映画『グランド・イリュージョン3/ダイヤモンド・ミッション』あらすじ結末ネタバレと海外の感想評価まとめ

「ゾンビランドのタッグ作品がつまらない訳がない」シリーズ3作目にして最高傑作といわれた映画『グランド・イリュージョン3/ダイヤモンド・ミッション』(Now You See Me: Now You Don’t)のあらすじ結末までネタバレと海外の感想評価をまとめて紹介する。アメリカで制作された本作は原題「Now You See Me: Now You Don’t」で2025年11月14日に公開されたエンターテインメント・ヘイスト映画で、IMDb6.3点、Rotten Tomatoes批評家58%/観客80%と、シリーズ内でも最高評価を獲得した作品である。

十年ぶりに再結集した四人の魔術師グループ「フォー・ホースメン」は、今度は社会正義を掲げる新世代の三人の若き詐欺師と共に、南アフリカの巨大なダイヤモンド「ハート・ダイヤモンド」の奪還作戦に挑む。犯罪組織を牛耳る金髪美女ヴェロニカ・ヴァンダーバーグとの対決の中で、複雑に絡み合った家族の秘密が次々と明かされていく。

本作の監督は『ゾンビランド』『ヴェノム』で知られるルーベン・フライシャーが務め、シリーズの主要キャストであるジェシー・アイゼンバーグ、ウディ・ハレルソン、イスラ・フィッシャーらが再び登場。悪役ヴェロニカ役にはロザムンド・パイクが艶やかに演じた。

『グランド・イリュージョン3/ダイヤモンド・ミッション』あらすじ結末ネタバレ

今回は、十年ぶりの復帰となるグランド・イリュージョン・シリーズ第三部のラストまで詳細に解説&考察していこう。以下の内容は本編の結末のネタバレを含むため、必ず劇場で鑑賞してから読んでいただきたい。また、金融詐欺、暴力、自殺を暗示するシーンの解説も含まれるため、注意していただきたい。

秘密組織と謎のダイヤモンド

ニューヨークのブルックリン、
十年ぶりに再結集した四人の魔術師グループ「フォー・ホースメン」が、観客の前でショーを行う。J・ダニエル・アトラス(ジェシー・アイゼンバーグ)、マーリット・マッキニー(ウディ・ハレルソン)、ジャック・ワイルダー(デイヴ・フランコ)、ヘンリー・リーヴス(イスラ・フィッシャー)は、観客のボスコ・ルロイ(ドミニク・セッサ)を舞台に上げると、暗号資産詐欺師ブレット(アンドリュー・サンティーノ)の悪行を暴露し、彼と仲間たちの資産を観客に再分配するというパフォーマンスを行い大喝采を浴びる。

資産を奪われたブレットが駆けつけたときには舞台にはホロスクリーン装置だけが残されていた。

実はこのショーはボスコ、ジューン(アリアナ・グリーンブラット)、チャーリー(ジャスティス・スミス)の三人でホースメンを装った詐欺活動だったのだ。そして三人が秘密のアジトに戻ると、本物のアトラスが待っていた。

アトラスは三人の背景をコールドリーディングで読み取り、──ボスコは学生ローンの借金に苦しむ元の有望俳優、ジューンは反権力主義のティーンエイジャー、チャーリーは孤児と分かると、アトラスは秘密組織ザ・アイから「ハート・ダイヤモンド」を盗む指令を受け、3人をホースメンに勧誘しにきたと伝える。

ハート・ダイヤモンド

リムポポの砦のような場所に保管されているハート・ダイヤモンドの持ち主は、ヴェロニカ・ヴァンダーバーグ(ロザムンド・パイク)──父親から受け継いだダイヤモンド密輸組織を統治する冷酷な女性実業家で、経営陣の会議では彼女の計画に反対する社員に対し、鋭いダイヤモンドを口の中に咥えさせるという脅迫行為を、顔色ひとつ変えずに実行できるほどの精神力を持っている。同じころ、ヴェロニカに秘密を暴露されたくなければハート・ダイヤモンドを渡すようにと脅迫する電話がかかってくる。

アントワープでのイベントでハート・ダイヤモンドがオークションの前に展示されるところを狙ったアトラスと三人は、ヴェロニカの宣伝撮影クルーに扮してイベントに潜り込み、ヴェロニカが握るハート・ダイヤモンドが爆発するように見せかけるトリックを発動、瞬時にハート・ダイアモンドを奪ったアトラスは、追いかける警備員たちを出し抜いて屋上へと向かう。

