
「怪物に取り憑かれたのは、父か、息子か」全米で2025年1月17日に公開された映画「ウルフマン(2025)」のあらすじ結末までネタバレ解説と海外の感想評価をまとめて紹介。
本作は1941年のユニバーサル・スタジオ製作のクラシック・ホラー『狼男』の現代版リブートで、リー・ワネル監督が手がけた心理的恐怖とボディホラーを融合させた作品だ。物語は平凡な家庭の父親ブレイクが謎の生物に襲われ、徐々に人間性を失いながら狼男へと変貌していく過程を、家族の絆と世代間トラウマという現代的テーマを通して描いている。
サイコロジカル・ホラー・スリラーとして注目を集めた映画『ウルフマン(2025)』は2025年1月17日にアメリカで劇場公開された。リー・ワネル監督による『インビジブル・マン』(2020)の成功を受けて制作されたユニバーサル・モンスターズの新章で、製作はブラムハウス・プロダクションズが担当した。当初はライアン・ゴズリング主演、デレク・シアンフランス監督で企画されていたが、スケジュールの都合で降板し、最終的にワネル監督がクリストファー・アボット主演で新たに撮り直された。
監督のリー・ワネルは『ソウ』シリーズの脚本家として知られ、『アップグレード』(2018)、『インビジブル・マン』(2020)で高い評価を獲得した気鋭のホラー監督だ。主人公ブレイク・ラヴェル役をクリストファー・アボット(『貧しきものたち』『イット・カムズ・アット・ナイト』)、妻シャーロット役をジュリア・ガーナー(『オザーク』『インベンティング・アナ』)、娘ジンジャー役をマチルダ・ファース、ブレイクの厳格な父グレイディ役をサム・イエーガーが演じている。
物語の舞台は1995年のオレゴン州の山間部で発生したハイカー失踪事件から始まり、30年後の現代へと時代が移る。地元住民は野生動物が媒介するウイルス「ヒルズ・フィーバー」の存在を信じているが、先住民は古くからこの現象を「狼の顔(フェイス・オブ・ザ・ウルフ)」と呼んでいる。ワネル監督は従来の満月の夜に変身する狼男の設定を破棄し、ウイルス感染による不可逆的な変身として再構築した。
今回は、家族愛と世代間トラウマを描いた異色ホラーとして注目を集める映画『ウルフマン(2025)』のラストまでの完全ネタバレについて解説していこう。以下の内容は本編の結末の重大なネタバレを含むため、必ず鑑賞してから読んでいただきたい。 また、グロテスクな身体変化の描写と家族間暴力の内容も含まれているため注意していただきたい。
『ウルフマン(2025)』あらすじ結末ネタバレ
ここから先は『ウルフマン(2025)』の核心である重大なネタバレを含む。
30年前の悪夢
オレゴン州の人里離れた山間部で、ブレイク・ラヴェルは厳格な軍人の父グレイディと狩猟旅行に出かけていた。グレイディは息子に愛情を抱いているものの、威厳と怒りに満ちた厳格な態度で接している。
ブレイクは狩りの最中、認められたい一心で父の指示に従わず一人で鹿を追いかけ森の奥へ向かう。そこで奇怪な人型の生物を目撃してしまった。
グレイディが息子を見つけて説教するが、怯えている息子が尋常ではないものを見たことを聞き、二人は急いで高台の狩猟用見張り台に避難する。怪物は隠れ場所に何度も体当たりしてきたが、近くを通った獣に気を取られ別の方向へ走り去った。この恐怖体験は幼いブレイクの心に深いトラウマを植え付けた。
帰宅したグレイディは友人のダンに謎の怪物について説明し、積極的に狩ることを提案する。しかしダンは家族の安全を考慮してその提案を断った。ダンは地元で語り継がれる伝説——失踪したハイカーがウイルスに感染して怪物と化したという話——を信じており、危険を犯せないと判断したのだ。
現代の怪物
30年後の2025年、ブレイクはサンフランシスコで妻のシャーロットと娘のジンジャーと共に暮らしていた。シャーロットは雑誌編集者として多忙な日々を送り、ブレイクは在宅で執筆業をしながら専業主夫として娘の世話をしていた。
しかし夫婦関係には明らかな亀裂が生じており、シャーロットは仕事を優先する傾向があり、家族との時間を十分に取れずにいた。
