
「一緒に映画館で大笑いしよう」海外で大絶賛されたウェス・アンダーソン監督によるコメディ映画『ザ・ザ・コルダのフェニキア計画(原題:The Phoenician Scheme)』物語結末までネタバレ。
IMDb6.7点、ロッテントマト78%という評価を獲得したこの作品は、2025年カンヌ国際映画祭のコンペティション部門に出品され、腕利きの武器商人と修道女志願の娘が繰り広げる奇妙な父娘の絆と復讐劇を、アンダーソン監督特有の緻密で視覚的な演出で描いた野心作である。
『ザ・ザ・コルダのフェニキア計画』物語結末ネタバレ
ここから先は『ザ・ザ・コルダのフェニキア計画』の核心である重大なネタバレを含む。
死と再生の序章
1950年、高バルカン平地のはるか上空。
大富豪のアナトール・”ザ・ザ”・コルダ(ベニシオ・デル・トロ)の乗る飛行機に突如大きな穴が開く。衝撃で秘書は上半身だけ吹き飛び、パイロットはコルダを置いて緊急脱出する。残されたコルダは自らの操縦でトウモロコシ畑に不時着する。
コルダはおそらく天国…の神聖な法廷で彼の天国入りの資格を審査しているところで目が覚める。臨死体験後、コルダは自分の人生を見つめ直し、飛行機も自身の命を狙う暗殺者によるものだと理解したことで、永遠に暗殺者から逃れることはできないと悟り療養もそこそこにすぐに旅立つ。
コルダが向かったのは、6年もの間疎遠になっていた唯一の娘で修道女志願のリーゼル(ミア・スリープルトン)のいる修道院だった。コルダは娘に遺産の相続をちらつかせて事業の後継者に指名しようと企んで近づいたが、リーゼルは父親に強い不信感を持っており、特に母親の死についてはコルダが殺害に関与しているのではないかという疑念を抱いているため、話はそううまくはいかない。
フェニキア計画
それでもコルダは、壮大な「フェニキア計画」——フェニキア地方のインフラ整備事業——を完遂するため、資金調達の旅にリーゼルと家庭教師ビョルン(マイケル・セラ)を伴うことにした。
コルダは計画の資金不足を隠しながら、各地の投資家パートナーたちを訪問していく。彼の投資家には、サクラメントのリーランド・レーガン兄弟、フランスのナイトクラブ経営者マルセーユ・ボブ、ニューアークの犯罪組織、そして二番目の従妹ヒルダの元を訪ね歩き、多くの場合トラブルに巻き込まれながら追加投資を引き出すため、コルダは巧妙な詐欺まがいの交渉を繰り返し、時にはヒルダとの結婚まで提案して資金を確保しようと旅を続ける。
旅の途中で衝撃的な真実が明らかになる。リーゼルの母親を殺害したのは、コルダの異母兄弟ヌバー(ベネディクト・カンバーバッチ)だった。コルダは妻がヌバーと不倫していることを知り、嫉妬に駆られて彼女がさらに秘書とも関係を持っていると嘘をついたことで、ヌバーは妻と秘書の両方を殺害してしまったのである。
さらに、リーゼルの生物学的父親はヌバーである可能性が高いことも判明する。
結末ネタバレ:贖罪と新たな人生
ヌバーは兄コルダへの憎悪からこれまで飛行機を落とす都合よくテロリストが来るなど一連のトラブルで暗殺を仕組んでいたことが判明する。最終的に2人は殺し合いを始めコルダが勝利し、ヌガーは手榴弾で爆死する。
一連の流れで贖罪の道を見つけたコルダはカトリックに改宗し、労働者に正当な賃金を支払い、自分の全財産をフェニキア計画の完成に投じ破産する。しかし、この行為によってリーゼルは父親を真に受け入れることができるようになった。
後日、コルダとリーゼルは小さなレストランを経営する質素な生活を始めていた。閉店後、一日の終わりに、父と娘は2人でトランプゲームを楽しむ様子が映し出され物語は終了する。
『ザ・ザ・コルダのフェニキア計画』作品情報
『ザ・ザ・コルダのフェニキア計画』のネタバレを読んで興味を持った読者のために、ウェス・アンダーソン監督による最新のブラックコメディ映画の詳細を紹介する。『グランド・ブダペスト・ホテル』以降、さらに洗練された視覚的センスと物語構成で国際的な注目を集めた、アンダーソン監督の新たな傑作である。
『ザ・ザ・コルダのフェニキア計画』興行収入
本作は2025年5月18日にカンヌ国際映画祭でワールドプレミアを果たし、パルム・ドールを争うコンペティション部門に出品された。ドイツでは5月29日、アメリカでは5月30日に限定公開、6月6日に全米拡大公開となった。2025年7月30日時点で、北米で2,000万ドル、海外で1,900万ドル、全世界で3,900万ドルの興行収入を記録している。
