映画『ヒム/HIM』完全ネタバレ解説と海外の感想評価まとめ「なぜ批判されたのか?」

「ジョーダン・ピール史上最低作品」メタスコア38点の大酷評を受けた映画『ヒム/HIM』のあらすじ結末ネタバと海外の感想評価をまとめて紹介する。予告編は最高に面白そうな作品が、なぜ酷評されるのか?をわかりやすく解説していく。

本作は、有望なクォーターバック志望の若者キャメロン・ケイド(タイリーク・ウィザース)が、憧れの伝説的QB アイザイア・ホワイト(マーロン・ウェイアンズ)の元で一週間の地獄の特訓を受ける中で、スポーツ界の闇と成功の代償を描いたサイコロジカル・ホラー作品だ。

スポーツホラーとして注目を集めた映画『ヒム/HIM』は2025年9月19日にユニバーサル・ピクチャーズより全米劇場公開された。本作はアメリカのホラー・スポーツ映画として制作され、ジョーダン・ピール(代表作『ゲット・アウト』『アス』)がプロデューサーを務めるモンキーポー・プロダクションズが製作を手がけた。

監督はジャスティン・ティッピング(代表作『キックス』2016年)、主演のキャメロン・ケイド役をタイリーク・ウィザース(27歳・代表作テレビシリーズ『アトランタ』)、アイザイア・ホワイト役をマーロン・ウェイアンズ(53歳・代表作『スケアリームービー』シリーズ)が演じた。その他重要キャストとして、ジュリア・フォックス(アイザイアの妻エルシー役)、ティム・ハイデッカー(エージェント・トム役)らが出演している。

今回は、ジョーダン・ピール製作として話題となった映画『ヒム/HIM』のラストについて解説していこう。以下の内容は本編の結末の重大なネタバレを含むため、必ず劇場で鑑賞してから読んでいただきたい。また、暴力的な描写やカルト的な要素の解説も含むため、注意していただきたい。

『ヒム/HIM』あらすじ結末ネタバレ

ここから先は『ヒム/HIM』の核心である重大なネタバレを含む。

襲撃事件

NFLの大スターサンアントニオ・セイヴィアーズのファンだったキャメロン・ケイド少年(タイリーク・ウィザース)は、父親の「どんな犠牲を払ってでも偉大になれ」という教えを信念に努力を積み重ね、大学ではクォーターバックとして成功を収めていた。父は軍務中に亡くなったが、キャメロンは彼の遺志を継いでNFLドラフト参加を目前に控えていた。

ところがキャメロンは夜中の練習中にヤギのマスコットを被った男から鈍器で頭を殴られ、深刻な脳損傷を負ってしまう。医師からは引退を勧められ、家族や恋人アドリエンヌ(ティエラ・ワック)、いとこのマーフ(Guapdad 4000)らは心配するが、キャメロンの中でキャリアの終了という言葉がよぎっていたところに一本の電話が入る。

砂漠の化合物

電話の相手はエージェントのトム(ティム・ハイデッカー)からで、トムはキャメロンの幼少期からの大ファンである伝説的クォーターバック、アイザイア・ホワイト(マーロン・ウェイアンズ)から一週間一緒にトレーニングをしないか?という申し出だった。アイザイアは引退を考えており、後継者としてケイドを育てたいと言ってくれたのだ。

キャメロンは砂漠の奥地にあるアイザイアの豪華な自宅兼トレーニング施設へと向かう。施設の敷地外にはアイザイアの狂信的なファンたちが集まりキャメロンの車に対して威嚇してくる。特にマージョリー(ナオミ・グロスマン)という女はキャメロンに対し過度な敵意をむき出しにすると、車に唾を吐きかけ激しく威嚇してくる始末だった。車はそのまま進み、施設に到着すると、携帯電話を没収され、アイザイアの妻でインフルエンサーのエルシー・ホワイト(ジュリア・フォックス)、専属医師のマルコ(ジム・ジェフリーズ)らと対面し歓迎される。

