
「愛されたいという誰もが抱える欲望が、そのまま最悪の悪夢に変わっていく」――そう評された映画『オブセッション 災愛』のあらすじから結末までのネタバレと、海外の感想評価をまとめて紹介する。アメリカで製作された本作は原題『Obsession』として2026年5月15日に公開され、日本でも同年7月17日に劇場公開が決定している、Rotten Tomatoesで批評家支持率94%、Metacriticで77点という高評価を獲得したネオ・ロマンティック・ホラー作品だ。
公開から7週目にもかかわらず全米トップボックスオフィスで2位を維持し続ける(1位はトイ・ストーリー5)のも納得な面白さの秘密を明かしていこう。どんなホラーファンも見終わるまでは息を吐く暇さえ与えられない見事な演技と展開と脚本、若き才能あふれる奇才、全てがトップレベルだとこんなにも見事なホラー映画が生み出されるのかと期待しながら是非見てほしい。
物語は、楽器店で働く内向的な青年ベアが、長年片思いしてきた幼なじみのニッキーとの距離を縮めたい一心で、「願いを叶える」といういわくつきの雑貨「ワン・ウィッシュ・ウィロー」に手を出してしまうところから始まる。純粋だったはずの恋心は、この一つの願いをきっかけに、想像を絶する執着と惨劇へと姿を変えていくことになる。
本作の監督は自身のYouTubeチャンネルで人気を博した後、長編デビューを果たしたカリー・バーカー(俳優名)、内気な青年ベアを演じるのはマイケル・ジョンストン(俳優名)、そしてベアが恋い焦がれるニッキーを、本作で一躍注目を浴びたインディ・ナヴァレッテ(俳優名)が演じている。
今回は、わずか75万ドルの低予算から全米で異例の大ヒットとなった話題作『オブセッション 災愛』のラストまでを詳しく解説し、海外ではどのような評価を受けているのかを紹介していきたい。以下の内容は本編の結末のネタバレを含むため、必ず鑑賞してから読んでいただきたい。
もくじ
オブセッションの意味とは?
映画のタイトルである「オブセッション(obsession)」とは、英語で「強迫観念」「執着」「頭から離れないこと」を意味します。ある特定の物事に極度にとらわれ、それ以外のことが考えられなくなる心理状態を指し、日常会話から精神医学まで幅広い分野で使われる言葉です。物語を最後まで見ていくとそのタイトルの意味が見事なほどに的を射ていることに気がつくはずです。
邦題の副題「災愛」も最後まで見ると日本人なら漢字の使い方は見事だなと分かるような気もしてきます。でもこの副題クソダセェですよね。
『オブセッション 災愛』あらすじ結末ネタバレ
ここから先は『オブセッション 災愛』の結末に関わる重大なネタバレを含む。一つの願いごとが引き金となり、恋心が制御不能な執着へと変貌していく様子と、それによって引き起こされる惨劇が描かれるため、鑑賞前の閲覧は避けることを強く推奨する。
うだつの上がらない青年ベア
物語はダイナーで始まる。
青年ベア(マイケル・ジョンストン)は、店のウェイトレス相手に幼なじみで長年片思いしているニッキー(インディ・ナヴァレッテ)に気持ちを打ち明ける練習をしていたが、横で見ていた親友のイアン(クーパー・トムリンソン)はベアの口から出る言葉がまるで安っぽい小説のようだと冷やかす。批判されたベアはただニッキーと二人きりの時間が欲しいだけだと伝える。
帰宅したベアは、飼い猫のサンディが死んでいるのを見つける。誤って自分の処方薬(オキシコドン(強めの鎮痛剤))を口にしてしまったためだった。ベアは泣きながらサンディの亡骸を片付け、自室で泣き崩れる。