ウェス・アンダーソン監督紹介
1969年5月1日、テキサス州ヒューストン生まれのウェス・アンダーソンは、現代アメリカ映画界を代表する映像作家の一人である。対称性、偏心性、独特な視覚的・物語的スタイルで知られ、批評家からは現代の作家主義映画監督の典型例として挙げられている。
1996年の『ボトル・ロケット』で長編デビューを果たし、『ラッシュモア』(1998)、『ザ・ロイヤル・テネンバウムズ』(2001)、『グランド・ブダペスト・ホテル』(2014)など数々の傑作を発表。『ザ・ロイヤル・テネンバウムズ』『ムーンライズ・キングダム』『グランド・ブダペスト・ホテル』でアカデミー賞脚本賞にノミネートされ、『グランド・ブダペスト・ホテル』では初の監督賞ノミネートも果たした。BBC Culture誌の2016年の調査では、彼の3作品が「2000年以降の最高映画」に選出されている。
ウェス・アンダーソン監督は過去にブラッド・ピットを起用してSoftBankのCMを作っている↓
30秒と短いながら、ウェス・アンダーソン節が垣間見えて思わずニヤリとしてしまう。
せっかくだから、最後に個人的に好きなウェス・アンダーソン作品↓
ザ・ザ・コルダ役「ベニチオ・デル・トロ」紹介
1967年2月19日、プエルトリコのサンファン生まれのベニシオ・デル・トロは、1990年代に頭角を現したキャラクター俳優の代表格である。弁護士の両親の下に生まれたが、9歳で母親を失い、後に父親と共にペンシルベニア州の農場に移住した。
1995年の『ユージュアル・サスペクツ』で注目を集め、2000年の『トラフィック』でアカデミー助演男優賞を受賞。同作では大半をスペイン語で演じるメキシコ国境警察官を演じ、麻薬取引の腐敗と欺瞞の中で誠実さを保とうとする人物を見事に表現した。その他の代表作には『21グラム』(2003)、『シン・シティ』(2005)、『チェ』(2008)、『シカリオ』(2015)などがある。近年はマーベル・シネマティック・ユニバースでコレクター役、『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』でDJ役も演じている。
ベニチオ・デル・トロのフィルモグラフィー総集編のこちらの動画はぜひみて欲しい
海外の感想評価まとめ
『ザ・ザ・コルダのフェニキア計画』は海外で比較的好意的な評価を受けている。ロッテントマトでは批評家78%、IMDbでは6.7点を記録。批評家からは「ルーブ・ゴールドバーグ・マシンのような複雑さで作られたケイパー映画。アンダーソンの装飾的なスタイルから逸脱することはないが、上品な繊細さでその方式を提供している」と評価されている。
IMDb(総合評価:6.7/10)
①私はこの映画が最初から最後まで見事に狂気に満ちた作品だと感じた。個人的に大笑いし、本当に楽しんだが、多くの人には受け入れられないだろう。意味がなく、豊かになることもなく、筋書きが明確になることもなく、本当に共感できるキャラクターもいない。
②私にとってこの映画はモンティ・パイソンのような不条理さ、予期しない展開、奇妙な主題、テリー・ギリアムの漫画のような夢の場面を思い起こさせる。そしてそれと同じくらいばかげている。驚くべきキャストの俳優たちがほとんどちょい役のカメオに縮小されているのは迷惑なはずだが、制作するのは非常に楽しかったに違いないと思わずにはいられない。
③私がこの映画を観ている間、ジーン・ハックマンがいかに面白い幻滅した家長だったかを思い出して少し悲しくなった。これはウェス・アンダーソン映画の繰り返し出てくるテーマだ。好きになれる点がたくさんある——ストラヴィンスキーの使用など、映画での音楽の使い方は非常に良い。
④私は間違いなく神としてのビル・マーレイが史上最高のキャスティングの一つだと思う。トム・ハンクスとブライアン・クランストンの二人組のやりとりは完全に愉快だった。すべての人に勧めることはできないが、理解してくれそうな人には間違いなく勧める。
Rotten Tomatoes(批評家:78%)
