
「素晴らしいが163分は苦痛」海外で高い評価も長すぎる尺、政治批判的な内容で賛否分かれた映画『ワン・バトル・アフター・アナザー』(原題:One Battle After Another)の結末あらすじのネタバレと海外の感想評価をまとめて紹介する。
本作は、革命活動家だった父親が16年ぶりに現れた宿敵から娘を救うため、かつての仲間と共に壮絶な戦いを繰り広げる物語だ。ポール・トーマス・アンダーソン監督による野心的な政治アクションスリラーとして、現代アメリカの闇に鋭く切り込んでいる。
SFダークアクションスリラーとして注目を集めた映画『ワン・バトル・アフター・アナザー』は、2025年9月26日にワーナー・ブラザース配給で全米公開された。制作費1億3000万ドル~1億7500万ドルという大予算で製作されたアメリカ、イギリス合作のダークコメディアクションスリラー映画だ。
監督は『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』『ファントム・スレッド』で知られるポール・トーマス・アンダーソンがメガホンを取り、レオナルド・ディカプリオ(51歳・『タイタニック』『インセプション』)が主演を務めた。敵役には『ミスティック・リバー』のショーン・ペン、共演陣にはベニチオ・デル・トロ(『トラフィック』)、レジーナ・ホール、テヤナ・テイラー、新人のチェイス・インフィニティが名を連ねている。
今回は、トーマス・ピンチョンの小説『ヴァインランド』からインスピレーションを得た異色作として話題を集める映画『ワン・バトル・アフター・アナザー』のラストについて解説・考察していこう。以下の内容は本編の結末のネタバレを含むため、必ず劇場で鑑賞してから読んでいただきたい。また、政治的暴力や人種差別に関する描写の解説も含むため、注意していただきたい。
『ワン・バトル・アフター・アナザー』あらすじ結末ネタバレ
ここから先は『ワン・バトル・アフター・アナザー』の核心である重大なネタバレを含む。
革命組織の結成
カリフォルニア州とメキシコの国境近くで極左革命組織「フレンチ75」のリーダーであるペルフィディア・ビバリーヒルズ(テヤナ・テイラー)が仲間たちを集め、政府の移民政策に対する強烈な抗議として移民勾留施設を襲撃して拘束されている移民たちを解放する計画について話している。その中には爆発物の専門家パット・カルホーン(レオナルド・ディカプリオ)も含まれている。
パットは革命の情熱に燃える若い活動家で、二人は恋人同士で革命活動も両立させながら、政府の圧政に立ち向かっていた。
作戦が始まりペルフィディアが移民施設の指揮官スティーブン・ロックジョー大佐(ショーン・ペン)に銃を向け移民の解放を迫る。さらにロックジョー大佐を侮辱の言葉を吐きかけるが、その言葉に欲情したロックジョーは股間を大きく膨らませ、ペルフィリアが別れ際に捨て台詞を吐くとロックジョー大佐は快感に体を身震いさせ果てるのだった。
フレンチ75はその後も政治家のオフィス、銀行、さらには電力施設への攻撃を続け、アメリカ社会に衝撃を与え続けるが、その様子を常にロックジョーが監視していた。ロックジョーはペルフィディアへの執着から彼女を追い続け、彼女に馴れ馴れしく触れるパットに対しては強い憎しみを抱く。
ある夜、ペルフィディアが爆弾を設置している現場を押さえたロックジョーは、彼女を逮捕する代わりに、モーテルでの性的関係を強要する。(強制的ではあるがドMのロックジョーはペルフィディアからの加虐的な行為を楽しみ果てる)この時の行為でペルフィディアは娘シャーリーン(後のウィラ)を身籠ることになる。
出産後、ペルフィディアは深刻な産後うつ病を発症。精神的に不安定になった彼女は銀行強盗中に警備員を撃ち殺してしまい、その後も過激な行動が続いたペルフィディアは最終的に法執行機関の手に落ちることになった。
拘束されたペルフィディアの前に現れたロックジョー大佐は数十年の懲役刑と引き換えに仲間を売れば証人保護プログラムの一環として、名前を隠しロックジョー大佐と夫婦という形で安全で快適な新生活が待っていると提案する。ペルフィディアはこの提案を受け入れ仲間の居場所を全て教え、逃亡前に多くのフレンチ75メンバーが逮捕され、組織は壊滅状態に陥いるのだった。