意気消沈したベアだったがニッキーからの電話で体を起こし話をしているうちに、彼女が仕事を辞めるつもりなこと、大切にしていたクリスタルのネックレスを排水溝に落としてしまったという話を耳にする。ベアは即座に家を出て代わりのネックレスを買いに雑貨店を訪れ、ネックレスと一緒に棚の端で埃をかぶっていた「ワン・ウィッシュ・ウィロー」と呼ばれる、願いを込めて中に入っている柳の枝を折ると願いが叶うといういわくつきの品を見つけ購入してしまう。
ベアはニッキー、イアン、そして共通の友人サラ(メーガン・ローレス)も交えてトリビアナイトに参加し、イアンの手助けも借りながらニッキーと話を弾ませることに成功する。皆と別れた後ニッキーを家まで送るベアはこの時こそ気持ちを伝えようとするが、緊張のあまり彼女が嫌うあだ名「フリーキー・ニッキー」と呼んだ挙句、私のことを好きなのかと聞かれても否定してしまう最悪の展開となってしまう。
「ワン・ウィッシュ・ウィロー」
無事に家に送り届け当たり前のようにニッキーがさっさと家に入ったのを見届けたベアは冗談だとわかっていながらも藁にもすがる思いで「ワン・ウィッシュ・ウィロー」を取り出し、「ニッキーが世界中の誰よりも自分を愛してほしい」と願いをかけて説明書通りに中に入っていた棒を折る。
なんてバカなことをしているんだと周囲を見渡すと何故かニッキーが突然戻ってきて、父親が末期がんで辛いのだと告げ、一人では辛いとそのままベアの家についていくことになる。家に着いたニッキーはベアに一緒に寝てほしいと頼み、流れで二人はキスを交わすが、キスの最中ニッキーは信じられない恐怖に怯えた様子でベアを突き飛ばし、ベアの背後に何かがいると訴え泣き出してしまう。
眠れずにいるベアは購入した「ワン・ウィッシュ・ウィロー」が気になりウェブで検索して口コミを調べるが、やはりこの商品は80年代に発売されたジョークグッズ以上のものではなく特に不思議なものではないことが判明し、ベアは安心して怯えるニッキーと一緒に眠りにつくのだった。
ニッキーの変貌
翌朝、ベアが台所に行くとニッキーがゴミ袋の中からサンディの亡骸を勝手に取り出し、クッションの上に寝かせて周囲に蝋燭を灯しまるで祭壇のように飾っているのを目にする。ニッキー自身も自分の様子がどこか変になっていると感じているようだった。それでもこの夜からニッキーは頻繁にベアの家を訪れついに二人は結ばれる。
二人の関係は良好でベアにとっては夢のような蜜月を過ごしているが、目に余るほどにいちゃつく二人を見ている親友のイアンとサラは戸惑いを隠せないでいた。あるディナーの最中、ベアはイアンから電話を受け席を離れる。イアンが調べたところ、ニッキーの父親はまったくの健康体であること、さらに、サラがベアとニッキーをくっつけようと動いてくれたことがあるが、その時ニッキーはベアのことを「弟のような存在」で彼氏としては見れないとはっきり言っていたのだと言う。
電話を終えたベアがニッキーに父親の件を問い詰めた途端、彼女はレストランの真ん中で癇癪を起こして叫び出してしまう。感情の抑制が効かなくなったかのように笑顔で泣き叫ぶニッキーに対しベアがなだめてようやく収まるが、ベアの中に不安が残ることになる。
その後、二人は家に戻って関係を持つが、その最中もニッキーは心ここに在らずといった様子でベッドの横を眺めていた。
夜、悪夢を見たベアが目を覚ますと、ニッキーは部屋の隅に立ち、不気味な様子でベアの寝顔をじっと見つめていた。ベアがベッドを離れようとすると、彼女はそばにいてほしいと悲鳴のように叫ぶため、ベアは彼女を宥めるようにベッドでそのまま横になり眠りにつく。
翌日、出勤しようとしたベアは落ち着いた様子のニッキーを見て全ては夢だったんだと出勤しようとするが、玄関の扉がガムテープで徹底的に塞がれているのを見つけ絶句する。なんとかガムテープの封印を解いたベアはニッキーを見ないように出勤する。その様子を笑顔で見つめていたニッキーは失禁しながら笑顔の表情のままだった。