屋上に同じくタロットカードを受け取っていたマーリット、ジャック、ヘンリーが待機していた。7人のチームはヘリコプターの幻を使った巧みなトリックで警備員たちを空に集中させて欺く間に船での逃亡に成功する。

再結集と消えた友人

ボートで集結したホースメンのメンバー達は十年の間に生活が大きく変わっていた。ヘンリーは既婚者で三人の子どもがいる。ジャックはパリへ移住したルーラ・メイ(リジー・キャプラン)に別れを振られたばかりだった。そしてホースメンが一度解散した理由は、リーダーのディラン・ローデス(マーク・ラファロ)(1の刑事、ホースメンの一員だったことがラストに明かされる)がロシアの刑務所に捕まっていたからだと明かされる。

そんな中、チャーリがそれぞれが受け取ったタロットカードが地図を描いていることに気付く。

その地図が指し示した先は、フランスの館。そこはかつてのアリ、タダウス・ブラッドリー(モーガン・フリーマン)(1でマジシャンの種明かしを生業にしていた老マジシャン)の所有地でだった。早速ブラッドリーに会いにいき館の仕掛けだらけの複雑な構造を解析してブラッドリーの部屋に辿り着いた一行は、ブラッドリーからヴェロニカの暗い秘密、父親ピーターの家政婦との不倫、それが原因で母親は自殺、家政婦と息子の車のブレーキが何者かに細工され二人とも死亡したという記録──その全てを知ることになる。

館にヴェロニカの部隊が現れホースメン達はそれぞれ別れると、アトラスとボスコは回転する廊下で警察官を出し抜き、ジャックとジューンは光学トリックの部屋で追手をかわす。マーリット、ヘンリー、チャーリーは鏡の間で警察と交戦する。見事に出し抜いたように見えたがブラッドリーは銃撃され、ホースメンたちに思いを託して死亡し、マーリットがヴェロニカに捕えられてしまう。

結末ネタバレ:真犯人の正体

アブダビの高速サーキット施設で七人はダイヤモンドを交換する条件でマーリットの解放を要求するがが、ヴェロニカは仕掛けを発動し七人は砂のタンクに放り込まれてしまう。ヴェロニカが立ち去った後、絶体絶命の中ジャックがパイプを破壊し、ヘンリーの結婚指輪でガラスを切り、脱出に成功する。

ヴェロニカがついに謎の電話の相手に会いに行く──その人物はホースメンのチャーリーだった。

実はチャーリーはピーターの不倫相手である家政婦の息子。つまり、ヴェロニカの異父兄弟。チャーリーは自身が家政婦とピーターの間の息子で、母親の車のブレーキを切って殺したのがヴェロニカだと話すと、秘密を知ったチャーリーにヴェロニカが銃を向け発砲するが、空砲で弾が出なかった。

空砲が鳴り響くと突如二人の周囲の壁が崩壊し、二人がいる場所はステージの舞台で周囲には多くの観客たちが現れる。実は全てチャーリーが仕組んだ暴露ショーで、ヴェロニカの犯罪、その父親の不倫による母親の死、家政婦殺害の全てが世間に暴露したのだ。ヴェロニカは逮捕され、チャーリーはピーターの唯一の非投獄相続人として手に入れたハート・ダイヤモンドの利益を南アフリカの人々に配分すると宣言する。

その後、ホースメンがアパートメントに集い、ヘンリー、ルーラ、ジューンが女性マジシャングループの結成を話し合い、ジャックとルーラは再びロマンティックな関係を深めていると、そこに一通のメッセージが届く。ホログラムの中からリーダーのディランが語りかけてくる。(彼は獄中にいなかった。なんで?)ボスコ、ジューン、チャーリーをザ・アイに正式に迎え、さらなる大きな作戦の始まりを予告する。一つの完結、そして新しい冒険の幕開けであった。

The Movie Spoiler – Now You See Me: Now You Don’t

『グランド・イリュージョン3/ダイヤモンド・ミッション』作品情報

『グランド・イリュージョン3/ダイヤモンド・ミッション』は、十年ぶりに帰ってきた魔術師ファミリーの物語である。本作は2025年11月14日にアメリカで劇場公開され、ライオンズゲート配給によって全国展開された。制作規模は9000万ドルを超える大型エンターテインメント映画であり、ハンガリー、ベルギー、アブダビにおける大規模なロケーション撮影が実施された。

