映画『ナイトコール/Night Call』完全ネタバレ解説と海外の感想評価まとめ

「0から100まで瞬時に駆け上がる一流のスリラー」としてベルギー映画として最大のスマッシュヒットした映画『ナイトコール/Night Call』本作のあらすじ結末までネタバレ解説と海外の感想評価をまとめて紹介する。

昼は学生、夜は鍵屋として働くマディが、謎の女性クレアからの緊急の依頼を受けて鍵を開けるが、彼女が盗んだ現金の入ったバッグを巡り、冷酷な犯罪ボスの追跡を受け、ブラック・ライブズ・マター抗議デモで揺れる街で一晩のうちに無実を証明しなければならなくなる。

アクションスリラーとして注目を集めた映画『ナイトコール/Night Call』は2024年8月28日にフランスのゴーモン配給で劇場公開された。フランス・ベルギー合作で制作された本作は、第71回ビアリッツ映画祭国際コンペティション部門のオープニング作品として2024年6月18日に世界初公開され、観客賞を受賞した。

監督は長編デビュー作となるミシエル・ブランシャールが務め、脚本をジル・マルシャンと共同執筆した。ブランシャールは1993年ベルギー生まれで、短編映画『You’re Dead Hélène』(2021年)でアカデミー賞の最終選考にも残った新進気鋭の監督だ。主演は新人俳優ジョナサン・フェルトレ(マディ役)、ナタシャ・クリエフ(クレア役)、そしてフランスの実力派俳優ロマン・デュリス(ヤニック役)が務めている。第14回マグリット賞では史上最多の11部門にノミネートされ、10部門を受賞した記録的作品となった。

今回は、一夜限りの逃走劇として話題となった映画『ナイトコール/Night Call』のラストまでネタバレ解説していこう。以下の内容は本編の結末の重大なネタバレを含むため、必ず鑑賞してから読んでいただきたい。なお、暴力的な内容や警察の暴行に関する描写も含まれているため注意していただきたい。

『ナイトコール/Night Call』あらすじ結末ネタバレ

ここから先は『ナイトコール/Night Call』の核心である重大なネタバレを含む。

運命の夜勤

ベルギーのブリュッセル、昼間は大学生、夜は鍵屋として働くマディ(ジョナサン・フェルトレ)は、いつものようにペトゥラ・クラークのフランス語版「La Nuit n’en Finit Plus」を車で聞きながら夜の仕事をしていた。

この夜、ブリュッセルでは警察による黒人男性殺害事件を受けたブラック・ライブズ・マター抗議デモが大規模に行われており、街は緊迫した雰囲気に包まれていた。

しばらくすると若い女性クレア(ナタシャ・クリエフ)から緊急の鍵開け依頼を受けるが、アパートに鍵を開けてと言われるも、身分証明書を持っておらず、支払いについても曖昧な返答を繰り返すため、マディは違和感を覚えながらも、性格上断ることができずアパートの鍵を開ける。

クレアは部屋から黒い袋を持ち出しゴミ捨てついでにATMでお金を下ろしてくるとマディに伝えて出てってしまう。部屋の中で待機していると、突然男にマディは襲われる。咄嗟に身をかばったはずみで男を殺してしまうと、仲間たちが次々と家の中に突入してくる。男たちは女を探していると隅々まで探し回るが、クレアはアパートに保管されていたギャングの大金を盗んで逃走したことが判明し、マディは完全に罠にはめられてしまったことを知る。

追跡の始まり

犯罪組織のボスであるヤニック(ロマン・デュリス)はマディに命をかけて女と金を見つけることを誓わせると、部下のテオ(ジョナス・ブロケット)を監視役として一緒にクレアの居場所を探し始める。そこで実はヤニック自身も別の危険な取引に巻き込まれていたため、この金を失うことは彼にとって致命的で彼の追い込まれていることを知ったマディは、得意の鍵開けと機転でテオのスマホを奪いつつ逃げ切ることに成功する。

マディは警察に助けを求めることも考えたが、テレビで映し出される抗議デモ者に対する警察の容赦のない暴力的な鎮圧の様子を見て、黒人である自分が警察を頼ることの危険性を悟り諦め、一人でこの状況を打破する必要があると覚悟を決めるのだった。