職場で昼食をとっていたベアはサンドイッチを一口かじったところで「猫の件、どう思う?」というメモを見つけ、パンをめくると中からサンディの前脚が出てきて、思わず嘔吐してしまう。
帰宅途中、ベアは「ワン・ウィッシュ・ウィロー」の相談窓口に電話をかけると、気だるそうな男性のオペレーターが電話口に出るとこの願いは変更も取り消しもできず、願いをかけた本人が死ぬまで終わらないのだと告げる。するとオペレーターの背後から「ニッキー」らしき女性の悲痛な叫び声が流れてきたためベアは電話を切る。
そして帰宅したベアが目にしたのは、尿や嘔吐物、排泄物にまみれ、以前と同じ場所に立ち続けているニッキーの姿だった。
崩れゆく友情関係
ベアを心配したイアンは、息抜きにニッキー抜きでパーティーを誘うがニッキーが嫌がるため、結局一緒に連れていくことになる。意外にもパーティー中はニッキーは穏やかに過ごしているように見えたが、「ドランク・ジェンガ」というゲームでニッキーの番になると彼女は「ヘンゼルとグレーテル」を近親相姦的な内容に脚色した独白を披露し、その場にいた全員を凍りつかせる。
ベアの番では「左隣の人にキスをする」という指示が出て左隣にいたのはサラだった。ベアがサラを見つめると、ニッキーはサラを椅子ごと引っ張り隙間を作ると、ベアの横にニッキーが座りベアは彼女にキスをせざるを得なくなる。キスをしたニッキーが嬉しそうに立ち上がり周囲を見渡すと、突如本物のニッキーが一瞬だけ意識を取り戻し「助けて」と叫ぶと割れたビール瓶で自分の顔を何度も殴って血を流す、しかしすぐに彼女は笑顔に戻って問題ないと言い出したため、ベアは彼女を病院に連れていくがなぜか受け入れを拒否されてしまい家に戻ることになる。
ベアはニッキーを家に連れ帰った後、サラから会いたいという連絡を受ける。家を出ようとするベアに、本物のニッキーが一瞬戻ってきて、「フリーキー・ニッキー」が眠っている間に自分を殺してほしいと懇願するが、願いを叶えているベアにとってそんな選択肢はなく彼女が眠っている間に外に出てサラに会いにく。
サラの車の中で、ベアは彼女から衝撃的な事実を聞かされる。イアンとニッキーは長年、付き合ったり別れたりを繰り返していた関係だったこと、そしてイアンは、ニッキーが自分への当てつけでベアと付き合い始めたのではないかと考えていること。さらに、サラ自身もベアに好意を抱いていたことがほのめかされる。だが二人がその気持ちを言葉にする前に、ニッキーが運転席の窓を叩き割ってサラの顔を何度もレンガに叩きつけ、顔の判別がつかなくなるまで破壊して殺してしまう。恐怖に凍りついたベアは、それでもニッキーに言われるまま彼女の遺体を運ぶのを手伝ってしまう。
結末ネタバレ:オブセッションの果て
ベアは再びあの雑貨店を訪れ売れ残っていたワン・ウィッシュ・ウィローを購入して車の中で願いがなかったことになるように願いを込めて折ろうとするが、以前は簡単に折れた枝が今回はどんなに力を込めても折ることができない。自身で折ることを諦めたベアはイアンの家を訪れ、「ベアが願いをかけなかったことにしてほしい」と頼み込むが、荒唐無稽な話を信じることができないイアンは「10億ドルが欲しい」と枝をあっさり折ってしまう。結果、天井から札束が降り注ぎ始めるのだった。
家に戻ったベアは、リビングに服を脱がされたサラの遺体が椅子に座らされているのを目撃し戦慄する。横にいたニッキーはすでにレンガで顔を痛めつけながら、ベアを撃ってから自分も死ぬと言いながら拳銃を突きつけてきた。そこへイアンが現れるが、ニッキーに頭を撃たれて絶命。追い詰められたベアはバスルームに立てこもり、自らの人生に終止符を打つ決意をする。銃で自分を撃とうとするが、結局ビビって思いとどまり、代わりにサンディの命を奪ったのと強い鎮静剤オキシコドンを大量に服用する。