ブレイクは自分の中に父親のような短気な一面があることを恐れていた。ジンジャーが言うことを聞かない時に感情的になってしまう自分を深く恥じており、父親のような厳格で軍隊式の子育てを繰り返したくないと強く願っている。しかしストレスが高まると無意識に声を荒らげてしまうことがあった。
ある日、ブレイクのもとに法的書類が届く。30年前に失踪したまま行方不明だった父グレイディが、ついに法的に死亡宣告されたのだ。ブレイクはオレゴン州にある父の農場を相続することになる。
夫婦関係の修復と家族の絆を深めることを願ったブレイクは、シャーロットに一緒にオレゴンへ行って父の遺品整理をしながら自然の中で過ごすことを提案した。最初は気乗りしなかったシャーロットだったが、家族関係の改善の必要性を感じ、最終的にブレイクの提案に同意する。三人はサンフランシスコからオレゴンの山間部へ向かった。
悪夢の再来
オレゴンの森に到着した一家は道に迷ってしまう。日が暮れ始めた頃、彼らは地元のハンター、デレク・キールに出会った。デレクはグレイディの友人ダンの息子で、ブレイクの幼馴染だった。
しかしデレクは、ブレイクが都市部で裕福な生活を送っていることに対し「田舎を捨てた裏切り者」と見なしていた。表面的には親切を装いながら、ブレイクに「都市生活に慣れて軟弱になった」「家族を持って自分だけ幸せになった」などと批判してくる。
それでも彼は一家をグレイディの農場まで案内するためトラックに同乗し道案内を始めた。道路を進んでいると、よそ見をした時に道路に立っている人を避けようとハンドルを急激に切り、斜面を転がり落ちてしまう。
トラックはかろうじて木に引っかかっている状態となり、デレクが崖から落ちているのを確認すると、何かが襲いかかりブレイクは腕を引っ掻かれた。ブレイクはデレクが襲われている隙にシャーロットとジンジャーを連れ、かろうじて父の農場に逃げ込む。
ブレイクは発電機を起動して電気を確保し、すべての出入り口をバリケードで塞いだ。外では怪物が家の周囲を徘徊し、侵入経路を探し歩いていた。
感染、転身
ひと段落ついたが、ブレイクの体に異変が生じていた。腕の傷が化膿して悪臭を放ち、歯が抜け落ちたのだ。心配するシャーロットに対し「衝突時に顎を打ったせい」だと言うが、異常な速度で体調が悪化していく。
夜中、家の補強を続けるブレイクは聴覚と嗅覚が異常に鋭敏になったことに気づく。遠く離れた場所で落ちる釘の音、隣の部屋の壁を這うクモの足音まで聞こえ、遠くの匂いを嗅ぎ分けることができるようになった。視覚も変化し、夜でも周囲が鮮明に見える超人的な感覚を身につけていく。しかしそれは喜ばしいギフトではなかった。
ブレイクの髪の毛が大量に抜け始め、ついに人間の言語を理解する能力が失われた。シャーロットやジンジャーが話しかけても、ブレイクには意味不明な雑音にしか聞こえない。ブレイクも普通に返答しているつもりだったが、家族には支離滅裂な唸り声にしか聞こえなかった。唯一のコミュニケーション手段すらも失われていき、ブレイクは自身の体調の変化を許容できず落ち込んだ。
体調の悪化は進み、腕の傷が悪化し出血が止まらず、傷の周囲には獣のような毛が生え始めた。それを見たブレイクは自分の傷口を舐めた後、肉を噛みちぎり咀嚼して飲み込んでしまう。
結末ネタバレ:怪物の正体
変異していく夫、外には怪物——絶望的な状況の中、シャーロットは外に停まっていた古いトラックを発見し、エンジンをかけることに成功して脱出を試みる。しかし怪物が現れ逃走を阻止した。
怪物に追い込まれるが、ブレイクは残された人間性を振り絞って家族を守るため怪物に飛びかかった。
そこで初めて怪物の全貌が明らかになる。怪物はイメージ通りの半分人間、半分獣の狼人間で、四つ足歩行と二足歩行を巧みに使いブレイクに襲いかかる。戦いは激しく凄惨なものだったが、半分狼男と化していたブレイクはシャーロットの援護によって怪物の喉笛に噛み付き、ついにその命を絶つことに成功した。
しかし怪物の腕に刻まれていた刺青を見て、目の前にいる怪物こそ30年前に失踪した自分の父親グレイディだったことが判明する。
父親を殺してしまったショックと、自分も同じ運命を辿ることへの絶望感で、彼は家の外に飛び出すと骨格が変形し、爪が指先から突き出し、狼男に変身してしまった。
完全に狼男と化したブレイクは家に戻り、シャーロットとジンジャーに襲いかかる。シャーロットは途中でデレクの猟銃を拾い上げ、映画の冒頭でブレイクとグレイディが隠れた同じ見張り台に避難した。