街で行われている抗議デモに紛れ込み、ブリュッセルの地下鉄、路地裏、建物の屋上を駆け巡る息つく間のない追跡劇が展開される。

落ち着いたところでテオのスマホを覗くと、なぜかクレアとのメッセージのやり取り見つけたマディは、テオのフリをしてお金を持って店で合流しようと持ちかける。

結末ネタバレ:夜明けの決着

クレアを地下室に誘い出したマディはクレアを尋問するが、マディを舐め切っているクレアは嘘をついて言葉を濁し続けるため、マディは咄嗟にハンマーでクレアの腕を砕き脅しをすると、クレアはやっと本当のことを話す。クレアとテオは兄弟で、テオをギャングから抜け出して惨めな生活から脱出するための資金として盗んだのだと白状する。しかし、マディが無事に金をギャングに返した場合、今度はクレアとテオの命が危ないと危惧して堂々巡りしていた。

そこでテオがクレアを助けに登場するが、クレアはマディを隠すとテオと無事に街を出ることを約束して別れる。

地下から出たマディを見つけたテオは銃で従業員とマディを殺そうとするが、マディは消化器を噴射させて抗議デモに紛れ込んで逃げようとするが、2人ともデモ参加者と間違われ警察に捕まり逮捕されてしまう。

マディとテオが警察で護送中にギャングが車で警察車両に突っ込みマディは再びヤニックの前に連れて行かれる。金はどこだと尋ねられたマディはテオとクレアのことを全て暴露する。テオも連れて来られるが、ヤニックは信じようとせずマディを殺そうとするが、テオとクレアの2人のやり取りを録画したスマホを見せて信用を勝ち取ると、ヤニックはテオを殺すと、クレアが金を持ってテオと合流する場所に手下を向かわせる。

真相がわかったヤニックはマディに優しく接し傷の手当てをすると解放するが、冒頭で襲われた際にギャングの一味をはずみで殺してしまったマディのドライバーは証拠と裏切り防止のために確保しているとやんわりと脅して、ついにマディは解放される。

車に戻ったマディはクレアの顔を思い浮かべると、車を走らせる。

マディは車を暴走させてわざと警察に追跡させ駅に向かいクレアを見つけるが、暗殺者たちがクレアの背後に迫っていた。マディはクレアに向かって走り警察に撃たれて倒れるが、暗殺者に気付いたクレアは警察に紛れて暗殺者から無事に逃げ切り大金を持って電車に乗り込む。

救急搬送されたテオは救急車の中で目を覚まし物語は終了する。

IMDb – Night Call

結末考察

『ナイトコール/Night Call』作品情報

映画『ナイトコール/Night Call』のネタバレを読んで興味を持った読者のために、この一夜限りの逃走劇の制作背景について詳細を紹介する。本作はブラック・ライブズ・マター運動を背景にしたアクションスリラーとして制作され、現代社会の人種差別問題を娯楽映画の枠組みで鋭く描いた話題作として国際的に注目されている。

ナイトコール/Night Call興行収入

本作はフランスで2024年8月28日、ベルギーで9月4日に劇場公開された。ベルギーでは30,000人の観客動員を記録し、2024年のベルギー映画では最も多く観られた作品の一つとなった。比較として、2023年のベルギー映画トップ3である『オーメン』(14,270人)、『ダルヴァに従って愛する』(11,678人)、『陽気な偽造者たち』(10,864人)を大幅に上回る成果を記録している。この成功はベルギー国内制作映画が幅広い観客を引きつける可能性を実証した。

ミシエル・ブランシャール監督紹介

ミシエル・ブランシャール(31歳)は1993年ベルギー生まれの映画監督で、本作が長編監督デビュー作となる。

IAD(映像芸術研究所)で映画を学び、在学中から数々の短編映画を制作して国際映画祭で注目を集めた。2021年の短編映画『You’re Dead Hélène』は第94回アカデミー賞実写短編部門の最終選考まで残り、現在サム・ライミ製作でアメリカ版長編映画の監督も決まっている。

本作の着想は、COVID-19第2波の終わり頃、ブリュッセルの司法宮殿近くに住んでいた際に目撃したブラック・ライブズ・マター抗議デモからの怒りと緊張感を映画に込めたいと思ったことがきっかけだった。

マディ役「ジョナサン・フェルトレ」紹介

主人公マディを演じるジョナサン・フェルトレ(28歳)は本作で注目を集めた新人俳優である。これまで小規模な作品への出演経験はあったが、本作が初めての主演作品となった。昼は学生、夜は鍵屋として働く青年の純粋さと、危険な状況での機転の利いた行動の両面を見事に表現し、90分間ほぼ全編に渡って画面に登場し続ける重責を見事に果たした。