興行収入

本作は公開初週末で2100万~2400万ドルのオープニングを記録し、前作『グランド・イリュージョン2』(2016年)のオープニング2200万ドルとほぼ同等の成績を挙げた。海外市場での強い需要が予測されており、シリーズの過去二作は全世界で7億ドルを超える興行収入を達成していることから、本作も大きな商業的成功を見込まれている。

ルーベン・フライシャー監督情報

『ゾンビランド』『ヴェノム』で知られるルーベン・フライシャーが本作を監督した。1974年10月31日生まれのワシントンD.C.出身である。映画学の学位を持たず、歴史専攻でウェスリアン大学を卒業後、プログラマーとしてのキャリアを経て、『ドーソンズ・クリーク』のスタッフとして映像業界に参入した。

テレビコマーシャルやミュージックビデオの制作経験を積み、2009年の処女作『ゾンビランド』で一躍注目を集める。その後『30ミニッツ・オア・レス』(2011年)『ギャングスター・スクワッド』(2013年)『ヴェノム』(2018年)『アンチャーテッド』(2022年)など、視覚的な表現力と軽妙なユーモアを融合させた作品を次々と制作してきた。本作では、懐かしさと新しさのバランスを取りながら、シリーズの魔術的な世界観をさらに拡張させた。

主演 J・ダニエル・アトラス役「ジェシー・アイゼンバーグ」情報

ジェシー・アイゼンバーグは1983年10月5日にニューヨーク・クイーンズで生まれ、ニュージャージー州東ブランズウィック・タウンシップで育った。アメリカの俳優であり、その知的で神経質なキャラクター設定が特徴である。

映像業界での躍進は2002年の『ロジャー・ドジャー』で始まり、その後『アドベンチャーランド』『ゾンビランド』(ともに2009年)で経験を積む。転機は2010年の『ソーシャル・ネットワーク』でマーク・ザッカーバーグを演じた時だ。この役でアカデミー主演男優賞にノミネートされ、国際的なスターダムへ上り詰めた。その後『バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生』(2016年)でレックス・ルーサーを演じ、『グランド・イリュージョン』シリーズのJ・ダニエル・アトラスとして活躍し続けている。2024年には『ア・リアル・ペイン』で監督・脚本・主演を務め、映画人としての多面的な才能を発揮している。

主演 ヴェロニカ・ヴァンダーバーグ役「ロザムンド・パイク」情報

ロザムンド・パイクは1979年1月27日にロンドンで生まれた。両親はオペラ歌手であり、幼少期はヨーロッパ各地を転々とした。ワッダム・カレッジ・オックスフォード大学で英文学を学び、国立ユースシアター『ロミオとジュリエット』での舞台経験を経て、2002年の『007 ダイ・アナザー・デイ』でボンドガール・ミランダ・フロストを演じた。当時23歳であり、オックスフォード大学を卒業した初のボンドガールとなった。

その後『プライドと偏見』(2005年)『アン・エデュケーション』(2009年)など、上品で複雑な女性キャラクターを演じる傍ら、2014年の『ゴーン・ガール』でエイミー・ダンを熱演。この役で全米映画批評家協会賞主演女優賞を獲得し、アカデミー主演女優賞にノミネートされるなど、国際的な認知を獲得した。本作ではダイヤモンド密輸組織の女性ボスという複雑な悪役を優雅に演じ、その存在感でスクリーンを支配している。

海外の感想評価まとめ

『グランド・イリュージョン3/ダイヤモンド・ミッション』は、シリーズ三作の中でも最高の評価を獲得した。海外での総合的な受け止め方は「家族向けのポップコーン・エンターテインメントとしての完成度」と「キャスト集結による懐かしさ」に集約される一方で、「ストーリーの予測可能性」と「新鮮さの欠如」を指摘する批評家も多い。なぜこの評価になったのか、海外レビュアーたちの詳細な意見を見ていこう。

IMDb(総合評価:6.3/10)

①本作は十年ぶりの再結集でありながら、キャストの相互作用が古いネタを繰り返しているという点で、前作とほぼ同じ魅力と課題を抱えている。特に三人の新しいメンバーのキャラクターが、既存の四人のキャラとの重複を避けられず、彼らの立場が曖昧な状態が続く。ただし、ウディ・ハレルソンの軽妙な台詞回しと、ロザムンド・パイクの洗練された悪役ぶりはシリーズの中でも際立っており、その点に関する観客の満足度は相応に高い。