追跡してきたブレイクは見張り台に登り、シャーロットとジンジャーを見つめると、かろうじて残った理性で襲いかかるのを躊躇っている様子を見せる。
父親の苦痛を理解したジンジャーは「パパは痛がっている。死にたがっている」と母親に告げ、ブレイクは自分を撃つようシャーロットに懇願するような視線を送った。
愛する夫を解放するため、シャーロットは引き金を引く。ブレイクは妻と娘に看取られながら、ついに苦痛から解放された。
朝日が昇る中、シャーロットとジンジャーが森を抜けるとそこには美しい風景が広がっていた。それはブレイクがシャーロットに何度も語っていた、子供の頃に父親と共に見た「すべてが正しく感じられる場所」と同じ光景だった。
『Wolf Man』作品情報
Wolf Manのネタバレを読んで興味を持った読者のために、リー・ワネル監督による現代的な狼男リブートについて詳細を紹介する。ブラムハウス・プロダクションズとユニバーサル・ピクチャーズが製作した本作は、1941年のクラシック・ホラー映画『The Wolf Man』を現代風にアレンジし、家族を守ろうとする父親が徐々に野獣へと変貌していく恐怖を描いたサイコロジカル・ホラーだ。
Wolf Man興行収入
Wolf Manは2025年1月17日の全米公開で、初日に木曜プレビューを含む初日興行収入450万ドルを記録した。オープニング4日間(MLKウィークエンド)では1090万ドルを獲得し、全米興行収入ランキング3位でスタートしたものの、当初予想の1700万~2100万ドルを大幅に下回る結果となった。制作費2500万ドルに対して、全世界興行収入は約3490万ドル(全米2070万ドル、海外1420万ドル)を記録している。2週目には前週比72%の大幅減となり、興行的には期待を下回る成績に終わった。プロデューサーのジェイソン・ブラムは興行成績の不振について失望を表明している。
リー・ワネル監督紹介
リー・ワネル(47歳)はオーストラリア・メルボルン出身の脚本家、俳優、映画監督として活動している。
1995年にロイヤルメルボルン工科大学のメディアアーツコースで学び、同窓のジェームズ・ワンと映画制作を始めた。2004年の『ソウ』で脚本・主演を務め、現在7作まで続く『ソウ』シリーズ全作で脚本、出演、製作総指揮を担当している。
『インシディアス』シリーズの脚本を手がけ、2015年『インシディアス 序章』で監督デビューを果たした。2019年『アップグレード』、2020年『透明人間』で監督として高い評価を獲得し、特に『透明人間』は製作費700万ドルに対して全世界興行収入1億3900万ドルの大成功を収めた。バラエティ誌の「注目すべき監督10名」にも選出されており、ホラー界の新鋭として注目されている。
ブレイク・ラヴェル役「クリストファー・アボット」紹介
クリストファー・アボット(38歳)はアメリカ・コネチカット州グリニッジ出身の俳優である。ニューヨークの演劇学校「HB Studio」で学び、2008年にオフブロードウェイの初舞台を踏んだ。
2011年『マーサ、あるいはマーシー・メイ』で映画デビューを果たし、HBOドラマシリーズ『Girls/ガールズ』(2012-2013)のチャーリー役で知名度を上げた。2015年『James White』での主演演技でインディペンデント・スピリット賞男優賞にノミネートされ、2017年『イット・カムズ・アット・ナイト』、2018年『ファースト・マン』、2019年村上龍原作『ピアッシング』主演、2024年『哀れなるものたち』『クレイヴン・ザ・ハンター』など、インディペンデント映画から大作まで幅広く活躍している実力派俳優だ。
海外の感想評価まとめ
海外では、リー・ワネル監督による新たな『Wolf Man』リブートに対して賛否両論の評価が分かれている。批評家からは心理的深みを追求したアプローチが評価される一方で、ホラー映画としての恐怖感不足が指摘され、観客層からも期待を下回る反応が多く見られている状況だ。
IMDb(総合評価:5.6/10)