トレーニングと血液

一日目からアイザイアは「楽しく(FUN)」をテーマに基本的なトレーニングを開始する。そこにはアイザイアの他にもトレーニングのメンバーが従事しており、アイザイアを中心に皆でキャメロンを徹底的に追い込み技術と体力の向上を目指す。トレーニング後にケイドが氷風呂に入っている間、アイザイアが血液を輸血し始め血液バッグに血を溜め始めて立ち去ると、マルコはその血液をエネルギー強化剤だと説明してキャメロンに注射をする。(注射をした瞬間、キャメロンは頭が割れるイメージを思い浮かべる)

氷水をぶっかけられて目覚めたキャメロンの二日目は「冷静さ/poise」がテーマで、炎天下の中砂漠をひたすら走り続けるが、目眩を起こしたキャメロンは嘔吐して失神してしまう。意識が朦朧とする中、謎のマスコットが自分に向かってピッケルを振り下ろしてくる幻覚を見る。

屋内訓練に切り替わりキャメロンがパス練習をしている横で、フットボール射出機に男性が立ち、高速で射出されるボールを顔面に何度もボールを受け続けるという過酷なトレーニングが始まる。しかもそれはキャメロンのパス練習に結びついており、キャメロンのパスが遅いとペナルティとしてボールが射出されるルールだった。

キャメロンの失敗で、他人の顔に硬いフットボールの鋭利な部分が高速で顔面にぶち当たり、鼻は折れ顔面が血だらけになり男性の歯が抜けてもトレーニングは終わらない、心を乱されるキャメロンに対し「冷静に」と繰り返すアイザイアの指導のおかげか、ようやくパス練習がクリアとなり終了する。キャメロンは血だらけの男性を助けようと手を差し伸べると、男性は最高に面白かったかと言うように大声で笑うのだった。アイザイアはその後、高圧酸素チャンバーに入るが高濃度酸素が入るとさらなる幻覚に苦しむ。

3日目の異変

3日目のテーマは「リーダーシップ」
トレーニングは過酷さを増しアタッカーの猛烈なタックルを避けてパスを繰り返すトレーニングの最中、アイザイアはキャメロンの失敗を馬鹿にし、彼の顔に向かって叫ぶ「成功のために何を犠牲にするつもりなんだ?」と。

問い詰められたキャメロンは「すべて」と答えると、頭の傷口が疼き、大量の吐血をした後、トレーニングを再会したキャメロンは闘争心をむき出しにしてアタッカーに逆に頭突きをお見舞いし相手を地面に倒す。キャメロンは選手が地面に横たわって無力になっているのを見て、猛烈な闘争心に心が暴れ興奮状態が収まることはなかったが、アイザイアはキャメロンを抱き締めると良くやったと褒める。

キャメロンはサウナでアイザイアと話をする。アイザイアがサウナ部屋を出た後、冒頭で施設の外にいた狂信的なファンのリーダーマージョリーがサウナに忍び込むみキャメロンの頭に大きな石を落とそうとしてきたため、思わず首を絞めて殺しかけてしまう。我に帰ったキャメロンは手の力を緩めるが、戻ってきたアイザイアをマージョリーを壁に叩きつけて殺害する。

4日目、5日目

ファンを殺したアイザイアを見て幻滅したキャメロンは施設を去とうとするが、アイザイアの妻エルシーに止められ、美しい女性たちとのパーティーに誘われ。久々の酒と美女に溺れたキャメロンが部屋で目を覚ますと、アイザイアが銃を突きつけて待っていた。アイザイアはエルシーと寝たかどうかを尋ねるが、最終的にアイザイアはキャメロンの反応を見て楽しむだけだった。

4日目のテーマは「回復力」
アイザイアはキャメロンを砂漠に連れて行くと、動物の模型をライフルを撃たせていく。射撃のトレーニング中、キャメロンは前夜にマージョリーを首を絞めて殺しかけたことへの感情の昂りについて相談すると、アイザイアは殺し屋は無慈悲でなければならないと告げ、アイザイアはマスコットの衣装を着た実物の人体のように見える何かを立てかけ、キャメロンに撃たせる。部屋に戻ったアイザイアは水風呂に入りながら深く寝入りながら幻覚の中に入り込む。