特に恐怖に満ちた目と敏捷な行動への反応が印象的で、多くの批評家から「新星の誕生」と評価されている。

クレア役「ナタシャ・クリエフ」紹介

謎の女性クレアを演じるナタシャ・クリエフ(27歳)は、フランス・ベルギーの映画界で活動する女優である。

本作では、一見無害に見えながら実は複雑な事情を抱えた女性を演じ、観客が最後まで彼女の真意を読み取れないよう巧みに演技している。マディを窮地に陥れる存在でありながら、単純な悪役ではない多面性を持つキャラクターを、繊細かつ力強く表現した。彼女の演技により、物語に重要な心理的深みが加わっている。

海外の感想評価まとめ

映画『ナイトコール/Night Call』は海外の映画批評家と観客から高い評価を受けており、特に新人監督のデビュー作としては異例の完成度として絶賛されている。多くの批評家が「サフディ兄弟のスリラーに匹敵する緊張感」「現実的で見事に実行されたアクション」として評価し、ジャンル映画の枠を超えた社会的意義も同時に評価されている。第14回マグリット賞で史上最多記録となる10部門受賞という快挙も、作品の質の高さを物語っている。

IMDb(総合評価:6.7/10)

①私はこの映画が初回長編映画としては本当によくできていると感じた。全編が夜に行われ、緊張感に満ちた追跡として展開される制約の中で、監督はテンポの良いスリラーを作り上げた。ベルギー映画のブロックバスターや隠れた名作を数多く見てきたが、この作品は最高の部類に入る。ノンストップの残酷なアクションシーンと、よく演じられた非常に魅力的な作品だった。

②私が最も印象的だったのは、これが監督の初めての映画だとは信じがたいことだった。この作品はサフディ兄弟のスリラーの緊張感を持ち、アクションは洗練され、現実的で、見事に実行されている。ブランシャール監督は『デュエル』、『トレーニング・デイ』、『コラテラル』をインスピレーションとして挙げている。アクション映画として、主要キャラクターの発展に実際に時間を割き、ブラック・ライブズ・マター抗議を背景に設定したことも賞賛に値する。

③私は学校でこの映画を見たが、ベルギー映画にあまり期待していなかった。しかし最初の5分で間違いだったことが証明された。この映画は非常に美しく撮影されており、色彩が素晴らしかった。アクションは素晴らしく、ストーリーはシンプルでありながら興味深い。小さな予算で素晴らしい映画を作り上げ、再び見たくなる作品だった。

④私がこの映画で特に気に入ったのは、主人公マディを演じる俳優が感情を非常によく表現できることだった。特に不安と怒りの表現が印象的で、サブストーリーも本当に気に入った。全体的に、技術的によく実行されたアクション犯罪スリラーとして、近年で最も印象的な監督デビュー作の一つだった。

IMDb – Night Call

Rotten Tomatoes(批評家:79% / 観客:評価数不足)

①私はブランシャールのスリラーが0から100まで瞬時に駆け上がることに感動した。一流の演技、魅力的なアクション、そして巧妙なストーリーラインがこれを必見の映画にしている。この映画が情報を与えたり隠したりする方法は、脚本の強さと映画製作者の自信を物語っている。

②私が評価するのは、『ナイトコール』がその制限的な概念を避けることで、マディが冷酷な犯罪者と好戦的な警察官を出し抜き、朝まで生き延びようとする古典的な感触を与えていることだ。常にひねり、突然の左折、そして優れたアクションセットピースを提供することで、スリラーとして成功している。

③私は『ナイトコール』がスリラージャンルへの特別な新しいエントリーを作り上げる全ての要素を持っていたが、単なる技術的によく実行されたアクション犯罪スリラーに留まっていると感じた。それでも、その高い賭け金、ユニークな設定、そして速いペースが他のほとんどの作品よりも上に置いている。

Rotten Tomatoes – Night Call

Metacritic(総合評価:評価数不足)

①私はこの映画がマディ、ヤニック、その他数人のキャラクターがプロットの外でどのような人物であるかをより深く掘り下げることもできたと思うが、代わりに私たちはアクションの真っ只中に放り込まれ、進むにつれて物事を理解しなければならない。すべてのキャラクターの動機への答えは得られないが、それは必要ではない。私たちが求めているのは背景ストーリーではなく、追跡なのだ。

②私は『ナイトコール』が一夜の間に起こることにしたのがブランシャールの最良の選択だと思う。ブリュッセルは美しい街で、その街路をかなり探索することができる。実際にはもっと見たかったが、より多くの時間が室内や暗い路地で過ごされている。それでも、『ナイトコール』は急いでおり、すべての詳細に時間をかけることには関心がないので、おそらくそれが最善だった。