しかしベアは服用したはずの薬を吐こうとし始め扉を開けてリビングに向かう。そこではすでにニッキーがベアが本当に自分を愛するようにという新たな願いをかけて柳を折っており、ベアは呪いにかかっていたのだった。
二人は穏やかな表情で歩み寄ると最後のキスを交わすが、すでに飲み干していた睡眠薬の影響でベアは崩れ落ちる。ニッキーは彼を抱きかかえながら、銃を取り出し命を絶とうとするが、その瞬間、ベアが死亡し願いの効力が切れニッキーは正気を取り戻す。
しかし正気を取り戻したニッキーの目の前には、無惨な親友たちの遺体の山だった。
リビングで虚ろに砂嵐を流し続けるテレビの画面にエンドクレジットが流れ初め、ニッキーの悲痛な叫び声が響きながら物語は終了する。
『オブセッション 災愛』作品情報
『オブセッション 災愛』の制作を手がけた監督と出演俳優、作品の基本情報について紹介する。
興行収入
製作費わずか75万ドルという低予算作品でありながら、全米公開初週末で1720万ドル超を記録し、公開2週目には興収が前週比39%増という映画史上でも極めて珍しい伸びを見せた。全米興行収入は2億3000万ドルを突破し、世界興行収入も3億7000万ドルに迫る勢いで、オリジナルホラー映画の歴代最高興収記録の更新も視野に入っている。トロント国際映画祭での配給権獲得額は1400万〜1500万ドルにのぼり、これはTIFF史上ジャンル映画として過去最高額だったという。
2026年7月第一週の興行収入トップ7、ご覧の通りスティーブン・スピルバーグ監督最新作ディスクロージャー・デイ、怪物と呼ばれた低予算映画バックルームズを遥かに超える興行収入を叩き出している。
youtubuで伝説となった映画Backroomsがついに長編映画化↓
カリー・バーカー監督情報

カリー・バーカーは1999年生まれ、YouTubeのスケッチコメディチャンネルで人気を博した後、2023年に投稿した短編ホラー「The Chair」がきっかけとなり長編映画化の話が舞い込んだ人物だ。マイクロバジェットのファウンド・フッテージ作品『Milk & Serial』(2024年)に続く長編2作目となる本作で、初の劇場公開デビューを果たした。
トロント国際映画祭でワールドプレミアを迎えた後、ブラムハウスのジェイソン・ブラムが製作総指揮として参加。次回作『Anything But Ghosts』(本作と同じ世界観の作品)に加え、A24が製作する「悪魔のいけにえ」リブートの監督・脚本・製作も務めることが決まっている。
ベア役「マイケル・ジョンストン」情報

1996年生まれのアメリカ人俳優。MTVのドラマ「ティーン・ウルフ」でコーリー・ブライアント役を務めたほか、映画「Slash」(2016年)で主演を務めた。ゲーム「キングダム ハーツIII」のエフェメル役や「Tales of Zestiria」のミクレオ役など、声優としても幅広く活動している。
本作では、片思いの相手への気持ちを言葉にできない内気な青年ベアを演じ、優しさと精神的な危うさと抑えきれない願望が同居する病的な人物像を丁寧に体現している。
ニッキー役「インディ・ナヴァレッテ」情報

メキシコ系オーストラリア人の血を引く新鋭女優。本作以前は海外ドラマ「スーパーマン&ロイス」でサラ・カッシング役を演じたほか、Twitchでの配信活動を行っていた時期もある。本作でのニッキー役が実質的な主演デビュー作となり、シアトル国際映画祭で最優秀演技賞を受賞したほか、批評家からも軒並み絶賛され、次期アカデミー賞主演女優賞候補としても名前が挙がっている。