5日目のテーマは「ビジョン」
キャメロンはインタビュー/写真撮影でアイザイアとエルシーに合流し、そこでエルシーはキャメロンをパーティーに連れていくと、キャメロンに気づいたマルコがキャメロンのそばを通りかかると静かに「逃げろ」と告げて立ち去る。すぐにセイヴィアーズのオーナー(リチャード・リパート)と会い、トムも合流して多くの人との会話を頼む。

会場でキャメロンは赤い液体を渡されると一気飲みし、さらに強い幻覚を見始めたキャメロンは後に気を失ってしまう。目覚めた部屋ではエルシーが切断したマルコの生首が置かれており、キャメロンは再び気絶する。

結末ネタバレ「なぜ訓練をしたのか?」

6日目のテーマは「犠牲」

キャメロンが目覚めると、腕にアイザイアの血液と書かれた輸血バッグを見て抜き取るが、薬の影響かほとんど歩けず這って進むと、マルコの字で「逃げろ」と書かれた注射器(アドレナリン)を自分に打ち立ち上がれるようになる。

外に出ようとすると、キャメロンはアイザイアに見つかり、アイザイアは「訓練」の真の意図を話し出す。セイヴィアーズはもう何世代もの間、新しいクォーターバックは指導者(前世代のクオーターバック、今回はアイザイアのこと)の血を飲んでその力を得た後に、ポジションを賭けて指導者と生徒が殺し合う儀式を行なってきたのだと説明する。

説明を終えたアイザイアはまだフットボールを引退する気はなく、自分が「GOAT(史上最高)」だと伝えると、キャメロンとの殴り合いの殺し合いという名の儀式を始める。キャメロンは最終的にアイザイアを倒し、ヘルメットで殴り殺して儀式を終わらせて真のクオーターバックのポジションを獲得するのだった。

キャメロンは建物から出ると、マスクをかぶったチアリーダー、セイヴィアーズのチーム、そしてエルシーとトムがいる開けた舞台が用意されていた。

彼らはキャメロンに人生を彼らに捧げる契約書に署名させようとするが、キャメロンは動こうとしない。そこで彼らはキャメロンにネタを明かし、セイヴィアーズのオーナーが彼の父親を知りあいで、キャメロンをここに連れてくるために全て幼少期から仕組まれていたことが明かされる。

それすらも嘲笑うキャメロンは背後から襲いかかってきたヤギのマスコットの攻撃を避けると武器を奪ってマスコットの男の頭蓋骨を砕くと、慌てふためくエルシーの喉に短剣を刺した後、逃げ惑う上層部の人間を次々と殺していく。キャメロンは最後にキャメロンの家族を脅したオーナーの首を切り落とす。

スタジアムの端っこで泣き喚くトムを見逃すことにするが、トムは五芒星に引きずり込まれ(おそらく契約を果たせなかった罰で)、悪魔的な力によって爆発する。

血まみれになったキャメロンは、微笑みながら野原から歩き去るシーンで物語は終了する

(The Movie Spoiler – HIM)

『ヒム/HIM』作品情報

ヒム/HIMのネタバレを読んで興味を持った読者のために、ジョーダン・ピール製作のスポーツホラー映画として話題となった本作について詳細を紹介する。アメリカンフットボール界の闇と成功への執念を描いた本作は、従来のスポーツ映画とは一線を画する心理的ホラー要素で観客を魅了する野心的な作品だった。

興行収入「割と失敗」

映画『ヒム/HIM』は製作費2700万ドルに対し、初日プレビューで200万ドルを記録した。全米3100館での初週末興行収入は1500万~1800万ドルと予想されていたが、実際の成績は期待を下回る結果となった。批評家からの厳しい評価と観客のC-評価が影響し、興行的には苦戦を強いられた。

ジャスティン・ティッピング監督紹介

ジャスティン・ティッピング監督は2016年の『キックス』で長編デビューを果たした新鋭監督だ。元アスリートという経歴を持つ彼は、映画理論も学んだ異色の経歴の持ち主である。

『キックス』では毒性男性とコモディティ・フェティシズムを探求し、本作『ヒム/HIM』ではアスリート自身がコモディティとなる状況での毒性男性の成熟した探求を行った。彼は「アスリートが商品として扱われ、制度によって使い捨てられる身体として動かされる」というテーマを明確に打ち出している。