ロックジョーはペルフィディアとの新生活に股間を膨らませるが、ペルフィディアはメキシコへ単独逃亡して行方をくらませる。
隠遁生活の16年
16年後、
かつて革命家のスターだったパットは、今やボブ・ファーガソンという偽名で警察に怯え妄想に囚われた薬物とタバコを愛する無気力な男になっていた。そんな彼はカリフォルニア州北部の人里離れた森の中で娘のウィラ(チェイス・インフィニティ)と共に暮らしていた。
父親からは母親が革命の英雄として死んだと聞かされて育ったウィラは16歳の聡明で自立心の強い少女に成長していた。が、ウィラは父親の過保護な時代遅れのセキュリティ対策にうんざりしており、普通の高校生として学校のダンスパーティーに参加したり、友人と過ごしたりすることを望んでいる。
ボブは娘を外界の危険から守ろうと必死だったが、その過保護な態度はウィラとの関係に溝を作っていた。ボブはただ平穏な日々を娘と過ごしたいだけだったのだ。
ロックジョー大佐はフレンチ76壊滅の英雄として権力を手にし、次に目指すのはアメリカを実質支配している「クリスマス・アドベンチャーズ・クラブ」という秘密の白人至上主義組織への加入だった。
しかしクラブへの加入には厳格な人種的純潔性が要求されており、ロックジョーは自分がペルフィディアとの間に混血の子供をもうけたという「汚点」を隠す必要があった。この秘密が発覚すれば、彼の加入は確実に拒否され、これまで積み上げてきた地位と権力を失うことになるためだ。
ロックジョーは、移民取締部隊を率いてボブとウィラが隠れ住む聖域都市バクタン・クロスに軍事的な襲撃を仕掛けた。この作戦は表向きには不法移民の摘発を目的としていたが、真の狙いはウィラを見つけ出し、自分の「人種混合」の証拠を抹消することだった。
襲撃当日、ウィラは高校にいたが、重装備した警察部隊が突然校内に押し入り、自動小銃を構えた兵士たちが生徒たちを脅迫した。そこに現れたボブの友人だと名乗る女性に、助け出されたウィラは父親が長年警告してきた危険が現実のものであることを体感し、言われるがまま地下組織に連れていかれる。
山奥のボブの元に一本の電話が入り、危険を察知したボブはロックジョー率いる兵士が突入する直前に地下道から逃れることに成功する。
ボブの街に大量の兵士が投入され次々に移民が逮捕されていくが、肝心のボブとウィラを見つけることができずロックジョーは苛立ちを隠せない。
センセイ・セルジオとビーバーの姉妹たち
一方、ボブは元フレンチ75のメンバーでウィラの空手の師匠のセルジオ・サンカルロス(ベニチオ・デル・トロ)と再会し、過去16年間の空白を埋める会話を交わし、セルジオは、ペルフィディアが裏切った後も地下活動を続けており、特に移民問題に焦点を当てた人道支援活動を行っていたことを明かし、彼の組織は、教会、修道院、そして町の協力者たちとの連携により、政府の取り締まりから逃れる人々に安全な通路を提供しているため、ウィラとボブも安全に逃すと約束する。
しかし街全体を包囲していた兵士たちの追及は激しく、逃げる先々で兵士たちに追われ続ける過酷な逃亡となる。
同じ頃、ウィラはセルジオの指示により、「勇敢なビーバーの姉妹たち」と呼ばれるマリファナ栽培修道院に匿われていた。
この修道院は表向きは宗教施設だったが、実際には革命活動の隠れ蓑として機能していた。修道女たちは武装しており、ウィラに武器の扱い方や戦闘技術を教え始めた。ウィラは最初こそ困惑していたが、次第に自分の中に眠る母親譲りの革命精神を発見していく。
ウィラの捕獲と衝撃の真実
修道院での隠れ家生活は長くは続かなかった。ロックジョーは町中の人たちに尋問を行いウィラの居場所を探し続けたため、修道院の位置も即座に見つけて包囲してくる。勇敢なビーバーの姉妹たちは最後まで抵抗したが、圧倒的な火力の前に次々と倒れ最終的にロックジョーの手に落ちた。
教会に連れて行かれたウィラは、そこでロックジョーから衝撃的な真実を告げられた。唾液を使った簡易DNA検査の結果、ウィラが間違いなく彼の実の娘であることが判明したのだ。ロックジョーは、16年前にペルフィディアとの「関係」があったこと、そしてその結果としてウィラが生まれたことを説明するとウィラを車に乗せてどこかに向かう。