①私はホラー映画のファンではないが、映画祭でWolf Manを観て、シーンの品質、ロケーションと選ばれたフレームの良さに感銘を受けた。恐ろしく効果的だった。俳優たちの演技も良く、姉妹の絆はよく表現され、夫は非常に理性的な男の役をうまく演じていた。しかし、ストーリーは少し予測可能だった。
②私は映画の前半で誰が殺人者で何が起こるかを既に推測していた。観る価値のある良い映画だ。演技は良く、基本的に低予算で撮影されていたが、そうは感じなかった。キャロリン・ブラッケンは役柄において素晴らしい仕事をし、将来彼女の更なる活躍を見たい。
③私は音響デザインが素晴らしかったと思う。映画の音響は最もサスペンスフルな瞬間において重要な役割を果たしていた。この点において、音響部門全体は彼らのプロジェクトでの仕事に対して多大な称賛と認識を受けるに値する。
④私が感じた最大の問題は、一部のキャラクターの動機が基本的に無意味なことだった。これらの人々は本質的にサイコパスだと論じることもできるが、それでも彼らの選択は信じられないほど極端で信じ難いものだった。全く馬鹿げている。
Rotten Tomatoes(批評家:49% / 観客:54%)
①私はリー・ワネル監督の前作『透明人間』での素晴らしい仕事を聞いた後、この映画を観ることにとても興奮していた。Wolf Manは『透明人間』がキャラクター開発と生々しい感情において成功した部分で失敗している。ファンタスティックなクリーチャーの世界では、キャンプ的/法外なものとダーク/シリアスなもの間で明確な方向性を選ぶべきだと思う。
②私は狼男のデザインが恥ずべきものだと感じる。安いハロウィンコスチュームのように見え、恐怖のクリーチャーというよりも見劣りがする。2025年の映画が1940年代の映画よりもフィネスに劣ることができるのは困惑するほどだ。さらに悪いことに、ワネルは意味のある視覚的変身シーケンスを完全に省略する大胆さを持っている。
③私は撮影技術が確実に際立っていたと思う。一部のアングルとカメラワークは素晴らしく、特にホラー映画としては優秀だった。また、私を本当に驚かせたいくつかの斬新なアイデアもあり、1941年のクラシックのリメイクとしては印象的だった。
Metacritic(総合評価:50/100)
①私は「Wolf Man」(2025)が、その潜在能力にもかかわらず、残念ながら説得力のあるホラー体験を提供することに失敗した映画だと考える。この映画は良くなく、その主要な弱点は貧弱なストーリーとインスピレーションに欠けた実行だ。映画の物語は足場を見つけるのに苦労し、まとまりのない筋書きを提示している。
②私はキャストが努力していると思う。子供時代のトラウマのメタファーとしての狼男感染には潜在能力があった。しかし、その実行は痛々しくずさんだ。映画は15分ほど長すぎて、タイトな90分で語られることを望ませる。狼男の外見は単に醜い。包囲され、モンスターに追い詰められる筋書き全体が痛々しく陳腐だ。
③私は技術的に相当なドラマとして「wolfman」が例外的に没入感のある音響デザインで際立っていると思う。これは映画の最も達成された要素の一つとなり、聴覚体験をほぼ包み込むレベルまで高めている。映画は家族関係の間接的批判を提供し、筋書きの根底にある対人関係のダイナミクスを微妙に探求している。
批評家レビュー
海外の専門批評家による『ウルフマン(2025)』の詳細な評価を紹介する。リー・ワネル監督の前作『インビジブル・マン』の成功を受けて期待された本作だが、批評家たちの反応は賛否が分かれる結果となった。心理的ホラーとしての野心と実際の完成度のギャップを知ることで、この映画の多角的な魅力と課題を理解できるはずだ。
The Hollywood Reporter 評価
批評家デイヴィッド・ルーニー氏「ワネル監督は古典的ホラーの要素を現代的な家族ドラマに融合させることで、単なる怪物映画を超えた作品を目指した」
『ウルフマン(2025)』について、ハリウッド・リポーター誌は会話部分を批判しつつも、演技と緊張感を高く評価した。特にクリストファー・アボットとジュリア・ガーナーの演技については、脚本の心理的薄さを補って余りある説得力があると指摘している。