キャメロン・ケイド役「タイリーク・ウィザース」紹介

タイリーク・ウィザース(27歳)は元フロリダ州立大学のワイドレシーバーで、現実のフットボール経験を映画に活かした。

彼は『アトランタ』での印象的な演技や、近日公開予定の『I Know What You Did Last Summer』続編への出演で注目を集めている。本作の役作りのため、元NFL選手のジョーダン・パーマーの指導の下で2ヶ月半にわたってクォーターバックとしての訓練を受けた。パーマーは「彼は一日目から『スタントダブルは使わない』と言っていた。本物のパスを投げたかったんだ」と証言している。

アイザイア・ホワイト役「マーロン・ウェイアンズ」紹介

マーロン・ウェイアンズ(53歳)は『スケアリームービー』シリーズで知られるコメディ俳優だが、『レクイエム・フォー・ドリーム』などでシリアスな演技も評価されている。

本作では8度の優勝を誇る伝説的クォーターバック役に挑戦し、物理的にも精神的にも圧倒的な存在感を示した。撮影のために自身を見事な体型に仕上げ、若手俳優ウィザースに対して演技指導も行った。彼はウィザースに脚本術の書籍を贈り、「構造を学び、ヒーローズ・ジャーニーを理解して素晴らしい物語を作れ」とアドバイスした。

信じられないけど、彼は最終絶叫計画でずっとマリファナ吸ってアホなことしか言わない黒人役の人だという。まじか。すげぇぜ役者ってのは。

海外の感想評価まとめ

映画『ヒム/HIM』の海外での評価は厳しいものとなった。ジョーダン・ピール製作という期待の高さとは裏腹に、批評家スコア29%、観客スコア58%という低い評価を記録し、シネマスコアでもC-という不振な結果を残した。多くの批評家が映画の前半の緊張感を評価する一方で、後半の混乱した展開と一貫性の欠如を厳しく批判した。

IMDb(総合評価:5.5/10)

①私はこの映画にとても期待していたが、劇場を出る時にはひどく失望していた。視覚的には美しく、音楽も素晴らしく、特にマーロン・ウェイアンズとタイリーク・ウィザースの演技は本当に良かった。しかし、何も起こらない。この映画は多くのことを試みているが、結局は美しくパッケージされた虚無になってしまった感じがする。

②私はフットボールを人生の大部分でプレイしており、ホラーへの深い愛情を持っているので、この映画は私のために特別に作られたと感じた。完全に期待に応えたわけではないが、かなり近いところまで来ていた。映画がうまくやっているのは、アスリートが受ける肉体的・精神的な負担を捉えることだ。

③私は映画の前半は本当に楽しい時間だったと思うが、中盤で映画は私を失わせ始めた。第一幕と第二幕の後には実質的な内容や物語があまりなく、彼らが何をしているのか頭を悩ませることになった。

④私には最初から何かがおかしいと分かった。一貫性のないトーンと奇妙な編集がある。音楽の一部は素晴らしいが、場違いに感じるものもある。そして対話の上でもランダムに大きくなり、聞き取りにくくなる。

IMDb – HIM

Rotten Tomatoes(批評家:29% / 観客:58%)

①私は映画全体がバラバラだったと思う。ストーリーラインが全く理解できなかった。マーロン・ウェイアンズの大ファンで、彼は素晴らしい俳優だと思う。しかし、この映画は見ていて不快だった。ジョーダン・ピールのことを知っているから、それが観客への彼の意図だったのだろう。

②私は最悪の映画の一つを今年見たと悲しく思う。演技は悪くなかったが、結末が意味をなさないプロットだった。物語は意味のあるメッセージを伝えようとしているが、実行が混乱しており、感情が常につながるわけではない。

③私はそれを愛した。時々退屈だったが、良かった。緩慢な燃焼で、あまりサスペンスはないが、面白かった。映画は主要な演出者と視聴者を混乱させる叙述的選択を通して運ぶのに十分なスタイリッシュな配信によって大部分が運ばれている。

Rotten Tomatoes – HIM

Metacritic(総合評価:38/100)

①私はこの映画が多くの素晴らしいアイデアとスポーツについて考えさせる思慮深い解説を持っていると思うが、爆発的な結論への前置きが成功しない。ウェイアンズとスコアが緊張の構築のほとんどを行っているようだ。映画の残りの部分が同じレベルまで上がることができなかったのは残念だ。