ボブとセルジオが武装してウィラを助けようとするがロックジョーは逃げ去り、ウィラを賞金稼ぎのアバンティ(エリック・シュワイグ)に引き渡し、国境近くの全勝基地に連れて行き兵士に「処分」させるように指示して立ち去る。
アバンティは国境に向かう最中、彼女が置かれた理不尽な状況を目の当たりにして、彼は計画を変更。ウィラを助けるため待ち構えていた兵たちと銃撃戦を展開する。
激しい戦闘の末、アバンティは民兵たちを全員射殺したが、自身も致命傷を負う。彼は最後の力を振り絞ってウィラに車のキーを渡し、「お前の母親は英雄だった」という言葉を残して息絶える。
同じ頃、クリスマス・アドベンチャーズ・クラブの内部調査でロックジョーに「人種混合」の汚点が露見していた。組織はロックジョーを用済みの汚点としてティム(ジョン・フーゲンナッカー)に暗殺指示を出す。
ロックジョーは車ごとティムの激しい銃撃を受け大爆発する。
殺害を確信したティムは次に組織からウィラの殺害も命じられウィルの車を追う。
結末ネタバレ:最後に笑うのは
追手に気づいたウィラは坂の死角に車を放置し、判断が遅れたティムは猛スピードで車に突っ込む。重傷を負ってかろうじて外に出たところをウィラは狙撃してティムを殺害する。
遅れて現れたボブはウィラはついに再会を果たし、二人は長い間抱き合い、この16年間の苦労と恐怖、そして揺るぎない愛情を確認し合いながら車を走らせる。
ロックジョーは重傷を一命を取り留め奇跡の生還を果たし、最終的に彼は正式にメンバーとして迎え入れる儀式の招待を受ける。
しかし、それは罠だった。個別に用意されたオフィスを案内されたロックジョーは満面の笑みを浮かべるが、突然部屋に充満した毒ガスで眠るように死んでしまう。
本当の平穏を手に入れたボブはウィラにペルフィディアから預かっていた手紙を渡す。そこには、ペルフィディアはメキシコから、深い後悔の念といつか再会したいという願い、そして自分の裏切りと逃避を心から詫び、ウィラとボブへの愛を綴っていた。
手紙を読み終えたウィラは、複雑な感情を抱きながらも、母親への理解と許しを示すとオークランドで行われている抗議デモのニュースを聞き、そこに参加することを決意した。ウィラは車に乗り込み、新世代の革命家として自分自身の道を歩み始めた。
映画は、ボブが娘を見送る場面で終わる。彼は「気をつけろ」と声をかけるが、ウィラは振り返って微笑みながら「そんなつもりはない」と答えた。
トム・ペティ&ザ・ハートブレイカーズの「アメリカン・ガール」が流れる中、ウィラは自分自身の戦いに向かって車を走らせていく。
一方、クリスマス・アドベンチャーズ・クラブは依然として存在し続けており、ロックジョーの死体を処理しながら次の計画を練っていた。
(Wikipedia – One Battle After Another)
『ワン・バトル・アフター・アナザー』作品情報
『ワン・バトル・アフター・アナザー』のネタバレを読んで興味を持った読者のために、この画期的な政治アクションスリラーについて詳細を紹介する。ポール・トーマス・アンダーソン監督のキャリア最高額となる制作費を投入した本作は、現代アメリカの政治的混乱を革命家の父娘の物語を通して描いた野心的な作品となっている。
「ワン・バトル・アフター・アナザー」タイトルの意味
「ワン・バトル・アフター・アナザー」とは「次から次へと続く戦い」を意味し、クリスマス・アドベンチャーズ・クラブと革命家との戦いは終わることがないことを示している。ボブたちフレンチ76からウィラという新世代の革命家たちも生まれ、新たな戦いが始まる結末を示唆している。
『ワン・バトル・アフター・アナザー』興行収入
本作は2025年9月26日の全米公開で初日8800万ドル、オープニング週末2100万ドルを記録した。アンダーソン監督作品としては過去最高のオープニング成績となり、批評家から97%、観客から88%という高評価を獲得している。制作費1億3000万ドルに対し、国内興行収入は最終的に4000万ドル程度と予想されているが、海外展開と配信権販売により最終的な収益化が期待されている。
ポール・トーマス・アンダーソン監督紹介
ポール・トーマス・アンダーソン(54歳)は、『ブギーナイツ』(1997年)、『マグノリア』(1999年)、『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』(2007年)、『ザ・マスター』(2012年)、『ファントム・スレッド』(2017年)などで知られるアメリカ映画界を代表する監督の一人だ。