映画の強みとして、実用的な特殊効果を重視したアプローチが挙げられている。CGに頼らない変身シーンの描写は、観客に生々しい恐怖を与える効果的な演出として機能している。また、ステファン・ドゥシオ撮影監督による回転カメラと混乱させる角度の使用、ベンジャミン・ウォールフィッシュによる「腸を引きちぎるようなオーケストラ音楽」が、映画全体の恐怖感を底上げしていると評価された。
評価点
実用的特殊効果の優秀さ、主演二人の演技力、緊張感のある撮影技法
批判点
会話の質の低さ、心理的描写の浅さ、『インビジブル・マン』ほどの衝撃的な基盤の欠如
(The Hollywood Reporter – Wolf Man Review)
Roger Ebert 評価
批評家ブライアン・タレリコ氏「この映画は良作と駄作の間の空間に存在し、完全な時間の無駄になるほど攻撃的にひどくはないが、あまりに多くの個別要素で失敗している」
ロジャー・イーバート誌のレビューでは、『ウルフマン(2025)』を「半端な気持ちで作られた映画」として厳しく批判している。特に、照明の暗さから感情表現の抑制、キャラクター描写の浅さまで、あらゆるレベルで中途半端な完成度だと指摘された。
ワネル監督とステファン・ドゥシオ撮影監督のコンビが『インビジブル・マン』で見せた視覚的言語への確信が、本作では失われているとの厳しい評価が下された。特に、恐怖を演出すべき瞬間でも、緊張感を高めるために必要な地理的感覚が欠如していると批判されている。
脚本面では、ワネルとコーベット・タックの脚本が「キャラクターに関して演じるべき要素を驚くほど少ししか与えていない」致命的な欠陥があると指摘された。特にジュリア・ガーナーのような才能ある演技者が「明らかに迷いながら、自分が何を、あるいは誰を演じているのかも分からない状態」に見えると酷評されている。
評価点
完全な駄作ではない中程度の娯楽性
批判点
照明・演出・脚本すべてが中途半端、キャラクター描写の致命的欠如、緊張感の不足
(Roger Ebert – Wolf Man Review)
Variety 評価
批評家ピーター・デブルージ氏「すべての怪物映画は少なくとも3つのカテゴリーのうち1つには当てはまる。狼男映画は、すべての人間の内に解き放たれるのを待つ野獣が住んでいるという概念を扱う」
バラエティ誌は、クリストファー・アボットのキャラクターの根本的心理への献身を評価しつつも、ホラーファンを満足させるには「低調すぎて微妙すぎる」と結論づけた。特に、従来の狼男映画の期待を裏切る静かすぎるアプローチが問題視されている。
映画の構造的問題として、ブレイクが変身を始める前のキャラクターに十分な緊張感がないことが挙げられた。彼は「潜在的で動物的な怒りの事例研究」というよりも、「間違った時期に家族を休暇に連れて行った不運な男」に見えてしまうという指摘は、映画の根本的な弱点を突いている。
また、怪物映画としての基本的な要求—恐怖、興奮、カタルシス—を満たすことに失敗し、心理的深度を追求するあまり娯楽性を犠牲にしてしまったと批判された。ワネルの演出意図は理解できるが、実行面での問題が多すぎるとの厳しい評価となった。
評価点
アボットの心理的演技、狼男ジャンルへの新しいアプローチの試み
批判点
恐怖演出の不足、キャラクター設定の弱さ、娯楽性の欠如、期待されるホラー要素の軽視
Rolling Stone 評価
批評家デイヴィッド・フィア氏「この映画は野心的にボディホラーと家族のトラウマを寓話的重量と融合させているが、握りしめるような瞬間と優れた演技を提供しながらも、最終的には馴染みのあるホラーの定型と不均一な実行で失敗している」
ローリングストーン誌は、映画の野心と実際の達成度のギャップを詳細に分析した。ワネル監督が『ザ・フライ』のような名作ボディホラーの影響を受けていることは明らかだが、それらの作品が持つ純粋な恐怖感と感情的インパクトを再現できていないと指摘している。
特に、家族のトラウマというテーマ設定は現代的で意義深いものの、その探求が表面的に留まり、観客の心に深く刺さる展開になっていないと批判された。寓話的な重量を持たせようとする試みは評価されるが、その重量が物語全体を引っ張り上げるほど強力ではないとの見解が示されている。