③私は『ナイトコール』がアクションスリラーの車輪を再発明するものではないが、その高い賭け金、ユニークな設定、そして速いペースが他のほとんどの作品よりも上に位置づけていると感じる。この映画は、90分間の没入的な乗り物であり、おそらくそれで十分だ。しかし、それは概念実証のような感じで、完全に実現された映画というよりも。

Metacritic – Night Call

批評家レビュー

海外の専門批評家による『ナイトコール/Night Call』の詳細な評価を紹介する。本作は新人監督による長編デビュー作としては異例の完成度を誇り、特にアクション演出の巧みさとブラック・ライブズ・マター運動を背景にした社会的テーマの組み込み方が高く評価されている。多くの批評家が「古典的なスリラーの現代的復活」として位置づけ、ヨーロッパ映画の新たな可能性を示した作品として絶賛している。

Roger Ebert 高評価

映画批評家「法を守る鍵屋の日常的な任務が緊迫したサバイバルに変わる」

法を守る鍵屋という職業は多くのアクションにつながるような職業には見えないかもしれないが、ミシエル・ブランシャールのベルギーのスリラー『ナイトコール』では、一つの平凡な任務がヒーローのシフトを生き残るための緊迫した戦いに変える。

評価点 平凡な職業設定から始まる緊張感の構築と、現実的なキャラクター描写による説得力のあるサスペンス。

批判点 一部の展開が典型的なアクション映画のクリシェに依存している点。

(Roger Ebert – Night Call)

Variety 高評価

ムルタダ・エルファドル氏「現代的なスピンを加えたジャンルの新しい監督の登場」

この映画は娯楽的なアクションアドベンチャーを提供するだけでなく、ジャンルに現代的なスピンをもたらし、時事問題に取り組み、典型的なアクション作品から区別する監督を紹介している。一夜を通して行われるという設定により、ブランシャールは『ナイトコール』にほぼ古典的な感触を与えている。マディが冷酷な犯罪者と好戦的な警察官を出し抜き、朝まで生き延びようとする物語だ。私は常に一晩で展開される映画が好きだったと監督は言い、『コラテラル』、『アフター・アワーズ』、『デュエル』をインスピレーションの源として指している。それゆえ私の最初の長編映画では、明確でシンプルなコンセプトで正確な設定を探求したかった。一人のキャラクター、一つの町、一つの夜だ。

評価点
社会問題を娯楽映画に巧みに組み込んだ脚本力と、一夜限定の時間設定を効果的に活用した演出技法。

批判点
ブラック・ライブズ・マター運動の扱いが表面的で、より深い掘り下げが欲しかった点。

(Variety – Night Call)

Screen Rant 高評価

ベン・ギボンス氏「創造性と深い意味を注入した典型的なアクションスリラー」

典型的なアクション・スリラーの前提に創造性と深い意味を注入した映画として4つ星を与える。これはスパイや高度に熟練した戦闘員についての映画ではない。それは暗く、時には恐ろしい世界についての物語だ。『ナイトコール』の本当の問題は、それが取り組む主題に取り組むことができないことだ。

マディがクレアのために命を危険にさらすべき理由は何か?より具体的には、観客がなぜ一晩で彼が知らない女性、十分な時間を持ってつながりを築いていない女性のために警察官がマディを撃つのを見るべきなのか?なぜマディは白人女性のために自分を犠牲にすべきなのか?『ナイトコール』は世界中の歴史的瞬間を使って物語を組み立てているが、それでもブラック・ライブズ・マター運動とマディのアイデンティティを見つめているように感じられる。

評価点 アクションスリラーの枠組みに社会的メッセージを込めた野心的な試みと、実践的で現実的なアクションシーン。

批判点 社会的テーマの扱いが不完全で、キャラクターの動機に説得力が不足している点。

(Screen Rant – Night Call)

Macabre Daily 高評価

マシュー・オロスコ氏「パルス・ドライビングなアクションスリラーの傑作」

私たちは単刀直入に言おう。『ナイトコール』はシンプルな前提を取り上げ、完璧なペーシングとハイエナジーなセットピースでそれを高めるプロパルシブ・アクション映画カテゴリーのマスタークラスだ。実際、15分後の私たちのノートの2番目の注意書きは「ホーリー・ファッキン・シット」だった。『ナイトコール』が機能するのは、ジョナサン・フェルトレによって完璧に演じられた共感的なリードと、このような大胆なものから期待するよりもはるかに地に足のついたキャラクターのキャストを持っているからだ。その唯一の欠点は、物事をきちんと整理したいという誘惑に抵抗しない結末にあるが、それは私たちがしばらく見た中で最もエキサイティングな映画の一つでの小さな不満だ。