これまでの作品はアカデミー賞に何度もノミネートされ、特に『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』ではダニエル・デイ=ルイスが主演男優賞を受賞している。本作は彼にとって初の1億ドル超大作となり、初のIMAX上映作品でもある。アンダーソンは長年にわたってトーマス・ピンチョンの小説『ヴァインランド』の映画化を検討していたが、最終的に独自の物語として『ワン・バトル・アフター・アナザー』を完成させた。
ボブ・ファーガソン役「レオナルド・ディカプリオ」紹介
レオナルド・ディカプリオ(51歳)は、『タイタニック』(1997年)で世界的スターとなり、『アビエーター』(2004年)、『ディパーテッド』(2006年)、『インセプション』(2010年)、『レヴェナント: 蘇えりし者』(2015年)などの代表作を持つハリウッドを代表する俳優だ。
『レヴェナント』でアカデミー主演男優賞を受賞し、環境保護活動家としても知られている。本作では、かつての革命家から薬物依存の無気力な父親へと変貌した複雑な役柄を演じ、コメディ要素も含んだ新境地を開拓している。アンダーソン監督とは『ブギーナイツ』で共演の機会があったが、ディカプリオが『タイタニック』を選択したため実現せず、今回が初の本格的なコラボレーションとなった。
ウィラ・ファーガソン役「チェイス・インフィニティ」紹介
チェイス・インフィニティ(24歳)は、インディアナポリス出身の新人女優で、本作が映画デビュー作となる。革命家の両親を持つ16歳の少女ウィラ役で、家族の遺産と個人のアイデンティティの間で揺れ動く複雑な役柄を演じている。
アクションシーンから感情的な演技まで幅広い表現力を見せ、ベテラン俳優陣に混じっても存在感を発揮している。映画評論家からは「将来のスター候補」として高く評価され、本作をきっかけにハリウッドでの本格的なキャリアをスタートさせることが期待されている。
海外の感想評価まとめ
『ワン・バトル・アフター・アナザー』は海外で驚異的な批評家評価を獲得し、Rotten Tomatoesで97%、Metacriticで96点という2025年最高評価の作品となった。レオナルド・ディカプリオのキャリア最高評価作品でもあり、ポール・トーマス・アンダーソン監督の集大成的作品として位置づけられている。政治的なテーマを扱いながらも、エンターテイメント性と芸術性を両立させた傑作として、アカデミー賞の有力候補に挙げられている。
IMDb(総合評価:8.5/10)
①私はこの映画を見て完全に圧倒された。ポール・トーマス・アンダーソンが現代政治の複雑さを、これほど巧妙にアクション映画の枠組みに落とし込むとは思わなかった。レオナルド・ディカプリオの演技は彼のキャリアでも最高の部類に入る。
②私が最も感銘を受けたのは、この映画が政治的メッセージを説教臭くならずに伝えている点だ。父と娘の関係を軸にした物語は普遍的でありながら、同時に現代アメリカの病理を鋭く突いている。
③私の期待を遥かに上回る作品だった。アクションシーンの撮影は圧巻で、特に丘陵地帯でのカーチェイスは映画史に残るレベルだ。ショーン・ペンの悪役も恐ろしいほど説得力がある。
④私はアンダーソン監督の全作品を見ているが、これは間違いなく彼の最もエンターテイニングな作品だ。コメディとドラマ、アクションのバランスが絶妙で、162分があっという間に感じられた。
IMDb – One Battle After Another
Rotten Tomatoes(批評家:97% / 観客:88%)
①私はこの映画を「年間最高作品」と断言したい。アンダーソン監督の技巧と物語への情熱が完璧に結合した傑作だ。政治的な重要性と娯楽性を両立させた稀有な作品である。
②私が特に評価したいのは、この映画が白人至上主義を真正面から批判しながらも、人間の複雑さを描き続けている点だ。悪役でさえ単純な存在として描かれていない。
③私の見解では、これはアンダーソン監督のキャリアの頂点となる作品だ。『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』や『ザ・マスター』の芸術性に、『ブギーナイツ』のエネルギーを加えた完璧な融合だ。