②私はこの映画が見事な制作デザインを持つ最初と二番目の幕を持っていると思うが、クライマックス/結論が少し困惑し不満足に感じられる。タランティーノ風の超暴力的な願望充足への到達が過度だったかもしれない。

③私は映画があまりにも多くのことを一度に伝えようとしていると思う。もしスリラーの問題が何も言うことがないことなら、『ヒム』の問題は言うことが正確に一つあることで、それを何度も何度も言うことだ。『ヒム』にはスタイルがあるが、それだけだ。

Metacritic – HIM

批評家レビュー

海外の専門批評家による『ヒム/HIM』の詳細な評価を紹介する。ジョーダン・ピール製作のスポーツホラーとして期待されたが、多くの批評家が映画の野心的なコンセプトと実際の実行力の間にある大きなギャップを指摘している。この映画の多角的な魅力と根本的な問題点を理解することで、作品の真の姿が見えてくるはずだ。

Roger Ebert 0.5/4

ロバート・ダニエルズ氏「『ヒム』を見るために家を出たことが信じられない」

『ヒム』は精神的衝撃を与えようとするが、どのようなアプローチを取るべきかを知らない映画だ。キャメロンの頭の中にあるように見える悪魔的なシーンは、スイッチを裏付ける実際の論理なしに内在化と外在化の間を振動する。我々はアイザイアの個人トレーナーによって注射される薬を見るが、バイアルの中に何があるのか、またはその実際の効果を知らないため、針がキャメロンの皮膚を突き刺すのを見る身体的ホラーは平坦に落ちる。

評価点
視覚的な構成に印象的な要素があり、撮影監督キラ・ケリーがアイザイアの蛇のような化合物の曲がりくねったトンネルや身体の衝突を描いた赤外線X線など印象的な映像を作り上げた。

批判点
対話は恐ろしく、演技は木製的で、特にアイザイアの妻としてのジュリア・フォックスの演技が際立って悪い。53歳のウェイアンズはその役には年を取りすぎている。

(Roger Ebert – HIM)

Hollywood Reporter 評価不明

ピーター・デブリューグ氏「『ヒム』は有望なコンセプトを持ちながら、期待を裏切る」

映画は現実的に始まる。中心人物のキャメロン・ケイドは、プロのキャリアの危機に瀕した大学のスタークォーターバックとして紹介される。キャメロンは健康のために夢を忘れるように助言されるが、幼少期に「どんな犠牲を払ってでも成功を追求する」という考えを父親に叩き込まれていたため、続けることを決意している。最初の兆候は、キャメロンが伝説的クォーターバックの隔離された砂漠の化合物への道で、カルト的な狂信的で奇怪な見た目の人々のグループに遭遇することだ。

評価点
演出者たちは全力で取り組み、ウィザースは彼の役の激しい身体性を印象的に処理し、ウェイアンズは純粋に自然ではないフットボール伝説として効果的に威嚇している。

批判点
映画は有望に始まるが、後半で超現実的な幻想劇に深刻に悪化し、それは寒気よりもゴンゾ的である。

(Hollywood Reporter – HIM)

Variety 評価不明

批評家名「スタイルは十分だが、新人の実行でコンセプトをしくじる」

『ヒム』は確実に邪魔になろうとする。あまりにも必死に、実際に。

評価点
映画の不屈のビジョンと激しいスタイル感覚が、フットボール文化の寓話に満ちた解体を見つめることを困難にしている。

批判点
その野心の高さに決して到達することはない。

(Variety – HIM)

Time Out 60/100

批評家名「明白すぎる宗教的象徴と重い手法」

映画の問題は、宗教的象徴があまりにも明白で、より下品なホラー要素—トレーニング中に文字通りキャメロンを悩ませる強迫的なファンのような—があまりにも重い手法で恐ろしいというよりもばかげたものになることだ。しかし、『ヒム』は深い無価値感を回避し、主にウェイアンズとウィザースの間の緊張した関係のおかげでコンセプトに明らかな熱意を持って取り組む。