冒頭では美しく愛嬌のある愛情深いはずの人物が、不可思議な現象によって徐々におかしくなっていくメンヘラと超常的な恐怖が入り混じった男性が最も想像したくないことを笑顔で体現していく最悪の女へと変貌していく難役を、体当たりの演技で見事に演じ切っている。友人は惜しげもなく脱いだのに対し、濡場でも彼女は下着を取ろうとしなかったのは残念である。
海外の感想評価まとめ
本作は海外でどのような評価を受けているのか。Rotten Tomatoesでは批評家支持率94%、Metacriticでも「概ね好意的」の水準となる77点を獲得しており、批評家からの評価は総じて高い。中でも際立っているのがニッキー役インディ・ナヴァレッテの演技への評価で、これほど演技面が正面から称賛されるホラー映画は珍しいと言われている。なぜこの評価になったのか、海外レビュアーたちの声を見ていこう。
IMDb(総合評価:7.4/10)
①Jess-WhatsUpWeirdoPodcast(10/10)は、この映画を長年ホラーファンが待ち望んでいたものだと絶賛している。容赦なく、独創的で、あまりに不穏な展開が続くため、途中から自分の身体がどう反応していいか分からず笑ってしまうほどだったという。ナヴァレッテの演技を「revelation(新たな才能の発見)」と評し、次に何が起こるか一切予測できない緊張感が、期待をはるかに超えていたと語っている。
②chris_rowe-881-168820(10/10)は、演技が賞レースで語られにくいホラー映画というジャンルにおいて、ナヴァレッテの怪演はまさに「お手本」と呼べる域に達していると評している。扱っているテーマ次第では悲劇的な失敗作にもなりかねない題材を、彼女の演技力だけで成立させたと高く評価している。
③somf(9/10)は、この映画がほぼ全面的にナヴァレッテの演技力に依存していると指摘する。それまで名前を聞いたことがなかった彼女の演技を「award worthy(受賞に値する)」と評し、もし彼女が少しでも演技を誤っていたら平凡な映画になっていただろうと分析している。一方で、ベア役のマイケル・ジョンストンについては、演技そのものよりも脚本の書き方の問題として、終始「なぜもっと理性的に行動しないのか」と感じてしまったとも述べている。
④HarmanS-331(7/10)は、「好きな相手に振り向いてもらえたら」というシンプルな題材にナヴァレッテが見事に食らいついていると評価しつつ、ベアがニッキーの明らかに異常な行動をあまりに長く見過ごしてしまう展開には、さすがに現実味を欠くと感じたと率直に述べている。それでも大半のホラー映画よりコメディ要素が豊富で、全編を通して不穏さを保ち続けた点は成功と言えると結論づけている。
Rotten Tomatoes(批評家:94% / 観客:94%)
①バラエティ誌のガイ・ロッジは、モンキーズ・パウ(猿の手)という古典的なモチーフを現代の恋愛関係に置き換えた本作の着想を高く評価している。一見単純で、いくぶん馬鹿げてすら見える題材が、物語が進むにつれて予想外の深みを帯びていく構成の巧みさに驚かされたと綴っている。
②AVクラブのモニカ・カスティーヨは、一つの願いという単純な仕掛けだけで、観客をじわじわと不穏な状況に引きずり込んでいく手腕を評価している。冒頭からずっと落ち着かない気持ちにさせられ、その緊張が最後まで緩まない点が本作の強みだとしている。
③The Globe and Mailのバリー・ハーツは、本作を単なる「気をつけろ」という教訓話として消費させない作りに注目している。監督のカリー・バーカー自身が、自分がとんでもないものを解き放ってしまったことに自覚的であるように見えると評し、観客に対しても「愛を求める者は気をつけよ」と静かに警告しているようだと述べている。
Metacritic(総合評価:77/100)