Rotten Tomatoes – One Battle After Another
Metacritic(総合評価:96/100)
①私がこれまで見た中で最も時宜を得た映画の一つだ。現代アメリカの政治状況を予言的なまでに正確に捉えている。アンダーソンの政治的洞察力には驚嘆する。
②私の評価では、この映画は形式と内容が完璧に一致した稀有な作品だ。VistaVisionで撮影された映像美と、ジョニー・グリーンウッドの音楽が物語を更なる高みへと押し上げている。
③私はこの映画を現代の『地獄の黙示録』と呼びたい。アメリカ社会の暴力性と狂気を、家族愛というフィルターを通して描いた傑作だ。ディカプリオとペンの演技対決も見物である。
Metacritic – One Battle After Another
批評家レビュー
海外の専門批評家による『ワン・バトル・アフター・アナザー』の詳細な評価を紹介する。政治的な緊急性とエンターテイメント性を両立させたアンダーソン監督の手腕が高く評価され、現代アメリカ映画の傑作として位置づけられている。権威ある映画批評誌からの評価を通じて、この映画の多角的な魅力と社会的意義を理解できるはずだ。
Variety 評価点95点
リチャード・ローソン氏「アンダーソンは時代の要請に応えた時宜を得た映画を作り上げた」
アンダーソンは我々を「ファシストの忍び寄り」という不穏なほど現実的な時代に置き、複雑な郷愁を脇に置いて現在と向き合っている。この映画は恐ろしくも活力に満ちたビジョンを提示し、アンダーソンが驚くほど崇高な目的を持って現在を描いている。
『ワン・バトル・アフター・アナザー』は、これらの忌まわしい我々の時代にメジャースタジオの支援を受けて公開された稀有なアメリカ映画として、その怒り、絶望、そして状況改善への処方箋の対象を明確かつ断固として示している。ディカプリオは解散したストーナー中毒者として演じることで人間味を増し、アンダーソンは彼から素晴らしい演技を引き出している。
評価点
政治的緊急性と娯楽性の完璧な融合、ディカプリオの新境地開拓
批判点
162分の上映時間は一部観客には長すぎる可能性
(Variety – One Battle After Another Review)
The Hollywood Reporter 評価点90点
デビッド・ルーニー氏「アンダーソンはアクションとサスペンスに対する未知の才能を見せている」
この映画は地獄のようなアクション映画、サスペンススリラー、その他監督が進行中に作り上げる様々なジャンルの要素を含んでいる。無力な英雄、戦士の王女、そして映画史上最も悪魔的な悪役を擁している。
アンダーソンは相変わらず目的を持って演出し、『ワン・バトル・アフター・アナザー』が興奮するほど一貫性があるわけではないが、それでも「劣ったアンダーソン作品」というレッテルを避けている。形式と内容の実験的な融合が、現代政治の複雑さを巧妙にアクション映画の枠組みに落とし込んでいる。
評価点
革新的なジャンル融合、ショーン・ペンの圧倒的な悪役演技
批判点
トーンの変化が時として唐突で、観客を混乱させる場面がある
(The Hollywood Reporter – One Battle After Another)
IndieWire 評価点100点
デビッド・エーリッヒ氏「アンダーソンの最も愚かな映画かもしれないが、その恐怖の真摯さは間違いない」
『ワン・バトル・アフター・アナザー』はアンダーソンが作った最も愚かな映画の一つかもしれないが、その恐怖の真摯さや、無実で弱い立場の人々にその恐怖を与える男たちの小ささを明晰に診断していることに疑いの余地はない。
この映画の主要な感情は怒りとパラノイアだ。肩越しに振り返りながら生きる人生の描写を見ながら、我々はこれらが我々の時代の最も一般的で深く感じられる感情であることを認識する。政治的な重要性と芸術的な成就が稀有な形で結合した作品だ。
評価点
社会批判の鋭さ、現代アメリカの病理の的確な描写
批判点
政治的メッセージが強すぎて、一部の観客には重すぎる可能性
(IndieWire – One Battle After Another)