①私は『アステロイド・シティ』がウェス・アンダーソンの自身の手法の擁護だったとすれば、『ザ・ザ・コルダのフェニキア計画』は彼の手法では包含しきれないすべてのものの探求だと思う。この自己耽溺的な芸術学校スタイルの幻想が、ザ・ザ・コルダという金持ちの実業家とその財産を維持する計画の物語で価値があるのかどうか疑問に思うかもしれない。
②私が印象的だったのは、マイケル・セラが今後アンダーソンのミューズであり続けるべきで、ウィレム・ダフォーやビル・マーレイと同じくらい定番になるべきだということだ。彼は完全に課題を理解している。芸術映画がモブ映画と出会う——興味深い観賞だった。
③私がもしあなたがウェス・アンダーソンのファンなら、この映画を観てほしい。失望することはないだろう。『アステロイド・シティ』の後で少し迷子になっていたが、いくつかの部分は気に入った。『ザ・ザ・コルダのフェニキア計画』は間違いなく原点回帰であり、キャストも素晴らしい。
Rotten Tomatoes – The Phoenician Scheme
Metacritic(総合評価:非公開)
①私はこの映画の最も良い部分が撮影だったと思う。映画撮影は非常に刺激的だ。それが私にとって最も素晴らしく最も面白い部分だった。もちろん演技も良かったが、この映画のジャンルは確実に好みが分かれる。
②私にとってこの映画は美しく撮影されていた。映画撮影がとても刺激的で、それが最高で最も楽しい部分だった。演技ももちろん良かったが、このジャンルの映画は間違いなく独特の好みを必要とする。ヒラリラス、巧妙。間違いなくもう一度観るだろう。
③私はこの映画を愛した。退屈だった。眠ってしまった。このような映画は好きだが、これは理解するのが困難だった。今でも本当に何についての映画だったのか確信が持てない。しかし、この映画のジャンルは確実に特殊な好みを必要とする。
Metacritic – The Phoenician Scheme
批評家レビュー
海外の専門批評家による『ザ・ザ・コルダのフェニキア計画』の詳細な評価を紹介する。ウェス・アンダーソン監督の視覚的センス、ベニシオ・デル・トロとマイケル・セラの演技、そして父娘の絆を描いた贖罪の物語としての深いテーマ性について、この映画の多面的な魅力と限界を理解できるはずだ。
Roger Ebert サイト 肯定的評価
批評家氏「『ザ・ザ・コルダのフェニキア計画』はテーマ的には贖罪の物語であり、長い間世界で最も権力のある人物の一人だった男が、暗殺の試みを繰り返し直面する中で、それが自分にもたらしたものを疑問視する物語である」
Roger Ebertサイトでは、アンダーソン監督の宗教的・哲学的な深みを評価している。特にビル・マーレイが演じる神との対話シーンについて、「聖書的なタブローの魅力的な場面」として高く評価。マイケル・セラの演技については「アンダーソン作品における最高のフィット感を見せる演技者と監督のマッチング」と絶賛している。また、「セラは常にマックス・フィッシャー的な要素を持っていたが、アンダーソンの対話のリズムを完璧に掴み、一見するよりも複雑な多層的な演技を見せている」と分析している。
評価点
マイケル・セラの圧倒的な演技、宗教的テーマの深い探求、アンダーソン節の完璧な実行
批判点
プロットが機械的で感情的な深みに欠ける、政治的腐敗への切り込みが浅い
(RogerEbert.com – The Phoenician Scheme)
Variety 中程度評価
J・キム・マーフィー氏「『ザ・ザ・コルダのフェニキア計画』は、ヨーロッパ貴族の自己保存への嗜好についてのジャッロ風刺劇へとシフトする際に、監督がカメラの後ろで生き生きとしてくる様子を感じ取ることができる」
Varietyはアンダーソン監督の演出技法の変化に注目している。特に『グランド・ブダペスト・ホテル』との比較において、「冒険的精神と、『テネンバウム一家』以来見たことのない特別な種類の温かさと人間性を結合している」と評価。ベネディクト・カンバーバッチの演技について「運命づけられた永遠のGIF素材となる素晴らしいショット」があると言及している。ただし、「生存を賭けた戦いへのクライマックス的な傾斜は予測可能な結末に向かって展開する」として、物語構成の予測可能性を批判している。
評価点
アンダーソン監督の演出技法の成熟、キャストの魅力的な演技、視覚的な完成度
批判点
物語の予測可能性、クライマックスの展開が予定調和的