①Deep Focus Reviewの批評家は、ユーモアとグロテスクなホラーを組み合わせた本作について、満員の深夜上映で観るには最高に楽しい体験だと認めつつ、皮肉めいた選曲の使いすぎと、設定の魅力に対してキャラクターの掘り下げがやや不足している点を指摘している。
②RogerEbert.comのケイティ・ライフは、本作を「血と後味の悪さがあらゆる場所に飛び散っている」ような作品だと表現し、手放しの絶賛というよりは、複雑な感情を抱かせる作品だという立場を取っている。
③一般ユーザーからは、後半にかけての惨劇の畳みかけ方や、伏線となる小道具(猫のサンディやウィローの由来)の使い方を評価する声が多く見られる一方、主人公ベアの受動的すぎる行動に苛立ちを感じたという声も一定数見られた。
批評家レビュー
海外批評家の詳細な評価を見ていこう。
Variety 期待を裏切る深み
ガイ・ロッジ氏「一見単純で、いくぶん馬鹿げてすら見える、古典的なモンキーズ・パウの焼き直しだ」
ロッジは、序盤こそありふれた「願いが呪いに変わる」という定番のプロットに見えると率直に書きながらも、物語が進むにつれてその印象が裏切られていく構成に感服したと綴っている。特に彼が紙幅を割いて称賛しているのがナヴァレッテの演技で、肉体的にも感情的にも近年のホラー映画の中でも屈指の負荷がかかる役柄を、見事にやり遂げたと評している。単なるジャンル映画の枠を超え、恋愛関係における支配と依存という普遍的なテーマにまで踏み込んだ作品だという評価だ。
評価点 一見軽薄に見える題材から、支配と依存という普遍的なテーマへと着地させる構成力、ナヴァレッテの負荷の高い演技
批判点 記事内では明言を避けているが、序盤の展開のテンポの緩さについてやや留保を残す書き方をしている
Vulture 新星の発見
ルイス・ペイツマン氏「ナヴァレッテは単なる“ヤバい元カノ”役に押し込められていない」
ペイツマンは、この手のホラー映画にありがちな「怖い女」というステレオタイプにナヴァレッテの演技が収まりきっていない点を高く評価している。ニッキーという役柄には、被害者性と加害性という相反する要素が同居しているが、ペイツマンはその両面を行き来する演技を、ホラー映画としては異例なほど繊細な仕事だと位置づけている。ホラージャンルにおける初めての大役でここまでの仕事をやってのけたことに、今後の活躍への強い期待を寄せている。
評価点 「怖い女」という記号的な役柄に落とし込まず、被害者性と加害性を同時に体現した演技の解像度
批判点 題材そのものは目新しいものではなく、脚本の独自性よりも役者の力に頼っている部分が大きいという見方
RogerEbert.com 手放しでは称賛しない視点
ケイティ・ライフ氏「血と後味の悪さが、あらゆる場所に飛び散っているような作品だ」
ライフは本作について、単純に「面白い」と言い切ることに抵抗を感じさせるタイプの映画だと評している。過剰なまでのグロテスクさとブラックユーモアが常に隣り合わせで展開するため、観客は笑っていいのか顔をしかめるべきなのか判断がつかないまま置き去りにされる瞬間が多いという。ただし、その居心地の悪さこそが監督の狙いだとも分析しており、単なる娯楽作として消費させないための仕掛けだと結論づけている。
評価点 観客に安易な感情の逃げ場を与えない、居心地の悪さを意図的に作り出す演出
批判点 ブラックユーモアとグロテスクさのバランスが常に成功しているわけではなく、観客を選ぶ作りになっている点
Dread Central 新たなホラーアイコンの誕生
ジョシュ・コーングット氏「彼女の不気味さは、新たなホラーアイコンの資質をすべて備えている」