②ジェシー・アイゼンバーグのリーダーシップぶりは年を重ねて成熟し、かつての若き神童的なアーティストから、実務的で責任感のあるコンダクターへと進化している。彼の存在が、若い世代と旧世代をつなぐ架け橋としての役割を効果的に果たしており、全体的なストーリーの一貫性を保つのに貢献している。ただし、新しいプロット・ツイストが不足しており、観客は予測可能な展開に肩透かしを喰らう。

③映像の美しさとアクション・シーンのエレガンスは評価すべき点だ。アブダビでのサーキット場での逃亡劇は高速感と視覚的な興奮を提供し、フランスの館でのセット・デザインも、映像的なスペクタクルを求める観客にとっては十分な満足感を与える。しかし、こうした映像面での充実が、ストーリーの薄さをカバーしきれていないという評価も並行して存在する。

④本作は「エンターテインメントとしては機能しているが、映画批評の対象としては物足りない」という評価が支配的である。映画『オーシャンズ11』シリーズとの比較で、本作は「魔術」という要素を視覚効果と奇想天外なプロットで補完しようとしているが、その試みが完全には成功していない。総じて、既存ファンには十分な娯楽を提供しながらも、新規観客にとっては敷居が高い作品となっている。

IMDb – Now You See Me: Now You Don’t

Rotten Tomatoes(批評家:58% / 観客:80%)

①批評家と観客の評価の乖離が顕著である。批評家は「十年ぶりの復帰作にしては新鮮さが不足している」という評価を主流としている一方で、観客は「懐かしさと新しさのバランスが取れた楽しい作品」と捉えている。特に、ロザムンド・パイクの演技が「ボンド・ヴィランのような洗練された悪役演技」として、映画全体を引き上げる効果をもたらしているという指摘がある。その結果、基本的には「娯楽作として成功している」という評価に収束している。

②ストーリーの複雑性とキャラクターの多さについて、評論家は「登場人物が多すぎて、各キャラクターへの焦点が散漫になっている」と指摘する。三人の若き魔術師たちは、各々が個性を持ちながらも、既存のキャラクターとの相互作用でその個性が埋没しがちである。しかし、観客の側からは「このキャスト集団のケミストリーが最高」という評価が寄せられており、批評家が見落とす点を補足している。

③映像表現とビジュアル・エフェクトについては、批評家と観客の間で共通認識がある。「CGと実写のバランスが適切であり、魔術トリックが映像的に説得力を持っている」という点は、大多数の評価者に支持されている。特にアブダビでのカー・チェイス・シーンと、フランスの館でのミラー・トリック・ルームでの場面は、視覚的な興奮として高く評価されている。

Rotten Tomatoes – Now You See Me: Now You Don’t

Metacritic(総合評価:50/100)

①Metacriticの50点というスコアは、「平均的からやや上」という判定を示している。批評家レビューの内訳は、肯定的評価29%、混合評価50%、否定的評価21%となっており、意見が分散している。肯定的評価者は「シリーズの伝統を保ちながらも、新世代への世代交代を試みた野心的な作品」と評価し、否定的評価者は「退屈で予測可能な続編の典型例」と切り捨てている。

②多くの批評家が指摘する共通点は「プロット・エクスポジションの過剰さ」である。映画の冒頭から中盤にかけて、登場人物の背景説明やシナリオの複雑な設定が次々と提示され、観客に情報処理の負担を強いる。その結果、映画全体のペースが損なわれ、物語への没入感が分散される傾向が見られる。

③一方、シアトル・クロニクルの評論家は「本作は、フランチャイズの仕掛けを忠実に遂行しながらも、新しい世代への世代交代という課題に直面している」と述べており、「その試みは100%成功とは言えないが、十分に価値のある試みである」と評価している。このような中立的評価が、Metacriticの混合評価という結果に反映されていると考えられる。

Metacritic – Now You See Me: Now You Don’t

批評家レビュー

海外の主要映画メディアは、本作に対して何を感じたのか。『グランド・イリュージョン3/ダイヤモンド・ミッション』は、世界的な映画批評メディアから注目を集めた作品である。以下は、その詳細な評価である。

Variety 評価:肯定的

オーウェン・グレイバーマン氏「本作は魔術映画として遊びの精神を失わず、エンターテインメント性を最優先にしている」

オーウェン・グレイバーマンはVarietyの主席批評家として、「ポップコーン映画とは通常、逃避主義のためのものだが、本作『グランド・イリュージョン3/ダイヤモンド・ミッション』は『遊び』のためのものである。これがシリーズの魅力である」と指摘する。