Empire Magazine 評価点100点
アレックス・ゴッドフリー氏「今後深夜のテレビで放送されても、チャンネルを変えることは不可能だろう」
数年後、これが深夜のテレビに登場した時、チャンネルを変えることは不可能だろう。それは正にそういう種類の映画だ。石のように冷たい、瞬時の古典だ。
アンダーソンはまた、映画を一貫して楽しく面白いものに保っている。この映画は火薬樽が爆発しようとしているような感覚を頻繁に与える。この狂気的な都市戦争スリラーには強盗、対決、そして数年来最高のカーチェイスが二回含まれている。
評価点
即座に古典となる完成度、エンターテイメント性の高さ
批判点
複雑な政治的テーマが一部観客には理解困難な場合がある
(Empire Magazine – One Battle After Another)
個人的な感想評価
くっそ面白いのに長すぎて最後は少し飽きた。
ディカプリオもベネチオ・デル・トロも出てきたし、ショーン・ペンの狂った演技力のおかげで猛烈に盛り上がっただけに少し残念。本当に最後は「早く終わらないかな」とケツの痛みとの戦いだった。
『ワン・バトル・アフター・アナザー』は、ポール・トーマス・アンダーソン監督のキャリアの中でも特異な位置を占める作品だった。過去作品の芸術性を保ちながら、ここまで娯楽性に振り切った作品は珍しい。レオナルド・ディカプリオの演技は確かに彼のベストに近く、薬物依存の元革命家という役柄を通じて新たな魅力を開花させている。
特に印象的だったのは、アメリカ内部に蔓延る政治的なメッセージを重厚にしながらも、コメディ要素で絶妙にバランスを取っている点だと思う。ショーン・ペンのロックジョー大佐は確かに恐ろしい悪役だが、初登場時の歪んだ性癖を隠そうともしないナルシズムと高いプライドを見せつける堂々とした佇まいにディカプリオ以上に際立ち目立っていた。
白人至上主義組織「クリスマス・アドベンチャーズ・クラブ」の描写はKKKに対する風刺として非常に効果的で、現実の政治状況への鋭い批判に大きく貢献している。
ただし、個人的に162分という上映時間は確実に長すぎる。特に中盤の逃亡シーンが続く場面は退屈で苦痛だった。
個人的にずっと現代社会を批判し続けている点、メキシコからの不法移民を匿っている地下組織の存在には何も同調できるものはなかった。このようにコメディ要素が強いとはいえ結局のところ「現代のアメリカに対する批判」というスタンスが明確すぎるため、保守的な観客には受け入れられない気がした。
映画作品としての完成度は非常に高く、面白いのだが、万人に勧めるかというと微妙である。
まとめ

この記事では、映画『ワン・バトル・アフター・アナザー』の完全ネタバレ解説から海外の感想評価まで幅広く紹介した。16年前の革命活動で敵対したロックジョー大佐が、白人至上主義組織への加入のために混血の娘ウィラを抹殺しようとする復讐劇として展開し、最終的に父娘の絆と新世代の革命精神の継承で結末を迎える物語だった。
期待度の面では、ポール・トーマス・アンダーソン監督とレオナルド・ディカプリオという黄金コンビへの期待が最高潮に達していた。制作費1億7500万ドルという監督のキャリア最高額と、トーマス・ピンチョンの小説からインスピレーションを得た複雑な政治ドラマへの関心が世界中で高まっていた。
内容面では、父娘の逃避行を軸にした緊迫感溢れるアクションと、現代アメリカの政治的分裂を鋭く描いた社会派要素が絶妙に融合している。革命家の過去、白人至上主義の脅威、世代を超えた闘争の継承という重層的なテーマが、エンターテイメント性を損なうことなく描かれている。
評価の面では、Rotten Tomatoes 97%、Metacritic 96点という2025年最高評価を獲得し、批評家からは現代アメリカ映画の傑作として絶賛されている。レオナルド・ディカプリオのキャリア最高評価作品でもあり、アカデミー賞の最有力候補として位置づけられている。
この映画は単なる復讐劇を超えて、アメリカ社会に根深く存在する人種差別と政治的暴力の問題に真正面から向き合った勇気ある作品として注目を集めた。海外では「定義的な世代の映画」として評価され、政治的な分断が深刻化する現代において、映画が果たすべき社会的役割を見事に体現した傑作として記憶されるだろう。
コメントお待ちしています