コーングットは、本作の隠れた武器がナヴァレッテの存在そのものだと断言している。『アノーラ』でのミッキー・マディソンの爆発力を引き合いに出しつつ、そこに悪霊に取り憑かれたかのような不穏さを掛け合わせたような演技だと表現し、ジャンル映画ファンとして本気で驚かされたと語っている。低予算のインディーホラーから生まれた新しいスター誕生の瞬間に立ち会っているという興奮が伝わってくるレビューだ。
評価点 ジャンル映画ファンの目線から見た、ナヴァレッテの演技の衝撃度とスター性
批判点 演技面への称賛に紙幅の大半を割いており、脚本や演出面への言及が相対的に手薄になっている
個人的な感想評価「最高」
これは面白い。自分の願いを叶えたら最悪の方向に叶うというありがちな脚本にもかかわらず、ニッキー役のナヴァレッテの最悪(褒め言葉)の演技のおかげで、冗長に感じるシーンも彼女の影や存在を感じるだけで視聴者の中で緊張感が緩まることがなく、どんなシーンも恐怖で画面のどこかに彼女がいるのでは?と周囲を見渡して最後まで何が起きるのか?彼女がどんな最悪の選択をしてくるのか?と最高に映画を楽しむことができた。
ホラー演出も超常性と物理的なリアルの両方で怖がらせてくれるのも素晴らしい、ニッキーの豹変だけではなく、何気ない猫の死骸の祭壇から?と思わせ、翌日の扉ガムテープからのその場でずっと待っているシーンなんかはリアルなメンヘラ女性がやりかねない行動であるため、片鱗でも感じたことがある、似たような情緒の女性と付き合ったことがある男性はあの辺から嫌な空気と背中に冷や汗をかいたことだろう。そこから一気に畳み掛けるような暴力と血と謎の超常現象のサンドイッチによってもうギブアップだ。これ以上はやめてくれ、決してグロいわけではないのに思わず叫びそうになるほどに「願い」を実現させようとする不可思議な力へ懇願してしまうほどだった。
バックルームズは都市伝説をドキュメンタリー風のようなフィクション映画として作ったため、楽しみ方が最初から二分化されてしまい評価が分かれたが、この映画の場合は予告も期待を全く裏切ることのない品質を最後まで保ったため、見終わった後の爽快感と不快感、愛憎入り混じる不可思議な満足感を得ることができた。良い映画を見た。間違いない。2度と見たくはないが、人には必ず進めるだろう。
海外の評価を見渡して興味深いのは、称賛のほとんどがニッキー役の演技に集中している一方で、ベアというキャラクターの「加害性」についてはあまり深く語られていない点だ。ベアは終始「振り回される哀れな青年」として描かれるが、実際には妻ではない相手の意思を一つの願いで奪い、その後も彼女の異常な行動を目の当たりにしながら関係を続けてしまう。飼い猫サンディの死因となったオキシコドンを、結末でベア自身が選び取る展開は、加害と自罰が地続きであることを暗示しているように思える。単なる「怖い彼女」ものとして消費するには惜しい、加害者性への視線を持った一本だ。
まとめ
今回は日本公開(2026年7月17日)を控えた話題作『オブセッション 災愛』について、結末までのネタバレとあらすじ、そして海外での評価をまとめて紹介してきた。YouTube発の新鋭監督カリー・バーカーが、わずか75万ドルの製作費で撮り上げた本作は、Rotten Tomatoesで批評家支持率94%、Metacriticで77点という高評価を獲得し、全米興行収入は2億3000万ドルを突破するまでの現象を巻き起こした。中でもニッキー役インディ・ナヴァレッテの演技は批評家からも軒並み絶賛され、次期アカデミー賞の話題にまで挙がっている。「愛されたい」という誰もが抱く願いが、一つの選択を境にどこまで恐ろしい形に変わりうるのか――日本公開後、この執着の物語がどう受け止められるのか注目したい。








コメントお待ちしています