークはバックルームに逃避行してしまいましたって流れはうーんだった。潔く死ぬか避難していればまだしも、現実逃避かよって。
最終的にバックルームとはなんぞや?って説明してしまったり、強い女メアリーが生き残って理詰めでクラークを説き伏せたり、メアリーに何を求めていたのか個人的には曖昧に感じたり、変に命が吹き込まれたライフスティル人形たちの動くやつと動かないやつの差とか、ラスボスが人間の手で簡単に折れる足とか微妙に弱かったりとか何か色々と粗が目立った印象である。最初からバカホラーですよって宣伝しているVHSシリーズみたいなノリで楽しむ方が良いかもA24制作!ってワクワクすると???ってなる気がする。
海外の評価を見渡して感じるのは、この映画が「怖さ」ではなく「居心地の悪さ」を作ることに全力を注いだから楽しめた人と楽しめなかった人がいるように感じる。批評家も観客も口を揃えて称えているのは、あの黄ばんだ部屋が延々と続く感覚を楽しめた人、冗長と感じる人に分かれ、そこに物語という骨組みを与えようとしたところで評価が割れ始めるようだ。そのため1から10点まで皆幅広い評価をしていた。
それでも20歳の監督が、自分の育った孤独な部屋の記憶をそのままスクリーンに移植したような執念は本物だと思う。ただ、その執念が「説明したい」という欲求に負けた瞬間、バックルームズはただの舞台に変わってしまう。怖さの正体を語りすぎないことこそが、この題材の一番の武器だったのではないだろうか。
まとめ
今回は日本未公開の話題作『バックルームズ/The Backrooms』について、結末までのネタバレとあらすじ、そして海外での評価をまとめて紹介してきた。YouTube発のインターネットホラーがどこまで大画面に耐えうるのか——公開前から注目を集めていた本作は、蓋を開けてみればRotten Tomatoesで批評家支持率87%、Metacriticで77点という高評価を獲得し、A24史上最高の興行収入を記録するまでの現象となった。一方で物語の推進力の弱さを指摘する声も根強く、原作ファンの間では賛否が分かれている。雰囲気か、それとも物語か——その両方を求める観客をどこまで満足させられるかが、この題材の次なる課題として海外でも語られ続けている。
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