ルーベン・フライシャーはジェシー・アイゼンバーグと『ゾンビランド』での関係を再構築し、本作でも彼の確かなリーダーシップを生かしている。映画は、十年ぶりの再結集という懐かしさと、若き世代の登場という新鮮さのバランスに腐心している。アクション・シーンのエレガンスと、スクリーンを支配するロザムンド・パイク(ヴェロニカ役)の存在感は評価すべき点である。ただし、全体的には「予測可能な展開」という課題に直面している。グレイバーマンは「本作は、既存ファンには十分な満足感を提供するが、映画として革新的ではない」と結論づけている。

評価点

シリーズの伝統を守りながらも、キャスト集結による視覚的な魅力とキャラクターの相互作用の楽しさを提供している。ロザムンド・パイクの悪役演技はシリーズ内でも特に秀逸であり、映画全体のレベルを引き上げている。

批判点

プロットの予測可能性が高く、新鮮なストーリー・ツイストが不足している。十年の間隔があるにもかかわらず、マジック・トリックの仕掛けや物語展開が前作と大きく異ならない。

(Variety – Now You See Me: Now You Don’t)

Roger Ebert 評価:中立的

マット・ゾラー・サイツ氏「舞台魔術を映画化する本質的な矛盾を理解した上での、妥協点を探る作品」

マット・ゾラー・サイツはRoger Ebert.comの編集長兼テレビ批評家として、「舞台魔術の映画化は本来、矛盾に満ちている。なぜなら、舞台魔術の醍醐味は、その場に存在する観客が、ライブで目の前の演技を見つめ、タネを探ろうとする行為にあるからだ。映画では、編集と視覚効果がすべてを解決してしまうため、真の『魔術の謎』は存在しないのである」と論じる。

その観点から、本作は「唯一の魔術的仕掛けは、観客の予想を超えるプロット・ツイストであること」と指摘している。シリーズの三作目は、このバランスを意識的に維持しようとしており、結果として「それなりに成功している」と評価する。ジェシー・アイゼンバーグの成熟した演技、ウディ・ハレルソン、イスラ・フィッシャー、デイヴ・フランコらの相互作用は、映画の本来の目的である「娯楽提供」に対して十分に機能している。ただし、「映画として完結するためには、ストーリーの深さが必要である」という指摘も同時に提示している。

評価点

キャストの相互作用とその化学反応が本作の主な魅力である。各キャラクターのアーキタイプが明確に設定されており、観客が彼らの行動を予測しながらも楽しめる構造が上手く機能している。アブダビでの映像表現も高水準である。

批判点

物語全体が「その場限りの娯楽」に終始しており、映画を見終わった直後から忘れられてしまう傾向が強い。十年の間隔を経ての復帰作としては、より深い物語の掘り下げが期待されたという点が痛手である。

(Roger Ebert – Now You See Me: Now You Don’t)

The A.V. Club 評価:肯定的

キャロライン・シード氏「ありえない展開だからこそ、楽しい。その直感的な快楽を忘れない映画」

The A.V. Clubの批評家キャロライン・シードは、本作に対して「前作たちと同様に、このシリーズは論理的矛盾に満ちている。舞台魔術師たちがなぜ格闘術に長けているのか。なぜ政府機関に勝つことができるのか。こうした不可解さは、このシリーズの特徴であり、その特徴こそが娯楽性を生み出しているのだ」と述べている。本作は、そうした本来の魅力を踏襲しながらも、新しい世代への世代交代という課題に誠実に向き合っている。ボスコ、ジューン、チャーリーという三人の若き魔術師たちが、既存のキャラクターたちと相互作用する中で、シリーズの将来像が示唆されている。その点で、本作は「フランチャイズの持続可能性を問う、真摯な試み」として評価すべきだとシードは主張している。

評価点

シリーズの伝統である「楽しさ最優先」という哲学を守りながらも、世代交代という現実的な課題に取り組んでいる。特に、若き世代のキャラクターたちの個性付けが上手く機能しており、将来のシリーズ展開への道を開いている点は評価できる。

批判点

プロット・エクスポジションの過剰さにより、映画全体のペースが損なわれている。また、ロザムンド・パイク演じるヴェロニカというキャラクターが非常に魅力的であるがゆえに、彼女の登場によってそれ以降の物語がやや退色する傾向がある。

(The A.V. Club – Now You See Me: Now You Don’t)