評価点
完璧なペーシングと高エネルギーなアクションシーンの構成、そして共感できる主人公の魅力的な描写。

批判点
結末が少し安易に収束しすぎており、もう少し複雑な解決があっても良かった点。

(Macabre Daily – Night Call)

個人的な感想評価:70点

『ナイトコール/Night Call』はベルギー?という印象だったが、全体的にテンポよく、脚本はシンプルでわかりやすい。濡れ衣を着せられた鍵屋の少年が疑いを晴らすために走って走って頑張るというシンプルな内容に頭を使わずに楽しめた。

構図やカメラワーク、映像の美しさに特出したものはないものの、90分間緊張感が途切れることなく逃走劇を描ききり、エンディングへ見事に着地させた。新人監督とは思えないミシエル・ブランシャールの才能は本物だと言えるだろう。

正直アクション映画の劣化が著しい近年稀に見る出来栄えだった。特にブリュッセルの街を舞台にした追跡シーンは、実際の都市の地理を効果的に活用し、リアリティのある逃走劇を演出している。日本でも似たような闘争劇があるが、プロレスのようなお約束展開に辟易するが、本作の緊張感とリアリティをぜひ参考にしてほしいと思った。

主人公のジョナサン・フェルトレの主演としての存在感も素晴らしく、新人とは思えない恐怖と機転を併せ持つキャラクターを説得力豊かに演じきっており、常に彼の表情を見続ける作品なのに彼が次に何を考えているのか?と想像力が豊かに働き彼の闘争劇を一緒に味わうことができた。これは良い役者ってやつなんだろう。見応えのある俳優に出会えたようだ。

しかしブラック・ライブズ・マター運動を背景に設定した社会的テーマの扱いは雑で、主人公が黒人であること、デモはただの逃走の一助でしかなく社会的な掘り下げが足りないと感じたが、そんなのはどうでも良く、深掘りなんて必要はない、この物語の主役はただ巻き込まれた鍵屋のマディなのだ。社会や政治なんて彼にも私たちにも映画にも意味はない。

ただし、個人的に兄を殺させてしまった償いとはいえ、命をかけてクレアを助けたのはどうかなとは思う。美学と言えるのか、本当にただ犯罪に巻き込まれた心優しい青年なだけなのに。できれば大金の半額ぐらいはクレアの計らいで手に入れていたり、なんなら黒幕のクレアの大金だって奪って欲しかったのが本音。

それでもジェットコースターを乗り終えたような心地よさが残ったのでそれは瑣末なことなのかな。良い映画でした。

とりあえず、ハンバーガーとコーラ飲みたくなった。疲れたぜ。

まとめ

この記事では、映画『ナイトコール/Night Call』の結末までのネタバレあらすじ、作品情報、そして海外での感想評価をまとめて紹介した。本作は昼は学生、夜は鍵屋として働くマディが、謎の女性クレアからの依頼をきっかけに犯罪組織に追われ、ブラック・ライブズ・マター抗議デモで揺れるブリュッセルで一夜のうちに無実を証明する逃走劇として構成されている。

2024年8月28日にフランスで劇場公開されたこの作品は、ミシエル・ブランシャール監督の長編デビュー作として注目を集め、第71回ビアリッツ映画祭のオープニング作品に選ばれ観客賞を受賞した。第14回マグリット賞では史上最多となる11部門にノミネートされ、10部門を受賞する快挙を成し遂げた。海外の映画批評家からは「0から100まで瞬時に駆け上がる一流のスリラー」として絶賛されている。

特にIMDbでは「サフディ兄弟のスリラーに匹敵する緊張感」との評価を受け、多くの観客が「近年で最も印象的な監督デビュー作の一つ」と絶賛している。Rotten Tomatoesでは批評家支持率79%を記録し、Roger Ebert誌は「法を守る鍵屋の日常的な任務が緊迫したサバイバルに変わる」と評価した。Variety誌は「現代的なスピンを加えたジャンルの新しい監督の登場」と表現し、Screen Rantは「創造性と深い意味を注入した典型的なアクションスリラー」と絶賛した。海外では社会問題を娯楽映画に巧みに組み込んだ脚本力と、一夜限定の時間設定を効果的に活用した革新的な演出技法が高く評価されており、ヨーロッパ映画の新たな可能性を示した傑作として位置づけられている。

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