評価点
主演の二人の演技の相性と作品への熱意が評価される。

批判点
宗教的象徴の使い方が直接的すぎ、ホラー要素が恐怖よりも滑稽さを生んでいる。

(Time Out – HIM)

個人的な感想評価:60点

前半は最高に面白かったが、後半舵取りを間違えて失速し、最悪の駄作となった。

後半5日目の生首が最後の分岐点だったように感じる。

最高の前半だった。夢を諦めかけた青年に声をかけた8度の優勝経験を持つ伝説的なクオーターバックからのマンツーマントレーニングのお誘い。天にも昇る気持ちだっただろう。最初に施設に入るシーンはブルーロックを思い出させる。

初日は笑ってひたすら追い込み追い込み追い込み、最高のケアの環境の中に謎の血液と輸血、ドーピング、二日目から過酷さから過激さも加わり、三日目には凄惨さも入りプロになるためにはこれぐらいの覚悟でやるんだ!という気概を体を張って教わっていき心身ともにプロ中のプロ、スターになるべくトレーニングを積んでいく、何か不思議な幻覚を見るけど。ここの追い込み具合とかが映像も展開も全てがリアルで手に汗握らせてくれた。NFLとかよく知らんけど。

監督のセンスが光ったのは、こちょっとしたフラッシュバックや暗転、白黒ネガフィルムのような描写、主人公の感情を映像化した抽象的描写が的確で素晴らしすぎる。彼の身に何が起きたのか?何を感じたのか?が演技と映像によって視聴者に思い切り伝えてくる映像力が私は大好きだった。冒頭謎の液体を注射された瞬間に主人公は頭が割れて出血するイメージを持つのなんかは最高に興奮してしまった。繊細さんの私にとってコロコロとフラッシュバックしていく頭の中を言語化するのは難しくコミュニケーションを取るのが難しい場面がよくあるため、そのフラッシュバックして混沌としたイメージを的確に映像化してくれた。これが本当に嬉しかったのだ。

いつかきっと理解してくれる人がいるのかもな、と小さな希望を抱いたのだ。あのシーンだけで。私は救われた。

が、5日目、突如生首、儀式、殺し合い、見物客、それも昔から、決闘は殴り合いで決める、施設を出るとウェルカーム!ってチアリーディングの歓迎会と宣誓書のサイン会。そして殺し合い。最後は笑い。

おいおいおい、一気に間違えた方向に向かったなーと半笑いになってしまった。

ちょっと不可思議なことはあるけれど、プロになる人たちはみんな経験していることさ!と濁し続けて最強のクオーターバックになっていき、試合が始まる時にほんの少しだけ怪異に染まった主人公を見せて終わり程度にしておけばよかったのに、割と関係のないマネージャー、奥さん、奥さんとか上層部とかチアリーダーとか出てきちゃってもう興味を失ってしまった。しかも最後は皆殺しエンドとか、多少のカタルシスは感じたものの、どちらかというと主人公とアイザイアと2人で築きあげてきた映画を自ら殺していくシーンに感じてとても悲しかった。

この前半からの失速感を楽しんでほしい。

こんな観客を見事に置いてけぼりにする映画は他にはないだろう。

まとめ

この記事では、映画『ヒム/HIM』の物語結末までの完全ネタバレ解説から海外の感想評価までを詳しく紹介した。ジョーダン・ピール製作のスポーツホラーとして大きな期待を集めた本作だったが、実際の評価は期待を大きく下回る結果となった。

批評家スコア29%、観客スコア58%という低評価が示すように、多くの観客が映画の後半の混乱した展開に困惑し、前半で築かれた緊張感が台無しになったと感じている。一方で、マーロン・ウェイアンズとタイリーク・ウィザースの演技、視覚的な美しさ、音楽の素晴らしさは多くのレビューで評価されている。

海外では「美しくパッケージされた虚無」「スタイルは十分だが新人の実行力でコンセプトを台無しにした」といった厳しい評価が目立ち、ジョーダン・ピール関連作品としては最低レベルの評価を受けた。それでも、スポーツ界の闇と成功の代償というテーマ性や、従来のスポーツ映画とは一線を画する試みは一定の評価を得ており、今後のジャスティン・ティッピング監督の成長に期待する声も聞かれる。

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