演技面では主演陣の努力を認めつつも、脚本の構造的問題がその努力を活かしきれていないと分析された。特に、定型的なホラー展開への依存が、映画が目指していた革新性を削いでしまったと結論づけられている。
評価点
野心的なテーマ設定、主演陣の優れた演技、ボディホラーとしての視覚的インパクト
批判点
テーマ探求の表面性、定型的ホラー展開への依存、感情的インパクトの不足
(Rolling Stone – Wolf Man Review)
個人的な感想評価:30点
ううん?インディーズ映画よりも微妙なC級映画って感じ。
全体的に安っぽく、古典的とかいう問題でもなく、映像に意味も美しさもなく、テンポも悪い。半端なダン、ダンの息子デレク、微妙な家族関係、娘との関係性など、全てが半端で興味を引くこともなく、感情移入できず面白みがない。
主人公のブレイクに対しても、全てが半端な野郎という印象。
化け物=狼男みたいだが安っぽい特殊効果、オオカミでもなく人間でもない、狼男というほどオオカミしておらず、全身火傷した人みたいな半端な見た目、随分と勿体ぶって見せないようにしていたが、出てきた時にこの様相になんともがっかり。
狼男になると知覚が鋭敏になって暗闇でも見えるよって、だからなんだよ。
少しだけ人間性を保つよ、だからなんだよ。
すぐ横にハンター親子がいたのになんで襲われなかった?なんで襲わないんだ?
そんな感染が強いならもう28日後のレイジウイルスよりも凶悪じゃないか?
何がしたかったのか?何を持って視聴者を怖がらせたかったのか、全てが曖昧で半端で最後までため息が止まらなかった。
海外のさまざまなレビューを総合すると、『ウルフマン(2025)』は意欲的だが不完全な作品という評価に収束する。ワネル監督の前作『インビジブル・マン』が家庭内暴力という社会問題を恐怖映画の枠組みで巧妙に描いたのに対し、本作は世代間トラウマと父性というテーマに挑んだものの、その執行において複数の障害に直面してしまった。
最も評価されているのは、実用的な特殊効果による変身シーンの生々しさと、クリストファー・アボットの献身的な演技だ。言語能力を失いながらも家族への愛情を表現しようとするブレイクの姿は、確実に観客の心を捉える力を持っている。しかし、その感動的な核心部分を取り巻く脚本と演出が、残念ながらその魅力を十分に活かしきれていない。
批評家たちが一致して指摘するのは、恐怖映画としての基本的な要求を満たすことへの失敗だ。心理的深度を追求するあまり、観客が求める恐怖とカタルシスを提供できなかった。また、家族ドラマとしても、キャラクターの関係性や内面描写が表面的に留まり、深い感情移入を促すまでには至っていない。
まとめ
この記事では、映画『ウルフマン(2025)』の完全ネタバレから海外評価まで詳細に紹介した。1941年の名作『狼男』の現代版リブートとして期待を集めた本作だったが、批評家と観客の評価は賛否両論に分かれる結果となった。
期待度の面では、リー・ワネル監督の前作『インビジブル・マン』の成功により、クラシック・ホラーの現代的再話として大きな注目を集めていた。クリストファー・アボットとジュリア・ガーナーという実力派キャストの起用も話題となり、ユニバーサル・モンスターズ復活への期待が高まっていた。
内容面では、従来の狼男映画の設定を大幅に変更し、満月の夜の変身から感染症による不可逆的変化へとコンセプトを一新した。世代間トラウマ、父性、家族の絆という現代的テーマを盛り込み、単なるモンスター映画を超えた心理ドラマを目指した意欲作となった。
評価については、Rotten Tomatoesで批評家49%、観客54%、Metacriticで50点という平均的な数値に留まった。実用的特殊効果とアボットの演技は広く称賛されたが、恐怖演出の不足、脚本の浅さ、娯楽性の欠如が指摘された。
海外では「野心的だが不完全」「技術的には優秀だが感情的インパクトに欠ける」という評価が支配的だった。ワネルの演出技術は認められながらも、『インビジブル・マン』のような社会的メッセージの明確さと恐怖の両立に失敗したとする声が多数を占めた。興行的にも初週末1,090万ドルと期待を下回り、最終的に3,520万ドルで終了した。
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