IndieWire 評価:中立的~肯定的

ケイト・アーブランド氏「犯罪との戦いよりも、メンバー同士の絆と競争関係の方が、映画の本当の主題である」

IndieWireのケイト・アーブランドは、「本作の最大の魅力は、ダイヤモンド盗難という外部的な目標ではなく、メンバー同士が互いに自分たちのマジック・スキルを誇示し合う、一見するとくだらないが心を温かくする一連のシーン群である」と指摘する。

映画の真の面白さは、登場人物たちがいかに奇想天外なトリックを仕掛けるかではなく、彼らがそのプロセスの中でどのようなコミュニケーションを取るかにあるのだ。本作は、この「人間関係の相互作用」を中心に据えることで、シリーズの本質を巧妙に表現しており、その点で映画としての統一性を保っている。ただし、全体的なストーリーの複雑性が増すにつれて、その統一性がやや揺らぐ傾向も見られるとアーブランドは指摘する。

評価点

キャラクター・ドラマとしての側面が秀逸であり、各キャラクターの背景や動機付けが丁寧に描かれている。特に、若き世代と既存メンバーとの世代間の橋渡しが自然に機能している。

批判点

犯罪サスペンス的な側面が希薄化しており、映画全体が「ギャグとアクションのコメディー」に傾斜しすぎている。映画全体のトーンがやや一貫性に欠ける部分がある。

(IndieWire – Now You See Me: Now You Don’t)

個人的な感想評価

『グランド・イリュージョン3/ダイヤモンド・ミッション』は、シリーズの中でも最も「素直に楽しい」作品ではある、が、個人的には1の方がシンプルに楽しめた。というのもレビューで多くの批判されているが、元々それぞれが革新的な技術を持ったマジシャンや精神分析が得意な人間で、それぞれの特性を活かして人を欺くその過程を楽しむ映画だったはずだが、2からCGを活用し始め、現実的なトリックからかけ離れ、非現実的なCG技術によってどんな魔術もできてしまうという、技術や魔術のトリックの種も仕掛けもへったくれもなくなったファンタジー映画に成り下がった時点でこの映画は好きではない。

本作はゾンビランドタッグということで、全体的には面白いが、結局のところ非現実的な技術とCGで敵を欺きドヤ顔で逃げ仰るファンタジー映画でしかなく、安易に新メンバーを入れたせいでワンピースのようにそれぞれ特性が薄れている。、4を示唆しているが、次も結局のところ脚本で人を驚かせることもなければ、それぞれの元の特性を活かすこともないのだろう。

海外レビューの評価が割れる最大の理由は、映画評論家が「新しさ」を求める一方で、観客が「懐かしさ」を求めているからだろう。十年ぶりの再結集という懐かしさは、ウディ・ハレルソンのキャラクターに顕著であり、新しさはボスコ、ジューン、チャーリーという三人の若き魔術師たちの登場で実現している。ロザムンド・パイクの存在感は不可欠であり、彼女がいなければシリーズのハイライトは数段低下していただろう。何より本作は「フランチャイズの世代交代」という映画業界の現実と向き合い、その難しさの中で最善の解を提示しようとしている。その試みは完全ではないかもしれないが、試みそのものに価値がある。

まとめ

『グランド・イリュージョン3/ダイヤモンド・ミッション』は、十年ぶりに帰ってきたシリーズ第三部として、何を期待すべき作品だったか。本記事ではその全貌を解説した。期待度としては「既存ファンには十分な満足感を、新規観客には敷居がやや高い」という状況だったが、蓋を開けてみると、Rotten Tomatoes観客スコア80%という高い支持が得られた。

内容面では、十年前と変わらぬ魔術とアクションの楽しさを保ちながらも、新世代への世代交代というシリーズの現実的課題に直面した作品として成立している。評価としては、シリーズの三作の中でも最高スコアを記録し、海外批評家からも「娯楽映画として機能している」という評価を獲得した。

何より、ロザムンド・パイクの悪役演技とそれによるスクリーン支配は、映画全体のレベルを一段上へ引き上げた。フランチャイズとしての今後の展開や、若き世代への世代交代という課題に直面する中でも、本作は「シリーズの魂を守りながら前に進もうとした」野心的な作品として海外で受け止められている。十年の時間を経ての復帰だからこそ、観客は懐かしさと新鮮さの両立を求めていたのだが、本作はそれをかなり高いレベルで実現させたのである。

コメントお待ちしています