(Variety – The Phoenician Scheme)
The New York Times 中立的評価
ジャネット・キャツーリス氏「ウェス・アンダーソンは聖書的なものと官僚的なものの中に意味を探求している。しばしば愉快な『ザ・ザ・コルダのフェニキア計画』は、驚くほど重厚な『アステロイド・シティ』よりも軽やかに感じられる」
The New York Timesは映画のトーン分析に焦点を当てている。「表面的には戯れのように感じられる——最も率直におかしな映画の一つで、身体的ユーモアと視覚的ギャグに満ちている——しかし同時に、家族の中に目的を見つけることやオリガルヒが両方を操作する方法といった深いテーマも扱っている」と分析。キャロリン・ブラッケンとマイケル・セラのキャスティングについて「伝統的に壮観なアンサンブルによって支えられている」と評価している。
評価点
軽やかで楽しいトーン、深いテーマの巧妙な織り込み、優秀なアンサンブル・キャスト
批判点
キャラクターの深みが不足、プロットが時として機械的
(The New York Times – The Phoenician Scheme)
IndieWire B評価
デイヴィッド・エーリッヒ氏「ウェス・アンダーソンのこの最新作は、彼の装飾的なスタイルから逸脱することはないが、上品な繊細さでその方式を提供している」
IndieWireは比較的好意的な評価を与えており、アンダーソン作品の中での位置づけを詳しく分析している。「『フレンチ・ディスパッチ』の密集したプロットや『アステロイド・シティ』の野心の後で、『ザ・ザ・コルダのフェニキア計画』で人々を困惑させるかもしれないのは、何が起こっているかをほとんど気にしないだろうということだ」と指摘。一方で、「マイケル・セラは今後アンダーソンのミューズとして、そしてウィレム・ダフォーやビル・マーレイと同じくらい定番の存在になるべきだ」と高く評価している。
評価点
マイケル・セラの素晴らしいフィット感、視覚的な美しさ、アンダーソン節の安定感
批判点
ストーリーへの関心が薄れる構成、深刻なテーマへの取り組みの浅さ
(IndieWire – The Phoenician Scheme)
個人的な感想評価:65点
『ザ・ザ・コルダのフェニキア計画』はウェス・アンダーソン作品としては中程度の出来栄えと言えるだろう。最大の魅力は間違いなくマイケル・セラの演技である。多くの批評家が指摘する通り、彼はアンダーソン監督の独特なリズムと完璧に調和し、今後の作品でも重要な役割を担うべき存在として確立されている。
独特なテンポ、音楽、セリフ、何もかもが素晴らしいのだが、ウェス・アンダーソン作品はだいたい後半でお腹いっぱいになってしまうのだが、今作も少しダレる。旅先で似たようなことが延々と起きて似たような人たちが似たようなことをするのだ。
ベニシオ・デル・トロの相変わらずのいるだけで場が引き立つ魅力はこの作品の最大の魅力ではあるが、個人的に彼の魅力を最大限に活かしきれていない感じがした。いや、いるだけで、ウェス・アンダーソンの作品に出てくれただけで嬉しいんだけど、ウェス・アンダーソンのスタイルに合わせすぎて、デル・トロ本来のワイルドな魅力が薄れてしまった印象がある。
まとめ
『ザ・ザ・コルダのフェニキア計画』は、武器商人の父親と修道女志願の娘という対照的な設定から始まり、家族の絆と贖罪をテーマにした複雑な物語を展開した。1950年代を舞台にしたスパイ・ケイパー映画として、ウェス・アンダーソン監督特有の視覚的センスと緻密な演出で観客を魅了する作品となっている。
海外での評価は好意的で、ロッテントマトの批評家78%という数字が示すように、専門家からは一定の評価を受けている。特に評価されているのは、マイケル・セラの圧倒的な演技と、アンダーソン監督の視覚的な完成度の高さである。
最終的に『ザ・ザ・コルダのフェニキア計画』は、アンダーソン監督のフィルモグラフィーにおいて重要な位置を占める作品として記憶されるだろう。宗教的テーマへの挑戦や、より複雑な家族関係の描写など、監督の新たな挑戦が随所に見られる野心作である。マイケル・セラという新たなミューズを得たアンダーソン監督の今後の作品への期待も高まっており、現代映画界における重要な才能として注目され続けるに違いない。
コメントを残す